対人関係で怒りを感じる理由とは?関係性と期待の違反から読み解く心理
2024/11/09
みなさん、こんにちは。
神戸市や芦屋市、西宮市などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。
さて、日々のカウンセリングサービスでご相談者からよく聞かれるのが「なぜ自分はこんなに怒りを感じるのか」という質問です。
怒りは誰にでもある感情ですが、その背後には関係性における暗黙のルールや期待が影響していることが多いのです。
今回は「関係規範の違反に対する怒り感情」に関する研究を基に、親密な関係や職場関係などの中で怒りが生じる理由、怒りを適切にコントロールするための方法についてお話しします。
神戸、芦屋、西宮でカウンセリングを提供している私のカウンセリングサービスでも、このような感情の根本に目を向けるサポートを行っています。
その実際のアプローチも踏まえてお伝えいたします。
1. 怒りを生む関係規範とは?
関係規範とは、特定の関係において期待される暗黙のルールや期待のことです。
例えば、恋人同士であれば互いに忠実であること、友人関係では秘密を守ることなどが当てはまります。
これらの規範が守られなかったとき、私たちは裏切られたような気持ちになり、怒りを感じることがあるのです。
この研究では、関係の種類によって期待される規範が異なるため、規範が破られた際に感じる怒りもまた違うことが指摘されています。
では、具体的にどのような違いがあるのか、次に見ていきましょう。
2. 人間関係のタイプ別にみる怒りの違い
人間関係のタイプごとに期待される規範が異なるため、怒りの感情もそれに応じて変わってきます。
ここでは、家族関係、友人関係、恋愛関係、そして職場関係という主要な関係ごとに、どのような規範が期待され、それが破られた際に生じる怒りの特徴を詳しく見ていきます。
家族関係における怒り
家族関係は長期的で密接なものであり、そこでは「無条件の支え」や「相互のサポート」が期待されます。
家族の中では、お互いの安全や健康を気遣い合うこと、困った時に手助けをすることが暗黙の規範とされています。
そのため、家族からのサポートが得られない場合、深い失望や孤独感と共に、強い怒りが湧き上がることがあります。
例:親が仕事で忙しくて子どもとの時間を十分に取らなかったり、逆に子どもが親の期待に応えなかったりすると、家族としての支え合いや愛情が欠如していると感じ、怒りが生まれやすくなります。
特徴的な怒り:家族に対しては、無条件の愛情が期待される分、怒りが深刻な形で現れやすく、抑えがたい強い感情になることが多いです。また、罪悪感が伴うことも少なくありません。
友人関係における怒り
友人関係では、対等な立場での「信頼」や「共感」が重視されます。友人は自分を理解し、サポートしてくれる存在とみなされているため、友人からの裏切りや軽視されるような行動は、怒りの原因になります。
たとえば、約束を守らない、相談に乗ってくれない、あるいは自分の秘密を他人に漏らすなどは、信頼関係を損ねる行動として怒りを引き起こしやすいです。
例:親しい友人が、自分の悩みを軽視して相談に応じない、または一方的に話を聞かされるだけの関係になると、共感が欠如していると感じ、怒りが生まれやすくなります。
特徴的な怒り:友人関係の怒りは、距離を置くことで緩和することが多く、冷静に対処しやすいのが特徴です。しかし、信頼が損なわれた場合は関係の修復が難しくなることもあります。
恋愛関係における怒り
恋愛関係は、他の関係と比べて特に高いレベルの「忠実さ」や「専念」が求められるため、規範が破られた際の怒りも激しくなりがちです。
恋人間では互いに愛情や優しさを与え合い、専念することが期待されるため、浮気や他者優先の行動は関係の根幹を揺るがす問題となります。恋人に期待する規範が破られると、怒りと共に深い傷つきが生じるため、感情が大きく揺れ動きやすいのが特徴です。
例:恋人が自分の感情や時間を無視して一方的に振る舞ったり、他の人を優先することで、関係性が軽視されていると感じ、激しい怒りが湧き上がることがあります。
特徴的な怒り:恋愛関係の怒りは、非常に感情的になりやすく、怒りが執着や嫉妬へと発展しやすいです。また、関係を修復するには時間や適切な対話が不可欠です。
職場関係における怒り
職場では、「責任感」や「公平性」「信頼性」が期待され、仕事を円滑に進めるための協力が重視されます。
