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トラウマを抱えた心に優しく:トラウマインフォームドケアの実践~神戸市、芦屋市、西宮市のカウンセリングの実践より~

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トラウマを抱えた心に優しく:トラウマインフォームドケアの実践

トラウマを抱えた心に優しく:トラウマインフォームドケアの実践

2025/03/12

みなさん、こんにちは。

神戸市や芦屋市、西宮市などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。

 

さて、過去のトラウマ(心の傷)が、現在の思考や感情、行動に影響を与えている可能性があることは、近年の心理学研究で明らかになっています。

 

トラウマというと、虐待や災害などの大きな出来事を思い浮かべるかもしれませんが、「自分は大したことではない」と思っていた出来事が、実は心に深く影響を及ぼしていることもあるのです。

 

そんな中で注目されているのが 「トラウマインフォームドケア(TIC:Trauma-Informed Care)」 というアプローチです。

 

これは、医療や福祉、教育などの場で使われているトラウマに配慮したケアの方法ですが、実は私たち一人ひとりの生活にも応用できるもの です。

 

今回のブログでは、「Trauma-Informed Care Implementation」 という論文を踏まえつつ、トラウマインフォームドケアの基本的な考え方を紹介し、「自分自身に優しくケアするための方法」 について考えていきたいと思います。

 

1.トラウマインフォームドケア(TIC)とは?~トラウマを理解し、自分を大切にするケアの考え方~


トラウマインフォームドケア(TIC:Trauma-Informed Care) とは、「その人が過去に経験したトラウマを理解し、配慮しながらケアを行う」 というアプローチです。

 

本来は、医療・福祉・教育などの専門分野 で活用されている考え方ですが、先述しましたように、実は私たち一人ひとりの日常生活にも応用できます。

 

トラウマは、私たちの感情、思考、行動に大きな影響を及ぼすことがあります。

 

しかし、それは決して「克服しなければならないもの」ではなく、「どのように向き合い、ケアしていくか」 が大切です。

 

トラウマインフォームドケアの基本理念は、「人はそれぞれ異なる過去を持ち、その経験が今の行動や考え方に影響を与えている」 ということを理解し、尊重することです。

 

トラウマを抱えた自分に優しく接する ことで、心の安全を守りながら、少しずつ自己肯定感を高め、より生きやすくすることができます。

 

1-1.トラウマインフォームドケアの基本原則~6つの柱~


「トラウマを抱えた方が、安心して過ごせる環境を作るために重要な6つの原則」 が、トラウマインフォームドケアにはあります。

 

これらは、医療機関や福祉サービスの現場での対応指針として用いられるものですが、個人レベルでのセルフケアにも応用可能です。

 

① 安全(Safety)


トラウマを抱えた方にとって、何より大切なのは「安心できる環境」を整えることです。

 

● 心理的・感情的な安全を確保するためにできること

 

✔「今、自分はどんな気持ちを感じているのか?」 を確認する時間を持つ
✔感情を無理に抑え込まない(「こんなことで傷ついてはダメ」ではなく、「今の自分はこう感じているんだ」と認める)
✔リラックスできる場所を作る(好きな香り、音楽、インテリアを活用する)

 

トラウマの影響があると、人は「常に警戒心が高まった状態」になりがちです。

 

「ここは安全な場所だ」「今の自分を守れる」 と思える空間を作ることが、心を落ち着かせる第一歩になります。

 

② 信頼性と透明性(Trustworthiness & Transparency)


トラウマを抱えた方は、「予測できないこと」や「突然の変化」に対して強い不安を感じることが多い傾向があります。

 

そのため、「信頼できる自分」との関係を築くことが重要になります。

 

● 自分との信頼関係を築くためにできること

 

✔「今日は無理をしない」「疲れたら休む」と決めたら、それを守る
✔「やると決めたこと」を無理のない範囲で実践する(例えば、「夜10時以降はスマホを見ない」など、小さなルールを決める)
✔自分自身に対しても透明性を持つ(「本当はしんどいのに無理している」と気づいたら、自分の感情を認める)


