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うつ病の方が職場や家庭での「つながり」を取り戻す方法~神戸、芦屋、西宮のカウンセリングサービスの実例~

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うつ病の方が職場や家庭での「つながり」を取り戻す方法

うつ病の方が職場や家庭での「つながり」を取り戻す方法

2024/11/26

みなさん、こんにちは。

神戸市や芦屋市、西宮市などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。

 

私たちの生活において、家族、友人、同僚との関係や社会での役割は、大切な心の支えとなります。

 

しかし、抑うつ(うつ病)を抱えているご本人にとって、これらの社会的機能を維持することが困難になることがあります。

 

今回のブログでは、「Social Functioning in Depression: A Review」という論文に基づき、抑うつが社会的機能に与える影響とその改善方法について詳しく解説します。

 

抑うつと社会的機能の基本理解


抑うつとは?


抑うつ(Depression)は、感情、思考、行動に深刻な影響を及ぼす心理的な状態です。

 

気分の落ち込みや興味・喜びの喪失が主要な特徴ですが、それに加えて以下のような症状が見られることがあります

 

・持続的な悲しみや絶望感
・疲労感やエネルギーの低下
・集中力の欠如や意思決定の困難
・食欲や睡眠の変化
・自己否定的な思考(例:「自分は無価値だ」「誰も自分を必要としていない」)

これらの症状は、日常生活や社会的活動、仕事、学業に影響を及ぼし、個人の全体的な機能を低下させることがよくあります。

 

社会的機能とは?


社会的機能とは、個人が社会の中で適切に役割を果たし、他者との関係を維持し、交流できる能力を指します。

 

これには以下のような側面が含まれます

 

・人間関係:友人、家族、同僚などとの相互作用。信頼や共感、親密さを築く能力。
・職業的機能:仕事の遂行能力、職場での人間関係、チームへの貢献。
・日常生活の活動:家事や買い物、趣味などの日常的な役割の維持。
・社会的役割:地域活動やボランティア、社会的な責任を果たす能力。


これらの能力が損なわれると、孤立感が増し、さらに抑うつが悪化する悪循環に陥ることがあります。

 

抑うつが社会的機能に与える影響


抑うつ(うつ病)は、個人の心理的な健康だけでなく、社会的なつながりや役割遂行能力にも深刻な影響を及ぼします。

 

社会的機能が低下することで、孤立感やストレスが増加し、抑うつがさらに悪化する負のスパイラルに陥ることがあります。

 

ここでは、抑うつがどのように社会的機能に影響を与えるのか、具体的な側面から詳しく解説します。

 

1. 人間関係の維持が難しくなる


(1)孤立感の増加


抑うつを抱えるご本人は、自分が他人に迷惑をかけていると感じたり、交流するエネルギーを失ったりすることで、他者との接触を避ける傾向があります。

 

この結果、友人や家族との関係が希薄になり、孤独感が増大します。

 

(2)ネガティブな認知(考え)の影響


抑うつの特徴である否定的思考パターンが、人間関係に悪影響を及ぼします。

 

例えば、相手の些細な言動を「拒絶」や「批判」として捉えてしまうことがあり、これが誤解や衝突を引き起こします。

 

(3)社会的サポートの減少


他者との関係が薄くなることで、日常生活における心理的・実際的なサポートが不足します。

 

このサポートの欠如が、さらに孤立感と抑うつを悪化させます。

 

2. コミュニケーション能力の低下


(1)コミュニケーションの質の低下


抑うつを抱えるご本人は、感情を適切に表現したり、他者の感情に共感したりする能力が低下します。

 

これにより、対話がぎこちなくなり、他者との距離が広がります。

 

(2)誤解を生むリスク


否定的な自己評価が強いため、自分の意図を正確に伝えられなかったり、相手の言葉をネガティブに受け取ってしまうことがあります。

 

この結果、人間関係において誤解が生じやすくなります。

 

3. 職場や学業でのパフォーマンス低下


(1)集中力や注意力の低下


抑うつの典型的な症状として、集中力の低下が挙げられます。

 

