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リストカットや自傷という「こころの叫び」:その背後にある真の目的とは?~神戸市、芦屋市、西宮市のカウンセリングの実例より~

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自傷という「こころの叫び」:その背後にある真の目的とは?

自傷という「こころの叫び」:その背後にある真の目的とは?

2025/05/08

みなさん、こんにちは。

神戸市や芦屋市、西宮市などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。

 

「なぜ自分を傷つけてしまうのか…」

 

それは、当人にも簡単には説明できない問いです。

 

リストカットに代表される自傷行為は、単なる衝動や注目欲求ではなく、しばしば深い心の痛みを抱える方が「感情と共に生き延びるため」に取る行動です。

 

本記事では、Gratz(2003)の研究を踏まえつつ、自傷行為の背景にある心理的リスクや、その機能について掘り下げていきます。

 

1.自傷行為とは?~誤解されやすい「助けのサイン」~


リストカットに代表される自傷行為とは、自殺を目的とせずに、自らの身体に組織的な損傷を与える行為を指します。

 

Gratz(2003)の定義によれば、リストカットやタバコによる火傷、皮膚をかきむしる、髪を抜く、強く爪を立てるといった行為がこれに該当します。

 

重要なのは、これらの行為が「死にたいからではなく、生き延びるために」行われているケースが非常に多いという点です。

 

つまり、本人にとっては命を終わらせるためではなく、「なんとかこの感情に耐えるため」の方法なのです。

 

1-1.非臨床群にも見られる行動


Gratzの研究では、自傷行為は精神科治療を受けている臨床群に限らず、一般の大学生や若年層などの非臨床群にも広く見られることが報告されています。

 

これは、自傷行為が決して「特別な人だけが行う行動」ではなく、感情処理が困難になったときに誰にでも起こり得る行動であることを示しています。

 

実際、感情の抑圧を強く求められる文化的背景や、ストレスを言語化しにくい家庭環境の中では、自分のつらさや怒りを「言葉」で表現することが難しく、自傷という「非言語的手段」に頼る可能性が高まります。

 

1-2.誤解されがちな「注目されたいから」という視点


自傷行為に対する一般的な誤解のひとつに、「注目を集めるためにやっている」「周囲を困らせたいからだ」という見方があります。

 

しかしGratz(2003)の調査結果によると、自傷行為の主要な動機は「内面的な苦しみを和らげたい」「強い感情を鎮めたい」という内的・感情的な動機が中心であり、他者への働きかけ(たとえば注目喚起や支配)のために行われるケースは少数にとどまっています。

 

たとえば、以下のような感情や目的が自傷の背後にあります

 

✔感情の高まり(怒り、悲しみ、空虚感)を物理的痛みで「中和」する

✔心の混乱や過覚醒状態を鎮めるための「リセット行動」

✔抑えきれない罪悪感や自己否定感から自分を罰する手段

✔「何も感じない」麻痺状態を打破し、「生きている実感」を得る

 

こうした背景を無視し、「かまってほしいだけ」と片づけてしまうと、支援のチャンスを逃すばかりか、ご本人の自己否定感や孤立感をさらに深めてしまう危険性があります。

 

1-3.自傷は「SOSの言語化されていないメッセージ」


自傷は多くの場合、「ことばにならない苦しみ」を解消するための手段です。

 

たとえば…

 

✔「誰にも頼れないけど、助けが必要なんだ」

✔「自分の気持ちをコントロールできない」

✔「この痛みを誰かにわかってほしい」

 

というような、深層のニーズや葛藤が行動として現れているのです。

 

したがって、心理カウンセリングでは、自傷行為そのものを止めさせることよりも、「なぜそうせざるを得なかったのか」という動機や背景に丁寧に目を向け、その苦しみを言葉に変えるプロセスを大切にします。

 

2.自傷行為に至る背景とは?~リスク因子を深く理解する~


自傷行為は、単に現在のストレスや感情的な不安定さだけで生じるものではありません。

 

Gratz(2003)の研究では、幼少期の経験や個人の気質、そして親との関係性といった「長期的な心理的背景」が、自傷行為の発生に深く関係していることが明らかにされています。

 

以下に、自傷行為に関連する主なリスク因子について詳しく解説します。

 

