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PTSDとうつ病の悪循環~神戸、芦屋、西宮のカウンセリングの実例より~

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PTSDとうつ病の悪循環とは?

PTSDとうつ病の悪循環とは?

2024/12/24

みなさん、こんにちは。

神戸市や芦屋市、西宮市などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。

 

「事故や事件、災害の記憶が消えずに苦しい」「突然不安に襲われ、気持ちが沈んでしまう」

 

…そんな経験をしていませんか?

 

心に深い傷を負うトラウマは、時に心的外傷後ストレス障害(PTSD)や抑うつ(うつ病)を引き起こします。

 

この状態は一時的なものではないため、適切なケアが必要です。

 

この記事では、最新の研究論文「Prospective Study of Posttraumatic Stress Disorder and Depression Following Trauma」を基に、PTSDとうつ病の関係や治療法について詳しく解説します。

 

1. トラウマ後のPTSDとうつ病—発症のメカニズムを詳細に解説

 

トラウマ(外傷体験)は、心に深い傷を残し、心的外傷後ストレス障害(PTSD)や抑うつ(うつ病)を引き起こす可能性があります。

 

これらは互いに関連し合い、発症や悪化のメカニズムにおいて共通する特徴を持っています。

 

ここでは、最新の研究を踏まえて、その発症メカニズムを詳しく解説します。

 

1-1. トラウマが脳に与える影響

 

トラウマ体験は脳の働きに直接的な影響を与えます。特に以下の3つの脳領域が関係しています。

 

① 扁桃体(感情の司令塔)

 

扁桃体は、恐怖や危険を感知し、危機的状況に迅速に反応する役割を果たします。

 

トラウマ後は扁桃体の過活動が起こり、危険が去った後でも警戒状態が続くため、PTSD特有のフラッシュバックや過覚醒状態を引き起こします。

 

さらに、この過活動が続くと、恐怖や不安を繰り返し感じることで、抑うつ症状の発症リスクが高まります。

 

② 海馬(記憶の整理とストレス管理)

 

海馬は記憶を整理し、ストレスに対処する役割を持っています。

 

トラウマ体験により、海馬が萎縮することが確認されており、この結果、記憶の整理がうまくいかず、フラッシュバックや悪夢としてトラウマが再生されます。

 

記憶が断片的になることで「トラウマが現在も続いている」という錯覚を生み出し、不安と抑うつ感が悪化します。

 

③ 前頭前野(理性的判断と感情制御)

 

前頭前野は感情のコントロールや論理的判断を司ります。

 

PTSDやうつ病の患者では、前頭前野の機能低下が確認されています。これにより、恐怖や悲しみを抑える力が弱まり、ネガティブな思考や行動が強化されます。

 

1-2. 神経伝達物質のバランスの乱れ

 

トラウマは、脳内の神経伝達物質に異常をもたらし、情動調節を難しくします。

 

① セロトニンの減少(気分や幸福感の低下)

 

セロトニンは「幸せホルモン」と呼ばれ、気分の安定や安心感をもたらします。

 

トラウマ後にはセロトニンの分泌が減少し、抑うつ感や不安感、無気力感を引き起こします。

 

② ノルアドレナリンの過剰分泌(過覚醒状態)

 

ノルアドレナリンはストレス反応を引き起こし、危険を回避する役割を持ちます。

 

トラウマ後はこのホルモンが過剰に分泌されることで、常に警戒モードが続きます。結果として、過覚醒や不眠、集中力の低下を引き起こします。

 

③ ドーパミンの減少(意欲や喜びの喪失)

 

ドーパミンは、喜びや報酬を感じる神経伝達物質です。

 

PTSDやうつ病ではドーパミンの分泌が減少し、興味や喜びの喪失、無気力感が顕著になります。

 

1-3. ストレスホルモンの影響

 

トラウマは、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌異常を引き起こします。

 

① コルチゾールの過剰分泌と脳へのダメージ

 

急性ストレス時にはコルチゾールが大量に分泌され、身体を危機的状況から守ろうとします。

 

しかし、トラウマが繰り返されるとコルチゾールが慢性的に過剰分泌され、海馬の萎縮や前頭前野の機能低下を招きます。

 

② コルチゾールの低下とストレス耐性の弱化

 

長期的なストレスやPTSDでは、コルチゾールの分泌が逆に低下し、ストレスに対する耐性が弱まります。

 

これが慢性的な不安感や抑うつ状態を引き起こす原因になります。

 

1-4. 心理的・環境的要因の影響

 

PTSDやうつ病は、トラウマの内容や環境要因によって発症リスクが高まります。

 

① トラウマの重症度

 

命の危険を感じる体験や長期的な虐待は、より強い心理的ダメージを与え、発症リスクを高めます。

 

② 社会的サポートの欠如

 

家族や友人からのサポートが乏しい場合、孤立感や無力感が強まり、症状が悪化します。

 

③ 過去の心理的トラウマ

 

過去にトラウマ経験がある場合、新たなトラウマが既存の傷を深め、発症率が高まります。

 

1-5. PTSDとうつ病の悪循環モデル

 

最新の研究では、PTSDとうつ病が互いに影響し合う以下のような悪循環モデルが示されています。

 

