完璧主義と強迫性障害の関係とは?
2025/03/13
みなさん、こんにちは。
神戸市や芦屋市、西宮市などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。
完璧主義は、一見すると良い特性のように思われます。
努力を惜しまない、仕事を丁寧にこなす、向上心がある…
確かに、完璧主義がポジティブな影響を与えることもあります。
しかし、行き過ぎた完璧主義は、精神的な負担を増大させ、強迫性障害(OCD)との関連性も指摘されています。
そこで、今回のブログでは「完璧主義が強迫性障害に与える影響」 をテーマに、研究論文の内容を踏まえて詳しく解説します。
1.完璧主義と強迫性障害(OCD)の関係性~なぜ完璧主義が問題になるのか?~
1-1. 完璧主義が強迫性障害を悪化させるメカニズム
強迫性障害(OCD)は、不合理で制御が難しい強迫観念(『手が汚れているかもしれない』『戸締りを確認しないと安心できない』など)と、それを打ち消そうとする強迫行動(『何度も手を洗う』『何度も戸締りを確認する』など)を特徴とする精神疾患です。
この障害の根本には、「完全でなければいけない」「間違いを犯してはならない」という強い思い込みがあることが多く、完璧主義の傾向が症状を悪化させる要因となります。
研究論文 「Perfectionism in Obsessive-Compulsive Disorder Patients」(Frost & Steketee, 1997) によると、強迫性障害の方は、一般的な人よりも完璧主義の傾向が顕著であることが確認されました。
特に、以下の2つの完璧主義的特徴が、強迫性障害の症状を引き起こし、悪化させる要因となることが明らかになっています。
1-2. 強迫性障害に関連する完璧主義の特徴
① ミスを極端に恐れる
強迫性障害の患者は、「間違いを犯すこと」に対して過度の恐怖を抱く傾向があります。
● 「少しのミスも許されない」という思考パターン
✔ほんの些細なミスでも、すべてが台無しになる」と考え、不安が大きくなる。
✔例えば、「レポートの1文字でも間違えたら評価が下がる」と考え、何時間も見直しを続ける。
✔ミスを避けるために、必要以上に時間をかけて確認作業を行う(例:メールを何度も読み直す)。
このような思考が習慣化すると、「不安を取り除くために確認行動を繰り返す」 という悪循環が生まれ、強迫行動が強化されてしまいます。
② 自分の行動に疑いを持ち続ける
強迫性障害の特徴のひとつに、「本当にやったのか?」という強い疑念があります。
● 「やったはずなのに、確信が持てない」
✔例えば、「ドアをきちんと閉めたか分からない」と思い、何度も確認する。
✔「ガスの元栓を締めたか?」と気になり、家を出てから何度も戻って確認する。
✔「相手にちゃんと伝わったか?」と気になり、同じことを何度も尋ねる。
この「疑い」が強迫行動を引き起こし、不安を増大させる要因となるのです。
1-3. 強迫性障害とその他の不安障害との違い
強迫性障害と他の不安障害(例:パニック障害、社交不安障害)との違いは、「自分の行動への疑いの強さ」 にあります。
● 強迫性障害とパニック障害の違い
パニック障害の場合
→突然の発作的な不安が特徴(例:『心臓が止まるかもしれない』)。
強迫性障害の場合
→「自分の行動が正しくできているか?」という疑いが、不安の中心 になっている。
● 強迫性障害と社交不安障害の違い
社交不安障害の場合
→「他人にどう思われるか?」が主な不安の要因。
強迫性障害の場合
→「自分の行動が正しいかどうか?」が不安の中心。
このように、強迫性障害の根本には、「完璧にやらなければならない」「ミスをしてはいけない」という強い思い込み があり、それが「本当に正しくできているか?」という不安へとつながり、最終的に強迫行動を引き起こすのです。
1-4. なぜ完璧主義が強迫性障害にとって問題なのか?
● 「完璧」を求めること自体が、終わりのないループを作る
✔何度確認しても「100%完璧」という保証がないため、不安が消えず、行動を繰り返してしまう。
✔「もっと確認しなければならない」「このままだと不十分かもしれない」と考え、どんどん時間を費やしてしまう。
● 「間違えてはいけない」という考えが、自由を奪う
✔「ミスが許されない」と思うことで、新しいことに挑戦する意欲が低下する。
✔「完璧でなければならない」と感じることで、日常生活に強いストレスを感じるようになる。
● 強迫行動を続けるほど、不安が増していく
✔最初は「1回の確認で安心できた」ものが、次第に「10回確認しないと安心できない」と増えてしまう。
✔「確認しないと不安になる」という習慣が定着し、完璧を求める気持ちがさらに強化されてしまう。
つまり、完璧主義が強迫性障害を悪化させるのは、「終わりのない確認のループ」を生み出すためなのです。
1-5.まとめ:完璧主義を手放し、強迫性障害の悪化を防ぐために
✔完璧でなくても大丈夫、と少しずつ思えるようになる
✔「確認する回数を減らす」など、少しずつ行動を変えていく
✔「間違えても取り返しがつく」ことを体感する機会を作る
✔必要に応じてカウンセリングを活用し、適切なサポートを受ける
強迫性障害は、「不安を取り除くために行動を繰り返すこと」で悪化していくという特徴があります。
そのため、「完璧を求めなくても大丈夫」と思えるような環境を作り、少しずつ行動を変えていくことが重要です。
2.完璧主義とうまく付き合うために:実践的な対処法
2-1. 「ミスをしても大丈夫」と思う練習をする
間違いを犯しても取り返しがつくことを理解する。
✔「〇〇を間違えたらどうなる?」と問いかけ、現実的な影響を考える。
✔「100点を目指すのではなく、70点でもOK」と考える。
2-2. 「確認行動」を減らす練習をする
✔例えば、「戸締りを10回確認しないと不安」という場合、「まずは9回に減らす」 というように、徐々に減らしていく。
✔「確認しなくても何も問題が起こらなかった」という成功体験を積み重ねる。
2-3. 「すべての選択肢を比較しない」習慣をつける
強迫性障害の完璧主義的傾向として、「最善の選択肢を選ばなければならない」という強迫観念があります。
そのため、以下の取り組みが有効になる場合もあります。
例:「レストランでメニューを長時間悩む」 → 「最初に目についたものを選ぶ」練習をする。
2-4. カウンセリングを活用する
完璧主義が強迫行動につながる場合、認知行動療法(CBT) が有効であることが多くの研究で示されています。
まとめ:完璧でなくても大丈夫
完璧主義は、一見良い特性のように思えますが、行き過ぎると心に大きな負担をかけ、強迫性障害を引き起こす原因となることがあります。
✔ミスを恐れすぎない
✔自分の行動を疑いすぎない
✔確認行動を減らす練習をする
✔医療機関やカウンセリングを活用する
もし、「完璧を求めすぎてつらい」「確認行動がやめられない」と感じたら、ぜひ医療機関やカウンセリングサービスを活用してみてください。
完璧でなくても大丈夫。少しずつ、「心の負担を軽くする」ことから始めていきましょう。
参考論文
----------------------------------------------------------------------
こころのケア心理カウンセリングRoom
兵庫県芦屋市浜芦屋町1-27 サニーコート浜芦屋302号
電話番号 : 090-5978-1871
----------------------------------------------------------------------
この記事の執筆者
駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)
心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。
プロフィールはこちら