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うつ病を維持する自己認識のサイクル:悪循環から抜け出すアプローチ~神戸、芦屋、西宮のカウンセリングサービスの実例より

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うつ病を維持する自己認識のサイクル:悪循環から抜け出すアプローチ

うつ病を維持する自己認識のサイクル:悪循環から抜け出すアプローチ

2025/01/10

みなさん、こんにちは。

神戸市や芦屋市、西宮市などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。

 

さて、うつ病は多くの人が直面する心理的な問題であり、その背景には自己焦点化自己調整の固執の働きが深く関与していると考えられています。

 

今回紹介する研究である「Self-regulatory perseveration and the depressive self-focusing style」では、自己焦点化と自己調整のプロセスがうつ病の発症と維持にどのように影響を与えるかを詳しく分析しています。

 

これらのメカニズムを理解することで、うつ病に苦しむ方が新しい視点を持ち、回復への道筋を見つける手助けができるでしょう。

 

本記事では、論文の内容を基に自己焦点化とうつ病の関係性を解説し、神戸・芦屋・西宮で受けられる具体的なカウンセリングサービスについてもご紹介します。

 

1. 自己焦点化、自己調整の固執とうつ病

~悪循環のメカニズム~

 

自己焦点化(self-focused attention)は、文字通り自分自身の考えや感情に注意を向ける状態を指します。

 

通常、自己焦点化は問題解決や自己改善に役立つことがありますが、うつ病を抱える方の場合、このプロセスが悪循環を生む原因となることがあります。

 

以下では、自己焦点化がどのようにうつ病の発症や維持に影響を与えるのかを詳しく説明します。

 

1-1. 自己焦点化とは?

 

自己焦点化とは、自分自身の感情や思考、行動に意識を向けるプロセスです。

 

これ自体は特に問題ではありませんが、過剰な自己焦点化が続くと、以下のような影響を及ぼします

 

・ネガティブな自己評価

自分の欠点や失敗ばかりに意識が向き、自分を否定的に捉える。

 

・解決不能な問題への集中

現実と理想のギャップに囚われ、具体的な行動を起こせなくなる。

 

・感情的ストレスの増大

否定的な感情が強化され、抑うつ感が悪化する。

 

1-2. 自己調整の固執と悪循環

 

自己調整の固執(self-regulatory perseveration)は、現実の自己状態と理想の自己状態のギャップを埋めようとする努力が過剰に持続する状態を指します。

 

このプロセスが続くことで、次のような悪循環が生まれます

 

1. ギャップの認識

 

・現実の自己状態

自分が感じている今の状態(「何もできていない」「価値がない」など)。

 

・理想の自己状態

自分がなりたい姿や達成したい目標(「もっと成功している自分」など)。

→このギャップが認識されると、ストレスや焦燥感が強まります。

 

2. 解決の模索

 

ギャップを埋めようとする努力が始まりますが、解決策が見つからない場合、次のような反応が起こります

 

・ネガティブな感情の増大

「自分には無理だ」という思考が強まり、自己効力感が低下。

 

・問題の固定化

解決策がないと感じることで、同じ問題に繰り返し囚われる。

 

3. 持続的な自己焦点化

 

ギャップに囚われることで、過剰な自己焦点化が続きます。これにより以下のような影響が現れます

 

・自己批判が強まり、さらにネガティブな感情が増加。

・現実的な解決策が見えなくなり、無力感が強まる。

 

1-3. 抑うつ的自己焦点スタイル

~特有の特徴~

 

うつ病を抱える方は、特に「抑うつ的自己焦点スタイル(depressive self-focusing style)」を持つ傾向があります。

 

このスタイルは、以下の特徴を持ちます

 

1.否定的な出来事に対する過剰な反応

 

失敗や批判を受けた際、それを過度に自己責任として受け止める。

 

影響

自己評価の低下、罪悪感の増大。

 

2.肯定的な出来事に対する反応の欠如

 

成功や称賛を受けても、それを過小評価し、ポジティブな感情が生まれにくい。

 

影響

自己肯定感が十分に育たない。

 

3.否定的な思考と感情の反復

 

過去の失敗や自分の欠点に繰り返し意識を向ける。

 

影響

ネガティブな感情が強化され、抜け出せなくなる。

 

1-4. 悪循環の結果

~抑うつ症状の維持と悪化~

 

このような自己焦点化の悪循環が続くと、以下のような影響が見られます

 

感情の停滞

ネガティブな感情が長引き、ポジティブな感情を感じにくくなる。

 

行動の減少

無力感から活動量が減少し、さらに気分が悪化。

 

社会的孤立

他者との関わりを避けることで孤立感が増し、さらに自己批判が強まる。

 

2. 治療の視点

~自己認識のサイクルを断ち切る方法~

 

うつ病を維持・悪化させる要因として、自己焦点型思考自己調整の固執が挙げられます。

 

これらの特徴的な思考・行動パターンを改善するためには、適切な治療アプローチが必要です。

 

以下では、自己焦点型思考と自己調整の固執のサイクルを断ち切る具体的な方法を詳細に解説します。

 

2-1. 自己焦点型思考を緩和するアプローチ

 

自己焦点型思考は、自分の欠点や失敗に過度に意識を向けることで、否定的な感情を強化します。

 

この思考パターンを緩和するために、以下の治療法が効果的です。

 

1. 認知行動療法(CBT)

 

認知行動療法は、ネガティブな自己焦点化を特定し、現実的でバランスの取れた思考に置き換えるプロセスを提供します。

 

