感情を変える「イメージのチカラ」:不安をやわらげる実践テクニック
2025/03/13
みなさん、こんにちは。
神戸市や芦屋市、西宮市などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。
さて、脳は私たちを生かし、成長させる素晴らしい器官ですが、同時に「生存」を優先するあまり、必要以上に恐れや不安をかき立てることがあります。
実際に多くの方が「どうしてこうもネガティブな考えにとらわれるのか」と悩まれています。
実は、こうした不安を「自然な反応」だと理解しつつ、上手に扱う方法があります。
そこで今回は、日常生活の中でも取り入れやすい3つのテクニックをご紹介します。
これらの自分に合ったアプローチを見つければ、心がずいぶんと軽くなるはずです。
1. 感情を「回転」させる
私たちが感じる不安や恐れは、何か具体的な形や動きのイメージを持っている場合があります。
そこで、あえて感情を「物体が回転している」イメージに置き換えると、思った以上に感情をコントロールしやすくなるのです。
以下のステップで、意識的に感情を「回転」させてみましょう。
ステップ1:感情を「どこで」感じるか探る
① リラックスして目を閉じる
深呼吸しながら心を落ち着かせます。
② 体のどこに不安があるかをチェック
胸の奥、のど、胃のあたりなど、人によって感じ方はさまざまです。
③ 形や質感をイメージする
「もしこれが物体だったら、柔らかいか硬いか、どんな大きさや色をしているか」など、できるだけ詳しく思い描いてみてください。
ステップ2:感情が「回転」しているイメージを持つ
① 回転の方向を確認
「上から下へ回っている?左右にぐるぐるしている?」「速い動きか、それともゆっくりか」などをイメージしてみましょう。
② まずは「悪化させる方向」へ回転を変える
一見逆効果に思えますが、あえて不快な方向・速度に変えてみると、「スピードや方向を変えれば感情が変化する」という事実を自覚しやすくなります。
③ 心地よい回転へ戻してみる
悪化する方向を体感したら、今度は自分が「楽に感じる」速度や方向へ回転を調整します。
「もっとゆっくり回ると楽」「反対向きに回すと少し落ち着く」など、自分の身体がどう反応するかを確認しながら行いましょう。
● なぜ「回転」が効果的なのか?
感情は本来「目に見えない」ため、ただ漠然と苦しさを抱える傾向が多くみられます。
しかし、あえて「回転する物体」のように具体化することで、感情をある程度客観視できます。
さらに、その回転の速度や方向を変えるイメージをすることで、自分自身に「感情を操作できるかもしれない」という感覚を育むのです。
このテクニックは、初めて行うときは「本当にこんなイメージが役立つのかな?」と思うかもしれません。
けれども、意外なほど効果を実感しやすい例が多く報告されています。
ぜひ試してみて、「不安や恐れのコントロール」にどのような変化が起こるか、自分自身で確かめてみましょう。
2. ネガティブな声に「それで」を添える
人には、気持ちが沈むような「内なる声」が聞こえる瞬間が少なからずあります。
たとえば「自分はどうせダメな人間だ」「誰にも必要とされていない」「これ以上失敗したらもう取り返しがつかない」など、自分を否定するような考えです。
このネガティブな声は、私たちの自尊心を大きく揺さぶり、不安を増幅させる原因にもなります。
2-1.「それで」を添える具体例
そんなとき、頭の中で繰り返されるネガティブなセリフに「それで」を付け加えて疑問符にしてみてください。
以下にいくつかの具体例を挙げます。
「誰も私なんか必要としていない」
→ 「それで、誰も私なんか必要としていない?」
「絶対に今回も失敗するに違いない」
→ 「それで、今回も失敗するに違いないの?」
「自分には才能なんてないんじゃないか」
→ 「それで、才能なんてないと思うわけ?」
「もう全てが手遅れだ」
→ 「それで、本当に全てが手遅れだというの?」
このように、ネガティブな文の先頭に「それで」を加えるだけで、文章自体がどこか「とぼけた雰囲気」になります。
すると、不思議とその言葉が持つ強いインパクトが和らぎ、「自分を責める声」に飲み込まれにくくなるのです。
2-2.どうして「それで」の疑問符で和らぐのか?
