不安と抑うつが重なるとどうなる?うつ病と不安症の併存と対処法
2025/03/02
みなさん、こんにちは。
神戸市や芦屋市、西宮市などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。
うつ病や不安症を抱えている方の中には、「落ち込むだけでなく、不安も強く感じる」「常に心配事が頭から離れない」といった症状を経験している方も多いのではないでしょうか。
実際に、うつ病と不安症はしばしば併存することが研究で明らかになっています。
本記事では、「Comorbid Depression and Anxiety Spectrum Disorders」 という論文を踏まえて、うつ病と不安症がどのように関連しているのか、また、適切な治療や対処法について詳しく解説していきます。
1. うつ病と不安症の併存とは?
うつ病と不安症は、それぞれ異なる精神疾患ですが、多くのケースで両方の症状が同時に現れることが報告されています。
この併存状態は、「共存症(コモービディティ)」とも呼ばれ、症状の悪化や回復の遅れにつながることが懸念されています。
1-1. うつ病と不安症、それぞれの特徴
うつ病と不安症は、それぞれ異なる症状を持っていますが、併存することで相互に影響し合い、症状がより深刻になる傾向があります。
● うつ病の主な症状
うつ病は、持続的な気分の落ち込みや無気力感が特徴的な疾患です。
具体的には、以下のような症状が現れます。
気分の落ち込み
→長期間にわたる抑うつ感が続き、日常生活に支障をきたす
興味・喜びの喪失
→以前は楽しめたことへの関心がなくなる
エネルギーの低下・疲労感
→何をするにも意欲が湧かず、常に倦怠感がある
自己評価の低下
→「自分には価値がない」「何をやってもダメだ」と考えやすくなる
睡眠や食欲の変化
→不眠や過眠、食欲の低下または過食
● 不安症の主な症状
不安症は、過剰な心配や恐怖を感じ、身体的な症状も伴うことが特徴です。
具体的には、以下のような症状が現れます。
持続的な不安
→「何か悪いことが起こるのでは」と過剰に心配する
焦燥感や落ち着きのなさ
→常にソワソワしてリラックスできない
身体症状
→動悸、息苦しさ、発汗、筋肉の緊張などの身体的な不調
回避行動
→不安を感じる状況を避けようとする(例:人前で話すのを避ける)
1-2. うつ病と不安症が併存するケース
うつ病を抱える方の50%以上が、不安症状も同時に持っているといわれています。
特に、以下のような不安症と一緒に現れることが多いです。
● 全般性不安障害(GAD)
✔漠然とした強い不安が長期間続き、過剰な心配をしやすい
✔「大したことではないのに、最悪の事態を考えてしまう」傾向がある
● パニック障害
✔突然、強い不安発作(パニック発作)を経験する
✔「また発作が起こるのでは」との恐怖から、外出を避けるなどの行動が見られる
● 社交不安障害(SAD)
✔人前で話すことや他人と接することに強い不安を感じる
✔「相手にどう思われるか」が気になりすぎて、社会的な場面を避けるようになる
● 併存すると症状が悪化しやすい理由
うつ病と不安症が併存すると、症状がより深刻になり、治療の難易度も上がることが指摘されています。
症状の相互作用
→ うつ症状の「何もしたくない」と、不安症の「怖くてできない」が重なり、日常生活が困難になる
回避行動の悪循環
→ 不安を避けるために社会的な活動を控えると、孤独感が強まり、うつ症状が悪化する
治療への意欲低下
→ うつによる無気力感が強いと、治療を受けること自体が困難になる
そのため、うつ病と不安症の併存を適切に理解し、早期に対処することが重要です。
2. うつ病と不安症の関連性
「Comorbid Depression and Anxiety Spectrum Disorders」 では、うつ病と不安症がどのように関連しているのかが分析されており、脳の神経回路の共通点と、併存による症状の悪化という2つの重要なポイントが明らかになっています。
2-1. うつ病と不安症は「同じ神経回路」に影響を与える
脳科学の研究によると、うつ病と不安症は共通する神経回路に影響を及ぼしていることが分かっています。
そのため、どちらか一方が発症すると、もう一方の症状も出やすくなるのです。
● 前頭前野
役割
→感情のコントロールや論理的思考を担う脳の領域
影響
→うつ病では活動が低下し、悲観的な考えに支配されやすくなる
結果
→「物事のポジティブな側面を考えるのが難しくなり、落ち込みやすくなる」
● 扁桃体
役割
→恐怖や不安を処理する脳の部位
影響
