不安が脳に与える影響とその対処法
2025/02/06
みなさん、こんにちは。
神戸市や芦屋市、西宮市などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。
さて、不安は人間にとって自然で正常な感情の一部です。
誰でも時々不安を感じることがありますが、ある人々にとっては、この不安が強く、恐ろしい力となり、決して消えることがありません。
しかし、不安とは一体何であり、私たちの心や体にはどのような影響を与えるのでしょうか?
また、不安を感じたとき、どのように対処すれば良いのでしょうか?
実は、不安は私たちの脳と身体に大きな影響を与えます。
そこで今回は、不安がどのように脳に作用し、どのように対処すれば良いのかについて、具体的な方法をお伝えします。
不安とは? そのメカニズムと影響について
不安とは、私たちが危険を察知し、身を守るために備わっている自然な感情です。
これは、一種の警報システムのようなもので、潜在的な脅威に対して心を警戒状態にさせ、注意を促す役割を果たします。
例えば、暗い夜道を歩いているときに不安を感じるのは、身の安全を確保するための本能的な反応です。
このように、不安は私たちの生存本能の一部であり、適度な不安は危機回避や問題解決のために必要不可欠なものです。
しかし、この不安が過度に強くなったり、特定の理由がないのに長期間持続したりすると、心身に悪影響を及ぼすことがあります。
本来、不安は一時的なもので、脅威が去れば自然に収まるものですが、慢性的な不安に苦しむk方は、常に緊張感を抱え、心が休まることがありません。
その結果、生活の質が低下し、仕事や人間関係、健康にも影響を及ぼすことがあります。
不安が過度になると、以下のような影響が出ることがあります。
1. 身体的影響
動悸や息苦しさ
→不安を感じると、自律神経が活性化し、心拍数が上がり、呼吸が浅くなることがあります。
筋肉の緊張
→体が無意識に緊張状態になり、肩こりや頭痛、慢性的な疲労を引き起こすことがあります。
胃腸の不調
→不安が強くなると、消化機能に影響を与え、胃痛や食欲不振、下痢や便秘を引き起こすことがあります。
不眠症
→不安が頭から離れず、寝つきが悪くなったり、途中で目が覚めたりすることがあります。
2. 心理的影響
過剰な心配や恐怖
→特定の出来事に対して必要以上に不安を感じ、最悪の事態を想像してしまうことがあります。
集中力の低下
→常に不安を抱えていると、注意が散漫になり、仕事や勉強に集中できなくなることがあります。
気分の落ち込み
→不安が長引くと、自己肯定感が低下し、抑うつ状態になりやすくなります。
イライラしやすくなる
→不安が高まると、周囲の出来事に過敏に反応し、怒りっぽくなることがあります。
3. 行動への影響
回避行動の増加
→不安を感じる状況を避けるようになり、社会的な場面から距離を置くことが多くなります。
過剰な確認行動
→不安を軽減するために、何度も確認したり、不要なルールを作ってしまうことがあります(例:鍵を何度もチェックする)。
依存行動の増加
→アルコールや過食、スマートフォンの使用など、不安を紛らわせるための行動が増えることがあります。
不安とストレスの違いを理解する
不安とストレスはどちらも私たちの心と体に影響を及ぼす感情ですが、根本的な性質や発生のメカニズムには大きな違いがあります。
これらを適切に区別し、それぞれに合った対処法を身につけることが、心の健康を維持するために重要です。
1. 不安とは?: 漠然とした恐れや心配
不安とは、特定の外的要因がなくても生じる「内面的な感情」のことを指します。
つまり、明確な原因があるわけではないのに、「なんとなく落ち着かない」「悪いことが起こるのではないか」といった漠然とした心配が続く状態です。
不安は、予測不能な未来への恐れや、自分の内面的な思考によって引き起こされることが多く、長期的に持続しやすい傾向があります。
● 不安の特徴
原因が明確でない