日々の積み重ねで「自分は、自分を大切にできる存在だ」と信じられるようになることが、心の安定につながります。

 

③ ピアサポート(Peer Support)


トラウマを抱える方は「自分だけがこんな気持ちを抱えているのでは?」 という孤独感に苛まれることがあります。

 

しかし、「同じような経験をした人とつながること」 で、「一人じゃない」と感じられるようになります。

 

● ピアサポートを活用するためにできること

 

✔信頼できる人と気持ちを共有する(友人や家族、カウンセリングを利用する)
✔SNSやオンラインのコミュニティを活用する(同じ悩みを持つ人の投稿を読むだけでもOK)
✔本やブログを通じて、自分と同じような経験をした人の話を知る


「自分の気持ちを分かってくれる人がいる」と思えるだけで、孤独感が和らぎ、自己理解が深まることがあります。

 

④ 協力と相互関係(Collaboration & Mutuality)


「自分だけで頑張らなければ」 と思うと、心の負担が大きくなります。

 

トラウマインフォームケアでは、「助けを求めることは悪いことではなく、むしろ回復にとって重要である」という考え方を大切にしています。

 

● 人と協力しながら、心の負担を減らすためにできること

 

✔信頼できる人に頼る勇気を持つ(「話を聞いてもらうだけでいい」と思って伝えてみる)
✔小さなサポートを受け入れる(買い物を頼む、話を聞いてもらうなど)
✔カウンセリングなど、専門的なサポートを検討する

 

トラウマを抱えていると、「人を信用するのが怖い」「一人でなんとかしなきゃ」と思いがち ですが、適切な人との関係性が回復の大きな力になります。

 

⑤ 力を引き出す(Empowerment)


トラウマを抱えていると、「自分には力がない」「どうせできない」 という無力感を感じることがあります。

 

トラウマインフォームケアでは、「できないこと」ではなく、「できること」に目を向ける ことを大切にします。

 

● 自分の力を取り戻すためにできること

 

✔「今日は〇〇ができた」と記録する(ウォーキング、料理、本を読むなど何でもOK)
✔小さな成功体験を積み重ねる(毎日1分のストレッチなど)
✔「苦手なことに挑戦する」ではなく、「得意なことを伸ばす」視点を持つ


⑥ 文化的・歴史的・ジェンダー的な配慮(Cultural, Historical & Gender Issues)


「他人と比べず、自分のペースで回復する」 という視点を持つことが重要です。

 

● 自分の価値観を大切にするために

 

✔「〇〇すべき」と考えるのをやめる
✔自分の価値観に合う生き方を選ぶ(仕事、趣味、人間関係)

 

2.トラウマインフォームドケアを日常に取り入れる方法


トラウマインフォームドケアは、過去の経験が現在の心や行動にどのように影響を与えているのかを理解し、自分自身に優しく接することで、心の安全を確保しながら回復へ向かうためのアプローチです。

 

これは、病院やカウンセリングの現場だけでなく、個人レベルでも日常生活に取り入れることができます。

 

具体的にどのように実践できるのか、以下の方法を紹介します。

 

① 自分にとって「安心できる環境」を作る


トラウマインフォームドケアでは、「安全」が最も重要な要素 の一つとされています。

 

これは、物理的な意味だけでなく、心理的・感情的にも安心できる環境を整えることを意味します。

 

例えば、トラウマの影響で「常に緊張している」「周囲に警戒しやすい」と感じることがあるかもしれません。

このような場合、意識的に「安心できる空間」や「リラックスできる時間」を確保すること が大切です。

 

● 安心できる環境を作るためにできること

 

自分だけのリラックスできる空間を整える


✔部屋をシンプルにして、落ち着くインテリアを取り入れる
✔アロマやお香など、好きな香りを使う
✔心が休まる写真やお気に入りのアイテムを置く

 