これにより、職場や学校でのタスク遂行が困難になり、効率や生産性が著しく低下します。

 

(2)欠勤や遅刻の増加


エネルギーの欠如や感情的な負担により、仕事や学校に行くこと自体が難しくなることがあります。

 

これが欠勤や遅刻の増加につながり、責任感や自己効力感をさらに低下させます。

 

(3)人間関係の悪化


職場や学校では、上司や同僚、教師や友人との関係が重要ですが、抑うつが原因でコミュニケーションが疎遠になり、周囲との摩擦が増えることがあります。

 

4. 家庭生活への影響


(1)家族との関係の悪化


抑うつは、家族関係にも大きな影響を及ぼします。

 

例えば、感情の起伏が激しくなることで、家族との言い争いが増える場合があります。

 

また、家族にサポートを求めることをためらうため、孤立感が増すこともあります。

 

(2)育児や家事の負担


親や配偶者としての役割を果たすことが難しくなり、育児や家事に支障をきたす場合があります。

 

この状況が家族内でのストレスを増加させ、家庭全体の雰囲気を悪化させる要因となります。

 

5. 社会的活動の減少


(1)趣味や余暇活動への参加意欲の低下


抑うつは、趣味や余暇活動への興味や喜びを失わせるため、社会的な活動範囲が狭まります。

 

この結果、社会的ネットワークが縮小し、孤立感が強まります。

 

(2)交友関係とのつながりの喪失


交友関係への参加が減少することで、社会との接点が少なくなり、自分が他者から必要とされているという実感が失われがちになります。

 

6. 孤立感とその悪循環


抑うつによる社会的機能の低下は、孤立感を生み出し、その孤立感がさらに抑うつを悪化させるという悪循環を形成します。

 

この悪循環を断ち切るためには、早期の支援と介入が不可欠です。

 


抑うつが社会的機能に与える影響は、個人だけでなく、その周囲の人々や環境にも広がります。

 

家庭や職場での役割遂行が困難になり、人間関係が希薄化することで、抑うつがさらに悪化するという負のスパイラルが生じやすくなります。

 

 

こうした状況を改善するためには、心理療法や薬物療法、生活習慣の改善を通じた統合的なアプローチが必要です。

 

抑うつが社会的機能を低下させるメカニズム


抑うつ(うつ病)は、社会的機能のさまざまな側面に深刻な影響を与えますが、その背景にはいくつかの心理的、生理的なメカニズムが関与しています。

 

これらのメカニズムは複雑に絡み合いながら、社会的スキルや人間関係の維持能力を低下させ、孤立感や役割遂行の困難さを引き起こします。

 

ここでは、抑うつが社会的機能を低下させる主なメカニズムを詳しく解説します。

 

1. 認知的メカニズム


(1)否定的思考パターン(Negative Thinking Patterns)


抑うつの特徴的な症状として、自己否定的な考えや世界に対する悲観的な認識があります。

 

この「認知的三角形」(自分、他者、未来に対する否定的な見方)は、以下のような影響を及ぼします。

 

自己否定

「自分には価値がない」「人に迷惑をかけている」といった考えが他者との接触を避ける要因になります。


他者への不信

「誰も自分を理解してくれない」という思いが、人間関係の構築を困難にします。


未来への悲観

「どうせ何をしても無駄だ」と感じ、社会的活動への意欲が低下します。


(2)認知的バイアス


抑うつを抱えるご本人は、ネガティブな情報に過剰に反応し、ポジティブな情報を軽視する認知的バイアス(傾向)を持っています。

 

例えば、他者からの褒め言葉を「お世辞」として受け取り、批判的な言葉を「本音」として過大に評価する傾向があります。

 

(2)記憶のバイアス


過去のネガティブな記憶を優先的に思い出し、ポジティブな出来事を忘れがちです。

 

この記憶の偏りが、自己評価の低下や他者との信頼関係の悪化につながります。

 

2. 感情調整の困難(Dysregulation of Emotion)


