対話で大切なこと!心理カウンセリングが教えるメッセージの伝え方
2024/11/06
みなさん、こんにちは。
神戸市や芦屋市、西宮市などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。
さて、人とコミュニケーションを取るとき、言葉がうまく伝わらないと感じることはありませんか?
とくに、相手に何かを伝えたいときや考え方を変えたいと思うとき、自分の言いたいことが相手の心に響くかどうか、悩むこともあるでしょう。
こうした悩みに役立つのが、心理学の「社会的判断理論」です。
この理論は、人が新しい情報をどう受け止めるかは、その人がすでに持っている態度や意見に強く影響されることを示しています。
実際のコミュニケーションの現場でも、ご相談者の態度や考え方に合わせて情報を伝えることで、より受け入れられやすくなる効果が期待できます。
このように、既存の態度に合うときは「同化効果(Assimilation Effect)」、逆に相手の意見から離れすぎていると「対比効果(Contrast Effect)」が生じ、意図とは逆に反発を招くことがあるのです。
以下では、実際のカウンセリングを例に、効果的なコミュニケーションの方法をお伝えします。
同化効果(Assimilation Effect)とは
同化効果は、新しい情報が既存の態度に近い場合に、受け手がその情報を自分の意見に取り込みやすくする効果です。
つまり、相手がすでに持っている意見や考え方に少しずつアプローチしながらメッセージを伝えると、自然と受け入れやすくなるのです。
たとえば、カウンセリングにおいてご相談者が自己肯定感に悩んでいるとき、まずはその方が今持っている良い面に焦点を当てて話を始めます。
無理にポジティブな考えを押し付けるのではなく、相手が受け入れられる範囲の肯定的な視点を少しずつ提示することで、ご相談者は自分の見方を無理なく変えていくことができます。
対比効果(Contrast Effect)とは
対比効果は、新しい情報が既存の意見から大きくかけ離れているときに生じます。
情報が相手の考えから遠すぎると、反発を感じることが多くなり、そのメッセージがかえって拒絶されてしまうことがあります。
カウンセリングでの対話でも、ご相談者に過度に異なる考え方を提案すると、相手は警戒感や違和感を抱く可能性があります。
たとえば、「今すぐにポジティブな思考に切り替えましょう」というようなアプローチは、状況によっては逆効果になりやすいのです。
カウンセラーとしては、ご相談者の現状や気持ちを十分に理解し、少しずつ相手にとっての「受容範囲」に入る内容を伝えていくことを大切にしています。
日常生活に活かせるコミュニケーションテクニック
受容範囲と拒絶範囲とは?
受容範囲と拒絶範囲は、社会的判断理論の中心概念であり、どのようにメッセージを伝えるか、あるいはどのように態度変容を促すかを考える上で重要です。
具体的に、それぞれがどのように働き、実際のコミュニケーションにおいてどう応用できるのかを詳しく解説します。
1. 受容範囲(Latitude of Acceptance)とは?
受容範囲とは、相手が「それなら理解できる」と感じる意見や態度の範囲を指します。
人は通常、自分の既存の意見にある程度近い情報や考え方には前向きに耳を傾け、共感を示しやすくなります。
この範囲内にある情報は「同化効果」を引き起こしやすく、相手にとって納得しやすい内容として受け入れられるのです。
たとえば、誰かが「運動は健康に良い」と考えている場合、受容範囲に含まれる意見としては「週に1回の散歩でも体によい」「軽い運動でも続けると効果がある」といったものが考えられます。
こうした意見は、相手の受容範囲に収まっているため、無理なく納得されやすいのです。
【実際のコミュニケーションでの応用例】
受容範囲にある内容で対話を進めると、相手が意見を聞き入れやすくなるため、以下のようなテクニックが有効です。
(1)小さな同意点から始める
最初に相手が同意しやすい内容に触れてから、自分の意見を少しずつ紹介していくと、相手が無理なく受け入れやすくなります。
たとえば、健康の話題で「軽い運動でも体には良いですよね」といった相手が賛同しやすいコメントから始め、次に「そのうえで、少し負荷を上げるとさらに効果が出ますよ」といった形で、自分の意見に導くと効果的です。
(2)共通の経験を共有する
相手の体験や価値観に基づいた内容を共有すると、受容範囲内での同意を得やすくなります。
たとえば、育児について話す際に「小さな子どもと過ごすのは体力が要りますよね」と共感を示すことで、相手の受容範囲内に入りやすくなり、そこから育児の負担を軽減するためのアドバイスに進めることができます。
(3)段階的な提案をする
大きな変化を求めるのではなく、少しずつ受け入れられる変化を提案すると、相手の受容範囲を広げていくことができます。
たとえば、「まずは週に1回、散歩を習慣にしてみては?」といった小さな変化から始めてもらい、次に「もう少し歩く距離を伸ばしてみましょう」と段階的に提案することで、無理なく新しい行動を取り入れてもらうことが可能です。
2. 拒絶範囲(Latitude of Rejection)とは?
