境界性パーソナリティ障害を理解する:特徴・原因・治療と家族の支え方
2025/06/25
みなさん、こんにちは。
神戸市や芦屋市、西宮市などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。
さて、皆さんの中には境界性パーソナリティ障害という言葉をご存じの方も多いと思います。
境界性パーソナリティ障害(BPD:Borderline Personality Disorder)は、感情や行動のコントロールが難しくなり、対人関係も不安定になりやすい心の障害です。
主な特徴は「感情の波が激しい」「人間関係が安定しない」「自分が誰かわからない」「見捨てられることへの強い不安」などが挙げられます。
こうした特徴があるため、DSM-5(アメリカ精神医学会の診断基準)では、パーソナリティ障害(人格障害)の一つに分類されています。
1. 原因について
境界性パーソナリティ障害(BPD)は、ひとつの原因だけでなく、多くの要素が複雑に絡み合って発症すると考えられています。
以下に主な要因を詳しくご説明します。
1-1.生物学的要因
最近の研究では、脳の構造や働きの違いがBPDの発症に関係していることが示唆されています。
たとえば、感情のコントロールや衝動性をつかさどる脳領域(前頭前野や扁桃体など)に何らかの機能的・構造的な違いがみられることが確認されています。
また、ストレス反応や感情の起伏に影響する神経伝達物質(セロトニンなど)の働きの偏りも指摘されています。
さらに、「生まれつき感受性が強い」「ストレスへの耐性が低い」など、先天的な気質や体質も発症リスクに関係していると考えられています。
ただ、これは原因なのか、あるいは境界性パーソナリティー障害になったがゆえの、脳の変化なのかということについては議論がなされています。
1-2.家庭や養育環境
幼少期の家庭環境は、BPDの発症に大きな影響を及ぼす要素の一つです。
特に以下のような状況がリスクを高めることが知られています。
✔虐待やネグレクト
→身体的・心理的虐待、十分な愛情やケアを受けられなかった経験
✔家庭内の不安定さ
→親子関係が安定せず、安心できる居場所を持てなかった場合
✔親の精神的な問題
→親自身が精神疾患を抱えていたり、アルコール・薬物依存があった場合など
このような体験が続くと、「自分は大切にされない存在」「信頼できる人はいない」といった自己イメージや対人関係の歪みにつながりやすくなります。
1-3.幼少期の体験が及ぼす影響
これらの要因が単独ではなく重なり合うことで、感情のコントロールが難しくなったり、自分自身への信頼感や安定した自己イメージの形成が阻害されると考えられます。
その結果として、「見捨てられ不安」や「極端な感情の波」「対人関係の不安定さ」といった境界性パーソナリティ障害の特徴が現れるものと考えられています。
2.主な症状とDSM-5診断基準
境界性パーソナリティ障害(BPD)は、アメリカ精神医学会の「DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)」という国際的な診断基準に基づいて診断されます。
DSM-5では、以下の特徴のうち5つ以上が長期的に続いている場合にBPDと診断されることがあります。
このリストは専門的に見えますが、実は日常の中で「自分にも当てはまるかも…」と感じるような特徴も多く含まれています。
ここでは、ひとつひとつをより身近なイメージでご説明します。
2-1. 見捨てられることへの強い不安
誰かに「離れていかれるかも」「嫌われるかも」と強く不安になる気持ちが続く状態です。
例えば…
「LINEの返信が遅いだけで強い焦りや絶望感に襲われる」
「相手のちょっとした態度に過敏に反応してしまう」
…といった体験がこれにあたります。
また、そうした不安を回避するために、しつこく連絡をしたり、相手を試すような行動に出てしまうこともあります。
2-2. 人間関係が不安定で激しく揺れる
仲良くなった人を「この人しかいない!」と理想化したかと思えば、ちょっとしたきっかけで「もう信じられない!」と相手をこき下ろしてしまう…。
この「理想化」と「こき下ろし」を繰り返し、人間関係が安定しにくく、身近な人とのトラブルや孤立感を感じやすくなります。
また、こうした特徴ゆえに人間関係が安定しないという問題も生じやすくなります。
2-3. 自分が誰なのか、何を大切にしたいのかわからない