毎日少しの時間でも「落ち着ける時間」を持つ


✔深呼吸をする(息をゆっくり吸って、ゆっくり吐く)
✔5〜10分の散歩をする
✔自然の音や、心地よい音楽を聴く


トラウマを抱えていると、日常のちょっとした出来事でも気持ちが揺らぎやすくなります。

 

そのため、自分が落ち着ける場所や習慣を作ることが、心の安全を確保する第一歩となります。

 

② 自分との信頼関係を築く


トラウマの影響で、「どうせ自分なんて」「私はダメだ」と思ってしまうことがあるかもしれません。

 

しかし、トラウマインフォームドケアでは、自分との信頼関係を築くことが回復の大きな鍵となります。

 

自分を責めるのではなく、「今の自分を大切にする」という視点を持つことが重要です。

 

● 自分との信頼関係を築くためにできること

 

「無理をしない」と決めたら、それを守る


✔疲れているなら「今日は何もしなくていい」と自分に許可を出す
✔「すべて完璧にやらなければならない」という考えを手放す

 

● ネガティブな感情が湧いても、否定せずに受け入れる


✔「こんなことで落ち込んでしまうなんてダメ」と思うのではなく「今、私はこう感じている」と認める
✔「この感情があるのは自然なこと。時間とともに落ち着いていく」と意識する

 

「自分を責める」のではなく、「今の自分に優しくする」という視点を持つことで、心が少しずつ回復し、自己肯定感も育まれます。

 

③ 小さな「できた」を積み重ねる


トラウマインフォームドケアでは、「力を引き出す(Empowerment)」 ことが大切だとされています。

 

これは、「できないこと」ではなく、「できること」に目を向けることを意味します。

 

トラウマを抱えていると、「あれができなかった」「また失敗した」と、できなかったことばかりに注目してしまう ことがあります。

 

ですが、たとえ小さなことでも、「できたこと」を意識することで、少しずつ自信を取り戻すことができる のです。

 

● 「できた」を積み重ねるためにできること

 

✔「今日は〇〇ができた」と記録する(どんなに小さなことでもOK)
✔「今日は10分だけ運動できた!」
✔「仕事に行けた」
✔「友達と話せた」
✔「好きな本を読んだ」

 

● 「すべてできなくてもOK」という気持ちを持つ


具体例:「今日は1つだけできれば大成功!」という意識を持つ


ポイントは、「特別なこと」ではなく、日常の中のちょっとした「できた」ことを意識することです。

 

これを続けることで、「私はちゃんと前に進めているんだ」と思えるようになります。

 

3.まとめ:トラウマインフォームドケアを日常に取り入れることで、心を守る


トラウマインフォームドケアは、「過去の経験が今の自分にどのような影響を与えているのかを理解し、それを踏まえた上で自分を大切にする方法」です。

 

トラウマがあると、無意識のうちに「自分を守るための行動」や「思考のクセ」ができてしまいます。

 

しかし、それに気づき、少しずつ対処していくことで、心の安全を確保しながら回復へと向かうことができます。

 

✔安心できる環境を作る(リラックスできる空間や時間を確保する)
✔自分との信頼関係を築く(無理をしない・感情を受け入れる)
✔小さな「できた」を積み重ねる(成功体験を意識する)

 

トラウマからの回復は、決して「忘れること」や「乗り越えること」ではありません。

 

むしろ、「今の自分を理解し、大切に扱うこと」こそが、より生きやすくなるための第一歩です。

 

もし、「一人では難しい」と感じる場合は、カウンセリングなどの専門的なサポートを活用するのも一つの方法です。

 

無理に焦らず、「自分のペースで少しずつ進んでいくこと」 を大切にしましょう。

 

今の自分を受け入れることが、心を癒す最初のステップ です。

 

参考論文

Trauma-Informed Care Implementation Resource Center

 

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この記事の執筆者

駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)

心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。

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