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良い完璧主義、悪い完璧主義~完璧主義とうつ病の関係とは?~神戸市、芦屋市、西宮市のカウンセリングの実例より~

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良い完璧主義、悪い完璧主義~完璧主義とうつ病の関係とは?~

良い完璧主義、悪い完璧主義~完璧主義とうつ病の関係とは?~

2025/02/07

みなさん、こんにちは。

神戸市や芦屋市、西宮市などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。

 

さて、完璧を求めることは一見すると向上心の表れであり、仕事や学業、対人関係において高く評価されることもあります。

 

しかし、「もっと努力しなければ」「失敗は許されない」といった極端な思考が続くと、自己批判が強まり、慢性的なストレスを抱えることになります。

 

その結果、心身の負担が増し、うつ病のリスクを高める原因となるのです。

 

そこで、このブログでは完璧主義がどのようにしてうつ病の発症や悪化を引き起こすのかを解説し、論文 「The destructiveness of perfectionism: Implications for the treatment of depression」 をもとに、完璧主義とうつの関係、そしてその悪循環を断ち切るための対処法について考えていきます。

 

1. 完璧主義とは?~その特徴と心理的影響~


完璧主義とは、極めて高い基準を自分に課し、それを達成しなければならないと強く感じる心理的傾向を指します。

 

一見すると、向上心の表れのように思えますが、その影響はポジティブなものばかりではありません。

 

完璧主義は、適度であれば自己成長につながるものの、過度になると強いストレスや抑うつ症状の原因となります。

 

1.健全な完璧主義とは?


健全な完璧主義は、自分自身を高めるための向上心として機能します。

 

このタイプの完璧主義を持つ人は、努力を重ねながらも適度な柔軟性を持ち、失敗を過度に恐れることなく前向きに取り組むことができます。

 

・向上心が強い(努力を惜しまない)
・目標を持って行動する
・適度なミスを受け入れることができる
・失敗を学びとして捉え、成長につなげる
・他人の評価よりも自己成長を重視する


このような完璧主義は、目標達成に向けたモチベーションを高める要因になり、心理的な健康を維持しながら前向きに努力することができます。

 

2.問題となる完璧主義とは?


一方で、過度な完璧主義は、心理的ストレスや抑うつのリスクを高める要因となります。

 

特に以下のような特徴がある場合、精神的な負担が大きくなり、自己否定のスパイラルに陥る可能性が高くなります。

 

● 失敗への強い恐れ

・少しのミスも許せず、失敗を極端に恐れる
・失敗すると「自分はダメな人間だ」と自己評価が低下する


● 自分に対して極端に厳しい

・他人には寛容でも、自分には決して甘えを許さない
・どんなに成果を出しても「まだ足りない」と感じる


● 常に「もっと頑張らなければ」と感じる

・目標を達成しても満足できず、新たなプレッシャーを自分に課す
・一息つくことを「怠けている」と感じ、休むことに罪悪感を抱く


● 他人の評価に過度に依存する

・「他人にどう見られているか」が最優先になり、自分の気持ちを後回しにする
・期待に応えられなかったときに、極度に落ち込む


● 達成感を得られず、常に不安を感じる

・どんなに努力しても「まだまだ足りない」と感じてしまう
・「完璧でなければならない」という強迫観念に囚われる


3.完璧主義が悪化する前に気づくことが大切


完璧主義がすべて悪いわけではありません。しかし、それが「自分を追い込む完璧主義」になってしまうと、心身に大きな負担をかけることになります。

 

もし、「努力しても満足できない」「失敗が怖くて動けない」「常にプレッシャーを感じる」といった状態に心当たりがある場合、適切な対応を取ることが大切です。

 

2. 完璧主義とうつ病の関連性


「The destructiveness of perfectionism: Implications for the treatment of depression」では、完璧主義がどのようにうつ病のリスクを高めるかを詳細に分析しています。

 

特に、「自己批判型完璧主義(Self-Critical Perfectionism)」 が、うつ症状の発症や悪化に深く関与していることが示されています。

 

2-1. 完璧主義がうつ病を引き起こすメカニズム


本研究では、完璧主義の中でも 「自己批判型完璧主義」 が特にうつ症状と強い関連を持つことが明らかにされています。

 

自己批判型完璧主義とは、「自分はまだ不十分だ」「失敗は許されない」 と過度に思い込む傾向のことです。

 

この思考パターンが続くことで、次のような負の連鎖が生じます。

 

● 高すぎる目標を設定する

「もっと努力しなければ」「完璧にこなさないと評価されない」と考え、現実的ではない高い目標を掲げる。


● 期待通りの結果が得られない

どんなに努力しても、思い通りの成果が得られなかったり、小さなミスが気になったりする。

 

● 自己批判が強まる

「またダメだった」「私は能力が足りない」「もっと頑張らなければ」と、自分を責め続ける。


● 自信が低下し、気分が落ち込む

自分を肯定する機会がなくなり、常に自己否定が頭を占めるようになる。

 

