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双極性障害の初期兆候とは~神戸市、芦屋市、西宮市のカウンセリングの実例より~

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双極性障害の初期兆候とは

双極性障害の初期兆候とは

2025/01/23

みなさん、こんにちは。

神戸市や芦屋市、西宮市などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。

 

さて双極性障害は、躁状態と抑うつ状態を繰り返す精神疾患であり、適切な治療と管理が求められる疾患です。

 

しかし、その症状は初期段階では気づきにくく、見逃されることも少なくありません。初期兆候を理解し、早期に適切な対応を取ることで、症状の進行を抑え、生活の質を維持することが可能です。

 

今回は、「Early stages in the development of bipolar disorder」という論文をもとに、双極性障害の初期段階の特徴や兆候、早期治療が果たす役割について詳しく解説します。

 

双極性障害の初期兆候

~見逃されがちなサインと初期症状~


双極性障害は、躁状態(または軽躁状態)と抑うつ状態が交互に現れる気分障害です。

 

しかし、特に初期段階では症状が軽度である場合が多く、そのため診断が遅れることが少なくありません。

 

ここでは、双極性障害の初期兆候と、それが見逃されやすい理由について詳しく解説します。

 

1.なぜ双極性障害の初期兆候は見逃されやすいのか?


双極性障害は、その性質上、症状が複数の要因に関連しており、他の精神疾患やストレス要因と混同されることがよくあります。

 

具体的な理由として以下の点が挙げられます

 

● 軽躁状態の見過ごし


軽躁状態はエネルギーが高まり、活動的でポジティブな面が強調されることが多いため、異常と認識されにくい傾向があります。

 

特に「よく働く」「活発だ」と周囲が好意的に評価する場合、問題が隠れたままになることがあります。

 

● 抑うつ症状への偏り


初期段階では、抑うつエピソードだけが目立つ場合があります。

 

その結果、単極性うつ病として誤診され、双極性障害特有の治療が遅れることがあります。

 

● 環境要因の影響


ストレスフルな出来事や生活の変化が症状を引き起こすきっかけとなるため、「ただの疲れ」「一時的なストレス」として片付けられることがあります。

 

● 自分自身の病識の欠如


双極性障害を抱える方が、自身の気分の変動や行動を「性格の一部」と捉え、専門的な支援を求めないケースもあります。

 

2.双極性障害の初期兆候


初期段階で見られる双極性障害の症状は微妙であることが多く、見逃されやすい傾向があります。

 

しかし、早期にこれらの兆候に気づくことで、適切な診断と治療を受けられる可能性が高まります。

 

以下、そのチェックリストです

 

● 軽躁状態の兆候

 

エネルギーの急上昇
→通常よりも活発になり、過剰に活動的になる。
睡眠の減少
→睡眠時間が極端に少なくても疲れを感じない。
衝動的行動
→計画性のない行動や過剰な支出、リスクの高い意思決定を行う。
自己肯定感の高まり
→自分が特別な存在だと感じたり、アイデアが湧き出る感覚に陥る。


● 抑うつ状態の兆候

 

気分の落ち込み
→無力感や絶望感が強まり、日常の活動に興味を持てなくなる。
疲労感と無気力
→小さなタスクでも重荷に感じる。
集中力の低下
→仕事や学業でのパフォーマンスが低下する。
社会的孤立
→人との関わりを避けるようになる。


● 気分の不安定さ

 

急な気分変動
→些細なことで気分が急激に変わる。
過敏性
→周囲の行動や言葉に対して強いイライラや不満を感じる。

 

● その他の兆候

 

目標志向の変化
→突然、大きな目標を掲げる一方で、それに一貫性がない。
注意力散漫
→日常のルーチンが維持できなくなる。

 

論文が示す早期発見の重要性


双極性障害の早期発見は、症状の進行を抑え、双極性障害を抱えている方の生活の質を向上させるために極めて重要です。

 

