双極性障害との向き合い方:長期的な症状の特徴と対策について
2025/03/04
みなさん、こんにちは。
神戸市や芦屋市、西宮市などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。
さて、双極性障害は感情の波が激しく、日常生活に大きな影響を及ぼす精神疾患です。
この障害には主に双極I型(BP I)と双極II型(BP II)の2つのタイプが存在します。
これらのタイプは、それぞれ異なる症状の特徴を持ち、治療やサポートの方法も異なる場合があります。
今回は、長期的な視点からこれらのタイプの症状の違いを探り、日常生活や治療にどのように影響するかを考えてみたいと思います。
1.双極性障害とは?
双極性障害は、以前は躁うつ病と呼ばれていた疾患で、感情が極端に高まる「躁状態」と、極端に落ち込む「うつ状態」を繰り返すことが特徴です。
これらの感情の波は、個人の生活、仕事、人間関係に深刻な影響を及ぼすことがあります。
2.双極I型と双極II型の違いとは
双極性障害は、感情の振れ幅が大きく、日常生活や社会的な機能に影響を及ぼす疾患ですが、大きく分けて 双極I型(Bipolar I Disorder:BP I) と 双極II型(Bipolar II Disorder:BP II) の2つのタイプが存在します。
それぞれの特徴や症状の現れ方は異なり、治療法や日常の対処法も変わってきます。
ここでは、双極I型と双極II型の違いについて、より詳細に解説していきます。
双極I型(BP I):躁状態が主な特徴
1. 主要な症状
双極I型の最も顕著な特徴は、「完全な躁状態(Manic Episode)」を経験することです。
この躁状態は、以下のような特徴を持っています。
持続期間
→通常 1週間以上続く。
気分の変化
→異常に高揚し、幸福感や万能感が極端に増す。
エネルギーレベルの上昇
→睡眠時間が極端に短くても活動的になり、疲労を感じにくい。
衝動的・リスキーな行動
→浪費、不適切なビジネス投資、逸脱行為、危険な運転などを行うことがある。
集中力の低下
→思考が次々と浮かび、注意散漫になりやすい。
攻撃的・暴力的な行動
→怒りっぽくなったり、他者とのトラブルを引き起こしたりすることもある。
2. うつ状態も経験するが、躁状態が主に問題となる
双極I型の患者も、うつ状態(抑うつエピソード)を経験することがあります。
しかし、躁状態の方が社会的・職業的機能に著しい影響を及ぼすため、治療の主な焦点は躁状態のコントロールになります。
双極II型(BP II):軽躁状態と重度のうつ状態が特徴
1. 主要な症状
双極II型は、双極I型のような「完全な躁状態」は経験せず、代わりに 「軽躁状態」 を伴います。
また、うつ状態がより長期化しやすいのも特徴です。
● 軽躁状態の特徴
持続期間
→通常 4日以上 続くが、躁状態ほど重篤ではない。
気分の変化
→気分が高揚し、自信に満ち溢れることがあるが、極端な万能感や攻撃性は少ない。
エネルギーレベルの上昇
→活動的で社交的になり、生産性が向上することもある。
衝動的な行動
→普段よりもリスクを取る行動が増えるが、社会的な問題を引き起こすほどではない。
集中力の向上
→創造的なアイデアが増えたり、仕事や趣味に没頭できたりすることがある。
軽躁状態は、「良い状態」と誤解されることが多く、本人も周囲も病気と認識しにくい場合があります。
しかし、軽躁状態の後には深刻なうつ状態 が続くことが多いため、適切な診断と治療が重要です。
2. うつ状態が長期間続きやすい
双極II型の特徴として、双極I型に比べて、うつ状態の持続期間が長くなる 傾向があります。
✔うつ状態は 数週間から数ヶ月 続くことがある。
✔抑うつ症状が長引くため、生活の質(QOL)が低下しやすい。
✔様々なリスクが高くなることがあるため、適切な治療と支援が不可欠。
3.日常生活への影響:双極I型と双極II型の違い
双極性障害は、感情の波が日常生活にさまざまな形で影響を与えます。
双極I型(BP I)と双極II型(BP II)では、その影響の現れ方が異なり、それぞれ特有の課題を抱えています。
ここでは、具体的な生活面への影響を詳しく見ていきます。
3-1.双極I型(BP I)の影響:衝動性と社会生活への支障
双極I型の特徴である躁状態は、エネルギーの爆発的な増加、活動の活発化、思考の加速といった症状を伴います。
