株式会社ユナイテッド

HSPの強みを生かすために:パーソナリティ特性と対処法のヒント~神戸市、芦屋市、西宮市のカウンセリングの実例より~

お問い合わせはこちら

HSPの強みを生かすために:パーソナリティ特性と対処法のヒント

HSPの強みを生かすために:パーソナリティ特性と対処法のヒント

2025/03/03

みなさん、こんにちは。

神戸市や芦屋市、西宮市などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。

 

さて、最近「自分はHSPかもしれない」「ちょっとした物音や人間関係で過度に疲れてしまう」というお悩みを抱えている方が多くみられるようになりました。

 

HSP(Highly Sensitive Person)とは、人一倍繊細な感受性を持ち、外部刺激や他者の気持ちを敏感に察知してしまう特性を指します。

 

一方で、HSPの方には「自分の繊細さが嫌だ」「弱い人間だ」とネガティブに捉えてしまう方も少なくありません。

 

しかし、それは本当に「弱さ」なのでしょうか?

 

今回は、最新の研究論文「Personality Traits and Coping Strategies as Psychological Factors Associated with Health-Related Quality of Life in Highly Sensitive Persons」を踏まえ、HSPのパーソナリティ特性や対処法(コーピング)が健康関連のQOL(Quality of Life:生活の質)にどのような影響を与えるのかを探ってみたいと思います。

 

1. HSPとは何か?


HSP(Highly Sensitive Person)は、アメリカの心理学者エレイン・アーロン氏が提唱した概念で、人口の15~20%程度が該当すると言われています。

 

「人の気持ちに過度に共感してしまう」「大きな音や強い光が苦手」「刺激の多い環境に長くいると極度に疲れやすい」といった特徴がみられます。

 

HSPの特性は以下のような特徴をお持ちです。

 

~・~・~・~・~・~・~

 

● 強い共感力


他者の気持ちや表情、雰囲気の変化をいち早く察知し、その人の痛みや喜びを自分のことのように感じやすい傾向があります。

 

そのため、人間関係の中では優れた理解者やサポーターになりやすい一方、ネガティブな感情を受け取ってしまうと自分自身が疲弊することもあります。

 

● 刺激への敏感さ


大きな音や強い光、混雑した場所など、環境からの刺激を強く感じ取りやすい傾向があります。

 

したがって、刺激の多い場所に長時間いると極度に疲れやすい、集中力が途切れやすいなどの日常生活の困難が生じやすいと報告されています。

 

● 深い情報処理


与えられた情報や出来事を深く考察し、自分の中でじっくり時間をかけて処理する傾向があります。

 

物事の微妙な違いや他者の些細な変化に気づく能力が高いため、創造性や洞察力に優れている場合も多くみられます。

 

しかし、考えすぎるあまり不安感が強まったり、決断までに時間がかかるといった面も見受けられます。

 

● 感情的反応の強さ


自分の感情のみならず、周囲の人々の感情にも反応しやすいため、喜びや悲しみなどを深く味わう一方で、些細な出来事でも大きなストレスを感じる場合があります。

 

これはHSPの豊かな感受性の表れでもあり、その人の魅力や優しさを形作る重要な要素でもあります。

 

~・~・~・~・~・~・~

 

こうした特徴を持つ人は、他者の表情や雰囲気の変化にいち早く気づき、人の痛みに深く寄り添える反面、些細な出来事で心が揺れたり、疲労を感じやすかったりという面も持ち合わせています。

 

近年ではSNSやメディアでも多く取り上げられるようになり、HSPという言葉が広まるにつれ、「自分もそうかもしれない」「あの人もそうかも」という声が増えてきました。

 

2. パーソナリティ特性と健康関連QOL(生活の質)との関係

 

今回ご紹介する論文「Personality Traits and Coping Strategies as Psychological Factors Associated with Health-Related Quality of Life in Highly Sensitive Persons」では、HSP(Highly Sensitive Person)の方々に注目し、以下の要素を中心に分析が行われています。

 

2-1.パーソナリティ特性


● 一般的によく知られるビッグファイブ


ビッグファイブとは、人間の性格特性を以下の5つの次元で捉える理論を指します。

 

外向性(Extraversion)

→社交的・活動的で、外部との関わりを積極的に求める性質
神経症傾向(Neuroticism)

→不安や落ち込み、ストレスへの反応が強く出やすい性質
誠実性(Conscientiousness)

→責任感があり、目標に向かって粘り強く努力できる性質
協調性(Agreeableness)