職場における規範違反には、約束を守らない、締め切りを無視する、不公平な待遇などがあります。
これらの行動は、職場での人間関係において怒りを引き起こしやすく、職場全体の雰囲気や業務効率にも影響を及ぼします。
例:同僚が仕事を押し付けてきたり、上司が不公平な扱いをしたりする場合、職場での信頼関係が損なわれ、怒りを感じることが増えます。
特徴的な怒り:職場での怒りは、感情を表に出しにくく、内に溜め込む傾向があるため、ストレスが蓄積しやすくなります。また、直接的な表現がしづらいため、別の方法で解決策を探る必要がある場合もあります。
それぞれの関係において異なる規範や期待があるため、怒りが生じる要因も異なり、対処法にも違いが出てきます。
怒りが生じた際には、その原因や背景を冷静に振り返り、関係に応じた適切な対処を心がけることが大切です。
3. 欲求の関係特異性と怒りの関係
欲求の関係特異性とは、人間関係のタイプに応じて、私たちが相手に対して期待する特定の欲求やニーズが異なることを指します。
親密な関係や職場関係といった異なる関係では、私たちが相手に求めるサポートや役割、態度も異なり、これが満たされなかったときに生じる怒りの内容や強さも変わってきます。
ここでは、関係のタイプ別に欲求の違いと、それが満たされなかった場合の怒りの特徴について詳しく見ていきましょう。
親密な関係における欲求と怒り
親密な関係(例:家族、恋人、親しい友人)では、感情的なサポートや信頼、理解といった欲求が非常に強く、関係が深いほど、それらが満たされないときに強い怒りが生じます。
この関係では、互いに安心感を与え合い、心を開ける存在であることが求められるため、期待が裏切られた際には傷つきが大きくなります。
例:恋人や家族に対して、辛いときに支えてくれることや、自分の感情を理解してくれることを求めている場合、それが叶わないと「自分は理解されていない」「支えがない」と感じ、強い孤独感と共に怒りが湧き上がります。
怒りの特徴:親密な関係の怒りは深く個人的であり、「愛されていない」「理解されていない」と感じたときに、裏切りや孤独感が混ざった強い怒りが生じやすいのが特徴です。また、この怒りには「もっと理解してほしい」という欲求も込められていることが多く、相手との関係を修復したいという気持ちが背景にあることが一般的です。
友人関係における欲求と怒り
友人関係では、相互の共感や助け合いといった欲求が重要視されます。
友人には自分の感情を共有し、喜びや悲しみを分かち合うことが期待されているため、これが裏切られると、信頼の喪失から怒りが生まれやすくなります。
特に、友人同士の関係では対等な立場が重視されるため、不公平感や一方的な関係が怒りの原因となりやすいです。
例:例えば、自分の相談には乗ってくれないのに、相手の話ばかりを聞かされる場合、「対等な友人として扱われていない」と感じて怒りが生じます。また、秘密を共有していた友人がその秘密を他人に話してしまった場合も、信頼関係の裏切りとして怒りが強く現れます。
怒りの特徴:友人関係の怒りは、関係が対等であるべきという期待が破られたときに強くなりやすく、裏切りや距離を取ることを示唆することも多いです。この怒りは、自分が対等に扱われていないと感じたときに「もうこの関係に距離を置こう」という方向に進むこともあります。
職場関係における欲求と怒り
職場の関係では、仕事におけるサポートや公正な評価、責任分担といった具体的で業務に直結する欲求が重要になります。
職場では業務の効率性や成果が重視されるため、これらが満たされないと怒りが生じやすく、特に上司や同僚の不公平な扱いや無責任な態度は、個人のモチベーションや業務への満足度を低下させ、職場全体への不信感や怒りに繋がります。
例:例えば、同じ業務量をこなしていても上司から評価されない場合や、他の同僚が不公平に優遇されていると感じた場合は、「努力が報われていない」「自分が正当に扱われていない」と感じて怒りが生じます。また、同僚が仕事を押し付けてきたり、チームでの協力が得られない場合も、欲求が満たされずに不満や怒りが募りやすくなります。
怒りの特徴:職場関係の怒りは「公平さ」や「責任感」といった業務的な側面が強く関わっているため、感情的な表現が抑えられることが多いですが、内面では蓄積しやすいです。また、職場の雰囲気や自分の役割が軽視されていると感じた場合には、職場全体に対して不満を抱き、仕事の意欲が低下することもあります。