(1)ネガティブ感情の増幅


抑うつの状態では、悲しみや怒り、不安といったネガティブ感情が過剰に生じ、それをコントロールすることが難しくなります。

 

この感情のコントロール不全が、以下のような社会的問題を引き起こします。

 

感情的な衝突

些細なことでイライラしやすくなり、他者との関係がぎくしゃくします。


感情の回避

ネガティブ感情に対処するエネルギーがなくなり、人間関係や社会的活動を避けるようになります。


(2)感情の鈍麻


逆に、感情が麻痺したような状態になることもあります。

 

この場合、喜びや共感といったポジティブな感情が減少し、他者との交流が億劫になります。

 

3. 生理的メカニズム


(1)脳内ネットワークの異常


抑うつは、脳の感情調整や社会的スキルに関連する領域に影響を及ぼします。

 

扁桃体の過剰活性化

ネガティブな感情を処理する扁桃体が過剰に反応するため、否定的な出来事や言葉に敏感になります。


前頭前野の低下

合理的な意思決定や感情制御を担う前頭前野の機能が低下し、感情のコントロールが難しくなります。


神経伝達物質の不均衡

セロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質のバランスが崩れることで、社会的行動に必要な意欲や報酬感覚が低下します。


(2)身体的影響


疲労感やエネルギーの欠如、身体的な痛みが社会的活動の制限要因となる場合があります。

 

4. 社会的スキルの低下


(1)コミュニケーション能力の低下


抑うつを抱えるご本人は、自分の感情や意見を適切に表現することが難しくなるため、以下の問題が発生します。

 

自己表現の不足

自分のニーズや感情を他者に伝えることができず、誤解を招く。


共感力の低下

他者の気持ちを理解する力が低下し、対人関係がぎくしゃくします。


(2)社会的回避行動


他者との接触を避ける回避行動が、孤立感を強化します。

 

この行動パターンは、社会的なスキルの練習機会を減少させ、さらに社会的機能を低下させます。

 

5. 行動的メカニズム


(1)無力感による意欲低下


抑うつは、「自分には何もできない」という無力感を生じさせ、それが行動全般を抑制します。

 

この状態では、友人との交流や社会的イベントへの参加など、社会的活動を行うこと自体が困難になります。

 

(2)回避行動の強化


抑うつの症状が続くと、社会的状況を避ける行動が強化されます。

 

例えば、友人との約束をキャンセルすることが「安心感」をもたらすため、その行動が繰り返されやすくなります。

 

6. 環境との相互作用


(1)社会的サポートの減少


抑うつによって他者との関係が希薄化すると、社会的サポートの不足が新たなストレス要因となり、抑うつがさらに悪化します。

 


抑うつが社会的機能を低下させるメカニズムは、多岐にわたる認知的、感情的、生理的要因が複雑に絡み合っています。

 

このメカニズムを理解することは、適切な支援や治療を提供するための第一歩です。

 

社会的機能改善のためのアプローチ


抑うつ(うつ病)が原因で低下した社会的機能を改善するには、認知的・感情的・行動的な側面を包括的に支援するアプローチが効果的です。

 

以下に、集団療法を除く効果的な手法を詳しく解説します。

 

1. 認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy, CBT)


(1)概要


CBTは、抑うつに伴う否定的な思考や認知(考え)のパターンを特定し、それを現実的でポジティブなものに再構築する心理療法です。

 

(2)手法


否定的思考の特定と修正
例:「自分は他人に迷惑をかける存在だ」という思考を、「相手は自分と同じように助け合いたいと思っているかもしれない」と修正する。


行動実験
小さな社会的行動を計画し、実践することで、自分の否定的な思い込みを検証する。

 

(3)効果


・他者との関係に対する不安を軽減し、前向きな社会的行動を促進します。
・人間関係における自己肯定感を高め、コミュニケーションの質を向上させます。


2. 対人関係療法(Interpersonal Therapy, IPT)


