PTSDが親密な関係に悪影響を与える理由
2025/03/26
みなさん、こんにちは。
神戸市や芦屋市、西宮市などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。
さて、今日のテーマはPTSDが親しい方に対してどのような影響を与えるのかを見ていきたいと思います。
近年の心理学の研究によって、「心的外傷後ストレス障害(PTSD)」が親密な関係に大きな影響を与えることが明らかになってきました。
そこで今日は研究論文を踏まえながら、PTSDがどのようにパートナーシップに影響を与えるのか、そしてその改善方法についてご紹介します。
1.PTSDがパートナーとの親密な関係に与える影響とは?
本日ご参照するのは、Staffordら(2011)によって行われた、PTSD(心的外傷後ストレス障害)とパートナーや配偶者との親密な人間関係に関するメタ分析です。
この研究は、PTSDを抱える方がどのようにパートナーとの関係で悩みを抱えやすいのかを、複数の研究データを統合して明らかにしたものです。
この研究結果をもとに、トラウマの具体的な諸症状がパートナーシップにどのような影響を与えるのか、詳しく解説していきます。
1-1.PTSDの主な症状とは?
PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは、命の危険を感じるような出来事や衝撃的な出来事を経験した後に生じる心の反応です。
その症状は大きく以下の3つに分類されます。
① 回避症状
回避症状とは、トラウマの出来事を思い出させるような状況や感情、記憶を意識的または無意識的に避けようとする行動を指します。
具体的には…
✔トラウマに関係した話題を避ける
✔感情的な関わりや親密な人間関係を避ける
✔愛情表現やコミュニケーションを意識的に拒否する
…などの行動が特徴です。
これらの行動は、トラウマによる痛みや苦痛を避けるための防衛的な行動ですが、結果的にパートナーとの距離を生み出し、親密な人間関係を築くことを難しくしてしまいます。
② 過覚醒症状
過覚醒症状とは、常に神経が張り詰めているような状態です。
具体的には…
✔イライラしやすい、怒りやすい
✔集中力が低下する
✔常に警戒していて、リラックスができない
✔睡眠障害(眠れない、浅い眠りが続く)
…といった症状を指します。
過覚醒状態になると、パートナーとの日常のコミュニケーションがストレスとなり、些細なことで怒りが爆発してしまったり、相手に当たってしまうことが増えます。
③ 再体験症状
再体験症状とは、トラウマの記憶や感覚が突然フラッシュバックのように甦る症状です。
具体的には…
✔トラウマの出来事を思い出すフラッシュバック
✔悪夢や睡眠中の恐怖体験
✔トラウマを思い出させる出来事への強い感情的反応
…などがあります。
1-2.PTSD症状がパートナー関係に及ぼす影響
PTSDがパートナーに及ぼす影響について重要なポイントを以下にまとめました。
● PTSD症状の強さと関係性の悪化の関連
PTSDの症状が強ければ強いほど、パートナーとの親密な人間関係に問題が生じやすいことが分かりました。
具体的には、以下のような傾向が現れます。
✔感情が不安定になり、些細なことでイライラしたり、怒りを爆発させてしまう。
✔パートナーが愛情を示しても、それを素直に受け取ることができず、疑ったり拒否してしまう。
✔親密さを避け、相手との距離を置き、関係を築くことを諦めてしまう。
これらの症状が慢性化すると、結果的にパートナーとの間に大きな距離や誤解が生まれ、関係性が悪化してしまうのです。
● 各症状タイプと関係性への影響の違い
また、この研究では、PTSDの各症状タイプ(回避・過覚醒・再体験)とパートナー関係の問題の関連性も比較しました。
その結果は以下の通りです。
✔回避症状が最も強い関連を示しました(相関係数 r = 0.42)。
これは、パートナーとの交流を避ける傾向が、直接的に関係の質を下げるためです。
✔過覚醒症状は中程度の関連(r = 0.36)を示しました。
イライラや怒りっぽさが原因で、日常的な口論や不満が増え、結果的に関係を悪化させます。
✔再体験症状は最も低い関連(r = 0.31)でした。
フラッシュバックや悪夢は本人にとっては苦しい体験ですが、パートナーとの日常的な関係性に直接的な影響を与える度合いは比較的少ないことが分かりました。
しかし、これはあくまでも「比較的」であり、再体験症状がパートナーに対する影響は決して軽いものではないことに注意が必要です。
ただ、研究においてパートナー関係を維持する上で最も深刻な障害となるのは、回避症状(相手を避ける行動)であることが明らかになりました。
● PTSDはパートナーにも大きなストレスを与える
さらに、この研究からは、PTSDを持つ本人だけでなく、パートナー側にも心理的負担が生じることが分かりました。
パートナーは「どう接してよいのかわからない」「自分が悪いのではないか」と困惑や罪悪感を抱えやすくなります。
それが更なるコミュニケーションの不足を生み、お互いにストレスが増加し、関係性がさらに悪化するという悪循環が起きます。
まとめ:PTSDと向き合うためにできること
PTSDがパートナーシップに与える影響は深刻ですが、適切なサポートやカウンセリングによって、症状を緩和し関係を回復させることが可能です。
パートナーとともにカウンセリングを受ける、あるいはお一人でPTSDの症状緩和のためにカウンセリングを受けるということは、当事者がトラウマの症状を理解し、コミュニケーションを改善することにつながります。
そして、それによって再び信頼関係を取り戻す道が開けます。
決して一人で抱え込まず、前向きな一歩を踏み出してください。
あなたの心の回復と、親密な関係性の再構築を心から応援しています。
参考論文
Posttraumatic Stress Disorder and Intimate Relationship Problems: A Meta-Analysis
----------------------------------------------------------------------
こころのケア心理カウンセリングRoom
兵庫県芦屋市浜芦屋町1-27 サニーコート浜芦屋302号
電話番号 : 090-5978-1871
----------------------------------------------------------------------
この記事の執筆者
駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)
心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。
プロフィールはこちら