家族関係における欲求と怒り
家族関係においては、「無条件の支え」や「安心感」といった欲求が非常に重要で、特に困難な状況において家族からのサポートが期待されます。
家族は、自分が心を許せる安全な場所であると同時に、必要な時に支えてくれる存在として認識されているため、これが満たされないと強い怒りや不信が生じやすくなります。
例:たとえば、自分が大変な時に家族が助けてくれない、あるいは精神的に支えを感じられないときに「家族としての義務を果たしてくれていない」と感じ、怒りが生じます。また、家族に対する欲求が満たされない場合、孤独感が増幅し、他の関係以上に心理的なダメージが大きくなることがあります。
怒りの特徴:家族関係の怒りは、通常の不満よりも深刻になりやすく、長期的に続くと関係の亀裂に繋がることも少なくありません。この怒りには「家族としての支えを感じられない」という期待外れが背景にあり、それが悲しみや孤独感と結びつき、強い感情が生じます。
関係ごとの欲求が満たされない場合に生じる怒りは、相手に対する信頼や期待がどのように裏切られたかに深く関係しています。この理解を持つことで、怒りを感じた際に「自分がどのような欲求を持っていたのか」を振り返り、適切な対応や解決策を考えやすくなるでしょう。
4. 欲求が伝わっているかどうかの影響
欲求が相手に伝わっているかどうかも、怒りの感情に大きく影響します。
欲求が明確に伝わっているとき、それが無視されるとより強い怒りが生まれることがあるのです。
欲求が伝わっている場合
何度も「この点でサポートがほしい」と伝えているのに、それが無視された場合、「相手がわかっているはずなのに!」という強い怒りが生じます。
相手に伝えた欲求が無視された場合、怒りの感情は増幅されやすいです。
欲求が伝わっていない場合
欲求を伝えていない場合、怒りは生じるものの、伝達済みの場合ほど強い怒りにはならないことが多いです。
伝えていない場合は「相手が知らなかったかもしれない」と考えやすいため、怒りが抑えられる傾向があります。
5. 自分でできる対処法:怒りを和らげるためのステップ
怒りは誰にでも起こる自然な感情ですが、強い怒りが続くと心身への負担が増し、健康にも悪影響を及ぼすことがあります。
ここでは、怒りが生じたときに自分で実践できる、怒りを和らげるための具体的な対処法をステップごとにご紹介します。
ステップ 1. 怒りの感情を認識する
怒りをコントロールする最初のステップは、まず自分が「怒り」を感じていることを素直に認めることです。
怒りが湧き上がったときに、その感情に気づかずに反射的に行動してしまうと、後で後悔するような言動に繋がりやすくなります。
怒りを感じた瞬間に「今、自分は怒っている」と自分自身に確認することで、感情を冷静に受け止める準備ができます。
ポイント:自分の感情に名前をつけて「今、私は怒っている」と心の中で言葉にすることは、怒りを客観的に見つめるために効果的です。このプロセスを通じて、怒りに支配されるのではなく、その感情を理解し、管理しやすくなります。
ステップ 2. 怒りの原因を掘り下げる
怒りを認識した後は、その原因を掘り下げてみましょう。
怒りがどこから来ているのかを理解することは、適切に対処するために欠かせません。
たとえば、「相手が約束を破ったから」や「自分の意見が尊重されなかったから」といった具体的な理由を見つけることで、怒りの根本にある欲求や期待が何だったのかを知ることができます。
自分に質問してみる:「自分は何を期待していたのか?」「何が具体的に不満だったのか?」などと自問自答することで、怒りの背景にある期待や欲求に気づくことができます。自分の怒りが相手の行動に対する反応なのか、それとも自分自身の思い込みによるものかを考えることも有効です。
ステップ 3. 怒りを和らげる呼吸法を試す
怒りを感じたときは、体が緊張し、心拍数が上がりやすくなります。
そのため、深呼吸をして心と体をリラックスさせることが効果的です。
呼吸法は、怒りを鎮めるための最もシンプルで即効性のある方法の一つです。
ゆっくりと深い呼吸をすることで、自律神経が安定し、冷静に考えやすくなります。
やり方:4秒かけて鼻からゆっくり息を吸い、4秒止めた後、口から8秒かけてゆっくり吐き出します。これを数回繰り返すことで、怒りで高ぶった神経が落ち着き、リラックスした状態を取り戻しやすくなります。
