理由なき不安は過去の記憶の残像から生まれる
2025/04/29
みなさん、こんにちは。
神戸市や芦屋市、西宮市などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。
突然、胸がざわつく…。
電車のドアが閉まる「ガタン」という音を聞いた瞬間に汗ばみ、理由もなく動悸が速くなる…。
「仕事のプレッシャー?」と考えてみても心当たりがない。
そんな「原因不明の不安」に覚えはある方も多いと思います。
実はそのモヤモヤ、過去の体験と五感がひそかに結び付いた 「感情の残像(フィーリングメモリー)」 が発火している可能性があります。
意識では忘れていても、匂い・光・音といったごく小さな刺激がスイッチとなり、当時の緊張反応だけが現在によみがえる…。
これは脳がもつ防衛システムの一種です。
そこでこのブログでは…
✔フィーリングメモリーが起こる脳のメカニズム
✔トリガーを見極めるセルフチェック&記録法
✔認知の書き換えとセルフケアの具体的ステップ
…を心理カウンセラーの視点でわかりやすくまとめました。
1.感情の残像(フィーリングメモリー)とは?
1-1.「いま」 と 「むかし」 が五感でショートする現象~
✔何の変哲もない会議室で、突然胸がザワつき汗が噴き出す
✔電車のブレーキ音を聞いた瞬間、理由のない動悸で呼吸が浅くなる
✔頭では「危険はない」と理解しているのに感情が乱れる…。
このとき舞台裏で働いているのが フィーリングメモリー(感情の残像) です。
1-2. 仕組み:扁桃体の「早とちり警報」
① 過去の強い体験
叱責・いじめ・事故・失恋など、心拍やホルモンが大きく揺れた出来事を脳は「非常事態」として記憶。
② 五感のタグ付け
その場にあった音・匂い・光の色合い・肌ざわりなどが「危険タグ」として扁桃体に貼り付く。
③ 現在での再生
後年、似た刺激を五感が検知すると、たとえ状況は安全でも扁桃体が誤作動し、交感神経をフルスロットルに。
その結果、結果、動悸・発汗・胃のムカつきなど当時と酷似した生理反応だけが「抜き出し再生」される。
1-3.よくある例
● 雷鳴とケンカの記憶
✔子どもの頃、激しい夫婦喧嘩があった雷雨の夜。
→ 大人になっても遠雷を聞くと肩が強張り、胃がキリキリ痛む。
✔教室の消臭剤の匂い
からかわれた場面で漂っていた独特のミント臭。
→ 同じ芳香剤をオフィスで嗅いだだけで憂うつ感が急上昇。
✔体育館のワックスの光
スポーツテストで大失敗し笑われた床のテカリ。
→ 同じ光沢のフローリングを見るだけで呼吸が浅くなる。
1-4.「原因不明の不安”」と感じやすい理由
フィーリングメモリーを呼び起こすトリガーは ごく短い音の周波数や微量の香りなど、意識にのぼりにくい断片であることが多く、「何がきっかけか分からないのに体だけ反応する」というギャップが、余計に不安を強めます。
1-5. PTSD との違い
PTSD:体験自体のフラッシュバック映像・悪夢が繰り返し襲う。
フィーリングメモリー:映像記憶はなく、主に身体感覚やムードだけが急激に発火。
どちらも「脳の誤警報」ですが、日常のストレス下でも誰にでも起こり得るのがフィーリングメモリーと言えます。
2.なぜ「引き金」を見つけにくいのか?