→他者に共感し、協力しながら円滑な人間関係を築こうとする性質
開放性(Openness)

→好奇心旺盛で、新しい経験や多様な価値観に柔軟に興味を持つ性質


● HSP特有の繊細さや高い感受性


HSPの方は、外界からの刺激(光、音、匂い、人間関係など)や自分の内面での感情に対して強く反応するという特性を持ちます。

 

こうした繊細さは、ビッグファイブのうち特に「神経症傾向」と関連すると言われることが多い一方で、協調性や開放性が高いHSPの方も存在します。

 

また、外向的なHSPも一定数おり、いわゆる「内向的なHSP」とは違うかたちで生きづらさや疲労感を感じる場合もあります。

 

● ビッグファイブとHSPの関連


HSPは、その特性ゆえに「神経症傾向」が高めに出るケースが比較的多いとされていますが、必ずしも全員がそうとは限りません。

 

また、協調性や開放性が高いHSPは、他者との共感や新しい視点を取り入れることに長けており、クリエイティブな活動や深い洞察力を発揮することがあります。

 

こうした強みが上手く活かせる環境に身を置けるかどうかによって、HSPならではの生きづらさを軽減できる可能性があります。

 

逆に、神経症傾向が極端に高い場合は不安感やストレスをため込みやすく、QOLが低下するリスクが高まります。

 

2-2.コーピング(対処)戦略


論文では、ストレスや困難に直面したときにどのような方法で乗り越えようとするかについて、以下のようなコーピング(対処)スタイルを取り上げています。

 

● 問題志向型コーピング


具体的な解決策を探し、実行することでストレス要因そのものを減らしていく方法。

 

たとえば、仕事の負担が大きいと感じたら上司に相談して業務を調整するなど、行動を起こすことで状況を改善していきます。

 

● 情動志向型コーピング


ストレスに直面したときに湧き上がる不安や恐怖、落ち込みなどの感情をコントロールし、うまく対処する方法。

 

呼吸法、リラクゼーション、カウンセリングなどによって自分の感情を整理することで、心身の負担を軽減します。

 

● 回避志向型コーピング


ストレス源や刺激から距離を置き、状況を直接的に変えることはせずに自分を守る方法。

 

苦手な人間関係や騒がしい環境などから意図的に離れることで、一時的な安定を得るケースもありますが、長期的に回避を続けすぎると孤立感が増す可能性もあります。

 

2-3.健康関連QOL(Quality of Life)


健康関連QOLとは、以下のような要素を総合的に捉えた概念です。

 

肉体的健康

→身体の状態や体力の充実度
精神的健康

→心の安定感やポジティブな思考・感情を保てる状態
社会的関係

→他者との交流やサポートの有無、友人や家族・職場との関係性
日常生活の満足度

→働き方や休暇の取り方、趣味の時間など生活全般の質


2-4.パーソナリティ特性や対処法の重要性


論文によると、HSPが持つ繊細さ自体が直接的に健康関連QOL(生活の質)を決定づけるわけではなく、その人のパーソナリティ特性(ビッグファイブのどの次元が高いかなど)や、どのようにストレスや困難へ対処しようとしているのか(コーピング戦略)といった要素が大きく影響すると示唆されています。

 

たとえば、神経症傾向が高いHSPの方は不安感が強まりやすく、ストレスを抱え込むことでQOLが低下しやすいと言えます。


一方で、外向性や協調性が高いHSPの方は、人とのコミュニケーションからサポートを得たり、共感力を活かして相互協力ができたりするため、QOLを向上させる手がかりをつかみやすい場合があります。


誠実性の高いHSPの方は、自分にとって負担の大きい環境を整理するなど、きめ細かい計画や調整をしっかり行い、問題志向型コーピングを適切に使うことでストレスを軽減できる可能性があります。


開放性の高いHSPの方は、新しい方法やアイデアを試す柔軟性が高いため、自己理解や対処法の幅が広がりやすく、結果的にQOLを保ちやすいケースも見られます。


つまり、同じHSPであっても、ビッグファイブのどの特性が強く現れているか、そしてどのようなコーピングを選択するかによって、健康関連QOLには大きな違いが生まれるということです。

 

したがって、HSPという繊細さを持ちながらも、自分の性格傾向に合った対処法を見つけていくことが重要であるといえます。

 

3. コーピング戦略(ストレス対処法)がもたらす違い


HSPの方が最も知りたいのは、「どうやってこの繊細さと付き合っていけばいいのか?」という部分ではないでしょうか。

 

