「考えすぎ」がうつを悪化させる?反芻思考のメカニズムと対策
2025/02/13
みなさん、こんにちは。
神戸市や芦屋市、西宮市などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。
さて、過去の出来事を繰り返し考え続けることは、多くの人が経験するものです。
その思考が堂々巡りし、そこから抜け出せなくなる状態を「反芻思考(ぐるぐる思考)」と呼びます。
物事を深く考えること自体は決して悪いことではありませんが、反芻思考が続くと、ネガティブな感情が強まり、うつ病や不安障害の悪化や長期化を引き起こす要因となることが研究で示されています。
そこで、このブログでは「The role of rumination in depressive disorders and mixed anxiety/depressive symptoms」 という論文をもとに、反芻思考がメンタルヘルスに与える影響について詳しく解説し、そこから抜け出すための具体的な方法を紹介します。
1. 反芻思考とは?:そのメカニズムと特徴
反芻思考(ぐるぐる思考)とは、特定のネガティブな考えを繰り返し思い続けてしまう思考パターンを指します。
先述しましたように、過去の出来事や自分の言動について深く考えること自体は決して悪いことではありません。
しかし、反芻思考に陥ると、問題の解決に向かうのではなく、同じ考えを延々と繰り返してしまうため、気分の落ち込みが長引き、心理的な負担が大きくなる傾向があります。
1-1.反芻思考の主な特徴
● 過去の失敗や後悔を何度も思い返してしまう
以前の出来事を振り返ることが必要な場合もありますが、反芻思考では「どうしてあのとき〇〇しなかったのか」「なぜ自分はこうしてしまったのか」と、繰り返し過去の行動を悔やみ、前に進むことが難しくなります。
● 自分を責め続ける
物事がうまくいかなかったとき、自分自身を必要以上に責め、「自分のせいだ」「私はダメな人間だ」といった思考が続くことで、自己肯定感が低下しやすくなります。
● 「どうしてこんなことになったのか」と原因ばかりを探し続ける
何が悪かったのかを考えることは重要ですが、反芻思考では「なぜこうなったのか?」という問いに執着しすぎてしまい、前向きな解決策を見つけることが難しくなります。
● 解決策を見出すのではなく、同じ考えを繰り返す
反芻思考の特徴として、「考え続ければ答えが出るはずだ」と思いながらも、実際には問題が解決せず、思考が堂々巡りしてしまう点が挙げられます。
1-2.反芻思考の悪循環
このような思考パターンが続くと、気分が落ち込みやすくなり、不安やストレスがさらに増大する悪循環に陥る可能性があります。
結果として、うつ病や不安症のリスクが高まり、日常生活や人間関係にも影響を及ぼすことが考えられます。
そのため、反芻思考を適切にコントロールすることが、メンタルヘルスの維持にとって重要なポイントとなります。
2. 反芻思考とうつ・不安の関係
論文 「The role of rumination in depressive disorders and mixed anxiety/depressive symptoms」 では、反芻思考がうつ病や不安症状をどのように悪化させるのかを科学的な視点から詳細に分析しています。
研究によると、反芻思考は単に一時的なネガティブ思考にとどまらず、持続的な心理的ストレスを引き起こし、うつ病や不安症のリスクを高める要因となることが示唆されています。
2-1. 反芻思考とうつ病
反芻思考が持続すると、否定的な自己評価が強まり、自己肯定感が低下する傾向があります。
特に、以下のような影響が指摘されています。
● ネガティブな自己イメージの固定化
「自分はダメだ」「何をやってもうまくいかない」といった思考が繰り返されることで、自己評価が著しく低下し、前向きな行動を起こしにくくなります。
● 未来への希望が失われる
反芻思考の特徴として、過去の失敗ばかりに意識が向きやすくなります。
その結果、「どうせまた失敗する」「何をしても意味がない」といった無力感が強まり、希望を持ちにくくなるのです。
● うつ症状の悪循環
気分が落ち込む → 過去の失敗を繰り返し考える → 自己批判が強まる → さらに気分が落ち込む
このようなループに陥ることで、うつ病の症状が慢性化しやすくなることが研究で示されています。
2-2. 反芻思考と不安障害
反芻思考はうつ病だけでなく、不安症状とも密接に関係しています。
特に、不安障害を持つ方は、反芻思考によって過去の出来事に対する後悔や未来に対する恐れが強まる傾向があります。
● 予期不安の増大
「また同じミスをするかもしれない」「このままだと悪いことが起こる」など、未来への不安が強まり、行動すること自体が怖くなります。
この状態が続くと、現実に起こっていない出来事に対して過度に不安を感じるようになります。
●ストレスホルモンの増加
研究によると、反芻思考が続くことで、ストレスホルモンである コルチゾール の分泌が増加し、慢性的なストレス状態に陥りやすくなります。
これは自律神経のバランスを乱し、不安感の増大や睡眠の質の低下を引き起こす要因となります。
● 脳の疲弊と認知機能の低下
常に考え続けることで脳が疲弊し、判断力や集中力が低下することが分かっています。
これは、仕事や日常生活において注意力が散漫になり、さらなるストレスの原因となる可能性があります。
2-3.反芻思考は症状を長引かせる要因
これらの研究結果から、反芻思考は うつ病や不安症の「引き金」となるだけでなく、それらの症状を長引かせる要因になっていることが明らかになっています。
つまり、反芻思考をコントロールすることが、うつや不安の回復において重要なポイントとなるのです。
まとめ:反芻思考とうつ・不安から抜け出すために
本記事では、反芻思考(ぐるぐる思考) がうつ病や不安症の発症・悪化にどのように影響を与えるのかを、論文 「The role of rumination in depressive disorders and mixed anxiety/depressive symptoms」 をもとに詳しく解説しました。
● 反芻思考とは?
・過去の失敗や後悔を繰り返し考え続ける思考パターン
・自己批判や問題の原因探しに終始し、解決策を見出せない
・気分の落ち込みを助長し、ストレスの悪循環を生む
● 反芻思考とうつ・不安の関係
・うつ病 → 否定的な自己評価が強まり、未来に希望を持ちにくくなる
・不安障害 → 予期不安が増大し、ストレスホルモン(コルチゾール)が過剰に分泌される
・認知機能の低下 → 常に考え続けることで脳が疲弊し、判断力や集中力が落ちる
● 反芻思考から抜け出すために
①気づくことが第一歩 → 「今、自分は反芻思考に陥っている」と認識する
②思考を客観視する → 過去の出来事に対して「今考えても解決できるか?」と問いかける
③行動に目を向ける → 身体を動かしたり、好きなことに意識を向けることで思考のループを断ち切る
④マインドフルネスの実践 → 「今、この瞬間」に意識を向ける習慣をつける
反芻思考は、無意識のうちに繰り返されるため、「考え続けていることに気づき、思考の流れを変える」 ことが大切です。
放置すると、うつや不安を長引かせる要因になるため、早めに対処することが重要です。
反芻思考に対してはカウンセラーのサポートを受けながら反芻思考に陥るパターンを変えていくことも選択肢の一つ です。
ひとりで抱え込まず、適切なケアを受けることで、より健やかな毎日を取り戻しましょう。
参考論文
The role of rumination in depressive disorders and mixed anxiety/depressive symptoms
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この記事の執筆者
駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)
心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。
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