→不安症では過剰に活性化し、不安や恐怖を感じやすくなる
結果
→「些細なことでも不安を感じ、頭から離れなくなる」
● セロトニン・ノルアドレナリンの不足
役割
→気分の安定やストレス耐性を高める神経伝達物質
影響
→うつ病・不安症の両方で分泌量が低下する
結果
→「気分が落ち込みやすくなり、ストレスへの耐性が下がる」
このように、うつ病と不安症は同じ神経メカニズムの影響を受けるため、一緒に発症しやすいことが示されています。
2-2. 併存することで症状が悪化しやすい
うつ病と不安症が併存すると、以下のような「悪循環」が生じやすくなります。
不安による過剰な心配
→ 気分が沈む
→ 些細なことが気になり、「最悪の事態を想定する」思考パターンに陥る
→ その結果、気分が落ち込み、何も手につかなくなる
うつによる意欲低下
→ 不安を感じる場面を避ける(回避行動)
→ 「どうせうまくいかない」と思い込み、行動を起こせなくなる
→ 不安を感じる場面を避けることで、さらに自己評価が低下し、対人関係の悪化につながる
回避によって社会生活が制限される
→ さらに気分が落ち込む
→ 人と関わる機会が減り、孤独感が強まる
→ 社会的な活動が減ることで、自己肯定感が低下し、ますます抑うつ症状が悪化
2-3.うつ病と不安症が併存すると、治療の難易度が上がる
うつ病と不安症が併存している場合、どちらか一方の症状を改善しようとしても、もう一方が邪魔をしてしまい、治療が長期化しやすいことが指摘されています。
例1) 不安を減らそうとする
→ でも気分が落ち込んでいて行動を起こせない
例2) うつの症状を改善しようとする
→ でも不安が強く、心配事が止まらず回復が遅れる
このため、両方の症状をバランスよく治療するアプローチが重要になります。
具体的には、認知行動療法(CBT)やマインドフルネス、適切な薬物療法などを組み合わせることで、うつ病と不安症の相互作用を断ち切ることができます。
この研究の結果から、うつ病と不安症が併存する場合、早期の適切な治療が特に重要であることが明らかになっています。
3. うつ病と不安症を併存する場合の治療アプローチ
論文では、うつ病と不安症の両方に効果的な治療法として、以下の方法が推奨されています。
3-1. 認知行動療法(CBT)
認知行動療法(CBT) は、不安や抑うつにつながる思考のクセを修正し、より現実的で前向きな考え方を身につける治療法です。
「認知の歪み(妥当でない思考や考え)」を修正する
→例:「自分はダメだ」と思うのではなく、「できることもある」と考える
不安を避けずに少しずつ慣れる
→例:人前で話すことが苦手でも、小さなステップから挑戦する
行動を変えることで気分を安定させる
→例:散歩や軽い運動を取り入れる
3-2. 生活習慣の改善
生活リズムの乱れは、うつ病と不安症の両方を悪化させる要因となるため、以下のポイントが重要です。
規則正しい睡眠
→夜更かしを避け、一定の時間に寝る習慣をつける
適度な運動
→ウォーキングやストレッチなど、無理のない範囲で体を動かす
バランスの良い食事
→特にセロトニンを増やすために、たんぱく質やビタミンB群を意識する
3-3. 専門家のサポートを活用する
併存症の場合、自己判断での対処が難しいこともあります。
カウンセリングや専門医の診察を受けることで、適切な治療方針を決めることができます。
カウンセリングを受ける
→思考の整理やストレス対処法を得る
薬物療法を用いる
→医師と相談しながら適切に使用する
まとめ
うつ病と不安症は、脳の仕組みや心理的な要因が関係し、併存しやすいことが分かっています。
両方の症状がある場合は「不安を軽減する」「気分を安定させる」ことを意識しながら、認知行動療法や生活習慣の改善、専門的なサポートを活用することが重要です。
必要に応じて医師やカウンセリングを活用しながら、抑うつと不安の併存を超えていきましょう。
参考論文
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こころのケア心理カウンセリングRoom
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この記事の執筆者
駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)
心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。
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