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抑うつ障害とうつ病の併存:併存症の理解とケアについて~神戸、芦屋、西宮のカウンセリングサービスの実例より~

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抑うつ障害とうつ病の併存:併存症の理解とケアについて

抑うつ障害とうつ病の併存:併存症の理解とケアについて

2025/01/04

みなさん、こんにちは。

神戸市や芦屋市、西宮市などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。

 

さて、不安障害とうつ病は、単独で発症することもありますが、約70%の患者が両方の症状を併発していると言われています。これを「併存症」と呼びます。

 

併存症では、症状が重なり合うために診断や治療が難しく、回復までに時間がかかることがあります。

 

しかし、適切なアプローチを取れば、症状を緩和し、安定した生活を取り戻すことは十分に可能です。

 

この記事では、論文「Comorbidity of depressive and anxiety disorders: challenges in diagnosis and assessment」を参考にしながら、不安とうつの併存症について詳しく解説します。

 

1. 不安障害とうつ病の併存とは?

 

1-1. 不安障害とうつ病の併存率はどのくらい高いのか?

 

不安障害とうつ病は、それぞれ単独で発症することもありますが、併存するケースが非常に多いことが知られています。

 

研究によれば、不安障害を抱えている方の約70%がうつ病を併発していると報告されています。

 

また、うつ病を抱えている方の50%以上が不安症状を抱えているとされています。

 

この併存の高さは、両者が共通の心理的メカニズムや生物学的要因を持つためと考えられています。

 

心理的要因

ネガティブな思考パターンやストレスへの過剰反応が両者に共通。

 

生物学的要因

セロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質のバランス異常。

 

遺伝的要因

家族内にうつ病や不安障害の既往歴がある場合、併存リスクが高まる。

 

1-2. なぜ不安障害とうつ病は併存しやすいのか?

 

不安障害とうつ病は、互いに密接な関連を持ち、悪循環を生み出す特徴があります。

 

1. 似通った症状の重なり

 

不安障害とうつ病は、共通する症状が多いため、併存しやすくなります。

 

共通する症状

・集中力の低下
・疲労感や倦怠感
・睡眠障害(過眠または不眠)
・イライラ感や焦燥感

 

2. ストレス応答の問題

 

ストレスに対する過敏な反応が、不安感を高めると同時に気分の落ち込みを引き起こします。

 

「明日の会議で失敗するかもしれない」という強い不安が、繰り返し頭の中で反芻されることで自己否定につながり、抑うつ感が強まる。

 

3. 行動の回避と活動の低下

 

不安障害による回避行動が、うつ病の症状を悪化させることもあります。

 

「人前に出るのが怖い」という理由で社交を避けると、孤独感や自己肯定感の低下が生じ、抑うつを強める。

 

1-3. 不安とうつの併存が与える影響

~悪循環の連鎖~

 

不安障害とうつ病が併存する場合、それぞれが互いに影響を与え合い、症状が悪化する傾向があります。

 

この悪循環が続くことで、以下のような影響が見られます。

 

1. 症状の重症化

 

不安による焦燥感や恐怖心が強まると、抑うつ感が増し、無気力状態に陥る。

→症状が重くなることで、社会的機能の低下や身体症状(頭痛、胃腸障害)なども悪化しやすくなります。

 

2. 社会的機能の低下

 

人付き合いを避けることで、孤立感や孤独感が強まり、抑うつの悪化につながります。

 

また、職場でのパフォーマンス低下や欠勤、休職のリスクを高めます。

 

3. 治療反応性の悪化

 

併存症では、単独の疾患と比較して薬物療法や心理療法の効果が出にくい場合があります。

 

薬の種類や量の調整が難しく、副作用への懸念から治療が中断されるケースもあります。

 

また、心理療法においても、症状の多様性からアプローチ方法を慎重に選ぶ必要があります。

 

2. 治療の難しさ

~併存症に適したアプローチとは?~

 

不安障害とうつ病の併存症は、単一の疾患に比べて治療が複雑であり、専門的なアプローチが求められます。

 

両方の症状が互いに悪影響を与えるため、包括的かつ個別化された治療法が重要です。

 

ここでは、併存症の治療における課題と有効なアプローチについて詳しく解説します。

 

2-1. 治療の難しさ

~併存症特有の課題~

 

1. 症状の重なりによる診断の難しさ

 

不安障害とうつ病は共通する症状(疲労感、集中力の低下、不眠など)が多く、どちらの症状が主因か特定するのが困難です。

 

「朝から不安で動けない」という訴えが、不安による過緊張なのか、うつによる無気力なのかを判別する必要がある。

 

こうした場合、治療やカウンセリングを始めても、どちらの症状を優先的に緩和すべきかの判断が重要になります。

 

2. 薬物療法の調整が複雑

 

併存症では、不安と抑うつの両方に対応する必要があるため、複数の薬剤の併用やバランス調整が求められます。

 

抗うつ薬(SSRIなど)

 抑うつと不安の両方に効果が期待できますが、副作用のコントロールが必要となります。

 

抗不安薬(ベンゾジアゼピン系)

ある程度早い期間で効果が見られる傾向がありますが、医師による服薬管理が重要となります。

 

