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ストレスとうつ病の関係とは?研究が示す発症リスクと対処法~神戸市、芦屋市、西宮市のカウンセリングの実例より~

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ストレスとうつ病の関係とは?研究が示す発症リスクと対処法

ストレスとうつ病の関係とは?研究が示す発症リスクと対処法

2025/02/22

みなさん、こんにちは。

神戸市や芦屋市、西宮市などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。

 

さて、私たちが生きている中で予期せぬ出来事はどうしても発生します。

 

仕事のプレッシャー、人間関係のトラブル、大切な人との別れ…。

 

こうしたストレスフルな出来事は、私たちの心に大きな影響を与えることは珍しくありません。

 

特に、強いストレスを経験した後にうつ病を発症するケースは少なくありません。

 

しかし、「ストレス=うつ病の直接的な原因」と単純に言い切れない面もあります。

 

そこでこのブログでは、論文「Causal Relationship Between Stressful Life Events and the Onset of Major Depression」を踏まえて、ストレスとうつ病の因果関係について科学的に解説し、うつ病のリスクを軽減する方法について考えていきたいと思います。

 

1. うつ病はどのように発症するのか?


うつ病は、単なる気分の落ち込みではなく、脳や神経システムに関わる複雑なメカニズムによって発症する疾患です。

 

環境要因や心理的要因、生物学的要因が相互に影響し合いながら発症すると考えられており、そのメカニズムを理解することで、適切な予防や治療の手がかりを得ることができます。

 

1-1. うつ病の基本的なメカニズム


① 脳内の神経伝達物質の異常


うつ病の最もよく知られている生物学的な要因の一つは、脳内の神経伝達物質(セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリン)の機能低下です。

 

これらの物質は、脳内で情報を伝達し、感情や意欲をコントロールする役割を持っています。

 

セロトニン

→心の安定や安心感をもたらす。分泌が低下すると、気分の落ち込みや不安が強くなる。
ドーパミン

→喜びや達成感を感じさせる。低下すると、無気力や興味の喪失が生じる。
ノルアドレナリン

→集中力や行動力を高める。低下すると、倦怠感や注意力散漫につながる。


これらの神経伝達物質のバランスが崩れることで、気分の落ち込み、意欲の低下、思考の鈍化、身体の不調といった症状が引き起こされるのです。

 

② 脳のストレス応答システムの異常


うつ病の発症には、脳のストレス応答システム(HPA軸:視床下部-下垂体-副腎系)の異常も関与しています。

 

HPA軸は、ストレスに対処するために働く体のシステムで、ストレスを感じると、視床下部が下垂体に指令を出し、副腎から「コルチゾール(ストレスホルモン)」が分泌されます。

 

コルチゾールは、一時的にはストレスに適応するために必要なホルモンですが、慢性的に分泌され続けると、脳の構造に悪影響を及ぼします。

 

海馬(記憶や感情を司る部位)の萎縮

→記憶力の低下や感情のコントロールが難しくなる。
扁桃体(恐怖や不安を司る部位)の過剰活性

→不安感が強くなり、ストレスを感じやすくなる。
前頭前野(思考や判断を司る部位)の機能低下

→ネガティブな考えが増え、意思決定が困難になる。


つまり、強いストレスを受け続けると、脳の構造が変化し、うつ病の発症リスクが高まるのです。

 

1-2. ストレスとうつ病の関係


① 長期的なストレスがうつ病を引き起こす


日常生活の中で、人はさまざまなストレスにさらされています。

 

仕事や人間関係、経済的な問題、健康不安などが積み重なると、心身に大きな負担がかかります。

 

特に、以下のような「重大なストレスフルな出来事」は、うつ病の発症リスクを大幅に高めることが研究で明らかになっています。

 

● 人間関係の喪失(離婚・死別)
→ 大切な人との別れは、心理的なショックが大きく、長期的な抑うつ状態につながる。

● 職場や学校での強いストレス(解雇・ハラスメント・失敗体験)
→ キャリアに関する挫折は、自己評価を大きく低下させ、うつ病の引き金になりやすい。

● 経済的困難(借金・倒産・収入減少)
→ 将来の不安が増し、慢性的なストレス状態に陥る。

● 健康上の問題(大きな病気の診断・事故による後遺症)
→ 身体的な制約が精神的な負担となり、絶望感を強める。

 

このような出来事が「心の限界を超えるほどの負担」となったとき、うつ病の症状が現れやすくなります。

 

② 認知の歪み(妥当ではない思考)がうつ病を悪化させる


ストレスを受けると、人はネガティブな思考に陥りやすくなります。


特に、以下のような「認知の歪み(妥当でない考え・思考)」が強くなるとうつ病が悪化しやすいことが分かっています。

 

● 白黒思考(All-or-Nothing Thinking)
→「成功か失敗か」「完璧でなければ意味がない」など、極端な思考をする。

● 過度の一般化(Overgeneralization)
→「一度失敗したら、もうずっとダメだ」と考えてしまう。

● 破滅的思考(Catastrophizing)
→「この先、最悪の事態が待っている」と極端に悲観する。

● 自己批判(Self-blame)
→「すべて自分のせいだ」と思い込み、過度に自分を責める。

 

これらの認知の歪みが続くと、「自分には価値がない」「もう何をしても意味がない」といった思考が強まり、抑うつ状態が慢性化しやすくなります。

 

2. ストレスだけが原因ではない:うつ病の発症に関わる個人の要因


論文 「Causal Relationship Between Stressful Life Events and the Onset of Major Depression」 では、ストレスフルな出来事がうつ病の引き金になり得るものの、それだけが直接的な原因ではないことが指摘されています。

 

実際には、「個人の脆弱性」や「対処能力」との相互作用 が重要であり、それによってうつ病を発症するかどうかが決まると考えられています。

 

① なぜ同じストレスを受けても、うつ病を発症する人としない人がいるのか?


