大人の愛着スタイルが恋愛関係に与える影響とは?
2025/06/05
みなさん、こんにちは。
神戸市や芦屋市、西宮市などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。
さて、「恋愛がどうしてもうまくいかない」という悩みを抱えている方も少なくないのですが、実はその根底には「大人の愛着スタイル」という心のクセが大きく関係しています。
今回は、恋愛心理学における研究論文である「「Adult Attachment, Working Models, and Relationship Quality in Dating Couples」の内容を踏まえつつ、「大人の愛着スタイル」が恋愛やパートナーシップの質にどのように影響するのか、最新の心理学的知見をやさしく解説します。
「なぜ自分は恋愛で悩みやすいのか?」
「どうしたらもっと安心できる関係を築けるのか?」
…そんな疑問に、心理カウンセラーとしての立場からお答えします。
1. 「大人の愛着理論」とは?~幼少期の経験が「恋愛のクセ」に~
「愛着理論」とは、もともと発達心理学者ジョン・ボウルビィによって提唱された理論で、人が幼少期に養育者との間で築く「基本的な安心感」が、その後の対人関係の基盤になるという考え方です。
その後、ボウルビィの理論を発展させたメアリー・エインズワースらの研究により、「安全型」「不安型」「回避型」など、いくつかの愛着スタイルがあることが分かってきました。
またCollins & Read(1990)は、この「愛着スタイル」が子ども時代だけでなく、大人になってからの恋愛やパートナーシップにも大きな影響を与えていることを明らかにしました。
2. 大人の愛着スタイルとは
今回参照にした論文では、大人の愛着スタイルが大きく3つに分類されています。
これらは「恋愛やパートナーシップの築き方」に大きな影響を与える「心のクセ」とも言えます。
2-1.安全型(Secure)
安全型の方は、他者との親密な関係を自然に受け入れることができ、自分自身もパートナーも信頼しやすい特徴があります。
「自分は大切にされている」「相手も信じられる」という安心感がベースになっているため、恋愛関係でも安定感があり、トラブルがあっても冷静に対処しやすいのが特徴です。
例えば…
✔パートナーに素直に甘えたり頼ったりできる
✔困ったときは「助けて」と言える
✔相手の愛情表現を素直に受け取れる
…という特徴を持っています。
2-2.不安型(Anxious/Ambivalent)
不安型の方は、常に「見捨てられるかもしれない」「自分は本当に愛されているのだろうか」という不安を強く感じやすいタイプです。
そのため、パートナーに対して過度に依存したり、愛情の確認を何度も求めたりする傾向があります。
例えば…
✔相手の言動に一喜一憂しやすい
✔少しのすれ違いでも強い不安や怒りを感じやすい
✔「もっと自分を見てほしい」「いつも一緒にいたい」と求めがち
…という傾向があります。
2-3.回避型(Avoidant)
回避型の方は、親密になること自体に抵抗を感じたり、「距離が近づくと自分の自由がなくなる」「心を開いて傷つくのが怖い」と無意識に感じる傾向があります。
そのため、関係が深まりそうになると距離を取ったり、感情を表に出さず、相手との間に「見えない壁」を作りやすくなります。
例えば…
✔パートナーとの適度な距離を保ちたいと感じる
✔感情表現やスキンシップが苦手
✔相手が距離を縮めようとすると無意識に逃げたくなる
…という傾向を持ちます。
2-4.愛着スタイルと愛着障害の関係
ここで重要なのが、これらの愛着スタイルは「良い・悪い」と評価するものではなく、幼少期の養育体験や過去の対人関係などの「積み重ね」によって自然と身についていくものだという点です。
たとえば、子ども時代に親をはじめとする養育者や教師等との大人との関係が安定しており、十分な愛情や安心感が得られた場合は「安全型」になりやすいですが、逆に…
✔養育者や周囲の大人からの愛情が不安定だった
✔過度な干渉や拒否、見捨てられ体験が多かった
✔養育者や周囲の大人たちに感情を受け止めてもらえなかった
…などの体験が繰り返されると、「不安型」や「回避型」へと偏りやすくなります。
こうした極端な不安型や回避型の傾向が強く、対人関係や自己評価に深刻な困難をもたらしている状態を、臨床心理学では「愛着障害」と呼ぶことがあります。
愛着障害のある方は、大人になってもパートナーとの関係や人間関係で「同じパターン」を繰り返しやすいという特徴があります。
そして自分でも「なぜか人とうまく付き合えない」「すぐに不安になる」「相手に壁を作ってしまう」と感じやすい傾向を持つことが多くなります。
3. 愛着スタイルが恋愛の「質」に与える影響
今回参考にした論文では、恋人同士のカップルを対象に「大人の愛着スタイル」と「恋愛関係の質」の関係性について詳細な研究を行いました。
この研究によって、愛着スタイルが恋愛関係にどのような影響を及ぼすかが、科学的に明らかになっています。
3-1.安全型がもたらすもの~「安定と信頼」の関係~
安全型(Secure)の愛着スタイルを持つ方は、恋愛やパートナーシップの中で「親密さ」や「信頼」を自然に築くことができます。
具体的には以下の通りです。
● 困った時に「助けて」と言える
→自分の弱さや困難を素直に打ち明け、相手のサポートを受け入れることができるので、互いに“支え合う”関係が作りやすくなります。
● 不安や誤解も冷静に話し合える
→感情的になりすぎず、相手と率直にコミュニケーションができるため、トラブルやすれ違いが起きても、冷静に向き合い解決できる力があります
● 相手を尊重しつつ、自分の感情も表現できる
→自分の気持ちや希望を遠慮せず伝えることができ、同時にパートナーの気持ちも尊重する姿勢を持っています。
このような特徴から、安全型の人は恋愛関係において高い満足感を得やすく、長期的な安定や信頼感のあるパートナーシップを築きやすいことが研究で示されています。