気分安定薬や抗精神病薬

特定のケースでは補助的に使用されるが、こちらも副作用のコントロールが必要となります。

 

3. 心理療法への反応のばらつき

 

併存症患者は、単一疾患に比べて心理療法への反応にばらつきがあります。

 

不安の強い方の場合

すぐに治療効果を実感しづらく、粘り強いケアが求められます。

 

抑うつの強い方の場合

行動を起こす意欲が湧きにくく、行動活性化や認知行動療法のハードルを調整する必要があります。

 

3.効果的な治療アプローチ

~薬物療法と心理療法の組み合わせが有効~

 

不安障害とうつ病の併存症に対処するためには、薬物療法と心理療法を組み合わせたアプローチが効果的であることが研究によって示されています。

 

それぞれの治療法が補完し合い、症状の緩和と再発予防に高い効果を発揮します。

 

ここでは、その具体的な治療アプローチについて詳しく解説します。

 

1. 薬物療法—症状の緩和と安定化をサポート

 

薬物療法は、急性期の強い症状を緩和し、気分や不安のバランスを整えるために有効です。

 

特に、不安と抑うつが重なり合う併存症では、神経伝達物質の調整が重要な役割を果たします。

 

薬物療法のポイント

 

・初期段階では抗不安薬を用いて急性症状を抑え、その後、抗うつ薬による長期的な改善を目指す場合が多い傾向があります。

 

・薬剤の副作用や相互作用を注意深くモニタリングしながら、必要に応じて調整することが大切です。

 

・症状の安定化後は、薬物療法に加えて心理療法を併用する事が効果的です。

 

2. 心理療法:根本的な回復と再発予防をサポート

 

心理療法は、患者の思考や行動パターンに働きかけることで、根本的な改善を促し、長期的な安定を支える治療法です。

 

薬物療法で症状を落ち着かせた後、心理療法を併用することで再発予防にも効果が期待できます。

 

(1)主な心理療法とその効果

 

認知行動療法(CBT)

 

・ネガティブな思考を柔軟に修正し、不安や抑うつの原因となる悪循環を断ち切ります。

 

・具体的には、行動活性化や思考の再評価を通じて、行動面と認知面の両方に働きかけます。

 

マインドフルネス認知療法(MBCT)

 

・今この瞬間に集中する力を高め、不安や抑うつに巻き込まれない対処法を学びます。

 

・特に、再発予防やストレス管理に有効です。

 

対人関係療法(IPT)

 

・対人関係の改善を通じてストレスを軽減し、不安や抑うつを緩和します。

 

・コミュニケーションスキルの強化にも役立ちます。

 

(2)心理療法のポイント

 

・個別の症状や課題に応じて適切な療法を選択し、無理なく続けられる計画を立てます。

 

・薬物療法と並行して心理療法を進めることで、症状の緩和と根本的な改善を同時に目指します。

 

・回復段階では、再発予防やストレス対処スキルを強化し、長期的な安定を支えます。

 

3. 薬物療法と心理療法の組み合わせによる相乗効果

 

不安障害とうつ病の併存症に対しては、薬物療法と心理療法を組み合わせることで以下のような相乗効果が期待できます。

 

(1)即効性と持続性の確保

 

・薬物療法は即効性が高く、急性症状の緩和に適しています。一方、心理療法は持続的な改善と再発予防をサポートします。

 

(2)認知と行動の悪循環を断ち切る
・心理療法によってネガティブ思考や行動回避を修正し、薬物療法で脳内の神経伝達物質を調整することで、思考と行動の両方にアプローチします。

 

(3)再発予防
・心理療法を通じてストレス対処法や問題解決スキルを身につけることで、将来的な再発リスクを軽減します。

 

まとめ

~併存する不安とうつに向き合い、回復への一歩へ~

 

不安障害とうつ病の併存は、診断や治療が複雑になることから、多くの方が対処に苦労する課題です。

 

しかし、適切なアプローチを取ることで、症状の改善や安定した生活を取り戻すことは十分に可能です。

 

1. 不安とうつの併存は珍しくない

 

不安障害とうつ病は多くの人に併存しやすく、互いに症状を悪化させる悪循環に陥ることがあります。

 

放置すると慢性化や再発リスクが高まるため、早期介入が重要です。

 

2. 薬物療法と心理療法の組み合わせが効果的

 

薬物療法は、強い不安や抑うつの症状を和らげ、心理療法は認知や行動の改善を通じて根本的な回復をサポートします。

 

この統合アプローチは、併存症に特に有効であることが研究によって示されています。

 

3. 継続的なサポートとセルフケアが鍵

 

治療効果を持続させるためには、カウンセリングを通じたフォローアップや、マインドフルネスや行動活性化を取り入れたセルフケアが大切です。

 

4.一人で悩まずに専門家と一緒に解決策を見つけましょう

 

不安や抑うつの併存は、決して乗り越えられないものではありません。

 

専門医の治療やカウンセリングサービスを通じて、並存症を抱えている方のの症状に合わせたサポートを受けることができます。

 

「どうしても気分が晴れない」「不安でいっぱいになる」と感じたら、一度専門家に相談してみましょう。

 

参考論文

Comorbidity of depressive and anxiety disorders: challenges in diagnosis and assessment

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この記事の執筆者

駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)

心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。

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