夫婦間の対立が子どもに及ぼす影響とは?~子供を守るために考えたいこと~
2025/01/25
みなさん、こんにちは。
神戸市や芦屋市、西宮市などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。
さて、家族内での夫婦のやり取りや対立は、どの家庭でも起こりうるものです。
しかし、それが子どもにどのような影響を及ぼすかというのは重要なテーマです。
というのは、夫婦間の問題は子供に対して深刻な影響を与えるからです。
そこでこのブログでは、「Children's Responses to Everyday Marital Conflict Tactics in the Home」という研究をもとに、夫婦間の対立が子どもの心に及ぼす影響や、子供の反応について解説します。
ここでは、子どもの健やかな成長をサポートするための具体的なヒントもお届けします。
家族全員がより良い関係を築くための参考になれば幸いです。
1. 夫婦間の対立が子どもに与える影響
夫婦間の対立は、単なる大人同士の問題にとどまらず、子どもの心理的・行動的発達に深刻な影響を及ぼします。
特に、家庭内での争いが頻繁であったり、長期間にわたる場合、子どもの心には大きな負担がかかることが研究でも明らかになっています。
以下では、子どもの発達や日常生活への影響について詳しく説明します。
1-1. 子どもは争いをどのように捉えるか?
子どもは、両親の言葉や行動、表情から多くの情報を受け取ります。
家庭内での争いが目立つと、子どもは以下のような認知や感情を抱きやすくなります。
● 自己責任感を抱く
子どもは、「両親がけんかをしているのは自分のせいではないか」と感じることがあります。
特に幼い子どもほどその傾向が強く、自己肯定感の低下や罪悪感を抱きやすくなります。
● 家庭の安全感の喪失
家庭は子どもにとって安心できる場所であるべきですが、争いが続くことで「家が安全ではない」と感じるようになります。
これにより、不安感や恐怖心が強まることに繋がります。
● 片方の親への忠誠心の葛藤
子どもは両親の間で板挟みになり、どちらか一方の親を支持しなければならないというプレッシャーを感じることがあります。
このような状況は、子どもの感情的負担を増大させます。
1-2. 心理的影響
家庭内の争いは、子どもの心理的健康に直接的な悪影響を及ぼします。
これらの影響は短期的なものにとどまらず、長期的な精神的健康にも関与する可能性があります。
● 不安障害のリスク増加
両親の対立を目撃した子どもは、特に不安障害を発症しやすいことが研究で示されています。
争いが繰り返されることで、常に「次はまた何が起こるのか」と恐れるようになります。
● 抑うつ傾向の増加
家庭内の争いが続くと、子どもは無力感を抱き、将来に対する希望や期待を持てなくなる場合があります。
このような感情が長引くと、抑うつ症状のリスクが高まります。
● 自己肯定感の低下
両親の争いが激化すると、子どもは「自分は愛されていないのではないか」という不安を抱えることがあります。
これにより、自分の存在価値を疑うようになることがあります。
1-3. 行動面への影響
心理的影響だけでなく、夫婦間の対立は子どもの行動にも影響を及ぼします。
これには、家庭や学校での振る舞いが含まれます。
● 攻撃的な行動
子どもは両親の争いを目撃することで、攻撃的な行動を模倣する場合があります。
家庭内の争いがエスカレートすると、子ども自身も友達や兄弟に対して攻撃的になる可能性があります。
● 回避行動の増加
家庭内の争いが嫌だと感じる子どもは、部屋に閉じこもる、家庭外での活動を増やすなど、家庭環境を避けるようになります。
これにより家族との関係が疎遠になる場合があります。
● 学業成績の低下
不安やストレスが増加すると、集中力が低下し、学業成績にも影響が出ることがあります。
特に争いが長期化すると、この影響は顕著になります。
1-4. 長期的影響
両親の争いが日常的に続く場合、子どもの人生全体にわたる影響を与える可能性があります。
● 成人期の対人関係への影響
子ども時代に家庭内での争いを経験した人は、成人してからもパートナーシップや友情を築くのが難しくなる場合があります。
