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うつ病からの本当の回復のために:うつ病の残存症状とは?~神戸、芦屋、西宮のカウンセリングサービスの実践より~

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うつ病からの本当の回復のために:うつ病の残存症状とは?

うつ病からの本当の回復のために:うつ病の残存症状とは?

2024/12/15

みなさん、こんにちは。

神戸市や芦屋市、西宮市などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。

 

さて、「うつ病は改善に向かっているのに、どうして気分が晴れないのだろう?」と感じたことはありませんか?

 

これは「残存症状」と呼ばれるもので、うつ病が部分的に寛解した後も続く微妙な症状です。

 

たとえば、集中力が続かない、以前ほど楽しさを感じられないといった状態が、日常生活の質を下げてしまうことがあります。

 

このブログでは「Residual symptoms after partial remission: an important outcome in depression」という研究論文の知見をもとに、うつ病の部分寛解後に残る症状について詳しく解説し、それを軽減する方法をお伝えします。

 

うつ病の残存症状とは?


うつ病の治療が進む中で、大部分の症状が和らぎ日常生活がある程度取り戻せた状態を「部分寛解」と呼びます。

 

しかし、部分寛解は治療の最終目標である「完全寛解」とは異なり、まだ一部の症状が残っている状態です。

 

この「残存する症状」を指して「残存症状(Residual Symptoms)」と言います。

 

1.部分寛解と完全寛解の違い


1:部分寛解

 

うつ病の主要な症状(気分の落ち込みや不安など)が治療によって軽減し、患者がある程度の日常生活を取り戻せる段階。

 

しかし、軽度の症状が残っており、まだ心身が完全に安定していない。


2:完全寛解

 

すべてのうつ病症状が消失し、心理的な安定感を取り戻した状態。

 

再発リスクが最も低い段階で、生活の質(QOL)が大幅に改善する。

 


部分寛解のまま治療を終えてしまうと、残存症状が慢性化しやすく、再発のリスクが高まることが知られています。

 

そのため、残存症状を特定し、ケアすることが完全寛解への重要なステップとなります。

 

2.残存症状の具体例


残存症状として代表的なものには、以下のような症状があります

 

・エネルギーの不足


日常のタスクをこなすエネルギーが湧かず、慢性的な疲労感を感じることがあります。

 

たとえば、通勤や簡単な家事でも「休みたい」という気持ちが強くなります。

 

・気分の落ち込み


明らかな抑うつ状態ではないものの、心が晴れず、沈んだ感覚が続くことがあります。

 

この状態では、ポジティブな感情が生じにくく、楽しい出来事も心から楽しめなくなります。

 

・睡眠の問題


残存症状の中で最も一般的なものが睡眠障害です。

 

寝つきが悪くなったり、途中で目が覚める、早朝に目が覚めるといった問題が日中の疲労感をさらに悪化させます。

 

・集中力や記憶力の低下


仕事や趣味に取り組んでいても、以前のように効率的に進めることが難しくなります。

 

たとえば、仕事の細かい作業にミスが増えたり、読み書きに時間がかかることがあります。

 

・意欲の低下


かつて楽しめた趣味や活動への興味が薄れ、行動が制限される状態です。

 

例えば、友人との外出や新しいことへの挑戦に対して「やりたくない」「無理」と感じることが多くなります。

 

3.残存症状が与える影響


残存症状が放置されると、以下のような悪循環が生じる可能性があります

 

・再発リスクの増加


軽度の症状が続くことで、ストレスや体調不良がきっかけとなり再発しやすくなります。

 

特に、治療を中断した場合や不適切な治療が行われた場合、このリスクは高まります。

 

・生活の質(QOL)の低下


残存症状によって、日常生活が制限され、仕事や家庭での役割を果たすことが難しくなることがあります。

 

たとえば、職場でのパフォーマンスの低下や家族との関係がぎくしゃくするなど、社会的な影響が出ることもあります。

 

・慢性的な心身の不調


エネルギー不足や睡眠障害が続くと、身体的な健康にも影響を及ぼしやすくなります。免疫力の低下や生活習慣病のリスクが高まることも報告されています。

 

残存症状の原因


うつ病の治療過程で、多くの症状が緩和される「部分寛解」の段階に達しても、軽度な症状が残ることがあります。

 

