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「心配しすぎる…」を改善するには?全般性不安障害の感情調整アプローチ~神戸市、芦屋市、西宮市のカウンセリングの実例より~

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「心配しすぎる…」を改善するには?全般性不安障害の感情調整アプローチ

「心配しすぎる…」を改善するには?全般性不安障害の感情調整アプローチ

2025/03/07

みなさん、こんにちは。

神戸市や芦屋市、西宮市などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。

 

さて…

 

「未来のことを考えると、不安でたまらない」
「最悪の事態ばかり想像してしまう」
「考えすぎるせいで、行動する前に疲れてしまう」

 

このような不安を日常的に感じている方は少なくありません。

 

特に、心配が尽きず、生活に支障をきたしてしまう状態が続く場合、全般性不安障害の可能性が考えられます。

 

全般性不安障害は、単なる「心配性」ではなく、慢性的な不安とその結果としての身体的・精神的疲労を引き起こします。

 

そして、不安を解消しようとする試みが、かえって症状を悪化させてしまうこともあります。

 

今回は、「Applying an emotion regulation framework to integrative approaches to generalized anxiety disorder」という論文を踏まえつつ、全般性不安障害の本質と、感情調整を活用した対処法について詳しく解説していきます。

 

1.全般性不安障害(GAD)とは?その特徴と症状


全般性不安障害(Generalized Anxiety Disorder, GAD)は、日常生活におけるさまざまな出来事に対して、過剰な不安や心配が長期間続く精神疾患です。

 

この不安は一時的なものではなく、6か月以上継続し、日常生活に支障をきたすほど強いものとなることが特徴です。

 

一般的な心配事は、ある程度の範囲でコントロールでき、時間とともに軽減します。

 

しかし、全般性不安障害の場合は、心配の対象が広範囲に及び、本人の意志で制御することが難しくなることが大きな違いです。

 

また、単なる「心配性」ではなく、持続的な不安が心身のさまざまな症状を引き起こすことが特徴的です。

 

1-1.全般性不安障害の特徴的な症状


全般性不安障害は、精神的な症状だけでなく、身体的な不調も伴うことが多く、不安や心配が身体に与える影響は軽視できません。

 

主な症状は以下のとおりです。

 

● 過度の心配と不安

 

✔家族、仕事、健康、お金、将来に関することなど、さまざまな領域において常に心配してしまう。
✔その心配は現実的な脅威がない場合でも続き、止めようとしても止められない。
✔「最悪の事態」を想像しやすく、根拠のない不安が広がりやすい。

 

● 落ち着かない・緊張しやすい


✔いつも緊張していて、リラックスできない。
✔何か悪いことが起こりそうな気がして、不安が途切れることがない。
✔些細なことでも過敏に反応し、イライラしやすい。

 

● 集中力の低下・思考の混乱


✔不安が絶えず頭の中を占めているため、仕事や勉強に集中できない。
✔物事を整理して考えることが難しく、判断に迷うことが多い。
✔記憶力が低下し、ちょっとしたことを忘れやすくなる。

 

● 慢性的な疲労感


✔過剰な心配と緊張状態が続くため、エネルギーを消耗しやすい。
✔しっかり眠っても疲れが取れず、常にだるさを感じる。
✔身体的には特に問題がないのに、常に倦怠感を覚える。

 

● 身体的な症状


✔筋肉の緊張:首や肩のこり、顎の痛み、歯の食いしばりなどが起こる。
✔頭痛:ストレスが原因で緊張型頭痛を引き起こしやすい。
✔胃腸の不調:不安が続くことで胃が痛くなったり、吐き気や下痢が起こりやすくなる。
✔動悸や息苦しさ:心配が強まると、心臓がドキドキしたり、息苦しく感じることがある。

 

1-2.なぜ全般性不安障害は誤解されやすいのか?


● 「単なる心配性」と誤解されることが多い


全般性不安障害は、周囲から「ちょっと心配しすぎなだけ」「もっと気楽に考えればいいのに」と言われることがよくあります。

 

しかし、これは本人の意思で簡単にコントロールできるものではありません。

 

 

研究では、全般性不安障害の方は「感情調整」がうまく機能していないことが多いとされています。

 

つまり、不安を適切に処理したり、軽減する方法が機能していないため、不安がどんどん膨れ上がってしまうのです。

 

● 「不安になりやすい性格のせい」と思われがち


「生まれつき不安を感じやすい人がなるもの」と考える方もいますが、全般性不安障害は単なる性格の問題ではありません。

 

脳内の神経伝達物質(セロトニンやノルアドレナリン)のバランスの乱れや、ストレス、生活習慣の影響が関係していることがわかっています。

 

2.感情調整と全般性不安障害の関係


論全般性不安障害の根本的な原因の一つとして、「感情調整の困難さ」 が多くの場合に見られます。

 

全般性不安障害の方は、日常のささいなことに対して過剰に不安を感じやすく、その不安にどう対処すればよいのか分からず、結果的により強いストレスを感じることが多い という特徴があります。

 

2-1.感情調整とは?


