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うつ病における認知(考え)の役割とその改善方法~神戸、芦屋、西宮のカウンセリングサービスの実践~

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うつ病における認知(考え)の役割とその改善方法

うつ病における認知(考え)の役割とその改善方法

2024/11/20

みなさん、こんにちは。

神戸市や芦屋市、西宮市などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。

 

さて、心理的な健康は、私たちの日常生活や幸せを左右する重要な要素です。

 

特に、抑うつやうつ病を抱える方々にとって、感情や身体症状に加えて「認知(考え方や情報処理)」が大きな影響を与えることがわかっています。

 

今回は、心理学的研究の視点から、抑うつとうつ病における認知の役割や治療方法について、神戸・芦屋・西宮で提供されるカウンセリングサービスの視点を交えながらご紹介します。

 

抑うつとうつ病における認知の役割


抑うつやうつ病は、単に感情の問題として捉えられることが多いですが、実際には「認知」(物事の捉え方や情報処理の仕方)が非常に深く関与しています。

 

研究論文「Cognition and Depression: Current Status and Future Directions」では、抑うつやうつ病の発症と持続における認知の重要性を強調しています。

 

本節では、抑うつやうつ病における認知の役割を、より詳細に解説します。

 

1. 認知(考え)の影響を理解する重要性


抑うつやうつ病の認知的側面を理解することは、症状の発症メカニズムや治療法を構築するうえで不可欠です。

 

認知的特徴、つまり考え方の性質は、抑うつやうつ病の「根本的な原因」や「持続要因」として機能し、以下のような症状に影響を与えます

 

●否定的な自己評価(例:「私は無価値だ」)
●過去の失敗への執着(反すう思考)
●将来への希望喪失(絶望感)


これらの認知的特徴は、抑うつの感情的症状(悲しみ、不安など)や身体的症状(疲労感、食欲不振など)と密接に関連しています。

 

2. 抑うつやうつ病に特有の認知パターン


否定的認知バイアス


否定的認知バイアスとは、物事を過度に否定的に解釈し、肯定的な情報を見逃す傾向です。

 

このバイアスは、抑うつやうつ病を抱える方に特有の認知的特徴であり、以下のような形で現れます

 

●自己評価の低下:「自分には何の価値もない」といった否定的な自己認識。
●環境の否定的な捉え方:「誰も自分を助けてくれない」と思い込む。
●将来への悲観的な見方:「この状況は一生変わらない」と絶望を抱く。


これらの認知バイアスは、特にストレスフルな出来事を経験した際に顕著になり、抑うつ症状を増幅させます。

 

記憶の選択的バイアス


記憶の選択的バイアスは、過去の否定的な出来事や感情を記憶しやすく、ポジティブな出来事を思い出しにくいという特徴を持ちます。

 

例えば…

 

●成功した経験があっても、その記憶は曖昧で、自分の失敗ばかりを強く覚えている。

●楽しい出来事を思い出す努力をしても、すぐにネガティブな記憶が浮かんでしまう。


このバイアスは、抑うつの持続や再発の一因となります。

 

反すう思考(Ruminative Thinking)


反すう思考は、過去の失敗や否定的な感情について繰り返し考えることで、ネガティブな思考が止まらなくなる状態です。

 

具体的には…

 

●「どうして自分はこうなってしまったのか?」と考え続ける。
●問題解決には至らず、むしろネガティブな感情が増幅される。


反すう思考は、抑うつの悪化や長期化を引き起こし、将来の抑うつ再発のリスクを高めることが研究で示されています。

 

問題解決能力の低下


抑うつやうつ病を抱える方は、問題解決能力が低下することがあります。

 

これには以下のような特徴が見られます

 

●柔軟な思考が難しくなる:新しい視点を持つことが困難。
●迅速な意思決定ができない:些細な選択でも決断に時間がかかる。
●失敗への過剰な恐れ:行動を起こすこと自体に対する恐れが強まる。


これにより、日常生活や職場でのパフォーマンスが著しく低下することがあります。

 

3. 認知と抑うつの双方向の関係


抑うつやうつ病と認知の関係は双方向であることが知られています。

 

すなわち…

 

●抑うつ状態が認知機能を低下させる。
●認知機能の低下が抑うつ症状を悪化させる。


この双方向の関係が、抑うつの治療や予防を難しくしている要因の一つとされています。

 

抑うつが認知に与える影響


抑うつ状態では、注意力、記憶力、実行機能といった基本的な認知機能が低下します。

 

このため、ネガティブな情報に過度に集中してしまい、症状が悪化します。

 

認知が抑うつに与える影響


否定的な認知パターンや反すう思考は、抑うつの症状を引き起こし、持続させます。

 

このため、これらの認知パターンを修正することが治療において重要です。

 

認知モデルと抑うつ:抑うつを理解する鍵


抑うつ(うつ病)を理解し治療するために、認知の役割を中心とした理論的枠組み、つまり「認知モデル」は非常に重要な概念です。

 

このモデルは、抑うつ症状の発症、持続、再発において、物事の捉え方や思考パターンがどのように影響するかを明確にします。

 

研究では、認知モデルに基づいた抑うつのメカニズムを深く探求し、効果的な介入法の基盤を提供しています。

 