ステップ 4. 自分の怒りの感情を書き出す
怒りの原因や感情を紙に書き出すことも非常に効果的です。
書くことで頭の中が整理され、冷静に自分の気持ちを振り返ることができるからです。
ノートや紙に怒りの原因や自分が感じていることを素直に書き出すことで、客観的に状況を見つめ直せます。
ポイント:自分がなぜ怒っているのか、どのように感じているのかを書き出し、その状況を「どのように改善できるか」なども考えてみると良いでしょう。怒りを解消するための具体的な行動に繋げられることもあります。
ステップ 5. 自分の欲求を整理し、伝え方を工夫する
怒りの感情は、満たされていない欲求や期待から生じることが多いです。
そのため、自分の欲求がどのようなものであるかを整理し、相手に適切に伝える方法を考えることが大切です。
攻撃的に伝えるのではなく、感情を穏やかに表現し、冷静に欲求や期待を相手に伝えるようにします。
伝え方の工夫:「あなたはいつも~しない」などの否定的な言い方ではなく、「私は~してもらえると助かる」と自分の希望を主語にして伝えると、相手に対して柔らかく伝えられます。自分の感情や欲求を伝える際には、なるべく「私は~と感じている」という表現で、相手に責められていると感じさせないようにしましょう。
ステップ 6. 怒りが収まらないときは距離を置く
どうしても怒りが収まらない場合は、その場から一度離れたり、時間を置いたりして物理的な距離を取ることも重要です。
特に、すぐに解決できない問題や関係性の場合、無理にその場で怒りを解消しようとせず、少し離れてクールダウンする時間を持つことで冷静さを取り戻しやすくなります。
やり方:場所を移動したり、散歩やウォーキングをしてみるのも良いでしょう。体を動かすことで気分転換になり、怒りに対する冷静な視点を取り戻すことができます。また、時間が経てば気持ちが落ち着き、建設的に状況を考えられるようになることも多いです。
ステップ 7. 感謝やポジティブな視点を見つける
怒りに囚われすぎると、否定的な感情がさらに増幅してしまうことがあります。
そこで、意識的に感謝できることやポジティブな面に目を向けることで、心のバランスを取り戻しやすくなります。
怒りの中にも学びや気づきがあったことを振り返ると、状況を別の視点で捉えられるようになります。
やり方:その出来事から得られた教訓や成長できたポイントを探してみましょう。また、普段の生活で感謝していることを思い出し、心の中で感謝の気持ちを感じることが、怒りを和らげる一助になります。
これらのステップを実践することで、怒りが生じたときに冷静さを取り戻し、適切に対応することが可能になります。怒りを一時的に抑え込むのではなく、その感情を丁寧に扱い、自己理解やコミュニケーション力の向上に役立てていきましょう。
6. 結論
怒りの感情は、人間関係の中で誰もが感じる自然な反応です。
大切なのは、その怒りがどこから来るのか、何を求めているのかを理解し、健康的に表現する方法を身につけることです。
人間関係の中で自分の欲求や期待を相手に伝えることは、時に勇気が必要ですが、それによってより深い信頼関係や共感が生まれます。
もし、日々の対人関係で繰り返される怒りやフラストレーションに悩んでいるなら、カウンセリングサービスでお話をお聞かせください。
神戸、芦屋、西宮のカウンセリングサービスでは、皆さまがご自身の感情を正しく理解し、相手とのより良い関係づくりをサポートしています。
日常の人間関係をより豊かで穏やかなものにするため、一緒に前向きな一歩を踏み出しましょう。
参考論文
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こころのケア心理カウンセリングRoom
兵庫県芦屋市浜芦屋町1-27 サニーコート浜芦屋302号
電話番号 : 090-5978-1871
兵庫で人間関係の不安を緩和
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この記事の執筆者
駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)
心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。