2-1.感覚のファイルは文字ラベルが付いていない
私たちの脳は出来事を「物語」ではなく「感覚の束」 として保存しがちです。
例えば…
強い体験の最中に…
✔心拍が跳ね上がる
✔肩や顎がガチッと固まる
✔皮膚がヒヤッと粟立つ
こうした 身体感覚や五感の断片 が「危険サイン」として扁桃体に直書きされます。
先に挙げた例である「雷と口論で怯えた夜」という体験も文章データではなく、音圧・匂い・筋肉の緊張 という身体的な感覚を記憶します。
だから後年、同じ音圧や匂いに触れても 言語で思い出せず、体だけが瞬発的に再生されるのです。
2-2.ストレス時、前頭前野は「節電モード」に
大きな衝撃を受けた場面では…
「ここはリスクを分析しよう」 と冷静に働く 前頭前野(思考・時間軸・意味づけの司令塔) が一時的にダウンします。
すると体験は 日時や場所のラベルが外れた「裸の感情データ」として記録されてしまいます。
そして数年後、同じ匂い分子を嗅いだ瞬間に…
「なぜか分からないけど胸がザワつく」
という形で浮上するので、過去と現在を結ぶ「手がかりの糸」が見当たらないのです。
2-3.トリガーは生活音レベルの「ノイズ」にも潜む
✔エアコンの送風が壁で反射する低周波
✔LED の高速チラつき
✔鉛筆を削る微かな木の香り
このような日常に溶け込み過ぎて意識のレーダーに映らない微細刺激が引き金になる場合も多数あります。
とくに HSP(繊細気質)の人は五感の感度が高いため、「同僚は何ともないのに私だけ動悸がする」というギャップに悩みやすくなります。
2-4.まとめ
✔感覚記憶は言語でタグ付けされにくい
✔ストレスで「いつ・どこで」を管理する脳機能が一時停止
✔引き金が生活ノイズレベルまで微細化
この三重構造が、フィーリングメモリーの「原因不明感」を生み出します。
3 「モヤッ」とした瞬間をメモする~セルフチェックの基本~
不安が襲ってきたとき、ほとんどの人は「早く落ち着きたい」と気持ちをそらしがちです。
けれど セルフケア の第一歩は「観察」です。
やり方はとてもシンプル。
スマホのメモアプリや手帳に、次の3点を端的に書き残すだけで OK です。
① いつ・どこで?
✔日付とおおよその時刻
✔いた場所(職場のデスク、駅のホーム、リビング など)
例)3/28 18:10 阪急夙川駅のホーム
② 五感と姿勢は?
✔視界の色合い・光の強さ
✔周囲の音(店内 BGM、車のクラクション、アナウンス など)
✔匂いや温度感、座っていた/立っていた など身体の姿勢
例)薄暗い夕方、構内アナウンスが響いていた。立ったままスマホを操作。
③ 体のサインは?
✔心拍数が上がった/息苦しい
✔手汗・震え・筋肉のこわばり
✔胃のムカムカなど
例)心臓がドキドキ、肩がギュッと固まる感じ。
この「小さな記録」を続けていると、同じ BGM が流れていたときだけザワつく、蛍光灯の白い光を見た瞬間に息が浅くなるなど、共通パターンが浮かび上がります。
※このメモはあくまで セルフケア。症状が強いときは専門家のサポートを併用してください。
4 「書き起こし」で思い込みをゆるめる~セルフリフレーム~
トリガーの手がかりが見えたら、次は文章化で気持ちを整理します。
ポイントは「出来事」と「解釈」を分けること。
以下のステップで「思考のクセ」を客観視してみましょう。
ステップ1 状況をざっと書く
例)職場の廊下で同僚に冗談を言われ、笑われた。
ステップ2 事実と解釈を分離
事実=「笑われた」
解釈=「私は価値がない」
ステップ3 解釈を検証
✔本当に価値がないと言える根拠は?
✔別の見方は?(相手は軽いジョークのつもり、他の友人は気に留めていなかったなど)
この作業は、心理療法でも用いられる認知処理法(CPT)のエッセンスです。
紙に書き出すだけでも「事実は1つ、感じ方はいくつもある」という柔軟性が生まれ、感情の嵐が少し静まります。
慣れてきたら「今回は『恥ずかしい』が強かったけど、次は『ちょっとムッとした』で済んだ」など、変化も記録してみてください。
小さな改善に気づくこと自体が自己効力感を底上げし、さらなるセルフケアの原動力になります。
まとめ~「理由のない不安」には理由がある~
✔フィーリングメモリーは、意識外の刺激が過去体験を呼び覚ます脳のしくみ
✔引き金を突き止めるために 五感+身体反応を記録
✔文章化と認知の書き換えで 「ただの不安」→「理解できる記憶」 へ整理
✔抱えきれないと感じたら 専門家の助けを早めに選択
過去は変えられませんが、過去が今を支配する構造は変えられます。
「なんとなくザワザワする」「理由不明の恐怖が続く」…。
そんなときは、今日紹介したステップで「感情の残像」を少しずつ輪郭づけてみてくださいね。
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こころのケア心理カウンセリングRoom
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この記事の執筆者
駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)
心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。
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