3-2.不安型・回避型がもたらすもの~すれ違いと心の壁~
一方で、不安型(Anxious/Ambivalent)や回避型(Avoidant)の愛着スタイルを持つ人は、恋愛で特有の困難やすれ違いに直面しやすい傾向があります。
【不安型の場合】
● 相手の反応に過敏になりやすい
→パートナーの言動や気持ちに強く反応し、「ちょっとした無視」や「返事が遅い」といったことにも不安や疑念を感じやすいです。
● 愛情の確認を何度も求めてしまう
→「本当に私を愛しているの?」「見捨てないよね?」と、繰り返しパートナーの愛情や承認を求めることがあります。
これが相手に「重い」と感じさせてしまう場合もあります。
● 自分に自信が持てない
→自分の価値や魅力を疑いやすく、「私は愛される価値があるのか」といった不安を常に抱えがちです。
【回避型の場合】
● 距離が近づくと「自分が消えてしまう」「コントロールされる」と感じやすい
→親密な関係になること自体に不安や抵抗を覚え、「自由を奪われる」「自分らしさがなくなる」と感じてしまうことがあります。
● パートナーが感情を求めてきても受け止めきれない
→相手が甘えたり、弱さを見せたりしても、どう対応してよいか分からず戸惑い、冷たく距離を取ってしまう場合があります。
● 無意識に壁を作ってしまう
→自分を守るために、相手と心理的な距離をとったり、感情を抑え込んだりしがちです。
3-3.恋愛関係で生じやすい「パターン化された困難」
このように、愛着スタイルごとに恋愛で直面しやすい「困難のパターン」や「すれ違い方」には特徴があります。
✔安全型のカップルは、自然体でコミュニケーションができ、信頼を深めやすい
✔不安型は「もっと愛されたい」という気持ちが強すぎて、相手に依存しやすい
✔回避型は「自分を守る」ために距離を取りすぎて、相手に“壁”を感じさせてしまう
また、不安型と回避型がカップルになると、「追う側と逃げる側」のような構図になり、なかなか心の距離が縮まらない、というパターンが繰り返されやすくなります。
4. 「愛着スタイル」は変えられる?~恋愛で「安心感」を育むヒント~
「私は不安型だから恋愛に向いていないのでは…」
「回避型の自分は人と深く関われない」
…と、愛着スタイルに悩みを感じている方も多いかもしれません。しかし、Collins & Readの論文やその後の多くの心理学研究は、「愛着スタイルは決して固定されたものではなく、変化・成長が可能である」ことを示しています。
4-2.愛着スタイルが変わるメカニズム
愛着スタイルは、生育歴や過去の人間関係で身についた「心のクセ」ですが、大人になってからの経験や新たな人間関係によっても大きく影響を受けます。
つまり、「今の自分」だけでなく、「これからの経験」が愛着スタイルを少しずつ“安全型”に近づけていくことができるのです。
4-3.変化のための具体的なステップ
● 安心できるパートナーや友人との関係を築く
信頼できる相手との関係を経験することで、「自分は受け入れられる」「人に頼っても大丈夫」と感じる力が育ちます。
これが「安心感」の土台となり、愛着のパターンそのものが変化しやすくなります。
● 自分の気持ちを少しずつ表現する練習をする
「こんなこと言っていいのかな…」と迷う場面でも、小さなことから気持ちを言葉にしてみましょう。
例えば、「今日は少し寂しかった」「ありがとう、とても嬉しかった」など、ポジティブなことから始めるのも効果的です。
● カウンセリングや心理的サポートを受ける
自分の愛着スタイルや人間関係のパターンに気づき、必要に応じて心理カウンセラーと一緒に整理していくことも非常に有効です。
安心して自分を出せる体験を重ねることが、愛着の「安心感」を強める後押しとなります。
● 自分のクセを知り、柔軟に対応する工夫をする
例えば、不安型なら「今、不安になっているのは愛着スタイルのクセかもしれない」と気づき、「パートナーの愛情を事実で確かめてみる」など、冷静に対処する工夫を取り入れます。
回避型なら、「少しずつ相手に気持ちを伝えてみる」「人との距離を意識的に縮めてみる」など、小さなチャレンジが役立ちます。
4-4.科学的根拠と安心感の育ち
実際の研究では、「パートナーや周囲の支え」「肯定的な人間関係」「心理的サポート」の積み重ねが、愛着スタイルを安全型へと変化させていくことが繰り返し報告されています。
特に安全基地(secure base)となる存在の経験が多いほど、心の中に「私は大丈夫」「人といても安心できる」という感覚が育ちやすくなります。
4-5.愛着スタイルの変化は「自分を責める」ためではなく「自分を大切にする」ために
「私はこのタイプだからダメなんだ」と自分を責める必要はありません。
むしろ、愛着スタイルに気づくことは「自分を知り、大切にする」ための第一歩です。
新しい体験や安心できる関係の中で、誰でも少しずつ「心のクセ」をやわらげ、より豊かな人間関係を築くことができます。
愛着スタイルは人生の「固定点」ではなく、成長し続ける「プロセス」です。
「今ここから」変わることは、誰にでも可能です。
自分自身や大切な人のために、少しずつ「安心感」を育んでいきましょう。
参考論文
Adult Attachment, Working Models, and Relationship Quality in Dating Couples
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この記事の執筆者
駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)
心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。
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