そのため信頼感を持つことが難しくなり、対人関係での衝突を恐れるようになることがあります。
● 心理的問題の慢性化
幼少期の心理的トラウマは、大人になってからも不安障害や抑うつ症状のリスクを高めることが知られています。
● 依存的な行動
心の安定を求めてアルコールや薬物、その他の依存行動に陥る可能性が高まります。
夫婦間の対立の中での子供の反応パターン
夫婦間の対立に対する子どもの反応は以下のように整理できます。
1. 積極的な介入
子どもが両親の争いに積極的に関わる行動を指します。
子どもは家庭内の緊張感を和らげようと、以下のような方法で仲裁を試みることがあります。
● 言葉による仲裁
「けんかしないで」と両親に直接お願いしたり、「もうやめて」と声を上げて争いを止めようとすることがあります。
このような行動は、子どもの心にとって非常にストレスフルであり、子ども自身が両親の問題を背負ってしまうことにつながります。
● 行動による仲裁
争いを止めるために両親の間に入ったり、抱きついて争いを終わらせようとするケースもあります。
これにより、一時的に争いが収まったとしても、子どもが心理的負担を感じることには変わりありません。
● 過剰な「いい子」行動
両親の争いを防ぐために、子どもが自分の行動を極端に抑えたり、無理をして「いい子」でいようとすることもあります。
この場合、子どもは自分の感情を抑え込む習慣がつき、心理的負担が蓄積される可能性があります。
2. 回避行動
家庭内の争いから距離を取るための行動を指します。
このような行動は、子どもが心の平穏を保つための防衛反応として現れることがあります。
● 物理的回避
両親がけんかを始めると、自分の部屋に引きこもる、外に出るなどして物理的にその場から離れようとします。
この行動は短期的にはストレスを軽減しますが、家庭内での孤立感を強める結果にもつながります。
● 情緒的回避
両親の争いを見聞きしても無関心を装い、感情を表に出さないようにする場合があります。
この場合、子どもは内面でストレスを抱え込みやすく、長期的には抑うつや不安障害のリスクが高まることがあります。
● 社会的回避
家庭内の争いによるストレスが学校や友人関係にも影響を及ぼし、友達付き合いや学校生活を避ける行動につながることがあります。
3. 感情的な反応
争いの場面に直面することで、子どもはさまざまな感情的反応を示します。
これらの反応は一過性のものだけでなく、子どもの心に深い影響を与える可能性があります。
● 泣く
両親の争いを目撃して涙を流すのは、子どもが感じる恐怖や不安の表れです。
幼い子どもほど感情表現がストレートで、泣くことで自分の不安を伝えようとします。
● 怯える
声を荒げたり物を投げるような激しい争いが起きると、子どもは怯えて体を縮こませたり、隠れる行動を取ることがあります。
このような恐怖体験はトラウマとなり、長期的な心理的影響を残すことがあります。
● 不安になる
両親の争いが頻繁に起こる家庭では、子どもが日常的に不安を抱えるようになります。
「次はいつけんかが起きるのだろう」と予測できない状況が続くことで、慢性的な不安感を抱くようになります。
4. 模倣行動
家庭内での争いを目撃することで、子どもがその行動を自分の対人関係に取り入れるケースもあります。
親の行動は子どもにとって大きな影響力を持つため、争いの中で目にしたネガティブな行動が学習される可能性があります。
● 攻撃的な対人行動
両親がけんかの中で怒鳴り合ったり、攻撃的な言動を取る姿を目撃すると、子どももその行動を自然と模倣することがあります。
これにより、友人関係や学校でのトラブルが増える可能性があります。
● 言葉での攻撃
親が口論で辛辣な言葉を使うのを見て育つと、子どもも対人関係において攻撃的な言葉を使う傾向が生じることがあります。
● 回避的な関係性
親が争いを避けたり無視する姿勢を見た場合、子どもも対人関係での問題解決を避ける傾向が強まることがあります。
これにより、問題が解決されないまま人間関係が悪化することがあります。
臨床的な示唆
これらの行動や感情反応は、子どもが争いを目撃することで発生する「適応的な防衛反応」ともいえますが、長期的には心理的な問題につながる可能性があります。