2-1.幼少期の性的虐待・身体的虐待


最も強くリスクとして指摘されているのが、性的・身体的な虐待経験です。

 

これらの体験は、「自分の身体は尊重されないもの」「苦痛は仕方がないもの」という否定的な自己イメージを形成しやすくします。

 

結果として、大人になってからも自己肯定感が低く、自己を罰する手段として自傷行為に至る傾向が見られます。

 

虐待のトラウマは、言語化が難しいまま心身に蓄積し、自分の身体を傷つけることでその痛みを「外に出そう」とする行動に変化することもあります。

 

2-2.情緒的ネグレクト(感情面での放置)


身体的な虐待がなくとも、「気持ちを理解してもらえない」「感情を無視される」という体験を繰り返した人は、情緒的に強い孤立を感じやすくなります。

 

これは「情緒的ネグレクト」と呼ばれ、自分の感情に価値がないという深い思い込みを生みます。

 

たとえば、「泣いても誰も気づいてくれなかった」「辛い気持ちを伝えても受け止めてもらえなかった」という経験が蓄積されると、感情を言葉で表すこと自体を諦めてしまい、代わりに「身体を通して感情を表現する」ようになるのです。

 

これが、自傷行為という形をとることがあります。

 

2-3.養育者や周囲の大人との不安定な愛着関係


親をはじめとする養育者や周囲の大人との愛着が不安定だった方は、「自分は愛される価値がないのでは」「どうせ見捨てられる」といった感覚を抱きやすくなります。

 

このような愛着不安は、大人になってからの対人関係でも再現されやすく、人との距離がうまく取れず、強い不安や孤独を抱えることが多くなります。

 

そしてその痛みを「誰にも頼れない」と感じたとき、自傷行為が「最後の逃げ場」や「自分なりの感情整理」の手段になってしまうことがあるのです。

 

2-4.子ども時代の喪失や別離


親の死別、離婚、長期的な別居など、重要な他者との別離体験もまた、自傷行為のリスク因子とされています。

 

特に、十分に説明されずに突然関係が断たれた場合、子どもは「自分が悪かったのではないか」「捨てられたのではないか」と解釈しやすく、それが自己否定的な信念へとつながっていきます。

 

2-5.感情反応性の高さ(気質的要因)


生まれ持った「感情的反応の強さ」も、自傷のリスクに関わります。

 

これは、些細な出来事でも深く傷ついたり、不安や怒りといった感情が強く出やすかったりする傾向です。

 

このような気質の方が、感情を調整する方法を学ばないまま育つと、感情の爆発や抑えきれなさを何とか鎮めようとして、自傷行為に頼ってしまうことがあるのです。

 

2-6.「怒ったらだめ」「泣いたら恥ずかしい」~感情を否定された子どもの行き着く場所~


「怒り」や「悲しみ」といった感情は、私たち人間にとってごく自然で大切なものです。

 

けれども、幼少期に繰り返し「そんなことで泣くな」「我慢しなさい」といった否定的なメッセージを受け続けた人は、次第に自分の感情を「感じないように」して生きるようになります。

 

しかし、感じないようにした感情は、消えるわけではありません。

 

むしろ、身体の中に閉じ込められ、あるとき爆発的に表出したり、自傷というかたちで外に出ようとしたりします。

 

3.自傷の機能とは?~感情調整と「生き抜くための適応」~


自傷行為というと、表面的には「危険な行動」「理解しがたい行為」と捉えられがちです。

 

しかし、Gratz(2003)は、自傷を単なる破壊的な行為としてではなく、「本人にとって意味ある心理的な機能を果たしている行動として捉えました。

 

その背景には、つらい感情に対する対処や、対人関係の中でのサインとしての役割があるのです。

 

以下では、Gratzが分類した自傷行為の主な4つの機能について、それぞれ具体的に解説していきます。

 

3-1. 感情の外化とコントロール


自傷は、「言葉にならない感情の“出口」として機能することがあります。

 

たとえば、怒り・不安・悲しみといった強い感情が内部でぐるぐる渦巻いているとき、それをうまく理解したり、表現したりするのが難しいことがあります。

 

そんなとき、身体の痛みという「はっきりした刺激」に変えることで、感情をコントロールしようとするのです。

 