この論文では、双極性障害の初期段階での診断と治療がいかに疾患の経過に影響を与えるかについて、多角的な視点から明らかにしています。

 

以下、その詳細を解説します。

 

1. 早期発見がもたらす治療効果の向上


双極性障害は、その性質上、再発を繰り返す疾患であり、未治療の期間が長いほど病状が悪化し、慢性化するリスクが高まります。

 

以下の理由から、早期発見が治療効果の向上に直結します

 

● 病態の固定化を防ぐ


未治療の期間が長引くと、脳内の神経回路に変化が生じ、気分エピソードの頻度や重症度が増す可能性があります。

 

早期に介入することで、これらの変化を最小限に抑えられます。

 

● 治療反応性の改善


初期段階で治療を開始することで、薬物療法や心理療法への反応が良好であることが報告されています。

 

治療が遅れると、治療抵抗性が高まる場合があります。

 

● 再発の予防


早期治療は、躁・軽躁エピソードや抑うつエピソードの再発を防ぎ、病状の安定を促進します。

 

2. 未治療期間の影響—臨床的観点からのリスク


未治療期間(Duration of Untreated Illness, DUI)が長い場合、以下のようなリスクが高まります:

 

精神的健康の悪化
→長期的な未治療状態では、抑うつ症状が重篤化し、自殺リスクが増加します。

 

社会的機能の低下
→適切な治療を受けないと、職業的、生産的な活動や対人関係が悪化する可能性が高まります。

 

身体的健康への影響
→未治療の双極性障害は、ストレスホルモンの増加や睡眠不足などを通じて身体的健康にも悪影響を及ぼします。


3. 論文が示す早期発見の意義


この論文では、早期発見の意義として以下のポイントを強調しています

 

予後の改善
→早期の診断と治療は、病気の長期的な進行を防ぎ、安定した日常生活を取り戻す鍵となります。

 

症状の悪化防止
→病状が進行する前に治療を始めることで、気分エピソードの深刻化を防ぐことができます。

 

包括的ケアの推進
→双極性障害の早期発見は、心理療法、薬物療法、家族支援を含む包括的なケアプランの構築を可能にします。

 

4. 臨床的および社会的インパクト


臨床的インパクト
早期発見により、治療への適応がスムーズになり、双極性障害を抱えている方の症状改善が期待できます。

再発予防プランも早い段階で作成可能です。

 

社会的インパクト
職場や家庭での役割を維持し、社会的孤立を防ぐことができるため、双極性障害を抱えるご本人だけでなく家族やコミュニティにも良い影響をもたらします。

 

~・~・~・~・~・~・~


双極性障害の早期発見は、双極性障害を抱えるご本人の生活の質向上に不可欠な要素です。

 

この論文が示すように、未治療の期間を短縮することは、病気の慢性化を防ぎ、治療効果を最大化するための第一歩です。

 

初期段階での兆候を見逃さず、適切な診断と治療を受けることが、双極性障害を抱えるご本人とその家族の明るい未来につながります。

 

専門的な医療サービスや心理カウンセリングは、こうした早期介入を支援する効果的な方法の一つです。

 

双極性障害を見落とさないためのコツ


双極性障害は、抑うつ症状や軽躁症状が複雑に絡み合うため、初期段階では見落とされやすい疾患です。

 

そのため、早期発見と適切な治療の開始が重要です。

 

以下では、双極性障害を見落とさないための具体的なポイントやコツについて解説します。

 

1. 病歴を深く掘り下げる


双極性障害の診断には、双極性障害を抱えるご本人の症状だけでなく、家族歴や過去の気分エピソードについての情報が重要です。

 

家族歴の確認

→双極性障害は遺伝的要因が強い疾患であるため、家族に双極性障害やうつ病、アルコール依存症などがある場合は注意が必要です。


過去の気分変動

→抑うつエピソードが中心であっても、過去にエネルギッシュで衝動的な行動が見られた場合、それが軽躁状態の可能性があります。


行動パターンの変化

→睡眠時間の変動や過剰な計画立案、突然の浪費など、気分変動に伴う行動のヒントを見逃さないことが大切です。


2. 軽躁状態の兆候に注意する


軽躁状態は、双極性障害の診断において見落とされがちです。

 