この「残存症状」の背景には、いくつかの複合的な要因が関与していると考えられています。

 

以下では、その具体的な要因について詳しく解説します。

 

1. 不完全な治療


治療が途中で中断された場合や、十分な効果を発揮していない場合、残存症状が発生しやすいことが知られています。

 

これは、治療計画の不足や治療法の適切性が関係しています。

 

・薬物療法の調整不足


抗うつ薬の効果が現れるまでには一定の時間がかかりますが、効果を実感する前に治療を中断してしまうケースがあります。

 

また、薬の種類や用量がその人に適していない場合、症状が十分に改善されないことがあります。

 

・心理療法の不十分な進行


認知行動療法(CBT)や対人関係療法(IPT)など、心理療法は長期的な治療が必要です。

 

しかし、途中で通院をやめてしまうと、症状の根本原因に十分に働きかけられないまま残存症状が継続します。

 

・治療へのアクセスの制限


適切な医療や心理的支援を受ける機会が限られている場合、十分な治療が行えないことも原因の一つです。

 

2. ストレスへの弱い耐性


うつ病を抱えている方は、ストレスに対する脆弱性が高く、部分寛解後もストレス要因にさらされると症状が長引くことがあります。

 

・心理的な脆弱性


うつ病の一部の患者は、過去のトラウマや長期的なストレス経験から、ストレスを処理する能力が低下していることがあります。

 

これにより、新しいストレスへの適応が難しくなり、残存症状が増幅されることがあります。

 

・慢性的なストレス要因


例えば、職場の過剰な業務負荷、人間関係の摩擦、家庭内の問題などが、脆弱な状態にある心理的健康に追い打ちをかけます。

 

・ストレス解消スキルの欠如


健康的なストレス解消スキル(例: 問題解決能力、リラクゼーション技術)が不足している場合、ストレスが軽減されず、症状が継続します。

 

3. 生活習慣や環境の影響


治療が順調に進んでいても、生活環境や習慣の問題が残存症状を悪化させることがあります。

 

・不規則な生活リズム


睡眠不足、運動不足、不規則な食事など、生活リズムが乱れると、脳の神経伝達が正常に機能しなくなり、気分が安定しづらくなります。

 

・職場や家庭でのストレス


職場のプレッシャーや家庭内の問題は、回復期の患者にとって大きな負担となります。

 

こうした環境が整備されないままでは、治療効果が十分に得られないことがあります。

 

・社会的孤立


支援的な人間関係が欠如していると、孤独感や孤立感が強まり、残存症状を悪化させる要因となります。

 

4. 生物学的な要因


うつ病は、心理的な要因だけでなく、生物学的なメカニズムとも深く関連しています。

 

残存症状の背後にも、脳内の化学的・構造的な変化が関与している場合があります。

 

・神経伝達物質の不均衡


セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンといった神経伝達物質の不均衡が完全に回復していない場合、残存症状が継続することがあります。

 

特に、気分の安定に関与するセロトニンの低下は、軽度の気分の落ち込みや不安を引き起こします。

 

・脳構造の変化


うつ病では、海馬(記憶や感情調整に関与)や前頭前野(意思決定や問題解決に関与)の活動が低下していることが確認されています。

 

これらの構造的な変化が回復しない場合、集中力や記憶力の低下が続くことがあります。

 

・遺伝的な要因


うつ病の発症には遺伝的要因が関与することも知られています。

 

遺伝的に脆弱性を持つ人では、治療後も症状が残りやすいことがあります。

 

5.残存症状への対応の重要性


これらの要因が絡み合うことで、残存症状は慢性化しやすく、再発のリスクを高めます。

 

しかし、残存症状を特定し、治療や生活改善を通じて対応することで、完全寛解を目指すことが可能です。

 

残存症状を放置せず、自分自身の体調や気分に敏感になることが、再発予防やQOL向上の鍵となります。

 

実践的な対策:残存症状をケアするためのアプローチ


残存症状に適切に対応することは、うつ病からの完全な回復と再発予防において非常に重要です。

 

以下では、それぞれのアプローチを詳細に解説します。

 

1. 治療の継続


部分寛解に達したとしても治療を中断しないことが重要です。

 

症状が大幅に軽減した段階で治療をやめてしまうと、残存症状が慢性化し、再発のリスクが高まります。

 