これは「わかりにくい心の痛み」を「感じられる身体の痛み」へと置き換えることで、本人の中で「感情を明確化」し、何とか整理しようとするプロセスだと考えられます。

 

3-2. 緊張の緩和(自己鎮静)


自傷行為はしばしば、「ストレスや強い不快感を一時的に和らげる『自己鎮静行動』」として行われます。

 

感情が高ぶりすぎたとき、「苦しい」という思いから逃れるために、自分の身体に痛みを与えることで、逆に心の中の苦しみを一時的に「静かにする」効果があるとされています。

 

たとえば…

 

✔パニックのように気持ちが収まらないとき

✔自分を傷つけることで「スッと落ち着く」感覚が得られるとき

 

…など、自傷は不快な気分の「切り替えスイッチ」として使われているのです。

 

3-3. 自己罰・自己否定


「自分は価値のない存在だ」「こんな自分は傷つけられて当然だ」といった深い自己否定感情を背景に、自傷行為が選ばれることもあります。

 

このケースでは、自傷が「自己罰の手段」として機能しています。

 

✔何か失敗したとき

✔自分に怒りを向けているとき

✔「他人には迷惑をかけられないけれど、自分には罰を与えてもいい」と思うとき

 

このような時に、自傷という行動を通して「償い」や「罰」を自分自身に課してしまうのです。

 

この背景には、多くの場合、幼少期の否定的なメッセージや、支配的・批判的な親との関係があることも多く、「誰かにそうされてきたこと”を、自分で自分に繰り返している」という心理構造も見られます。

 

4-4. 人間関係の境界形成


Gratzはさらに、自傷が「人との関係性の中で働くメッセージ手段」であることにも着目しました。

 

これは、「相手に対して何かを伝えるために行う自傷」という視点です。

 

たとえば…

 

✔「こんなに苦しい」ことをわかってほしい

✔「誰か気づいて」「助けて」

✔「これ以上近づかないで」

 

…といった、言葉にならない訴えが、自傷行為というかたちで表現されることがあります。

 

このタイプの自傷行為は、「注目を集めたいからやっている」と誤解されやすいですが、実際には「伝える手段を知らない」「傷つけられないために自分から境界をつくる」という、本人なりの「生きるための適応」であることが多いのです。

 

4-5.自傷行為は「感情と向き合うための手段」でもある


このように、自傷行為は単なる「問題行動」ではなく、苦しい気持ちを抱えながらも何とか日々を生き延びるための手段として行われているということが分かります。

 

大切なのは、こうした背景を理解し…

 

✔「やめなさい」ではなく「どうして、そうしたの?」

✔「行動を責める」よりも「感情に寄り添う」

 

という視点で、本人の心の声を丁寧に聴いていくことです。

 

5.カウンセリングでできること


心理カウンセリングでは、以下のような支援が行われます。

 

5-1. 感情への「言葉」を与える


まず、自分の感情を否定せずに「言葉で表現する」力を養います。

 

これは、自傷に代わる「感情処理の手段」を育てることにつながります。

 

5-2. 回避しない姿勢のサポート


マインドフルネスやACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)といった方法で、不快な感情を避けるのではなく、共に過ごす技術を習得します。

 

5-3. 自己理解と自己受容の支援


「自分はなぜこのような行動をとってきたのか?」という問いに丁寧に向き合いながら、自分への理解と優しさを育みます。

 

まとめ


自傷行為は「見せかけの行動」ではありません。

 

それは時に、言葉では伝えられなかった苦しみをどうにか生き延びようとする「方法」でもあります。

 

だからこそ、周囲が「やめなさい」と制止するだけでは、根本的な支援にはなりません。

 

自傷の背景には、感情調整の困難や過去の心的外傷、自己否定感といった複雑な要素があります。

 

自傷行為や感情のコントロールに悩む方は、一人で抱え込まずにご相談ください。

 

心理カウンセリングでは「言葉にならない気持ち」に丁寧に耳を傾け、一緒に回復への道を歩んでまいります。

 

参考論文

Risk Factors for and Functions of Deliberate Self-Harm:An Empirical and Conceptual Review

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この記事の執筆者

駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)

心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。

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