自分のことがはっきり分からず、服装や趣味、人生の目標がコロコロ変わったり、「私は何がしたいのか分からない」「自分には価値がない」と感じる時間が長く続くことがあります。
2-4. 衝動的な行動
境界性パーソナリティー障害の方は、一時の感情やストレスに任せて、後先を考えずに行動してしまうことがあります。
例としては、無謀な運転、急な散財(大量の買い物)、過度な飲酒、過食や拒食、性行動のトラブルなどが挙げられます。
2-5. 繰り返す命を危険にさらす行動や自傷行為
自分を傷つけてしまう(リストカットなど)行為や、命を危険にさらすことを考えてしまう、あるいはこうした行動をとってしまうということも境界性パーソナリティー障害の特徴の1つです。
この背景には、「どうしても苦しさや孤独が耐えられない」という強い感情が隠れています。
つまり、最も健康的でない「セルフケア」の1つと言えるでしょう。
2-6. 気分の浮き沈みが激しい
些細なことがきっかけで、急に気分が落ち込んだり、逆に一気にハイテンションになったりすることがあります。
この気分の波は数時間から数日続くことが多く、自分でもコントロールが難しいと感じることが特徴です。
2-7. 慢性的な空虚感(心の中がずっと空っぽのように感じる)
「何をしても満たされない」
「自分の居場所がない」
「人生に意味を感じられない」
…といった空しさを、日常的に感じている方が多いのも境界性パーソナリティー障害の特徴です。
2-8. 怒りが爆発しやすく、コントロールが難しい
自分では抑えられないほどの怒りを感じ、暴言を吐いたり、物を壊してしまうことを起こす方も珍しくありません。
しかし、この怒りは「分かってほしい」「苦しい」という叫びの裏返しである場合が多いことは、非常に重要です。
2-9. 強いストレス下での妄想や解離症状
強いストレスを感じると、「自分が自分でない感じがする(現実感の喪失)」や、「他人に操られているように思う」といった感覚(解離症状)、現実離れした考えが一時的に現れることもあります。
2-10.まとめ
これらの症状は誰もが一時的に経験することがありますが、5つ以上が長期間にわたって繰り返される場合、専門的なサポートやカウンセリングを検討する目安となります。
「もしかして…」と感じる方や、ご家族・友人が当てはまる場合は、どうか一人で抱え込まずに専門家へご相談するようにしましょう。
3.境界性パーソナリティ障害(BPD)の治療法について
境界性パーソナリティ障害(BPD)の治療は、「本人の苦しさを和らげ、生きやすくなる」ことが目的です。
境界性パーソナリティー障害にはいくつかの治療法がありますが、カウンセリングでの心理療法が中心となります。
また、薬物療法はメインではなく、必要に応じて補助的に使われるという位置づけです。
3-1. 心理療法
境界性パーソナリティー障害の回復には、対話を通じて自分自身を理解し、人との関わり方や感情の調整スキルを身につけることがとても大切です。
また近年は、境界性パーソナリティー障害に特化した精神療法が開発され、高い効果が認められています。
● 弁証法的行動療法(DBT)
✔アメリカの心理学者マーシャ・リネハンによって開発されたBPD専門の治療法です。
✔「自分を受け入れながら変わっていく」ことを目標に、感情のコントロール法、ストレス対処、対人スキル(人とうまくやっていく力)を集中的に獲得できるようにしていきます。
✔自傷行為や衝動的な問題行動を減らすのにも効果的とされています。
● メンタライゼーション療法
✔「メンタライジング」とは、「自分や他人の心の動き(気持ち、考え、意図)を理解し想像する力」です。
✔境界性パーソナリティー障害の方は、ストレスが強いときほど「自分の気持ちや相手の気持ちが分からなくなりやすい」という特徴があります。
✔この療法では、感情的な反応に巻き込まれるのではなく、「今、自分はどう感じているのか?」「相手はどんな気持ちか?」と一歩引いて考えられるようにすることで、境界性パーソナリティー障害の問題の解決を図ります。
● 認知行動療法(CBT)・対人関係療法(IPT)
✔認知行動療法(CBT)
→自分の「考え方のクセ」を見つめ直し、現実的・柔軟なものへと修正していく方法です。
✔対人関係療法(IPT)
→家族や友人、職場など「身近な人との関係」をテーマに、その中で生まれるストレスや課題に対する対処能力の向上を目指します。
3-2. 薬物療法
残念ながら、境界性パーソナリティー障害そのものを「根本的に治す薬」は現在ありません。
