カウンセリングが目指す精神疾患と健康のバランスとは?
2024/11/18
みなさん、こんにちは。
神戸市や芦屋市、西宮市などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。
さて、現代社会では、「心の健康」が注目される一方で、「精神疾患」への理解がまだ十分でないこともあります。
「精神疾患がないこと=健康である」と思われがちですが、実際にはそうではない場合も少なくありません。
この記事では、「Mental Illness and Mental Health: The Two Continua Model Across the Lifespan」という研究をもとに、精神疾患と精神的健康の関係を「二元連続体モデル」という新しい視点から考えます。
神戸・芦屋・西宮エリアでカウンセリングを検討されている方にも役立つ情報をお届けします。
精神疾患と精神的健康を分けて考える理由:二元連続体モデルとは?
従来、精神疾患と精神的健康は1つの連続体上で理解されてきました。
この考え方では、精神疾患が「病気」の状態であり、そこから離れるほど「健康」に近づくとされていました。
しかし、この単一連続体モデルには限界があります。
精神疾患がない人でも幸福感や満足感が低い場合があり、また精神疾患を抱えている人でも精神的に健康な状態を維持していることが観察されるためです。
このような背景から提唱されたのが、「二元連続体モデル(Two Continua Model)」です。
このモデルは、精神疾患と精神的健康を2つの独立した軸として捉え、それぞれを別々に評価することで、個人のメンタルヘルスの全体像をより正確に理解することを目指しています。
1. 二元連続体モデルの基本的な構造
独立した2つの軸
二元連続体モデルでは、以下の2つの軸が独立して存在します。
精神的健康(Mental Health)
●高い精神的健康
幸福感や満足感、自己実現、社会的適応能力が高い状態を指します。
●低い精神的健康
不満感や無気力感、社会的な孤立感が強い状態を指します。
精神疾患(Mental Illness)
●重度の精神疾患
診断可能な精神疾患(例:うつ病、不安障害、統合失調症)で症状が重い状態。
●軽度または非該当
精神疾患の診断基準を満たさない、または症状が軽い状態。
2. 二元連続体モデルの特長
(1) 精神疾患がないこと=健康ではない
精神疾患が診断されていない人でも、幸福感が低かったり、社会的孤立感を感じている場合は「精神的健康が低い」と評価されます。
このような状態では、生活の質が低下し、長期的には精神疾患に発展するリスクもあります。
(2) 精神疾患があっても健康でいられる
一方、精神疾患を抱える人でも、ポジティブな感情や自己実現、社会的なつながりを持つことで、「精神的健康が高い」状態を維持することができます。
適切な治療や支援がある場合、この状態を保つことが可能です。
(3) 両軸を考慮することで個別のアプローチが可能
従来の単一連続体モデルでは、「精神疾患を治療すれば健康になる」と考えられていました。
しかし、二元連続体モデルでは、精神疾患の治療だけでなく、精神的健康を高めるためのアプローチも重要であることが強調されます。
3. 二元連続体モデルの意義と実践的な価値
(1) 精神疾患の治療に留まらない支援の必要性
二元連続体モデルは、従来の治療中心のメンタルヘルス支援に加え、精神的健康を高める介入の重要性を示しています。
たとえば、うつ病患者の治療では、薬物療法や心理療法を行うと同時に、趣味や社会的活動を通じたポジティブな経験を提供することが効果的です。
(2) 予防的アプローチの強調
精神疾患を発症していない人でも、精神的健康が低い場合には、予防的な介入が必要です。
例えば、孤独感を感じている人には、社会的なつながりを増やす活動が推奨されます。
このようなアプローチは、精神疾患の発症リスクを下げるとともに、生活の質を向上させます。
(3) メンタルヘルスの多面的な理解
精神的健康と精神疾患を独立した軸で評価することで、メンタルヘルスの状態をより多面的に理解できます。
このモデルを用いることで、治療の優先順位や介入の方法を個別に設計することが可能になります。
二元連続体モデルを日常生活に活かす方法
二元連続体モデルは、精神疾患の治療と精神的健康の促進が独立した概念であり、両方を同時に重視する必要があると提唱しています。
このモデルは、日常生活においても応用可能であり、心の健康をより良い状態に保つための具体的なアプローチを提供します。
以下では、このモデルを基に日常生活で実践できる方法を詳細に解説します。
1. 自己評価を行い、現状を把握する
(1) 精神疾患のチェック
精神疾患の兆候やリスクを理解することが、早期介入に繋がります。
以下のような質問で自己評価を行ってみましょう。
●最近、日常生活に支障をきたすほどの不安や抑うつ感を感じることはありますか?
●睡眠や食欲に大きな変化がありますか?
(2) 精神的健康の評価
精神的健康は、幸福感や満足感、社会的つながりの質を指します。
以下のような質問を用いると、自身の精神的健康を評価できます。
●日々の生活に楽しさや充実感を感じていますか?