双極性障害を抱えるご本人や家族が「問題」と認識しない場合が多いため、以下の点を慎重に評価します。

 

異常な自信や多弁

→通常よりも話し方が速く、多弁になり、自信過剰な態度が見られることがあります。


睡眠の減少

→睡眠時間が短くても疲労感を訴えない場合、軽躁状態の兆候である可能性があります。


衝動的な行動

→無計画な買い物、過剰な飲酒、リスクの高い投資など、普段は見られない衝動的行動が出現することがあります。


3. 単極性うつ病との違いに着目する


双極性障害は、抑うつ症状が中心となる場合、単極性うつ病と混同されることがあります。

 

しかし、以下の点で違いがあるため注意が必要です。

 

治療反応の違い

→双極性障害の抑うつ症状は、抗うつ薬に対して治療反応が乏しい場合があります。むしろ症状を悪化させる可能性も。


エネルギーレベルの変動

→抑うつ状態から突然エネルギーが高まる変化が見られる場合、双極性障害の可能性を検討します。


4. 双極性障害を抱えるご本人の認識不足を補う質問の工夫


患双極性障害を抱えるご本人が自覚していない、または軽視している症状に気づくために、以下の質問を投げかけると有効です。

 

「ここ数カ月で特に元気がありすぎると感じたことはありますか?」
「突然アイデアが湧き出て、何かに夢中になることがありませんでしたか?」
「気分が高まったときに、後から後悔するようなことをした経験はありますか?」


5. 双極性障害を抱えるご本人の家族や周囲の意見を取り入れる


双極性障害を抱えるご本人が気づきにくい軽躁状態や行動の変化について、家族や友人から情報を集めることは診断精度を高める重要な手段です。

 

具体例

→家族に行動や気分の変動について尋ねる。
→周囲から見て「いつもと違う」と感じたエピソードを収集する。

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双極性障害を見落とさないためには、軽躁状態や行動の変化、家族歴などの詳細な情報収集が不可欠です。

 

また、双極性障害を抱えるご本人が自覚していない症状を掘り下げるための質問や観察が有効です。

 

早期発見は、適切な治療の開始だけでなく、双極性障害を抱えるご本人の日常生活の質を大きく向上させる第一歩となります。

 

医療サービスや心理カウンセリングを通じて、早期診断と治療に向けたサポートを提供することも重要な役割の一つです。

 

まとめ:双極性障害の初期兆候を見逃さず、適切な治療を


双極性障害は、抑うつと軽躁・躁状態が交互に現れる複雑な疾患であり、特に初期段階では見逃されがちです。

 

軽躁状態は本人や周囲が「問題」と認識しにくいため、早期発見には症状の詳細な把握と適切な評価が不可欠です。

 

1.論文の示唆から学ぶポイント

 

初期兆候を見逃さない

→軽躁状態のサインやエネルギーの変動、行動パターンの変化に注意を払いましょう。


リスクを軽減するための早期治療

→早い段階で適切な治療を開始することで、症状の慢性化や再発を予防できます。


包括的なアプローチ

→専門医やカウンセラーとの連携を通じて、医療と心理的サポートを統合した治療を進めることが有効です。


2.治療と支援の重要性


双極性障害を抱える方の生活の質を改善し、日常を取り戻すためには、継続的なケアが不可欠です。

 

診断に不安がある場合や、軽躁状態の可能性を感じた場合には、心理カウンセリングや専門医のサポートを活用することを検討してください。

 

 

双極性障害を正しく理解し、適切なケアを受けることで、より豊かで安定した生活への第一歩を踏み出しましょう。

 

参考論文

Early stages in the development of bipolar disorder

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この記事の執筆者

駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)

心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。

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