感情調整とは、自分の気持ちを適切にコントロールし、バランスを取る能力のことを指します。

 

たとえば、ストレスを感じたときに、「深呼吸をする」「気分転換をする」「人に相談する」などの行動も感情調整の一つです。

 

感情調整がうまく機能していると、不安やストレスを感じても、それを適切に処理し、過剰に心を乱されることなく日常生活を送ることができます。

 

しかし、全般性不安障害の方は、感情をうまくコントロールできず、過度に不安を感じたり、その不安を抑え込もうとしたりして、結果的に悪循環に陥ることが多いことが指摘されています。

 

2-2.全般性不安障害の方が陥りやすい「不適応な感情調整パターン」


● 過剰な思考


全般性不安障害の方は、一度不安を感じると、その不安に執着し、繰り返し考えてしまう傾向があります。

 

例えば、次のような思考が止まらなくなることがあります。


✔「もし、仕事で大きなミスをしてしまったらどうしよう?」
✔「家族に何か悪いことが起こったら、私はどうしたらいいんだろう?」
✔「健康診断の結果がまだ出ていない…悪い病気だったらどうしよう?」

 

こうした不安は、すぐに答えが出るものではないため、考え続けても解決にはなりません。

 

しかし、全般性不安障害の方は「考え続けることで安心しよう」としてしまい、その結果、さらに不安が強くなるという悪循環に陥りやすいのです。

 

● 回避行動


全般性不安障害の方は、不安を感じる状況を避けることで、一時的に安心しようとする傾向があります。

 

しかし、この回避行動が長期的には不安を強めてしまうことが分かっています。

 

例えば、次のような回避行動がよく見られます。


✔「職場でのプレゼンが怖いから、理由をつけて辞退する」
✔「人と話すのが緊張するから、できるだけ一人で過ごす」
✔「健康に不安があるけど、病院に行くのが怖いから行かない」

 

このように、不安を感じる場面を避けると、その瞬間は安心できるかもしれません。

 

しかし、回避することで「やっぱりこの状況は怖いものだ」と脳が認識してしまい、ますます不安を感じやすくなってしまうのです。

 

その結果、行動範囲が狭まり、日常生活に支障をきたしてしまうことがあります。

 

● 感情の抑圧


「不安を感じるのはよくないことだ」「こんなことで心配するのはおかしい」と考え、不安な気持ちを押し殺そうとすることも、全般性不安障害の方によく見られる特徴です。

 

例えば、次のような考え方をすることがあります。


✔「大人なんだから、こんなことで不安になってはいけない」
✔「人に心配をかけるのは迷惑だから、気持ちを抑えよう」
✔「弱音を吐いたら、ダメな人間だと思われるかもしれない」

 

しかし、感情を抑え込もうとすると、かえって不安が増幅してしまうことが分かっています。

 

なぜなら、感情を押し殺そうとすることで、脳が「これは抑えなければならないほど重要なことだ」と認識し、不安がますます強くなってしまうからです。

 

そのため、不安を感じたときは、それを否定するのではなく「今、私は不安を感じているんだな」と受け入れることが大切です。不安を受け入れることで、気持ちが落ち着きやすくなります。

 

● 不確実性への耐性の低さ


全般性不安障害の方は、未来に対する「確実な答え」を求める傾向が強く、曖昧な状況に極端にストレスを感じやすいことが研究で指摘されています。

 

例えば、次のような状況で強い不安を感じることがあります。


✔「来月の仕事のスケジュールがまだ決まっていない…どうなるか分からないのが怖い」
✔「恋人の返事が遅いと、『嫌われたのでは?』と心配になる」
✔「健康診断の結果が出るまで、不安で落ち着かない」

 

未来の出来事は、すべてがはっきりと予測できるわけではありません。

 

しかし、全般性不安障害の方は、不確実な状況に強いストレスを感じ、「どうにかして確実な答えを得よう」としてしまいます。

 

例えば、「病気が心配だから、何度も病院で検査を受ける」「メールの返信が来ないと、不安になって何度も確認する」などの行動が見られることもあります。

 

しかし、こうした行動が逆に不安を増幅させることもあるのです。

 

