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適応障害の発症リスクと治療法とは~神戸、芦屋、西宮のカウンセリングの実践より~

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適応障害の発症リスクと治療法とは

適応障害の発症リスクと治療法とは

2025/01/24

みなさん、こんにちは。

神戸市や芦屋市、西宮市などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。

 

さて、日々の生活で大きな変化やストレスを経験したとき、それに対応するのが難しいと感じることは、誰しも経験しうることです。

 

また、転職、離婚、大切な人との別れなど、人生には大きな変化がつきものです。

 

そのようなストレスフルな出来事に適応できず、心身にさまざまな症状が現れる状態を適応障害と呼びます。

 

今回のブログでは、Zurich Adjustment Disorder Studyの研究結果をもとに、適応障害の実態や発症リスク、治療の可能性について詳しくお伝えします。

 

神戸、芦屋、西宮でカウンセリングサービスを提供する心理カウンセラーとして、適応障害に悩む方に向けて、研究で得られた知見をわかりやすく解説します。

 

1. 適応障害とは?~その特徴と影響~


適応障害とは、生活の中で大きなストレスや変化に適応できず、心理的および身体的な症状が現れる精神疾患です。

 

ストレス因子に対する正常な適応プロセスが阻害されることで、日常生活や社会的機能に支障をきたすことが特徴です。

 

1:適応障害の定義と特徴


適応障害は、ストレスや環境の変化に関連して発生します。以下がその主な特徴です。

 

● ストレス因子との関連性

→適応障害の発症には、具体的なストレス因子が存在します。

たとえば、転職や失業、離婚、親しい人の死、進学などのライフイベントが引き金となることがあります。


● タイミング

→症状はストレス因子の発生から3か月以内に始まり、ストレス因子が解消されると症状も軽減するのが一般的です。


● 一時的な症状

→適応障害は一般的に一時的で、適切な治療とサポートがあれば数か月以内に改善する可能性が高いとされています。


2:症状


適応障害の症状は、精神的な症状と身体的な症状の両方で現れることがあります。

 

● 精神的な症状
強い不安感やストレス
抑うつ感、気分の落ち込み
怒りやイライラ
集中力の低下
無気力感


●身体的な症状
頭痛や胃痛などの身体的不調
睡眠障害(不眠や過眠)
食欲の変化


3:適応障害と他の疾患との違い


適応障害は、他の精神疾患(たとえば、うつ病や不安障害)と似た症状を示すことがありますが、いくつかの点で異なります。

 

● 原因が明確

→適応障害は、特定のストレス因子が原因となる点が特徴です。


● 症状の持続期間

→ストレス因子が解消された場合、適応障害の症状は比較的短期間で改善する傾向にあります。


● 症状の重症度

→適応障害の症状は、うつ病や不安障害と比較して重症化することは少ないとされています。しかし、ストレス因の解消が困難な場合、長期化あるいは慢性化する傾向があります。


4:適応障害におけるストレス因子の種類


ストレス因子は大きく分けて以下の2つがあります。

 

● 急性的ストレス因子

→一度に大きな衝撃を与える出来事。例として、事故や自然災害、失恋など。


● 慢性的ストレス因子

→長期間続く状況。例として、職場での過剰な仕事量や職場いじめ、家族内の対立など。


5:適応障害の社会的影響


適応障害は個人の問題にとどまらず、社会全体にも影響を及ぼします。

 

たとえば、適応障害が原因で欠勤や離職に至る場合、組織や職場環境に大きな影響を与えることがあります。

 

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適応障害は一時的な症状である場合が多いのですが、適切な治療やサポートがなければ悪化する可能性もあります。

 

2. 論文が示す研究結果~発症率や背景要因について~


この論文「Prevalence and correlates of ICD-11 adjustment disorder: Findings from the Zurich Adjustment Disorder Study」では、適応障害の有病率やその関連性について、特に社会人口学的要因に注目した結果が示されています。

 

適応障害はストレス因子に対する個人の反応であるため、年齢、性別、社会的地位などの要因が症状の発症や影響の強さに密接に関連しています。

 

1:適応障害の有病率


研究によると、適応障害の有病率は人口の10~20%程度であると報告されています。

 

これは精神疾患の中でも比較的高い割合であり、多くの人がストレス因子に対する適応の難しさを経験していることを示唆します。

 

2:社会人口学的関連性


適応障害は、特定の社会人口学的背景を持つ人々において、発症リスクが高いことが研究によって明らかにされています。

 

以下、それぞれの要因について詳細に解説します。

 

(1)年齢


● 若年層の影響


適応障害は、特に思春期や青年期において高い割合で発症します。

 

この時期は進学、就職、独立といった人生の大きな転機を迎えるため、ストレスにさらされる機会が増えることが理由です。


また、学校での競争や友人関係の悩み、将来への不安などが主なストレス因子となります。


● 高齢者の影響


一方で、高齢者も適応障害の発症リスクが高いことが示されています。

 

退職、配偶者の死、健康状態の悪化といったライフイベントが適応を困難にする原因となります。


(2)職業・社会的地位


● 仕事の影響


適応障害は、職業的ストレスとの関連が特に強いとされています。

 