(1)概要


IPTは、抑うつに関連する特定の対人関係の問題(例:喪失、対人衝突、社会的役割の変化など)に焦点を当て、改善を目指す心理療法です。

 

(2)手法


役割の交渉
家庭や職場での役割の期待や現実のズレを調整する。


コミュニケーション改善
対人関係における適切な表現方法や、誤解を避ける話し方を練習する。


(3)効果

 

・対人関係の緊張を軽減し、新たな関係を築くための基盤を提供します。

・孤立感を減少させ、他者とのつながりを回復する助けとなります。


3. 薬物療法(Pharmacotherapy)


(1)概要


薬物療法は、抗うつ薬を用いて脳内の神経伝達物質のバランスを調整し、感情や認知機能を安定させる治療法です。

 

(2)代表的な薬剤


選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)
セロトニンの再取り込みを抑え、神経間のセロトニン濃度を増加させる。


セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)
セロトニンとノルアドレナリンの濃度を増加させる。


(3)効果


・感情の安定化により、社会的行動に取り組む意欲が増します。
・集中力や記憶力を改善し、対人関係での機能を高めます。


(4)注意点


副作用が出る可能性があるため、医師の指導のもとで使用する必要があります。


4. ライフスタイル改善


(1)運動


方法
散歩、ジョギング、ヨガなど、日常に取り入れやすい運動を行う。


効果
→エンドルフィンの分泌を促し、気分を高めます。
→ストレスを軽減し、エネルギーレベルを上げることで社会的活動に取り組む活力が生まれます。


(2)睡眠の改善


方法
就寝前のデジタル機器の使用を控え、規則正しい睡眠スケジュールを設定する。


効果
脳の回復を促進し、注意力や対人スキルを向上させます。


(3)栄養


方法
栄養バランスのとれた食事を心がける。特にオメガ3脂肪酸やビタミンDが抑うつに効果的とされています。


効果
身体的健康が改善されることで、社会的活動への参加意欲が高まります。


5. マインドフルネスと感情調整


(1)マインドフルネス


方法
瞑想や呼吸法を活用し、現在の瞬間に集中する練習を行う。


効果
ネガティブな感情や思考への過剰反応を減らし、他者との交流に落ち着いて臨むことができます。


(2)感情日記


方法
その日の感情や人間関係の体験を書き出し、何がトリガーになったのかを振り返る。


効果
自分の感情を理解し、適切に表現するスキルが向上します。


6. 行動活性化(Behavioral Activation)


(1)概要


行動活性化は、活動レベルを少しずつ増やし、社会的なつながりを自然に形成していくアプローチです。

 

(2)手法


具体的な行動を計画する
毎日1つの簡単な行動を設定する(例:家族に電話をかける、カフェで店員に挨拶する)。


達成感を得る機会を増やす
週1回、友人や家族との予定を作る。


社会的イベントへの参加
興味のある地域イベントやボランティア活動に参加する。


(3)効果


・社会的接触が増えることで孤立感が軽減されます。
・達成感が得られることで、社会的自信が回復します。

 


社会的機能を改善するためには、心理療法、薬物療法、生活習慣の改善、そして実践的な行動の組み合わせが効果的です。

 

焦らず少しずつ取り組むことで、社会的なつながりや役割を取り戻すことが可能です。

 

最後に:抑うつに悩む方が社会的機能を取り戻すために

 

「Social Functioning in Depression: A Review」は、抑うつが社会的機能に与える影響とその改善方法を科学的に解説しています。

 

この研究は、抑うつを抱えるご本人が社会的なつながりを再構築し、より良い生活を取り戻すための希望を示しています。

 

そして、私のカウンセリングにおいても、この研究の知見を活用したアプローチを行っています。

 

もし孤立感や社会的な困難に悩んでいる場合は、神戸、芦屋、西宮のカウンセリングサービスをご利用ください。専門的な支援が、あなたの一歩を支える力になります。

 

参考論文

Social functioning in depression: a review

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電話番号 : 090-5978-1871

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この記事の執筆者

駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)

心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。

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