方法

 

 1. ネガティブ思考の記録

「自分は無能だ」「また失敗した」などの思考を記録し、どのような状況で生じたかを把握。


2. 現実的な思考への置き換え

証拠に基づいて、より柔軟で現実的な考え方を養う。


3. 行動実験

ネガティブな思考が本当かどうかを現実で検証する。

 

・効果:
認知行動療法は、過剰な自己批判を和らげ、現実的でポジティブな自己認識を育むのに役立ちます。

 

2. マインドフルネス認知療法(MBCT)

 

マインドフルネス認知療法は、自己焦点型思考を減らし、現在の瞬間に注意を向けるスキルを養います。

 

方法
1. 瞑想や深呼吸を通じて、思考や感情を評価せずに観察する。
2. ネガティブな自己焦点化に囚われそうになったら、その思考に気づき、現在の感覚や行動に意識を戻す練習を行う。

 

効果
マインドフルネスは、ネガティブな思考に囚われる頻度を減らし、感情の安定を促進します。

また、自己批判に対する耐性が高まります。

 

2-2. 自己調整の固執を緩和するアプローチ

 

自己調整の固執は、現実の自己状態と理想の自己状態のギャップに囚われ続けることで、ネガティブな感情や無力感を強化します。

 

この固執的なプロセスを断ち切るための治療法を以下に示します。

 

1. 行動活性化(Behavioral Activation)

 

行動活性化は、活動量を増やしポジティブな強化を増やすことで、自己調整の固執を緩和します。

 

方法
1. 活動記録: 日々の行動とその感情への影響を記録する。
2. 活動計画: 自分にとって意味のある行動を小さなステップから増やしていく。
3. 達成感の積み重ね: 楽しみや達成感を感じる行動を意識的に取り入れる。

 

効果
→活動を増やすことで、現実の自己状態が改善し、理想の自己状態に近づく感覚が得られます。

 

2. 問題解決療法(Problem-Solving Therapy)

 

自己調整の固執は、問題を解決できない無力感を生むため、効果的な問題解決スキルを身につけることが重要です。

 

方法
1. 問題を具体的に特定する。
2. 解決策を複数考え、最適なものを選択する。
3. 実行し、その結果を評価する。

 

効果
→問題解決スキルを習得することで、自己調整のギャップを埋める実践的な手段が得られ、無力感が緩和されます。

 

3-3. 新たな自己価値を発見するアプローチ

 

うつ病の回復には、過剰な自己焦点型思考や自己調整の固執から抜け出し、新たな自己価値を見つけることが重要です。

 

ここでは、具体的な方法をいくつか紹介します。

 

1. 興味や強みの再発見

 

うつ病を抱えている方は、自分の興味や得意なことに目を向ける余裕を失いがちです。

 

こうした興味や強みを再発見することで、ポジティブな自己イメージを取り戻すきっかけになります。

 

●具体的な方法

 

・自己探索リストの作成:
→過去に夢中になったこと、楽しいと感じた活動を書き出す。
→特に得意だったり、他者から認められた経験を振り返る。

 

・新しい体験への挑戦:
→興味があったが試していない趣味や活動を始めてみる。
→小さな成功体験を重ねることで自己肯定感が高まる。

 

・第三者からのフィードバック:
→自分では気づけない強みを周囲の人に教えてもらう。
→他者の視点を取り入れることで、新たな視点が得られる。

 

2. 達成感を得られる目標の設定

 

適切な目標を設定し、それを達成するプロセスを通じて自己価値を発見することが可能です。

 

ただし、目標は現実的で達成可能なものであることが重要です。

 

●具体的な方法

 

(1)短期目標と長期目標の設定
・短期目標

→数日から数週間で達成可能な具体的な行動(例: 毎日10分間の散歩をする)。

 

 ・長期目標

→数か月から数年後に達成したい大きな目標(例: 新しいスキルを習得する)。

 

●目標達成のプロセスを楽しむ:
→結果だけでなく、目標に向かう過程で得られる成長に注目する。
→小さな成功体験を祝う習慣をつける。

 

●進捗の記録:
→日記やアプリを使って、自分の達成感や努力を記録する。

→振り返ることでモチベーションが維持される。

 

3. 日常生活の中での実践

 

日常生活での習慣を通じて自己価値を発見することも可能です。

 

無理のない範囲で続けられることから始めましょう。

 

●具体的な方法

 

(1)感謝の記録
毎日、自分の良かった行動や感謝できることを3つ記録する。

 

(2)新しい学びの習慣
→興味のある分野について少しずつ学びを深める。
→本を読む、オンライン講座を受けるなどの方法を取り入れる。

 

(3)リフレクションタイム:
→毎日数分、自分の一日の行動や感情を振り返る時間を作る。
→「今日の自分を褒められる点」を1つ見つける練習を行う。

 

まとめ

 

新たな自己価値を発見することは、自己焦点型思考や自己調整の固執を緩和し、うつ病からの回復を促進します。

 

趣味や興味の再発見、他者への貢献、目標の設定と達成、カウンセリングの活用など、さまざまな方法を取り入れることで、ポジティブな自己イメージを再構築することが可能です。

 

一歩ずつ、自分の価値に気づき、前進するきっかけを見つけていきましょう。

 

参考論文

Self-regulatory perseveration and the depressive self-focusing style: A self-awareness theory of reactive depression

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この記事の執筆者

駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)

心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。

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