●親しい人との関係性に満足していますか?
●自分自身の成長や目標達成に向けて努力していますか?
●自己評価を通じて、自分がどの軸において改善が必要かを把握することが重要です。
2. 精神疾患のリスクを減らす行動を取る
精神疾患のリスクを軽減するためには、以下のような行動を取り入れることが有効です。
(1) ストレス管理
ストレスは多くの精神疾患の引き金となるため、適切に管理することが重要です。
リラクゼーション法
ヨガや深呼吸、瞑想などを日常に取り入れ、心を落ち着かせる習慣を持つ。
時間管理
仕事や家事などのタスクを整理し、過度な負担を避ける。
(2) 健康的な生活習慣の維持
体と心は密接に関連しているため、生活習慣の改善が精神疾患の予防につながります。
十分な睡眠
1日7~8時間の質の良い睡眠を確保する。
バランスの取れた食事
栄養価の高い食事を意識し、特にオメガ3脂肪酸やビタミンDがメンタルヘルスに良い影響を与えるとされています。
運動
適度な運動はストレス解消や気分の改善に役立ちます。
(3) 専門的なサポートの活用
気になる症状がある場合は、早めに専門医やカウンセラーに相談することが重要です。
専門医への相談やカウンセリングサービスは、診断や治療の第一歩として効果的です。
3. 精神的健康を高めるための取り組み
精神疾患のリスクを低下させるだけでなく、精神的健康を積極的に高めることも必要です。
以下の具体的な方法があります。
(1) 社会的つながりを深める
人間関係の質は精神的健康に大きな影響を与えます。
親しい人と過ごす時間を増やす
家族や友人と定期的に会う、電話をするなどのつながりを強化する。
地域活動への参加
ボランティアや趣味のグループに参加し、新たな人間関係を築く。
(2) 自己実現を追求する
目標を持ち、それに向かって努力することは、満足感を高める重要な要素です。
短期目標と長期目標の設定
達成可能な小さな目標から始め、徐々に大きな目標に向かう。
新しいスキルを学ぶ
学びや挑戦を通じて自己成長を実感する。
(3) 日常に楽しみを取り入れる
ポジティブな感情を増やすためには、日常生活に喜びを感じる活動を組み込むことが重要です。
趣味やレジャー活動
絵を描く、音楽を聴く、旅行に行くなど、自分が楽しめる活動を取り入れる。
自然との触れ合い
公園を散歩したり、自然の中でリフレッシュする。
4. 二方向のアプローチを実践する
二元連続体モデルの大きな特長は、精神疾患の治療と精神的健康の促進を同時に行うことを強調している点です。
この考え方を日常生活に取り入れる方法を具体的に紹介します。
(1) 症状に応じた専門家の支援
精神疾患が疑われる場合、早期に治療を受けることが大切です。
適切な治療を受けながら、日常生活で精神的健康を高める活動を続けることで、より早い回復が期待できます。
(2) 心の健康を促進する環境作り
自分の周囲に精神的健康を支える環境を整えることも重要です。
サポートシステムの構築
信頼できる友人や家族との関係を深め、困ったときに相談できる体制を作る。
安心できる場所を確保
自宅や職場に、リラックスできる空間を用意する。
5. 日常生活でのセルフケアの実践例
セルフケアは、二元連続体モデルを日常生活に取り入れるための基本的なツールです。
以下の具体的な例を参考にしてください。
(1) 朝のルーチン
・朝の散歩や軽いストレッチで気分をリフレッシュ。
・前日のポジティブな出来事を振り返り、今日の目標を立てる。
(2) 仕事中の工夫
・定期的な休憩を取り、ストレスを溜め込まないようにする。
・職場の同僚と積極的にコミュニケーションをとる。
(3) 就寝前のリラックス
・スマホを控え、読書や瞑想でリラックス。
・感情や気持ちを日記に書き留める。
二元連続体モデルは、日常生活の中で精神疾患の治療と精神的健康の促進を並行して行うことの重要性を教えてくれます。
このモデルを活用することで、単なる「病気の治療」に留まらず、心の健康を積極的に育む生活が実現可能です。
もし、自分のメンタルヘルスを見直したい、または改善したいと考えているなら、神戸、芦屋、西宮のカウンセリングサービスをぜひご利用ください。
専門的な視点とサポートで、あなたの心の健康をより良いものにするお手伝いをいたします。
参考論文
Mental illness and mental health: The two continua model across the lifespan
----------------------------------------------------------------------
こころのケア心理カウンセリングRoom
兵庫県芦屋市浜芦屋町1-27 サニーコート浜芦屋302号
電話番号 : 090-5978-1871
兵庫でメンタルケアを実施
----------------------------------------------------------------------
この記事の執筆者
駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)
心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。