不安症状が強くなる理由とは?
2025/03/10
みなさん、こんにちは。
神戸市や芦屋市、西宮市などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。
さて、心の健康は私たちの日常生活や人間関係、そして全体的な幸福感に深く関わっています。
特に不安症状は、多くの人々が経験するものであり、その原因や対処法を理解することは非常に重要です。
今回は、「Anxiety Symptomatology: The Association with Distress Tolerance and Anxiety Sensitivity」という研究を踏まえて、不安症状と「苦痛耐性(DT)」および「不安感受性(AS)」との関係性について探っていきます。
1.不安症状と関連する心理的要因:苦痛耐性と不安感受性とは?
不安症状は単なる「心配しすぎ」ではなく、心理的な特性や思考のパターンが大きく影響を与えています。
その中でも、特に「苦痛耐性」と「不安感受性」の2つの要因が、不安症状の強さや持続性に関係していることが研究で明らかになっています。
これらの概念を理解することで、なぜ不安が強くなったり、持続したりするのかが分かり、それに応じた対処法を見つけることができます。
1-1.苦痛耐性(DT:Distress Tolerance)とは?
苦痛耐性とは、精神的な苦痛や不快な感情をどれだけ耐えられるか、またはそれらをどのように受け入れるかを示す概念です。
人は誰しもストレスや不安を感じることがありますが、その耐え方や受け止め方には個人差があることが分かっています。
● 苦痛耐性が低い場合の特徴
✔感情的な苦痛をすぐに避けようとする
例えば、不安を感じる状況を避けるために、人との関わりを極端に減らす、仕事のプレッシャーが強くなるとすぐに辞めたくなる、などの行動をとりやすくなります。
✔不快な感情をコントロールするのが苦手
苦痛耐性が低いと、少しのストレスや不安でも大きな苦痛と感じ、衝動的に行動してしまうことがあります。
例えば、ストレスを紛らわすために暴飲暴食をする、感情の爆発が起こる、などが該当します。
✔一時的な感情を「このまま永遠に続く」と思い込む
苦痛耐性が低いと、不安やストレスが続くことを強く恐れ、それを完全に取り除こうと焦る傾向があります。
しかし、不快な感情は自然と変化していくものです。これを理解できるかどうかが、回復への大きなカギとなります。
● 苦痛耐性が低いと、不安症状が強まりやすい理由
不安を感じたときに「この感情をどうにかしなければ」と思いすぎると、かえって不安に敏感になり、結果的に症状が悪化することがあります。
例えば、ちょっとしたミスに対して「もうダメだ」と極端に考えたり、不安が少しでもあると「普通の生活ができない」と決めつけてしまうことが挙げられます。
しかし、苦痛耐性が高い方は、不安やストレスを「一時的なもの」「やがて落ち着くもの」と受け入れることができるため、心の負担を軽減しながら行動できるのです。
1-2.不安感受性(AS:Anxiety Sensitivity)とは?
不安感受性とは、「不安を感じること自体」を恐れる度合いを示す概念です。
通常、不安は危険を察知するための正常な反応ですが、不安感受性が高い方は、その不安を「自分にとって深刻な脅威」として認識しやすくなります。
● 不安感受性が高い場合の特徴
✔「不安=危険」と考える傾向がある
例えば、「心臓がドキドキしている=心臓発作が起こるかもしれない」と考える、少し息苦しくなるだけで「大きな病気かもしれない」と思い込む、などがあります。
✔身体の変化に過敏に反応する
不安感受性が高いと、体のちょっとした違和感やストレス反応(動悸、息切れ、めまいなど)に敏感になり、過度に意識してしまうことがあります。
その結果、「不安の発作が起きるかもしれない」と心配し、それがさらなる不安を引き起こす悪循環に陥りやすくなります。
✔パニック発作を経験しやすい
例えば、人混みの中で少し息苦しさを感じただけで「このまま倒れるのでは?」と考えてしまい、パニック発作を引き起こすことがあります。
✔「不安に対する不安」が増える
例えば、「また不安になったらどうしよう」「次のパニック発作が来たら耐えられないかも」と考え続けることで、不安が長引いてしまうことがあります。
● 不安感受性が高いと、不安症状が悪化しやすい理由
不安感受性が高い方は、不安が生じたときに「この不安はすぐに解決しなければならない」「不安を感じるのは異常なことだ」と考えてしまいます。