拒絶範囲とは、相手にとって受け入れがたいと感じる意見や態度の範囲を指します。
受容範囲から外れすぎている意見は「対比効果」を引き起こし、相手に強い反発や拒絶感をもたらしがちです。
このため、拒絶範囲内にある意見や提案を無理に押し付けると、かえって相手の態度が強固になるリスクがあります。
たとえば、前述の「運動は健康に良い」と考えている人に対して「毎日激しいトレーニングをしなければ健康になれない」といった提案は、拒絶範囲に入っている可能性があります。
この場合、相手は「そんなことは無理だ」「そこまでしなければいけないとは思わない」と反発し、自分の意見をさらに固めてしまうかもしれません。
【実際のコミュニケーションでの応用例】
拒絶範囲に触れないためには、相手の価値観や信念に配慮し、次のようなテクニックを活用することが効果的です。
(1)相手の立場を理解する姿勢を示す
「あなたの考えも理解していますよ」という姿勢を示し、相手が否定的に感じないようにすることが大切です。
たとえば、運動について「無理に激しい運動をする必要はないですよ」と言ってから、「少しの時間でもできることを始めてみましょう」と提案することで、相手が安心してアドバイスを受け入れやすくなります。
(2)対話を通じて拒絶範囲を見極める
対話の中で相手の反応を観察し、どの意見が拒絶範囲に入っているかを理解することが大切です。
相手が嫌悪感や違和感を示した場合には、無理にそのテーマを推し進めず、代わりに受容範囲に戻れる話題に切り替えることで、スムーズなコミュニケーションが図れます。
(3)控えめな表現を使う
断定的な言い方や強い主張は拒絶範囲に入りやすく、反発を生みやすい傾向があります。
たとえば、「絶対にこうすべきだ」といった表現ではなく、「こうしてみても良いかもしれませんね」といった控えめな表現にすることで、相手が提案を受け入れやすくなります。
3. 受容範囲と拒絶範囲を活かしたコミュニケーションのまとめ
社会的判断理論を応用することで、受容範囲に沿った提案や対話を行うと、コミュニケーションが円滑になり、態度変容も起こりやすくなります。
受容範囲を広げるためには、段階的に無理のない提案を続け、相手が抵抗なく受け入れられる状況を作り出すことが大切です。
一方で、拒絶範囲には触れないように配慮しつつ、相手にとって負担が少なく、自然に変化を促すようなコミュニケーションが、日常生活のさまざまな場面で役立つでしょう。
まとめ:共感と調和をもとにしたコミュニケーションを
コミュニケーションには、単に自分の意見を伝えるだけでなく、相手の反応や受け入れやすさに配慮することが大切です。
同化と対比のバランスがとれたコミュニケーションは、相手との関係を深めるだけでなく、態度変容を促進するカギでもあります。
社会的判断理論は、このバランスを見極める上で非常に役立つ視点を提供してくれるでしょう。
神戸、芦屋、西宮のカウンセリングサービスでも、ご相談者と調和のとれた関係を築きながら、効果的なアプローチを日々追求しています。
カウンセリングサービスを通じて、皆さんが安心して相談できる環境を提供し、前向きな変化を共に実現していきたいと考えています。
社会的判断理論とそれに基づく「同化効果」「対比効果」を意識することで、相手に対してより深い理解と共感を持って接することができます。
心理カウンセリングだけでなく、日常生活や仕事の場面でも役立つこの視点を、ぜひ皆さんも試してみてください。
参考論文
Social judgment: Assimilation and contrast effects in communication and attitude change.
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この記事の執筆者
駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)
心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。