(1)トラウマによってPTSDが発症。

  ↓

(2)PTSDの症状(再体験、回避行動)がストレスや社会的孤立を生む。

  ↓

(3)孤立感や無力感が抑うつを引き起こす。

  ↓

(4)抑うつによって回復への意欲が低下し、PTSDが慢性化。

 

この悪循環を断ち切るためには、早期介入と包括的な治療アプローチが必要です。

 

2. PTSDとうつ病の発症と持続期間—症状の経過と長期的影響

 

トラウマ後に発症する心的外傷後ストレス障害(PTSD)や抑うつ(うつ病)は、発症時期や持続期間に個人差があるものの、多くの場合は相互に関連しながら進行します。

 

ここでは、それぞれの症状がどのように現れ、どれくらいの期間続くのかを詳しく見ていきます。

 

2-1. PTSDの発症プロセス

 

1. 急性ストレス反応とPTSDへの移行

 

トラウマ体験直後には、ほとんどの人が強いショックや恐怖を感じます。

 

この段階では、急性ストレス反応(ASR)として以下の症状が現れることがあります。

 

・恐怖やパニック感

・現実感の喪失や混乱

・不眠や悪夢

・身体的な過覚醒(動悸や発汗)

 

これらの反応は正常なストレス反応ですが、1か月以上持続し、日常生活に支障をきたす場合はPTSDと診断されます。

 

2. PTSDの発症時期と経過

 

研究によると、PTSDは以下のようなタイムラインで発症することが多いです。

 

・発症率: トラウマ経験者の約25〜30%が1か月以内にPTSDを発症します。

 

・早期発症: 多くの場合、トラウマ直後から数週間以内に症状が現れます。

 

・遅発性PTSD: 一部の人では、数か月から数年後に症状が突然現れることがあります。

 

3. PTSDの持続期間

 

PTSDは適切な治療を受けない場合、慢性化しやすい障害です。

 

・短期間で回復するケース: 軽度のPTSDは、3〜6か月以内に自然回復する場合もあります。

 

・慢性化するケース: トラウマの重さや社会的支援の欠如によっては、数年単位で症状が続くことがあります。

 

・再発するリスク: 一度回復した後も、新たなストレスやトラウマによって再発することがあります。

 

2-2. 抑うつの発症プロセス

 

1. PTSDからうつ病への移行

 

PTSDは、トラウマ体験に対する強いストレスと心理的負担によって発症しますが、この状態が続くことで抑うつ症状が発展しやすくなります。

 

・PTSDによる回避行動やフラッシュバックが、孤立感や無力感を生み出す。

 

・これにより、自信の喪失や絶望感が深まり、抑うつ症状へと進行する悪循環が生じます。

 

研究では、PTSDを発症した人の約20〜25%が6か月以内にうつ病を併発すると報告されています。

 

2. 抑うつの発症時期と経過

 

抑うつの発症は以下のようなパターンを示します。

 

・急性発症: トラウマ後1〜3か月で急激に抑うつ感が強まるケース。

 

・遅発性発症: PTSDが慢性化する中で、6か月以上経過してから発症するケース。

 

3. 抑うつの持続期間

 

抑うつの持続期間は個人差がありますが、PTSDと併存する場合は以下のような特徴があります。

 

・治療を受けない場合: 数か月から数年にわたって症状が続く可能性があります。

 

・慢性化しやすいケース: 社会的孤立や強い罪悪感が続くと、症状が長期化する傾向があります。

 

・再発リスク: 一度回復しても、ストレスや新たなトラウマによって再発しやすい傾向があります。

 

2-3. PTSDとうつ病の併発による影響

 

1. 悪循環モデル

 

PTSDとうつ病は互いに影響し合い、以下のような悪循環を生じます。

 

トラウマによるフラッシュバックや過覚醒(PTSDの症状)
 ↓

孤立感や無力感の強化(抑うつの症状)
 ↓

回避行動の悪化(PTSDの慢性化)
 ↓

興味や喜びの喪失(うつ病の悪化)

 

この悪循環を断ち切るためには、PTSDとうつ病を統合的に治療するアプローチが重要です。

 

まとめ

 

トラウマは心と体に深い影響を与え、心的外傷後ストレス障害(PTSD)うつ病の発症リスクを高めます。

 

これらの障害は、脳の構造や神経伝達物質のバランスに変化をもたらし、不安感や抑うつ感を引き起こします。

 

また、PTSDとうつ病は互いに悪循環を形成し、長期化しやすい特徴があります。

 

しかし、最新の研究と臨床実践では、適切な治療を受けることで多くの人が回復できることが示されています。

 

特に認知行動療法(CBT)マインドフルネス療法は、症状の緩和と心の安定に効果的です。

 

また、薬物療法と心理療法を組み合わせた統合的アプローチも回復を促進します。

 

そのため、専門医や心理カウンセラーによる丁寧なサポートを受けることで、不安や抑うつからの回復への道を踏み出すことが期待できます。

 

そのため一人で悩まず、安心して相談できる環境を活用しながら、心と体をケアしていきましょう。

 

参考論文

Prospective Study of Posttraumatic Stress Disorder and Depression Following Trauma

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この記事の執筆者

駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)

心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。

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