どうしても過去の失敗で自分を責めてしまう人へ~認知行動療法の視点から~
2025/07/28
みなさん、こんにちは。
神戸や芦屋、西宮などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。
さて、人は誰でも、仕事や人間関係、日常生活の中で小さなミスや大きな失敗を経験します。
そんなとき、「どうしてあんなことを…」「私はなんてダメなんだ」と、自分を厳しく責めてしまう方は少なくありません。
もしかしたら、「反省すること=二度と繰り返さないこと」という文脈から自分を責めてしまう方もおられるかと思います。
しかし、実はこの「自分を責める態度」が、かえって次のミスにつながることが心理学の研究でも明らかになっています。
1. なぜ自分を責めると失敗が増えるのか

人は失敗したとき、つい「どうしてこんなミスをしてしまったんだ」「私はダメな人間だ」と自分を責めてしまいがちです。
しかし実は、自分を責めることでかえって同じ失敗を繰り返しやすくなる、という心理的な悪循環があります。
そして、この仕組みは脳の学習の特性と深く関係しています。
1-1.成功体験がもたらすポジティブな影響
脳は、成功体験や「できた!」という達成感をポジティブな記憶は脳の活動を高め、その体験をもとに次の行動がより正確になりやすいことが分かっています。
つまり、「できた」「うまくいった」という前向きな経験は、脳に「またやってみよう」「今度も大丈夫」という安心感や自信を育て、新たな挑戦や学習への意欲を高めてくれるのです。
1-2.自責の念がもたらす悪循環
一方で、失敗したときに「また失敗した」「自分はやっぱりダメだ」と何度も自分を責めてしまうと、脳は防御的になり、心が委縮してしまいます。
この状態では「もうやめておこう」「どうせまたダメに決まっている」といった否定的な思考が強まり、新しいことに挑戦する気力や集中力も低下してしまいます。
そのため…
「失敗=自分の価値が下がる」
「ミスした自分には未来がない」
…と思い込むほど、気持ちは落ち込み、ミスを恐れるあまり柔軟な発想や行動もできなくなります。
1-3.自責の悪循環とは
こうした状態が続くと、「また失敗したらどうしよう」「次もきっとダメだ」と不安ばかりが募り、結果的に同じ失敗を繰り返しやすくなる…
これが「自責の悪循環」です。
つまり、自分を責めて萎縮した心は、新たな学びや成功のチャンスを自ら遠ざけてしまうのです。
2.認知行動療法(CBT)からのヒント~失敗の受け止め方を変える~

認知行動療法(CBT)では、失敗を「自分の性格や能力のせい」と短絡的に決めつけるのではなく、「たまたまその時うまくいかなかった出来事」としてとらえ直す視点を重視します。
つまり、「私はダメな人間だから失敗した」と自分を全否定するのではなく…
「今回はうまくいかなかったけれど、これは一つの経験にすぎない」
…といように事実を切り分けて考える…
これが認知行動療法の基本的な視点です。
2.1失敗を「ラベル」で終わらせない
たとえば、何かに失敗したとき、すぐに「私はやっぱりダメだ」「どうせ自分は失敗する」と思いがちです。
しかし、こうした「ラベリング」は、自己評価を下げ、次の行動をためらわせる原因となります。
認知行動療法では、「失敗=自分のすべてがダメ」という思考の癖に気づき、その考えを手放す姿勢を大切にしています。
2.2建設的に振り返る~「事実」と「対策」に目を向ける
認知行動療法では、失敗のたびに自分を責めるよりも…
「今回の出来事にはどんな背景や状況があったのか?」
「自分にできる工夫や準備は何があっただろう?」
…というように冷静かつ客観的に振り返ることを推奨します。
例えば…
✔十分に準備できていたか?
✔環境やタイミングはどうだったか?
✔気持ちや体調は万全だったか?
こうした点を具体的に見直してみると、次に活かせるヒントが見つかりやすくなります。
2-3.小さな成功体験に目を向ける
失敗ばかりに意識が向くと、できたことや進歩が見えにくくなってしまいます。
しかし認知行動療法では、どんなに小さなことでも「前回より少しうまくできた部分」「勇気を出してチャレンジできたこと」など、自分の良い面や進歩を意識的に認めることを大切にします。
こうした姿勢が自己肯定感や自信の回復につながり、同じような場面に出会ったときに、より前向きな選択がしやすくなります。
つまり、失敗を「自分のダメさ」に結びつけるのではなく、具体的な出来事として受け止め、冷静に振り返ります。
そして、小さな成功や努力もきちんと認めます。
これが、認知行動療法的での失敗に対する「健やかで優しい付き合い方」です。
この失敗に対する穏やかで優しい付き合い方を持つことで、心理的な柔軟性が生まれ、失敗に囚われることなく前へ進めるようになっていきます。
3.失敗を受け入れ、次につなげるための認知行動療法的実践法