● 「次こそは完璧に」と思い、さらに自分を追い込む

失敗を挽回しようと無理を重ね、より高い目標を設定し続ける。


● うつ症状が悪化する

終わりのない完璧主義のサイクルに陥り、精神的に疲弊してしまう。


このような状態が長期間続くと、うつ病の発症リスクが大幅に高まります。

 

また、すでにうつ病を抱えている場合、症状の慢性化につながる可能性があります。

 

2-2. 完璧主義者が陥りやすい思考パターン


論文では、完璧主義者が持ちやすい 「認知(考え、思考)の歪み(Cognitive Distortions)」 として、以下の思考パターンが挙げられています。

 

これらの思考は、ストレスを増幅させ、不安や抑うつを悪化させる要因 になります。

 

1. 白黒思考(All-or-Nothing Thinking)


物事を「完璧」か「失敗」かのどちらかでしか考えられない極端な思考パターンです。


具体例

→「100点じゃなければ意味がない」「少しでもミスをしたら全てが台無しだ」
影響

→ほんの些細なミスでも、自分の価値を全否定してしまい、自己評価が極端に低くなる。


2. 極端な一般化(Overgeneralization)


一度の失敗やミスを、すべての場面に当てはめて考えてしまう思考です。


具体例

→「一回試験に落ちたから、私はずっとダメだ」「一度失敗したら、もうチャンスはない」
影響

→何事にも挑戦する意欲が低下し、前向きな気持ちを持てなくなる。


3. 自己否定(Self-Criticism)


自分を厳しく批判し、肯定的な側面を無視してしまう思考です。


具体例

→「こんなミスをするなんて、自分には価値がない」「努力が足りなかった」「もっと頑張るべきだった」
影響

→どれだけ頑張っても満足感が得られず、常に自分を責め続けてしまう。


これらの思考は、長期的に見ると 自信の喪失、ストレスの蓄積、自己否定のループを生み出し、結果的に抑うつ症状を悪化させる ことが示されています。

 

2-3.完璧主義とうつ病の関係を示す研究データ


本論文では、完璧主義がうつ病の発症リスクをどの程度高めるのかについて、具体的なデータも示されています。

 

・完璧主義が強い人は、そうでない人と比べてうつ病を発症するリスクが約2倍高い

 

・完璧主義が強い人ほどうつ症状が重く、治療期間が長引く

 

・自己批判型完璧主義を持つ人は、うつ病の再発リスクが高い

 

つまり、「完璧でなければならない」 という思い込みが強いほど、うつ病の発症や再発のリスクが高まり、症状が悪化しやすいことが示されています。

 

まとめ:完璧主義を手放すことが心の健康につながる


完璧主義は、一見すると向上心の表れのように思えますが、「何が何でも完璧を目指さなければならない」 という思考が強すぎると、精神的な負担となり、うつ病を引き起こすリスクが高まります。

 

特に 「自己批判型完璧主義」 は、自分を厳しく責める思考パターンを生み出し、長期的なストレスや自己否定の悪循環を引き起こします。

 

この悪循環を断ち切るためには、「失敗を許すこと」「自分を労わること」「過度な期待を手放すこと」 が重要になります。

 

3. 完璧主義による抑うつ症状を軽減する方法


完璧主義の傾向が強い場合、いくつかの方法を取り入れることで思考の柔軟性を高め、抑うつを予防・改善することが可能です。

 

3-1. 認知行動療法(CBT)を活用する


認知行動療法(CBT)は、「完璧でなければならない」という考えを見直し、より現実的で柔軟な思考パターンを身につける方法です。

 

目標を小さく分ける

→「100点を取らなければならない」ではなく、「まずは80点を目指そう」
白黒思考を避ける

→「完璧でなければダメ」ではなく、「多少のミスがあっても大丈夫」と考える
過去の成功に目を向ける

→「できなかったこと」ではなく、「できたこと」に焦点を当てる


3-2. 自己受容を高める


完璧主義の根底には、「自分はまだ不十分だ」という考えがあります。そのため、自己受容を高めることが重要です。

 

・できたことに目を向ける
・小さな達成を喜ぶ
・「ありのままの自分でも価値がある」と意識する

 

3-3. 生活習慣を整える


完璧主義によるストレスが続くと、自律神経が乱れ、うつ症状が悪化しやすくなります。

 

以下のポイントを意識することで、心身のバランスを整えることができます。

 

・規則正しい睡眠をとる
・適度な運動を行う
・リラクゼーション(深呼吸・瞑想など)を取り入れる


まとめ


完璧主義は、一見すると良い特性のように思われますが、極端になるとうつ病を引き起こすリスクが高まります。

 

特に、「自己批判型完璧主義」が強い場合、抑うつ症状の悪化を招くため、早めの対策が必要です。

 

● 完璧主義とうつ病は深い関係がある
● 「自己批判型完璧主義」が特に危険
● 認知行動療法(CBT)や自己受容の実践が有効

 

完璧でなくても、皆さんの価値は変わりません。少しずつ、自分に優しくなれる方法を見つけていきましょう。

 

参考論文

The destructiveness of perfectionism: Implications for the treatment of depression

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この記事の執筆者

駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)

心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。

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