論文ではコーピング戦略(ストレス対処法)を複数にわけ、どのようにストレスと向き合うかによって健康関連QOL(生活の質)が変化する可能性を示しています。

 

● 問題志向型コーピング


具体的な問題が生じたときに、その解決策を探るために行動を起こす対処方法です。

 

例えば、仕事のスケジュールが原因で疲れているなら、上司と相談して業務内容を見直したり、休暇を取りやすい体制を整えたりします。

 

問題を直接コントロールしようとする姿勢は、長期的なストレス軽減にもつながります。

 

● 情動志向型コーピング


ネガティブな感情が湧いたときに、その感情をコントロールしたり受容するアプローチです。

 

呼吸法、リラクゼーション、カウンセリングなどによって感情を自分でうまく処理することで、心の負荷を下げてQOLを向上させる効果が期待できます。

 

HSPの方は感情が強く揺さぶられやすいため、自分を労わるセルフケアの習慣を持つことが大切です。

 

● 回避志向型コーピング


苦手な人や環境から距離を置く、あるいはストレス要因そのものを避けるという方法です。

 

HSPの方の場合、刺激の強い場所や大人数の集まりに長時間い続けると、疲労やストレスが急激に高まります。

 

そのため、適度に回避・休息をとることは非常に重要です。

 

しかし、極端な回避が続くと社会的関係の構築が難しくなり、逆に孤立感を深めてしまうリスクもあります。

 

4. 「繊細さ」を強みに変えるためのヒント


HSPの特性である繊細さは、ときに大きなストレス要因となりやすい一方で、人や環境に深く気づく力を持つという強みにもつながります。

 

ここでは、心理カウンセラーの立場から、日常生活の中ですぐに実践できる具体的な工夫をいくつか詳しくご紹介します。

 

これらの方法は、繊細さを強みに活かすうえで有効なステップとなります。

 

4-1. セルフモニタリングを習慣化する


● ポイント

 

自分の状態を客観的に把握し、繰り返しのパターンを見つけ出す

 

● 気分・体調の記録


日々の気分や体調を簡単なメモやアプリに書き留めておくことで、客観的な視点を養います。

 

「今日はなんだか落ち着かない」「昨晩から睡眠不足でイライラする」など、気分や体調の変動を定期的に記録しましょう。

 

● きっかけの分析


もし疲労や不安を感じたら、その瞬間に何が起こっていたか、どんな場所にいたか、周囲にどんな人がいたかなどを具体的に思い出してメモします。

 

後から振り返ることで、自分のストレスを引き起こす原因や共通点が見えてきます。

 

● 継続のコツ


毎日必ず書く、というよりは無理のない頻度で続けることが大切です。

 

寝る前に数分間だけ書く、週末にまとめて振り返るなど、自分に合ったスタイルを見つけましょう。

 

4-2. 自分に合ったコーピングを複数持つ


● ポイント

 

状況に応じて異なる対処法を使い分け、心身のバランスを保つ

 

①問題志向型コーピング


具体的な解決策を考え、ストレス源そのものを減らそうとするアプローチです。

 

仕事量がオーバーしているなら上司と相談する、家事が負担なら家族やパートナーに協力を仰ぐなど、行動を起こすことで状況の改善を図ります。

 

②情動志向型コーピング


ストレスや不安を感じたときに、それをどうコントロールするかに焦点を当てた方法です。

 

呼吸法やリラクゼーション、瞑想、趣味の時間を持つなど、感情を和らげるための手段を積極的に取り入れましょう。

 

③回避志向型コーピング


刺激の強い環境から一時的に距離を置く対処法です。

 

職場や人間関係で緊張が高まったらトイレや休憩室でひと休みする、大きな行事に参加する前後にゆっくり過ごす時間を確保するなど、自分が「安全」だと感じられる場所・状況を意識的に用意すると負担が軽減されます。

 

④使い分けの重要性


HSPの方は一つのコーピングに偏ると、かえって生きづらさを強化してしまう可能性があります。

 

回避しすぎて社会的な孤立感が増すこともあれば、問題ばかりに集中しすぎて感情面の疲れを見落とすこともあります。

 

そのため、バランス良く複数の方法を組み合わせると、より柔軟な対応が可能になります。

 

4-3. 「ほどよい距離感」を意識する


● ポイント

 

HSP特有の共感力と環境からの刺激を上手に調整する

 

①人間関係での距離感


HSPの方は他人の感情を強く感じ取りやすい一方で、相手に合わせすぎて自分が疲れてしまうことがあります。

 