3-1. 自分の気持ちに気づき、否定しない
認知行動療法では、「気分」や「感情」を否定せず、そのまま観察することを大切にします。
失敗したとき、「情けない」「自分はダメだ」といったネガティブな気持ちが湧き上がるのは自然なことです。
そうした時、その感情を「感じてはいけない」と抑え込もうとするのではなく、「今、自分はこう感じているんだな」と「ラベル付け」してみましょう。
認知行動療法のセルフモニタリング(気分日記)でも、「いつ」「どんな状況で」「どんな感情が出たか」を記録することで、感情と少し距離をとり、巻き込まれすぎずに受け止めやすくなります。
気持ちに気づき、それを否定せずに認めることは、心の回復力や柔軟性を育てる第一歩です。
3-2. 客観的に出来事を見直す
認知行動療法の大きな特徴は、「自動思考(自動的に湧いてくる考え)」に気づき、その根拠や妥当性を検証することです。
失敗したとき、「私はダメだ」「また同じことを繰り返す」といった極端な自己評価が頭に浮かびやすいですが、これをそのまま信じてしまうと自尊心が下がり、行動意欲も低下します。
そこで、「本当に自分は全てダメなのか?」「実際に起きた事実は何だったか?」と自分に問い直してみましょう。
たとえば、「今回のミスはどんな状況で起きた?」「できていた部分や改善点はなかったか?」と「事実」にフォーカスし、思考のバランスを取り戻していく練習です。
認知行動療法の「記録表」や「思考記録シート」などを活用し、思い込みや過度な自己批判を少しずつ現実的な視点へ書き換える習慣をつけていくことが大切です。
3-3. 小さな進歩を褒める
認知行動療法では、自己肯定感を高めるために「小さな成功体験」にしっかり目を向けることが重要視されます。
たとえ大きな成果が出なかったとしても、「前回より少し早く行動できた」「今回は勇気を出して意見を言えた」といった“小さな一歩”を自分で認めてあげましょう。
こうした「自分へのねぎらい」は、脳に「できた!」という肯定的な記憶を残し、次への挑戦のエネルギーにつながります。
そのため、認知行動療法の実践では、「できなかったこと」よりも「できたこと」「進歩したこと」を毎日1つでも探し、自分を褒める練習を繰り返すことが推奨されます。
3-4.まとめ
失敗に直面したときは…
(1)自分の感情にやさしく気づく
(2)出来事を事実ベースで振り返る
(3)どんなに小さくても進歩や努力を認めてあげる
この3つのステップを繰り返すことで、認知の偏りを修正し、次の行動への前向きなエネルギーを蓄えることができます。
4.おわりに
誰にでも失敗はあります。
しかし自分を責め続けるのではなく、その経験から何かを学び、次に活かしていくことはできます。
そのためには失敗した自分自身への優しさと、前向きなまなざしを持つことが大切です。
----------------------------------------------------------------------
こころのケア心理カウンセリングRoom
兵庫県芦屋市浜芦屋町1-27 サニーコート浜芦屋302号
電話番号 : 090-5978-1871
----------------------------------------------------------------------
この記事の執筆者
駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)
心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。
プロフィールはこちら