● 言葉の意味がズレて感じられる
「それで」をつけることで、もともとのフレーズがややコミカルに聞こえ、深刻さが薄れます。「本当にそうなの?」と、半歩引いて考えられる隙間が生まれやすくなります。
● 自分の思考を「見直すきっかけ」になる
ネガティブな声は、頭の中で無意識に繰り返されることが多いため、そのまま受け止めてしまう場合が多くなります。
しかし、「それで」を足すひと手間によって、声の内容をあらためて確認し、「本当にそうなんだろうか?」と問い直すきっかけが生まれます。
● バカバカしさが「チカラ」になる
一見「くだらない」と思えるかもしれませんが、この「バカバカしい」と感じるほどの単純さが、ネガティブな声の説得力を奪うカギです。
深刻になりすぎず、スッと力を抜いて客観視しやすくなるのです。
2-3.コツや応用
テンポを変える
→文章のスピードを変えて言い直したり、声のトーンを変えてみたりすると、さらに効果が高まります。
演技してみる
→おどけた声や大げさな口調で言ってみると、「なんだか変だな」と感じられ、ネガティブな声を深刻に捉えすぎなくなるでしょう。
紙に書き出す
→「それで」をつけた文を実際に紙に書いて眺めてみると、読み返すたびに笑えてくるようになり、さらに効果的です。
3.否定的な感情の「皮」をむく
3-1.感情には「陰」と「陽」がある
私たちの感情は、「陰」と「陽」のように反対の性質をもつ一対としてとらえられることがあります。
たとえば、不安が高まっているとき、その対極には「安心」や「落ち着き」などの安らぎの感情が隠れているのです。
陰と陽が互いに作用することでバランスを取り、私たちの心はさまざまな状態を行き来しています。
この視点から見ると、「不安だからこそ生まれるポジティブな感情もある」という考えが自然に受け入れやすくなります。
たとえば、不安の裏側にはそれだけ「安心感」を求める気持ちや、「自分を守りたい」という大切な感情が潜んでいることが少なくありません。
3-2.陰と陽のように、反対の感情を探る
「不安」と「安心」が表裏一体であるように、人が感じるあらゆる感情には対極となる感情が備わっています。
このテクニックでは、ネガティブな感情(陰の部分)を徐々に薄くすることで、反対のポジティブな感情(陽の部分)を感じやすくなるよう意識していきます。
① まずは「体のどこ」に不安があるか、はっきり意識する
頭の中がモヤモヤするのか、胸が締め付けられるのか、喉の奥が苦しいのか。
どこに不安が集中しているかを確認しましょう。
② その感情をあえてイメージし、色や音、形などを連想する
もし不安が「黒い球体」であるとか、「重たい鎖」であるなど、何らかの具体的なイメージが浮かぶなら、それを掴んでください。
形や色がイメージしづらければ、音のように捉えても構いません。
③ 「落ちろ」と心の中で唱えながら、一枚ずつ皮をむくように感情を薄くしていく
タマネギの皮をむくように、不安という塊が一層ずつはがれていくイメージを持ちます。
「落ちろ」という言葉を使うと、より能動的に「手放している」という感覚を得やすくなります。
はがれた分だけ不安が少し軽くなり、対極の安心感が顔をのぞかせるイメージです。
④ 安堵や解放感へ近づいていく
この作業を繰り返すことで、「最初に感じていた不安が薄れている」と実感する可能性が高まります。
完全に不安を消し去ろうとするのではなく、その対極にある「安心感」を徐々に見つける意識で進めるのがコツです。
まとめ:小さな工夫が不安を変える
日々の生活の中で、不安は一筋縄ではいかない存在です。
しかし「感情を回す」「ネガティブな声に一言添える」「否定的な感情の皮をむく」など、ちょっとしたテクニックを試すだけで、驚くほど心が軽くなることがあります。
もし今、不安や恐れに振り回されていると感じたら、ぜひこれらのヒントを実践してみてくださいね。
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この記事の執筆者
駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)
心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。
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