3.感情調整を活用した全般性不安障害の対処法


全般性不安障害の方は、日常生活のさまざまな場面で過剰な不安を抱えることが多く、不安が続くことで心身の負担が大きくなることがあります。

 

しかし、感情調整のスキルを得ることで、不安との向き合い方を変え、症状を和らげることが可能です。

 

以下の方法を取り入れることで、不安をうまくコントロールしながら生活の質を向上させることが期待できます。

 

3-1.「不安をなくそう」としない


不安は自然な感情であり、完全になくす必要はありません。

 

「不安を感じることは悪いこと」「不安をすぐに消さなければ」と思うほど、かえってその感情に囚われてしまいがちです。

 

大切なのは、「不安があっても大丈夫」と受け入れることです。

 

例えば、「今、私は不安を感じているけれど、それは当たり前のこと」「不安があるからといって、必ずしも悪い結果になるわけではない」と意識するだけでも、心が軽くなります。

 

また、無理に不安を抑え込もうとすると、逆にその感情が強まることがあります。

 

不安をコントロールするのではなく、「そのままにしておく」「流していく」という視点を持つと、少しずつ気持ちが落ち着いていきます。

 

3-2. マインドフルネスの活用


マインドフルネスとは、「今この瞬間」に意識を向けることです。

 

全般性不安障害の方は、過去の失敗や未来の不確実な出来事について考えすぎる傾向があります。

 

その結果、「まだ起こっていないこと」に対して過度に心配し、不安が大きくなることがあります。

 

マインドフルネスを取り入れることで、「今、目の前のことに意識を集中する」習慣が身につき、不安のスパイラルから抜け出しやすくなります。

 

● 簡単にできるマインドフルネスの実践方法

 

✔深呼吸を意識する(4秒吸って、7秒止めて、8秒で吐く)
✔食事をゆっくり味わいながら食べる(食感や香りに集中する)
✔散歩中に周りの景色や音に注意を向ける(足の感覚や風の流れを意識する)
✔瞑想を取り入れる(5分間、目を閉じて呼吸に意識を向ける)


このようなシンプルな習慣を取り入れるだけでも、不安に飲み込まれず、「今、できること」に目を向けられるようになります。

 

3-3. 小さな不安に慣れる練習(エクスポージャー)


全般性不安障害の方は、不安を感じる場面を避けることで、一時的に安心感を得ることが多くみられます。

 

しかし、回避行動を続けると、不安の対象が「ますます怖いもの」に感じられ、状況を乗り越える力が育ちにくくなります。

 

そのため、少しずつ不安に慣れていく練習(エクスポージャー) を取り入れることが有効です。

 

● 小さな一歩から始めるエクスポージャーの例

 

✔電話が苦手なら、1日1回だけ短い電話をしてみる
✔対人関係の不安があるなら、簡単な挨拶から始める
✔外出が怖いなら、近所を5分だけ歩いてみる


不安を感じることは自然なことですが、「少しずつ経験を積む」ことで、不安が和らいでいくことが研究でも示されています。

 

3-4. 感情を表現する(アウトプット)


全般性不安障害の方は、不安な気持ちを心の中に溜め込んでしまうことが多く、それがストレスの蓄積につながることがあります。

 

そのため、感情を適切に表現することが大切です。

 

● 感情を表現する方法

 

✔日記を書く(その日の気持ちを言葉にするだけでもスッキリする)
✔カウンセラーや信頼できる人に話す(思いを言葉にすることで整理される)

感情を言葉にすることで、「自分が何に不安を感じているのか」が明確になり、それだけでも気持ちが落ち着くことがあります。

 

まとめ:不安を受け入れ、少しずつ前へ


全般性不安障害の方は、不安とどのように向き合うかが大きな課題となります。

 

しかし、感情調整のスキルを得ることで、「不安をコントロールしようとするのではなく、上手に受け流す」ことが可能になります。

 

● 重要なポイント


✔不安を無理になくそうとせず、受け入れることが大切
✔マインドフルネスで「今、この瞬間」に意識を向ける
✔少しずつ不安に慣れることで、不安耐性を高める
✔感情を表現し、心の負担を軽くする

 

不安と向き合うことは簡単ではありませんが、少しずつ実践していくことで、「不安があっても大丈夫」と思える瞬間が増えていきます。

 

もし不安が長引いて生活に影響を及ぼしている場合は、医師やカウンセラーのサポートを活用しながら、自分のペースで回復への道を歩んでいきましょう。

 

参考論文

Applying an emotion regulation framework to integrative approaches to generalized anxiety disorder

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この記事の執筆者

駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)

心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。

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