家庭内で争いを最小限に抑え、子どもの心理的なケアを意識することが重要です。
3. 子どもの心を守るためにできること
夫婦間で対立が発生したとき、子どもの心に与える影響を最小限に抑えるためには、意識的な取り組みが必要です。
以下では、家庭環境をより安全で安心なものにするための具体的な方法を詳しく解説します。
3-1. 子どもの前での争いを避ける
● 争いの「場」を選ぶ
子どもの目の前で感情的な対立を繰り広げると、子どもに不安感や恐怖心を与える可能性があります。
重要な議論や意見の対立が避けられない場合は、子どものいない場所で冷静に話し合うことを心がけましょう。
● トーンを意識する
声を荒げたり、攻撃的な言葉を使うことは避け、冷静で建設的なコミュニケーションを心がけます。
子どもは両親のトーンや言葉を敏感に察知します。
3-2. 子どもへの感情的サポートを強化する
● 気持ちを共有する場を設ける
子どもが両親の対立を目撃してしまった場合、感情を吐き出す場を提供することが重要です。
「怖かった?」「何か不安に思っていることはある?」といった質問で、子どもの気持ちに寄り添いましょう。
● 愛情を言葉で伝える
両親が対立しても、子どもへの愛情は変わらないことを明確に伝えることが大切です。
「お父さんとお母さんは意見が違うこともあるけど、あなたを大切に思っている気持ちは変わらない」というような言葉が子どもの心を安心させます。
3-3. 子どもの役割を明確にする
● 仲裁役にしない
子どもが両親の争いを解決しようとするのは、心理的な負担を増やす原因になります。
「あなたが心配する必要はないから、安心していてね」と伝えることで、争いの責任を子どもに負わせないようにします。
● 中立の立場を尊重する
「どちらが正しいと思う?」といった質問や、片方の親を擁護させるような態度は避けましょう。
子どもがどちらか一方を選ばざるを得ない状況は、感情的な混乱を引き起こします。
3-4. 家庭環境を安心できるものにする
● 規則的な生活リズムを保つ
家庭内の対立があっても、子どもが安心できる日常的なスケジュールを守ることが重要です。
特に、食事や就寝などの基本的なルーティンを維持することで、子どもに一貫性と安定感を提供します。
● 争いを修復する姿を見せる
両親が対立を解消し、仲直りをする姿を見せることで、子どもに問題解決のモデルを提供できます。
「意見が違っても、お互いを尊重し合えば解決できる」という教訓を伝える良い機会になります。
3-5. 必要に応じて専門家のサポートを活用する
● 心理カウンセラーの利用
子どもが不安やストレスを抱えている場合、心理カウンセリングが有効です。専門家が子どもの感情を整理する手助けをしてくれます。
● 家族全体でのセラピー
家族療法やカップルセラピーを通じて、家庭全体で問題に取り組むことが可能です。神戸、芦屋、西宮のカウンセリングサービスでは、地域に根差したサポートを提供している施設も多くあります。
● 学校との連携
子どもが学校で問題を抱えている場合、教師やスクールカウンセラーと連携し、適切なサポートを受けられるようにしましょう。
まとめ
夫婦間の対立は、子どもの心に深刻な影響を与える可能性があります。
しかし、親が意識的に行動し、家庭環境を改善することで、子どもの心理的健康を守ることができます。
日常の対話やサポートを通じて、安心感を提供し、必要に応じて専門家のサポートを検討することが大切です。
子どもが健やかに成長できるよう、家族全体で取り組む姿勢を大切にしましょう。
参考論文
Children's Responses to Everyday Marital Conflict Tactics in the Home
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この記事の執筆者
駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)
心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。
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