双極性障害と不安障害の併存に対する心理的アプローチ
2025/04/11
みなさん、こんにちは。
神戸市や芦屋市、西宮市などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。
双極性障害とうつ症状、そして不安障害を併せ持つというケースは珍しくありません。
「気分の波が激しくて、自分でもコントロールできない」
「常に不安がつきまとい、心が休まらない」
…双極性障害を抱えている方の場合、別の疾患や障害がへ威圧することは多々あります。
そこで今回は、最新の研究をもとに、双極性障害に併存疾患がある場合、心理療法がどのように回復への道を照らすのかをお伝えしたいと思います。
1.双極性障害と不安障害の併存とは?〜複雑な心の波とその影響を知る〜
双極性障害とは、気分の振れ幅が極端になる特徴を持つ精神疾患です。
代表的なのは、気分が異常に高揚する「躁状態(あるいは軽躁状態)」と、気分が極度に落ち込む「うつ状態」が、周期的に繰り返されるというパターンです。
躁状態では、非常に活発でエネルギッシュになる一方で、衝動的な行動や思考の飛躍、睡眠欲求の減少などが見られることがあります。
対してうつ状態では、気分の著しい落ち込み、無気力、自己否定、睡眠障害など、深い苦しみが継続的に現れます。
これらは個人差がありながらも、仕事や人間関係、日常生活に大きな影響を及ぼす深刻な病状です。
1-1.不安障害との高い併存率
こうした双極性障害を持つ方のうち、約50%以上が生涯のうちに何らかの不安障害を併発することが、複数の研究で明らかにされています。
これは決して例外的なケースではなく、双極性障害の経過において非常に一般的かつ重要な要素です。
ここで言う「不安障害」とは、以下のような症状群を含んでいます
パニック障害
→突然の強烈な不安発作(パニックアタック)を繰り返し経験し、それに対する強い予期不安を抱える。
社交不安障害(社交恐怖)
→人前で話す、注目を浴びる場面で強い緊張や回避行動をとってしまう。
強迫性障害(OCD)
→自分でも不合理とわかっていながら、繰り返し浮かぶ考え(強迫観念)や行動(強迫行為)にとらわれる。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)
→過去のトラウマ体験が心に残り、フラッシュバックや回避、過覚醒などが持続する。
全般性不安障害(GAD)
→特定の対象に限らず、日常のあらゆることに対して過剰な不安が続く。
これらの不安障害は、双極性障害の発症や再発リスクを高め、症状の複雑さを増す要因となります。
1-2.症状の重なりがもたらす難しさ
不安障害と双極性障害が併存すると、次のような問題が起こりやすくなります
✔気分の変動がより不安定になり、症状のパターンが予測しにくくなる
✔うつ状態の中に過剰な不安や焦燥感が加わることで、抑うつエピソードがより深刻化する
✔不安が原因で、薬物療法やカウンセリングの効果が出にくくなる場合もある
✔対人関係の困難や社会的機能の低下が起きやすくなる
✔自己評価や生活の満足度が低下し、自己否定や無力感が強まる
このように、不安障害は単なる「副次的な問題」ではなく、双極性障害の治療全体に大きく関わる重要な要素なのです。
2.最新研究が示す心理療法の効果〜双極性障害と不安障害の併存に対する新たなアプローチ〜
アメリカ精神医学会の権威ある学術誌『American Journal of Psychiatry』に掲載されたDeckersbachら(2014年)の研究は、双極性障害のある方の治療における心理療法の有効性を明らかにしたものです。
特にこの研究では、「双極性障害にうつ症状や不安障害が併存するケース」に焦点を当てており、従来の薬物療法に特定の心理療法を加えることで、回復の可能性がより高まることが実証されました。
この研究で用いられた心理療法は、以下の3つです。
2-1. 家族志向療法(Family-Focused Therapy:FFT)
この心理療法は家族との協働によって再発防止と症状の安定を目指す心理療法です。
双極性障害はご本人だけでなく、周囲の家族にも影響を及ぼす疾患であるため、家族全体で病気への理解と対応力を高めることが非常に重要です。
家族志向療法では主に以下のような支援が行われます
✔ご本人と家族への病気に関する心理教育(psychoeducation)
✔ストレスの管理方法や、感情表現のトレーニング
✔家族間のコミュニケーション改善
家族が双極性障害について正しく理解し、適切に支援するスキルを持つことで、再発の頻度や症状の悪化が大きく軽減されると報告されています。
2-2. 対人関係・社会リズム療法(Interpersonal and Social Rhythm Therapy:IPSRT)
この療法は、双極性障害に特徴的な「生活リズムの乱れ」と「対人関係のストレス」に焦点を当てたアプローチです。
双極性障害のうつ・躁の波は、睡眠・食事・活動パターンの乱れや、対人関係のトラブルなどにより引き起こされやすいという特性があります。
対人関係・社会リズム療法では、以下のような支援が行われます
✔安定した生活リズム(起床・就寝・食事時間)の確立
✔対人関係上のストレス要因の整理と対処
✔気分の変動と日常生活との関連を意識化する
この療法は、再発の予防や長期的な気分の安定に非常に有効であることが、臨床的にも多数報告されています。
2-3. 認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy:CBT)
認知行動療法は、思考・感情・行動の関連に注目し、否定的な思考パターンをより柔軟で現実的なものに変えていく療法です。
特に双極性障害のうつ状態では、「自分には価値がない」「また症状が悪化するに違いない」といった悲観的な思考にとらわれやすくなります。
認知行動療法では、こうした思考を次のような形で見直していきます
✔自動思考(瞬間的に浮かぶネガティブな考え)を認識し、検証する
✔思考と現実のズレに気づき、新しい視点を持つ
✔問題解決スキルやストレス対処法の習得
このように、認知行動療法は再発予防だけでなく、ご本人の自己効力感や行動の幅を広げる効果もあるとされています。
2-4.心理療法を受けたご本人の回復率が向上
Deckersbachらの研究では、これらの心理療法を受けたご本人は、薬物療法のみを受けたグループに比べて、回復率が明らかに高かったことが報告されています。
特に注目すべき点として…
✔うつ症状が顕著な方
✔不安障害を併存している方
においては、心理療法の導入によって気分の安定が促進され、生活の質(QOL)も向上することが実証されました。
2-5.なぜ不安障害に対して心理療法が有効なのか?
不安障害を併存している方にとっては、単なる薬物療法では不安感や緊張、過敏さといった症状が残りやすく、再発や症状の慢性化につながる恐れがあります。
心理療法では、以下のような点に焦点を当てることで、不安症状の軽減が期待できます
✔感情の気づきと調整スキルの向上
✔「不安になっても大丈夫」と思える安心感の構築
✔回避行動の見直しと、少しずつ自信を取り戻すプロセス
これにより、不安障害そのものの症状改善だけでなく、双極性障害の回復にも良い影響をもたらすことが示されています。
まとめ
双極性障害とうつ症状、不安障害の併存は、ご本人にとって大きな負担となりますが、心理療法を取り入れることで、回復への道が開かれる可能性があります。
適切なセルフケア、そして必要に応じて主治医への相談やカウンセリングを活用して、本来のご自身を取り戻してくださいね
参考論文
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この記事の執筆者
駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)
心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。
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