その結果、不安を抑えようとするほど、逆に不安が強くなるという悪循環に陥るのです。
一方、不安感受性が低い方は、「不安は一時的なもの」と捉え、不安があっても落ち着いて行動することができます。
そのため、不安感受性を低くする対処法を行うことで、不安の影響を受けにくくなる可能性があります。
2.苦痛耐性と不安感受性が不安症状に与える影響
最新の研究では、苦痛耐性(DT:Distress Tolerance)と不安感受性(AS:Anxiety Sensitivity)がさまざまな不安症状にどのように関連しているのかについて詳しく検討されました。
そして、苦痛耐性と不安感受性が不安症状とどのように関係するのかが明らかになりました。
2-1.苦痛耐性と不安感受性の影響
● 苦痛耐性と不安症状の関連性
研究の結果、苦痛耐性が低い方ほど、パニック症状、強迫性障害の症状、全般性不安、社交不安の症状が強いことが示されました。
これは、感情的な苦痛を耐えることができないことが、さまざまな不安症状の悪化と深く関わっている ことを意味します。
具体的には…
✔パニック症状
→苦痛耐性が低い方は、不安を感じた際に「この感覚を耐えられない」と考え、パニック発作を起こしやすい傾向があります。
✔全般性不安
→苦痛耐性が低い方は、不確実な状況に対する耐性も低く、ささいな問題でも過度に心配しやすい傾向があります。
✔社交不安
→人間関係のストレスに耐えることができず、「拒絶されるかもしれない」「恥をかくかもしれない」という不安が強くなる。
✔強迫性障害
→感情的な苦痛を軽減しようとする行動が増え、強迫的な確認行為や繰り返し行動が強化される可能性がある。
この結果から、苦痛耐性を高めることが、不安症状の軽減に重要な役割を果たすことが示唆されました。
苦痛を完全に取り除こうとするのではなく、「不快な感情とどのように向き合うか」が不安のコントロールに大きく影響することが分かります。
2-2. 苦痛耐性と不安感受性の相互作用
次に、苦痛耐性と不安感受性が相互に影響を及ぼして不安症状を悪化させるのかについて検討されました。
しかし、両者が相乗的に作用するという明確な証拠は得られませんでした。
つまり…
✔苦痛耐性が低いことは、それ自体が不安症状を悪化させる要因となり得る。
✔不安感受性が高いことも、不安の感じ方を強めるが、それが苦痛耐性と直接的に結びついているわけではない。
この結果は、苦痛耐性と不安感受性が、それぞれ独立して不安症状に影響を与える可能性が高いことを示唆しています。
2-3.研究結果が示す心理的アプローチの重要性
この研究の結果から、苦痛耐性を向上させることが、不安症状を和らげるカギの一つとなることが分かりました。
苦痛耐性を高めることで、パニック症状や全般性不安、社交不安、強迫性障害のリスクを低減できる可能性があります。
また、不安感受性が高い方は、不安を過度に危険視しないような心理的ケア(例:認知行動療法)を行うことで、不安症状を軽減できる可能性があります。
まとめ:苦痛耐性を高め、不安感受性をコントロールすることが重要
この研究から、苦痛耐性が低いことが不安症状の悪化に関連していることが示されました。
不安感受性と苦痛耐性は相互に影響するのではなく、それぞれ独立した要素として不安に関与している可能性が高いことも分かりました。
これらの知見を踏まえると…
✔苦痛耐性を高めることで、不安の影響を軽減できる
✔不安感受性を調整することで、不安を過度に危険視しなくなる
✔心理的なケア(マインドフルネスや認知行動療法)が有効な可能性がある
といったことが、不安のコントロールに役立つと言えます。
不安を感じることは誰にでもありますが、その影響を減らす方法を得ることで、より安心して生活を送ることが可能です。
不安が続く場合は、一人で抱え込まず、適切なサポートを活用してみましょう。
参考論文
Anxiety Symptomatology: The Association with Distress Tolerance and Anxiety Sensitivity
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この記事の執筆者
駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)
心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。
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