大人数の集まりや飲み会では早めに帰るなど、自分のペースを意識して参加回数や滞在時間を調整しましょう。

 

②環境選びの大切さ


カフェで作業をするなら落ち着いた店を選ぶ、集中したいときは静かな部屋にこもる、リラックスするために自然の多い場所を散歩するなど、刺激を必要以上に受けずに済むような環境選びもポイントです。

 

③コミュニケーションの工夫


周囲の人にも「騒がしい場所だと疲れやすい」「一度にたくさんの予定があると混乱してしまう」など、自分の性質を少しずつ伝えることで協力してもらいやすくなります。

 

理解あるサポートを得られると、孤独感が和らぎ、より安心して過ごせるようになります。

 

4-4. 専門家のサポートを受ける


● ポイント

 

自分では気づかない問題点や対処法を、客観的に見つけ出す

 

● カウンセリングや心理療法のメリット


第三者の専門家に話を聞いてもらうことで、自分の思考パターンや感情のクセに気づきやすくなります。

 

カウンセラーやセラピストは、HSPの特性に合わせた具体的なコーピング戦略や認知行動療法などを提案することができます。

 

● 問題の根本原因にアプローチ


「疲れやすい」「落ち込みやすい」の背景には、過去の経験や深層心理、思い込みなどが影響していることがあります。

 

専門家のサポートを受けることで、自分では見つけづらい根本原因にアプローチし、より根本的な解決が可能となります。

 

● 相談をためらわない


「自分でなんとかしなければ」「助けを求めるのは甘えかもしれない」と思い込み、限界を超えてしまう方もいます。

 

しかし、HSPの方にとっては早めの相談が負担軽減につながるケースが多々あります。

 

気軽に相談できる環境を見つけておくことは、大きな精神的支えとなるでしょう。

 

4-5. 自己肯定感を育む


● ポイント

 

繊細さをネガティブに捉えるのではなく、個性として認める

 

● プラスの視点を持つ


「自分は繊細すぎる」「弱い」という自己否定はストレスを増幅させやすいです。

 

そうではなく、「人の気持ちに寄り添える」「相手の変化をいち早く察知できる」といった長所として捉え直すと、自己肯定感が高まりやすくなります。

 

● 自分を誉める習慣


一日の終わりや週末など、定期的に自分の行動や頑張りを振り返り、「あのとき相手に優しい声かけができた」「嫌だったことを上手に断ることができた」など、具体的に良かった点を挙げてみましょう。

 

● 無理をしないスケジュール調整


自己肯定感が低いと、自分のキャパシティ以上に頑張りすぎる傾向が出やすくなります。

 

繊細な自分を責めるのではなく、適切なペースを守りながら生活を送ることが、長期的に見て心身の健康にも大きく寄与します。

 

おわりに


本記事では、最新の論文「Personality Traits and Coping Strategies as Psychological Factors Associated with Health-Related Quality of Life in Highly Sensitive Persons」をベースに、HSPの方々のパーソナリティとコーピング(対処)戦略がQOL(生活の質)にどのような影響を与えるのかを探りました。

 

大切なのは、HSPの特性そのものを否定しないこと。

 

そして、自分に合った対処法や人間関係、環境を整えられるように工夫し続けることです。

 

自分の繊細さを認め、感情や疲労度の波をうまくマネジメントできるようになると、驚くほど気持ちが楽になります。

 

加えて、「自分は一人じゃない」と知ること、そして「自分は何に苦しみ、何を求めているのか」を見つめ直すことの大切さです。

 

HSPの方が安心して過ごせる居場所やサポートは必ずあります。

 

もし「自分だけが辛い」と思っている方がいらしたら、ぜひ一度専門家や信頼できる友人に相談してみてください。

 

あなたの繊細さは、決して欠点ではなく、人生を豊かに彩る重要な個性の一つです。

 

論文の示唆するように、適切なコーピングと自己理解によって、健康的で満ち足りた生活を送ることは十分に可能です。

 

自分を責めるのではなく、いたわりながら一歩ずつ進んでいきましょう。

 

参考論文

Personality Traits and Coping Strategies as Psychological Factors Associated with Health-Related Quality of Life in Highly Sensitive

----------------------------------------------------------------------
こころのケア心理カウンセリングRoom
兵庫県芦屋市浜芦屋町1-27   サニーコート浜芦屋302号
電話番号 : 090-5978-1871

お問い合わせはこちら


----------------------------------------------------------------------

この記事の執筆者

駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)

心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。

プロフィールはこちら

カウンセラー紹介

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。