ストレスに対する反応は、「生物学的要因」「心理的要因」「社会的要因」 の3つが組み合わさることで決まります。

 

つまり、同じ出来事を経験しても、以下のような個人の違いがうつ病の発症リスクに影響を及ぼします。

 

② 生物学的要因:遺伝や脳の働きの違い


研究では、うつ病の発症には遺伝的な影響が関与している可能性がある ことが示唆されています。

 

特に、以下のような脳の働きがストレスに対する耐性に影響を与えると考えられています。

 

● 神経伝達物質のバランス
→ セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリン などの神経伝達物質が適切に機能しているかどうかが、ストレスに対する耐性を左右する。

● HPA軸(視床下部-下垂体-副腎系)の調整
→ ストレス時に分泌される「コルチゾール(ストレスホルモン)」の分泌量が過剰になりやすい方は、長期的にストレスの影響を受けやすく、うつ病を発症しやすい。

● 海馬の萎縮
→ 強いストレスを受け続けると、記憶や感情を司る 「海馬」 の体積が減少し、ストレスの影響を受けやすくなることが研究で示されている。

 

このように、生まれ持った遺伝的要因や脳の働きの違いが、ストレスに対する反応の個人差を生み出し、うつ病のリスクを左右する要因となる のです。

 

③ 心理的要因:認知の歪み(妥当でない思考や考え)とストレス対処能力


うつ病の発症には、ストレスを受けた際の 「考え方」や「対処の仕方」 も大きく関与しています。

 

特に、以下のような認知の歪み(妥当でない思考や考え)を持つ方は、ストレスを受けた際にうつ病を発症しやすい傾向があります。

 

● 完璧主義
→「どんな状況でも完璧にこなさなければならない」と考える傾向が強いと、失敗したときの自己批判が強まり、うつ症状につながりやすい。

● 自己批判の傾向
→ 何か問題が起きたときに、「すべて自分のせいだ」と考えてしまう方は、ストレスを自分の責任と捉えすぎてしまい、抑うつ状態に陥りやすい。

● 破滅的思考(Catastrophizing)
→「この失敗で、もう人生が終わった」「今後、良いことは何も起こらない」と考える方は、希望を持てなくなり、長期的なうつ状態に陥る可能性が高くなる。

 

さらに、ストレスへの対処方法(コーピングスキル)も重要です。

 

適切なストレス対処法を持っている方は、困難な状況でもうつ病を発症しにくい ことが研究で明らかになっています。

 

④ 社会的要因:サポート環境の有無
ストレスフルな出来事を経験したときに、周囲にどれだけサポートをしてくれる人がいるか も、うつ病の発症リスクに大きく影響を与えます。

 

● サポートがある方

→家族や友人、同僚などに相談できる。
→失敗しても励ましてくれる人がいる。
→自分の気持ちを受け止めてくれる存在がいる。


● サポートが少ない方

→相談相手がいない、または相談しにくい。
→孤独を感じやすい環境にいる。
→他人に頼るのが苦手で、一人で抱え込んでしまう。


サポート環境が整っている方は、ストレスを感じても「周囲の助けを借りながら回復することができる」ため、うつ病になりにくいのです。

 

逆に、サポートが不足していると、ストレスを一人で抱え込み、うつ状態が長引く可能性が高くなるのです。

 

⑤ まとめ:ストレスにどう対応するかが重要


この研究が示す重要なポイントは、ストレスフルな出来事が直接的にうつ病を引き起こすわけではない ということです。

 

「ストレスをどう受け止めるか」「どのように対処するか」「どれだけのサポートを得られるか」 が、うつ病の発症に大きく関わってきます。

 

● うつ病を防ぐためにできること
→ネガティブな思考のクセに気づき、現実的な視点を持つ

→「すべてがダメだ」ではなく、「部分的にうまくいったこともある」と考える。
→失敗しても、「これは学びの機会」とポジティブに捉える。


● ストレスを適切に解消する方法を見つける

→軽い運動やリラックス法を取り入れる。
→日記をつけて、感情を整理する。

 

● 周囲のサポートを積極的に活用する

→家族や友人と話す機会を増やす。
→カウンセリングサービスを利用して、専門家の助言を受ける。


ストレスを受けても、適切な対処法を身につけることで、うつ病の発症を防ぐことが可能です。「一人で抱え込まずに、周囲の助けを借りながら、少しずつストレスに対応できる力をつけていくこと」が、心の健康を守る鍵となるでしょう。

 

参考論文

Causal Relationship Between Stressful Life Events and the Onset of Major Depressiont

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この記事の執筆者

駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)

心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。

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