→何に対して不安を感じているのかがはっきりしない場合が多い。
持続的である
→ストレスのように一時的なものではなく、長期間続くことがある。
思考によって増幅する
→心配事を考え続けることで、不安がさらに強くなる。
身体的症状を伴うことも
→動悸、息苦しさ、胃の不調、頭痛、疲労感などの身体症状が現れることもある。
例えば、「仕事で失敗するのではないか」「友人に嫌われるのではないか」「将来が不安だ」といった気持ちは、現実に起こった出来事ではなく、予測や想像によって生じる不安です。
2. ストレスとは?:外部からの圧力や負担
一方で、ストレスは明確な外的要因によって引き起こされる「反応」です。
たとえば、仕事の締め切り、試験、人間関係のトラブル、経済的な問題など、外部からのプレッシャーや負荷によって心身に負担がかかることが原因で生じます。
● ストレスの特徴
原因が明確である
→仕事、家族の問題、試験、環境の変化など、ストレスを引き起こす出来事がはっきりしている。
一時的なものである
→ストレスの原因が解消されれば、ストレス反応も軽減される。
適応するための反応
→ストレスは必ずしも悪いものではなく、適度なストレスは行動を促す原動力にもなる。
過剰になると問題が生じる
→慢性的なストレスは、心身の健康に悪影響を与える。
例えば、「明日のプレゼンがある」「家族と喧嘩した」「仕事でミスをした」など、特定の出来事が原因で生じる緊張やプレッシャーがストレスです。
3. 不安とストレスの関係
不安とストレスは別物ですが、互いに影響し合うことがあります。
例えば、強いストレスを長期間感じていると、その状態が習慣化し、ストレスの原因がなくなった後も「また同じようなことが起こるのでは?」と漠然とした不安を抱くようになります。
また、不安が強い人は、小さなストレスに対しても過敏に反応し、より大きなプレッシャーを感じやすくなる傾向があります。
その結果、ストレスが増幅し、不安がさらに強まるという悪循環に陥ることもあります。
不安が脳に与える影響:心と体への深刻な影響とは?
不安は単なる一時的な感情ではなく、脳の働きにも大きな影響を及ぼします。
特に、扁桃体(へんとうたい)と海馬(かいば)という2つの脳の重要な部位が深く関与しており、不安が長引くと脳の機能に変化をもたらし、心や体の健康にも悪影響を及ぼします。
ここでは、それぞれの役割と、不安がどのように影響を与えるのかを詳しく解説します。
1. 扁桃体(へんとうたい):不安や恐怖の発信源
扁桃体は、脳の中で感情の処理を司る部位であり、特に恐怖や危険を察知する役割を担っています。
私たちが危険な状況に直面したとき、扁桃体がすばやく反応し、「戦うか、逃げるか」(ファイト・オア・フライト反応)を引き起こします。
● 不安による扁桃体の過剰な反応
通常、扁桃体は実際に脅威がある場合に反応するのですが、不安が強いと以下のような状態に陥ります。
・実際には脅威がないのに、危険を感じてしまう
例えば、「仕事でミスをしたらすべてが終わる」と過剰に考えてしまう、または「人に嫌われるのではないか」と根拠なく不安になることがあります。
これは、扁桃体が過敏になり、本来気にする必要のない状況を「脅威」と誤認してしまうためです。
・慢性的な不安で扁桃体が過活性化する
たとえば、不安を感じやすい人は、何気ない日常の出来事でも扁桃体が過剰に反応し、強いストレスを感じることがあります。
これが続くと、脳が常に「危険な状態」にあると認識し、慢性的な不安が生じるのです。
・自律神経のバランスが崩れる
扁桃体が過剰に反応すると、心拍数が上がったり、血圧が上昇したり、胃腸の不調を引き起こしたりするなど、身体にも影響を及ぼします。
つまり、不安を感じすぎると、脳が常に「危険な状態」だと勘違いし、過剰なストレス反応を引き起こしてしまうのです。
2. 海馬(かいば):記憶と不安の関連性
海馬は、記憶の形成と管理を担当する部位であり、特に過去の出来事を記憶する役割を持っています。
私たちが経験した出来事を整理し、適切に保存することで、「学習」や「適応」が可能になります。