・薬物療法の見直し


抗うつ薬の効果が十分でない場合、用量の調整や別の種類の薬への切り替えが必要になることがあります。

 

医師との定期的な診察を通じて、自分に最適な治療計画を見つけることが重要です。

 

・心理療法の追加


認知行動療法(CBT)や対人関係療法(IPT)は、残存症状に特に有効です。

 

例えば、CBTではネガティブな思考パターンに働きかけ、感情や行動を改善するためのスキルを学ぶことができます。

 

・治療のフォローアップ


定期的に医師やカウンセラーと相談し、治療経過を確認しましょう。

 

経過を追うことで、症状の再発を防ぎ、治療計画を柔軟に調整することができます。

 

2. 生活習慣の改善


生活習慣の見直しは、残存症状のケアにおいて基本となるステップです。

 

日々の健康的な行動が、気分の安定を支えます。

 

・睡眠の質を高める


良質な睡眠は、心身の回復に不可欠です。以下のポイントを意識しましょう

 

→毎日同じ時間に寝起きすることで、体内時計を整える。


→寝る前1~2時間はスマートフォンやタブレットの使用を控え、リラックスできる環境を整える。


→カフェインやアルコールを控えることで、深い睡眠を促進します。


・適度な運動


軽い身体活動は、エンドルフィン(幸福ホルモン)の分泌を促し、気分を高めます。

 

→ウォーキングやジョギング:1日20~30分の散歩は、気分転換に最適です。


→ヨガやストレッチはリラクゼーション効果とともに、筋肉の緊張を和らげます。


→好きなスポーツやダンスを取り入れて、楽しく体を動かしましょう。


3. ストレス管理


ストレスが増えると、残存症状が悪化する可能性があります。

 

日常生活におけるストレスを軽減するための具体的な方法を取り入れましょう。

 

・マインドフルネス


マインドフルネス瞑想は、不安や過剰な心配を軽減するために効果的です。

 

現在の瞬間に意識を集中させる練習を日課にすることで、心を落ち着けるスキルが身につきます。

 

・深呼吸


短時間でリラックスできる深呼吸は、ストレスを感じたときに簡単に実践できる方法です。

 

→ゆっくり鼻から息を吸い、口から長く吐き出す。


この動作を5分間繰り返すことで、副交感神経が優位になり、リラクゼーション効果が得られます。


・時間の管理


スケジュールにゆとりを持たせることで、日々のストレスを軽減できます。

 

優先順位をつけて、重要なタスクに集中することも効果的です。

 

4. 社会的つながりの維持


孤独感や孤立感は、残存症状を悪化させる要因となります。

 

他者とのつながりを保つことで、心理的な安心感が得られます。

 

・家族や友人との時間を確保する


定期的に信頼できる家族や友人と会話をし、気持ちを共有しましょう。

 

話すことで、孤独感が軽減されます。

 

・コミュニティへの参加


趣味のサークルやボランティア活動など、興味のあるコミュニティに参加することで、新しい人間関係を築くきっかけが生まれます。

 

・相談窓口の活用


メンタルヘルスの専門家だけでなく、地域の支援グループやオンラインコミュニティも有効です。

 

特に、同じ悩みを抱える人々との交流は、気持ちの共有やアドバイスを受ける場として役立ちます。

 

5. セルフケアの習慣化


自分自身を大切にする時間を意識的に作ることは、残存症状の軽減に繋がります。

 

・趣味の時間を楽しむ


以前楽しんでいた活動を再開したり、新しい趣味に挑戦したりすることで、前向きな感情を取り戻します。

 

・リラクゼーションの実践


アロマセラピーやバスソルトを使った入浴など、心身を癒す習慣を取り入れましょう。

 

・小さな目標を設定する


日常生活で達成感を得るために、手軽に実現可能な目標を設定しましょう。

 

例えば、1日に1回散歩に出る、好きな本を読むなどのシンプルなものから始めると良いです。

 

~・~・~・~・~・~・~・~・~


残存症状は、うつ病からの完全な回復を目指す上で避けて通れない課題ですが、適切な治療と生活改善を組み合わせることで軽減が可能です。

 

焦らず一歩ずつ取り組み、少しずつ生活の質を向上させていきましょう。

 

参考論文

Residual symptoms after partial remission: an important outcome in depression

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この記事の執筆者

駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)

心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。

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