ただし、境界性パーソナリティー障害の症状に付随するうつ状態、激しい怒り、不安、不眠、衝動性といった「つらさ」には、症状をやわらげるために抗うつ薬、気分安定薬、抗精神病薬などが処方されることがあります。
例えば…
✔抗うつ薬:落ち込みや不安、気分の波に
✔気分安定薬:激しい感情の起伏や衝動性に
✔抗精神病薬:現実感の喪失(解離症状)や激しい怒りなどに
しかし、先述しましたように薬物療法はあくまで「補助的なサポート」と位置づけられており、メインは心理社会的な治療(カウンセリングや精神療法)です。
薬の作用や副作用については、主治医とよく相談してくださいね。
4.周囲の人のサポート・関わり方
4-1. 適度な距離感を大切に
境界性パーソナリティ障害(BPD)を抱える方と関わるとき、「近づきすぎず、遠ざかりすぎず」のバランスがとても大切です。
例えば、あまりにも相手に寄り添いすぎると、「自分が支えなければ」というプレッシャーから、サポートする側が疲れてしまったり、逆に相手が依存的になりすぎることもあります。
一方で、距離をとりすぎてしまうと「見捨てられた」と感じさせてしまい、孤独感や不安が強まることも少なくありません。
● ポイント
できるだけ「穏やかに・安定した態度」を保ち、「見守っているよ」という姿勢を意識しましょう。
また、「あなたが困ったときは話を聞くよ」「一緒に考えていこう」といった、過度に介入せず、でも無関心でもない「ちょうどいい距離感」が安心材料になります。
4-2. 感情の波に巻き込まれすぎない
境界性パーソナリティ障害の方は、日によって気分や態度が大きく変動することがあります。
調子が良い日には明るく元気に見えますが、落ち込むときは極端にネガティブな気持ちを表現することが頻繁に繰り返されるというケースも珍しくありません。
そのため、周囲はつい「励まさなきゃ」「何とかしてあげたい」と思うかもしれませんが、相手の感情の波に巻き込まれすぎないことも大切です。
● ポイント
本人の気分や状態によって、接し方を大きく変えないよう心がけましょう。
どんなときも「変わらず接する」ことで、「この人は自分を見捨てない」という安心感を持ってもらえます。
そして、必要以上に反応したり、逆に突き放したりすることは避けましょう。
また、これも重要なのですが、あなた自身の気持ちや限界も大事にしてください。
4-3. 回復への希望を信じて支える
境界性パーソナリティ障害は、適切な治療と支援を続けることで少しずつ安定していく可能性のある心の病です。
周囲の方が「どうせ変わらない」と諦めたり、「いつになったら良くなるの?」と焦ったりしてしまうと、ご本人も自信や希望を失ってしまいがちになるので注意が必要です。
● ポイント
進歩や努力、小さな変化に気づいて言葉にしてあげましょう。
例えば…
「前よりも落ち着いて話せるようになってきたね」
「少しずつ自分の気持ちを伝えられるようになったね」
…などの言葉がけが有効です。
そうすることで、「焦らなくて大丈夫」「あなたのペースでいいよ」と、長い目で見守る姿勢が大きな支えになります。
また困ったときには一緒に心理カウンセラー等の専門家に相談することも勧めましょう。
加えて、ご家族やパートナー自身もカウンセリングやサポートを利用することで、無理をしすぎない関わりができるようになります。
まとめ
境界性パーソナリティ障害は、感情のコントロールや人間関係で苦しみやすい障害ですが、適切な理解と治療、周囲の支えがあれば改善していくことができます。
ご自身や身近な方が苦しんでいる場合は、心理カウンセラー等の専門家に相談しながら、焦らず一歩ずつ前に進んでいきましょう。
----------------------------------------------------------------------
こころのケア心理カウンセリングRoom
兵庫県芦屋市浜芦屋町1-27 サニーコート浜芦屋302号
電話番号 : 090-5978-1871
----------------------------------------------------------------------
この記事の執筆者
駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)
心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。
プロフィールはこちら