この状態は、本人にとって非常に高揚感があり、万能感を感じることが多いですが、以下のような影響を及ぼすことがあります。
① 仕事や学業への影響
✔突発的な行動や判断が増え、計画性がなくなることで、仕事の進行や同僚との関係に問題が生じる。
✔集中力が散漫になり、複数のプロジェクトに手を出しては中途半端になる。
✔過度な自信から、無謀な決定を下すことがある(例:退職や投資など)。
✔遅刻や欠勤が増える一方で、エネルギーが溢れかえり過労状態になる場合もある。
② 人間関係への影響
✔社交的になりすぎることで、馴染みのない人と過度に親しくなろうとする。
✔衝動的な発言や過激な言動が増え、家族や友人を驚かせたり、困惑させたりする。
✔突然の約束の変更や、計画性のない行動で周囲を振り回すことがある。
③ 金銭管理の問題
✔衝動的に高額な買い物をしてしまい、金銭的なトラブルを招く。
✔不必要な投資やビジネスを始めてしまい、経済的損失を生むことも。
✔借金を抱えるリスクが高まる。
④ 法的・社会的トラブル
✔衝動的な行動が犯罪行為や事故につながるケースもある(例:無謀運転、過度の飲酒、暴力的な言動)。
✔社会的な信用を失うような行動を取ってしまい、後々後悔することもある。
3-2.双極II型(BP II)の影響:長期的な抑うつの苦しみ
一方、双極II型の特徴である軽躁状態は、エネルギーの増加はあるものの、双極I型のように社会的に大きな問題を引き起こすことは比較的少ないとされています。
しかし、長期間にわたるうつ状態が続くことが、日常生活に大きな影響を及ぼします。
① 仕事や学業への影響
✔やる気が出ず、仕事の生産性が著しく低下する。
✔朝起きるのが難しくなり、遅刻や欠勤が増える。
✔単純なタスクでも負担に感じるようになり、作業効率が下がる。
✔自分の能力を過小評価し、「どうせ自分なんて」と自己否定的な考えに囚われる。
② 人間関係への影響
✔気分が沈みがちになり、他者とのコミュニケーションが億劫になる。
✔以前は楽しめていた友人との交流や趣味への興味を失い、孤立しがちになる。
✔自信の低下から、対人関係に過度な不安を感じ、必要以上に距離を取ることがある。
③ 日常生活の維持が困難になる
✔食事を作る、掃除をするなどの基本的な生活習慣を維持することが難しくなる。
✔身だしなみに気を使う余裕がなくなり、外出することすら億劫になる。
✔運動不足や不規則な生活が続き、体調の悪化を招くこともある。
3-3.まとめ:双極性障害の影響を理解し、適切なサポートを
双極I型と双極II型では、日常生活への影響が異なります。
双極I型(BP I)では、躁状態による衝動的な行動が、仕事・人間関係・金銭管理・社会的信用に悪影響を及ぼしやすい。
双極II型(BP II)では、長期的な抑うつによって、仕事の継続が困難になったり、人間関係が希薄になったりする可能性がある。
どちらのタイプでも、適切な治療と周囲のサポートが重要です。本人も周囲の人も、双極性障害の影響を理解し、無理のない範囲でサポートし合うことが、安定した生活を送るための鍵となります。
4.治療とサポートの重要性
双極性障害の治療は、薬物療法と心理療法の組み合わせが一般的です。
しかし、双極Ⅰ型と双極Ⅱ型では、症状の特徴が異なるため、治療計画もそれぞれのタイプに合わせて調整する必要があります。
また、家族や友人のサポート、生活習慣の改善、ストレス管理なども重要な要素となります。
まとめ
双極性障害は、個人の生活に大きな影響を及ぼす疾患ですが、適切な理解とサポートにより、症状の管理や生活の質の向上が可能です。
自分や身近な人がこの障害と向き合っている場合は、専門家の助けを借りながら、適切な対応を心がけてくださいね
参考論文
Long-term symptomatic status of bipolar I vs. bipolar II disorders
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この記事の執筆者
駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)
心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。
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