仕事のプレッシャーやリストラ、不安定な雇用環境が適応障害のリスクを高める要因となります。


責任が重いポジションにいる人々や、競争が激しい環境で働く人々は、適応障害を発症するリスクが高いとされています。


● 社会的支援の欠如


社会的つながりが少なく、孤立している人々も適応障害のリスクが高いことが示されています。

 

たとえば、一人暮らしや支援の乏しい環境にいる場合、ストレスへの対処が困難になることがあります。

 

3:臨床的意義


社会人口学的要因の理解は、適応障害の早期発見と治療において非常に重要です。

 

● 早期介入の促進

→特定のリスク要因を抱える人々(たとえば、若年層、高齢者、職業ストレスを感じている人々)に対して早期に介入することで、症状の悪化を防ぐことができます。


● 個別化された治療計画

→年齢、性別、社会的背景に応じた治療アプローチを設計することで、より効果的な介入が可能になります。

 

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この研究結果は、適応障害の発症における社会的背景の重要性を強調しており、特にストレス因子を特定し、適切な支援を提供するための基礎的な知見を提供しています。

 

このため、早期の対応や専門家のサポートが重要となります。

 

3.適応障害が慢性化した場合のリスク


適応障害は通常、一時的なストレスに対する反応として生じるもので、ストレス因子が解消されると改善することが期待されます。

 

しかし、適切な対処がなされない場合や支援を受ける機会がない場合、適応障害が慢性化し、以下のようなリスクを引き起こす可能性があります。

 

1:抑うつ障害や不安障害への移行


適応障害が慢性化すると、症状がより深刻化し、以下のような精神疾患へ進行するリスクが高まります。

 

● 抑うつ障害(うつ病)

適応障害が持続すると、自己否定的な思考や無気力感が深まり、抑うつ障害へ進展する可能性があります。
特に、長期間にわたりストレスが継続する場合、感情の低下や興味の喪失が顕著になることがあります。


● 不安障害

適応障害の慢性化により、不安感や過剰な心配が持続的に続き、不安障害へと移行する可能性があります。
特に、対人ストレスが原因であった場合、社交不安障害などの形で症状が悪化することがあります。


2:身体的健康への悪影響


ストレスによる身体的症状が持続すると、以下のような健康問題を引き起こす可能性があります。

 

● 慢性的な疲労感

→ストレスが身体に与える影響により、エネルギーが消耗し、疲労感が慢性化する可能性があります。

 

● 免疫機能の低下

→長期間にわたるストレスは、免疫システムの機能を低下させ、感染症やその他の身体的疾患への罹患リスクを高めます。

 

● 心血管疾患のリスク

→慢性的なストレスは、血圧上昇や心拍数の増加を引き起こし、長期的には心血管疾患のリスクを高めることが示唆されています。

 

3:社会的機能の低下


適応障害が慢性化すると、個人の社会的・職業的機能に以下のような影響が及ぶ可能性があります。

 

● 対人関係の悪化

ストレスにより感情のコントロールが難しくなり、他者との衝突や孤立を招く可能性があります。
そのため、家族や友人との関係性が悪化し、サポートネットワークの減少を引き起こします。


● 仕事や学業の支障

注意力や集中力の低下、モチベーションの喪失により、職場や学校でのパフォーマンスが低下します。
また、長期的な欠勤や休職に発展する場合もあります。

 

4:適応能力のさらなる低下


慢性化することで、個人のストレス対処能力や問題解決能力が低下する可能性があります。

 

● 悪循環の形成


ストレスが解消されないまま続くと、適応能力がさらに低下し、別のストレス因子にも適切に対応できなくなる可能性があります。


この悪循環が、再び症状の悪化や他の疾患の併発を引き起こす要因となります。


5:早期介入の重要性


適応障害が慢性化するリスクを防ぐためには、早期の発見と介入が重要です。

 

● 心理療法の役割


カウンセリング、例えば認知行動療法(CBT)は、ストレス因子に対する認識や対応を改善するための有効な手段です。


具体的には感情調整スキルや問題解決スキルを向上させることで、ストレスへの耐性を強化し、adjustment disorderの問題を軽減する事が期待できます。


● 環境の整備


職場や家庭環境の調整を行い、ストレス因子を軽減することも重要です。


社会的支援の充実は、個人の回復を助ける重要な要素となります。

 

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適応障害は、そのままにしておくと慢性化し、深刻なリスクを伴う場合があります。

 

ストレスに対して適切に対応すること、必要に応じてカウンセリングや医療の力を借りることが、症状を早期に緩和し、健康的な日常生活を取り戻すために重要です。

 

まとめ

 

適応障害は、ストレス因子に適応しきれず、心身にさまざまな症状が現れる疾患です。

 

Zurich Adjustment Disorder Studyの結果からも、適応障害が決して軽視できない問題であることがわかります。

 

しかし、適切な治療とサポートがあれば回復が期待できる点も強調されています。

 

適応障害を抱える方が日常生活を取り戻すためには、早期の介入と適切な支援が不可欠です。

 

適応障害でお悩みの方は、ぜひ一度専門のカウンセラーにご相談ください。

 

一人で悩む必要はありません。支援の手を借りて、心の健康を取り戻しましょう。

 

参考論文

Prevalence and correlates of ICD-11 adjustment disorder: Findings from the Zurich Adjustment Disorder Study

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この記事の執筆者

駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)

心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。

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