● 不安が海馬に与える悪影響
・過去の不安な出来事を繰り返し思い出してしまう
たとえば、過去に緊張したプレゼンの失敗を経験した人が、次のプレゼンでも「また失敗するかもしれない」と考えてしまうのは、海馬がその記憶を強く保持しているためです。
・不安が強いと、新しい記憶がうまく整理されない
強いストレスや不安が続くと、海馬の機能が低下し、物事を正しく整理・記憶できなくなることがあります。
その結果、「本当はうまくいった経験」よりも、「うまくいかなかった経験」の方が強く記憶に残り、不安がさらに強まるという悪循環が生まれます。
・慢性的なストレスで海馬が萎縮する
研究によると、長期間にわたる強い不安やストレスは、海馬の体積を縮小させることが分かっています。
これにより、記憶力や学習能力が低下し、不安をコントロールしにくくなることが報告されています。
つまり、不安が強すぎると、過去のネガティブな記憶が強調され、未来に対して過度に恐れを抱くようになってしまうのです。
3. 不安による脳の変化がもたらす影響
扁桃体と海馬のバランスが崩れることで、不安はますます強まり、脳全体の機能にも悪影響を及ぼします。
● 集中力や判断力の低下
常に不安を感じていると、脳が「危機モード」になり、冷静に考える力が低下します。
その結果、仕事や勉強に集中できなくなったり、ミスが増えたりすることがあります。
● ネガティブ思考が強まる
海馬が適切に記憶を整理できなくなると、ポジティブな出来事よりもネガティブな出来事ばかりが思い出されるようになります。
その結果、「自分はダメだ」「どうせまた失敗する」といった自己否定的な思考が強まりやすくなります。
● 睡眠障害や身体的な不調
不安が続くと、自律神経のバランスが崩れ、寝つきが悪くなったり、夜中に何度も目が覚めたりすることがあります。
また、胃腸の調子が悪くなったり、免疫力が低下したりすることもあります。
4. 不安を軽減するためにできること
不安が脳に与える影響を理解した上で、適切な対処法を取り入れることで、不安をコントロールし、脳の働きを健全に保つことができます。
● 扁桃体を落ち着かせる方法
・深呼吸やマインドフルネス瞑想を行う
扁桃体の過剰な反応を抑えるためには、「今この瞬間」に意識を向けることが効果的です。
ゆっくり深呼吸をするだけでも、脳がリラックスモードに切り替わります。
・「本当に脅威なのか?」と問いかける
「これは本当に危険なのか?」「過剰に考えていないか?」と自分に問いかけることで、扁桃体の反応を抑え、冷静な判断をすることができます。
● 海馬の機能を保つ方法
・日記をつける・ポジティブな出来事を記録する
海馬の働きを改善するためには、「今日の良かったこと」を書き出す習慣を持つのがおすすめです。
ポジティブな記憶を強化することで、過去の不安な出来事ばかりにとらわれることを防げます。
・十分な睡眠を確保する
睡眠は記憶の整理に重要な役割を果たします。規則正しい生活リズムを保ち、7~8時間の睡眠を確保することで、海馬の機能を正常に保つことができます。
まとめ
不安が脳に与える影響は大きく、特に扁桃体と海馬の働きが関係しています。
扁桃体が過剰に反応すると不安が強まり、海馬の機能が低下すると過去のネガティブな記憶ばかりが残りやすくなります。
この悪循環を防ぐためには、マインドフルネスやポジティブな習慣を取り入れることが効果的です。
ぜひ、習慣的に取り入れて、不安を上手に解消してくださいね。
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この記事の執筆者
駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)
心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。
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