うつ病の方はどのように情報を処理するの?情報処理と自己認識のメカニズム
2025/03/15
みなさん、こんにちは。
神戸市や芦屋市、西宮市などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。
さて、うつ病を持つ方々の多くは、ネガティブな思考にとらわれやすいと言われています。
しかし、これは単なる気分の問題ではなく、脳の情報処理の仕組みそのものに偏りが生じている可能性があることが、最新の研究で明らかになっています。
そこでこのブログでは、うつ病の方々がどのように情報を処理し、それが自己認識や世界の捉え方にどのような影響を与えるのかを探っていきます。
1.うつ病における情報処理の特性
1-1.うつ病の方は、どのように情報を処理し、自己概念を形成しているのか?
この疑問に答えるために、Dozois & Dobson(2001)の研究 では、うつ病患者の情報処理の特性を詳しく分析しました。
この研究では、認知の偏りがうつ病の症状を持続させる要因の一つである可能性を示唆しています。
具体的には、以下の4つの特徴がうつ病患者の情報処理において顕著に見られました。
● うつ病の方々は、ネガティブな情報をより強く記憶しやすい
うつ病の方は、自分に関する否定的な情報を優先的に処理し、それを強く記憶する傾向があります。
例えば、職場や学校での出来事を振り返る際に、褒められたことや達成したことよりも、失敗や批判された経験を強く思い出すことが多くなってしまいます。
具体例
✔上司に「今回の報告書は分かりやすかったね」と言われても、「ここを改善すべき」と指摘された部分ばかり気にしてしまう。
✔友人との会話の中で、一言だけ少しネガティブな内容が含まれていた場合、その部分だけを何度も思い出してしまう。
こうした「ネガティブな記憶の優先化」によって、自己評価が低下し、「私はダメな人間だ」「また失敗するかもしれない」という考えが強化されてしまいます。
● ポジティブな情報の処理や記憶が弱い
うつ病の方は、ポジティブな出来事や自分にとって嬉しい情報を受け取ったとしても、その情報を処理したり、長く記憶にとどめたりするのが苦手であることが分かっています。
具体例
✔「頑張ったね」と言われても、「たまたま運が良かっただけ」と考えてしまう。
✔過去に成功した経験があっても、「自分の実力ではない」と感じ、ポジティブな記憶として定着しない。
その結果、ポジティブな自己評価が形成されにくく、「自分には価値がない」「頑張っても意味がない」といった考え方につながることがあります。
● 自己認識に関する情報のネットワークが、ネガティブな内容で強く結びついている
この研究では、うつ病の方の「自己概念」が、ネガティブな情報と強く結びついていることも明らかになりました。
これは、脳内で関連情報を結びつける「認知ネットワーク」の仕組みが、うつ病の症状に影響を与えていることを示唆しています。
具体例
✔「自分は能力が低い」と思っている方は、過去の失敗や批判の記憶を思い出しやすい。
✔「自分は魅力がない」と感じている方は、過去に否定的なコメントを受けた経験を結びつけて考えてしまう。
このように、ネガティブな考えが次々と関連付けられることで、ポジティブな視点を持ちにくくなり、自己評価の低下につながります。
1-2.うつ病の方は、不安障害の方と比べても特にポジティブな情報の処理が苦手
興味深いことに、この研究では 不安障害を持つ方と、うつ病の方の情報処理の違いも調査されています。
その結果、不安障害の方はネガティブな情報を処理しやすいものの、ポジティブな情報の処理能力は比較的保たれていることが分かりました。
つまり、不安障害の方は「悪いことが起こるかもしれない」と警戒する傾向がありますが、うつ病の方は「どうせ何をやっても無駄だ」と考えやすいという違いがあるのです。
● うつ病と不安障害の情報処理の違い
不安障害の方
→ 「危険を回避する」ために、ネガティブな情報に強く注意を向ける傾向があるが、ポジティブな情報を完全に無視するわけではない。
うつ病の方
→ ネガティブな情報に加えて、ポジティブな情報を受け取る能力自体が低下している。
具体例
✔不安障害の方は、「失敗したらどうしよう」という考えで不安になるが、成功の可能性も多少は考慮する。
✔うつ病の方は、「どうせやっても無駄だ」「うまくいくはずがない」と考え、成功の可能性をまったく考えようとしない。
この違いから、うつ病の方はポジティブな経験や情報を活用することが難しく、それが症状の持続や悪化につながる ことが示唆されています。
1-3.うつ病における情報処理の特徴が症状を悪化させる理由
これらの情報処理の偏りが、うつ病の持続や悪化にどのように関与しているのでしょうか?
✔ネガティブな記憶ばかりが強調されることで、自己評価が低下する。
✔ポジティブな経験が記憶に残らず、自己肯定感が育たない。
✔ネガティブな自己概念が強化され、「どうせうまくいかない」という思考が根付く。
✔不安障害の方よりも、「ポジティブな側面に目を向けること」が困難なため、希望を持ちにくくなる。
このように、うつ病の方は 自分に関する否定的な情報を強く記憶し、肯定的な情報を無視しがち という特徴を持っており、それが症状の持続や悪化の要因になっていると考えられます。
1-4.まとめ
Dozois & Dobson(2001)の研究では、うつ病の方が情報をどのように処理しているのかを明らかにし、それが症状にどのような影響を与えているのかを示しました。
✔うつ病の方は、ネガティブな情報を強く記憶しやすい。
✔ポジティブな情報の処理が苦手で、自己評価の向上につながりにくい。
✔ネガティブな自己概念が強固で、関連情報が結びつきやすい。
✔不安障害の方よりも、ポジティブな情報を処理する力が低い。
この研究は、うつ病の治療において「認知の歪み」を修正することが非常に重要であることを示唆しています。
認知行動療法(CBT)などの心理療法を通じて、ポジティブな情報に目を向ける練習をすることが、うつ病の改善に役立つ可能性があります。
2.情報処理の偏りを変えるには?
うつ病の情報処理の偏りを修正するためには、認知行動療法(CBT)などの心理療法が有効です。
例えば、以下のようなアプローチが役立ちます。
● 自動思考の見直し
✔「どうせダメだ」と思ったら、「本当にそうだろうか?」と問いかける。
✔事実と解釈を区別し、ポジティブな視点を持つ練習をする。
● ポジティブな出来事に目を向ける
✔1日の終わりに「良かったこと」を3つ書き出す習慣をつける。
✔他人の評価を素直に受け取るよう意識する。
● 情報のバランスを取る
✔ネガティブな情報ばかりに注意が向かないように、意識的にポジティブな出来事にも目を向ける。
✔「悪いことばかりではない」と気づくことで、認知のバランスを整える。
まとめ
今回紹介した研究によると、うつ病の人はネガティブな情報を優先的に処理し、ポジティブな情報を受け入れにくいことが分かっています。
このような情報処理の偏りを理解することは、うつ病の治療やカウンセリングにおいて重要なポイントとなります。
この点を踏まえて、どうか自分自身にやさしくあってくださいね。
参考論文
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この記事の執筆者
駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)
心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。
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