以下では、認知モデルと抑うつの関連をより詳細に解説します。

 

1. ベックの認知モデル:抑うつの基本的理解


アーロン・ベック(Aaron Beck)が提唱した認知モデルは、抑うつの認知的基盤を説明する主要な理論です。

 

このモデルは、抑うつの発症と持続に「否定的思考パターン」がどのように寄与するかを示しています。

 

認知的三角形


ベックのモデルでは、抑うつを次の3つの相互に関連する否定的な認知パターンで説明します。

 

これを「認知的三角形」と呼びます

 

●自己に対する否定的な見方

「私は無価値だ」「何をやってもうまくいかない」といった自己評価の低下。


「上司が私に声をかけないのは、私が能力不足だからだ」と考える。


●世界に対する否定的な見方

「誰も私を助けてくれない」「社会は冷たい」といった周囲の世界に対する悲観的認知。


「同僚たちは私を避けている」と解釈する。


●未来に対する否定的な見方

「この先も状況は変わらない」「人生に希望はない」といった未来への絶望感。


「どれだけ頑張っても状況は良くならない」と感じる。


否定的スキーマ


ベックは、抑うつを持つ人が「否定的スキーマ(schema)」を持つと提唱しました。

 

スキーマとは、情報を解釈する際の枠組みであり、過去の経験や学習に基づいて形成されます。

 

否定的スキーマを持つ人は、以下のような特性を示します

 

●過剰な一般化

「一度失敗したから、私は何をやっても失敗する」
●全か無かの思考

「完全に成功しない限り、価値はない」
●選択的抽出

「肯定的な評価を無視し、否定的な側面だけに注目する」


2. 認知的脆弱性モデル:抑うつリスクの解明


認知的脆弱性モデルは、特定の思考パターンや認知スタイルが、ストレスを受けたときに抑うつを引き起こしやすいという考え方です。

 

このモデルは、ベックの認知モデルをさらに発展させ、以下の点を強調しています

 

抑うつリスクを高める認知的特徴


ネガティブな帰属スタイル

ストレスフルな出来事を「自分のせい」と考え、否定的な結論を引き出す傾向。


「試験に落ちたのは、私が完全に無能だからだ」と考える。


固定的な信念

自分の能力や状況が変わらないと信じる。


「私はいつまでもこの状態から抜け出せない」。


ストレスとの相互作用


認知的脆弱性モデルでは、ストレスが否定的認知パターンを活性化させると考えられています。

 

例えば、失業や失恋といったストレスフルな出来事が、既存の否定的スキーマを強化し、抑うつを引き起こします。

 

3. 反すうモデル:抑うつの持続要因


反すう(Ruminative Thinking)は、抑うつの持続に関与する主要な認知的プロセスです。

 

このモデルは、以下の点を強調します

 

反すうの特徴


●過去への執着:「どうしてあのとき失敗してしまったのか」と過去の出来事を繰り返し考える。
●解決策の欠如:考え続けることが、実際の問題解決に繋がらない。
●感情の増幅:ネガティブな感情を和らげるどころか、悪化させる。


反すうと抑うつの悪循環


反すうは、抑うつの症状を持続させる悪循環を形成します。

 

例えば…

 

ネガティブな出来事が起こる。
「なぜ自分だけがこんな目に遭うのか」と考える。
結果として、自己評価が低下し、さらに抑うつ症状が悪化する。


4. 抑うつを引き起こす認知プロセスの共通点


ベックの認知モデル、認知的脆弱性モデル、反すうモデルには共通するテーマがあります。

 

それは、否定的なスキーマや認知バイアスが抑うつを引き起こし、持続させるという点です。

 

これらのモデルが強調するのは、以下の2つのポイントです

 

(1)否定的認知パターンが抑うつを引き起こす
自己、環境、未来に対する悲観的な認識が抑うつの原因となる。


(2)認知の改善が治療に繋がる
否定的な認知を現実的かつポジティブに修正することで、抑うつ症状が軽減する。


5. 認知モデルの臨床的意義


抑うつに対する認知モデルの理解は、治療法の開発において重要な役割を果たします。

 

認知行動療法(CBT)


否定的認知を特定し、現実的な視点に修正することで、抑うつ症状を改善します。


ベックの認知モデルに基づき、抑うつ治療において最も広く用いられる方法です。


マインドフルネス認知療法(MBCT)


反すう思考を減少させ、現在の瞬間に集中する能力を養います。


再発予防に特に有効とされています。



認知モデルは、抑うつの発症、持続、再発を理解するうえで不可欠なフレームワークを提供します。

 

ベックの認知的三角形、認知的脆弱性モデル、反すうモデルは、それぞれ異なる視点から抑うつの認知的特徴を明らかにし、治療法の基盤を築いています。

 

特に神戸、芦屋、西宮で提供されるカウンセリングサービスでは、これらのモデルに基づく認知行動療法やマインドフルネス療法を通じて、否定的な認知パターンの改善を目指す支援が可能です。

 

抑うつに悩む方は、専門的なサポートを受けることで、前向きな変化を実現する第一歩を踏み出すことができるでしょう。

 

参考論文

Cognition and Depression: Current Status and Future Directions

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この記事の執筆者

駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)

心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。

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