失敗した時の自己否定が成長を阻む理由
2025/09/02
みなさん、こんにちは。
神戸や芦屋、西宮などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。
さて、私たちは「失敗から学ぶことが大切」と耳にする機会が多いのではないでしょうか。
確かに、失敗は自分の弱点を知るきっかけになります。
しかし、神経科学の研究では、実は「成功した経験」こそが脳を大きく変化させ、次の学びを後押しすることが分かってきました。
つまり、ちょっとした達成感や小さな成功体験が、その後の行動をよりスムーズにし、意欲を高めていくのです。
これは、心理カウンセリングにおける「行動を通した変化」ともつながる重要な視点であり、心理臨床でも実践され効果を上げています。
そこで今回の記事では、成功体験が脳にどのように影響するのか、そしてその知見を日常生活や自己成長にどう活かしていけるのかを、心理学とカウンセリングの立場から解説していきたいと思います。
1.成功体験が脳を変える~実験から見えた事実~
1-1.研究の背景
私たちはよく「失敗から学ぶ」と言われます。
確かに失敗は、自分に足りない点を知る大切な機会です。
しかしMIT(マサチューセッツ工科大学)の研究チームは、脳科学の実験を通して「成功体験こそが学びを加速させる」という研究結果を明らかにしました。
これは「成功がもたらす心理的な安心感」だけではなく、脳の神経活動そのものが変化していることを示す重要な発見です。
1-2.実験の概要と結果
実験では、サルに画面上の左右を見分けて反応する課題を行わせ、正しい反応ができたときには報酬を与えました。
すると、正解を出した直後、脳の特定の部位で神経活動が数秒間にわたり活性化することが確認されました。
さらに、その活性化に伴って次の課題における正答率が向上したのです。
一方で、不正解の場合にはこうした神経活動の変化は起こらず、その後の行動改善にもつながりませんでした。
つまり、脳は「成功」したときにこそ、次の行動をより正確に導く学習の回路を強めることが示されたのです。
1-3.研究の意義
この発見の意義は大きく、次のように整理できます。
● 「成功体験」の価値を科学的に裏づけた
これまで直感的に「成功が自信につながる」と言われてきましたが、その背景に脳の神経活動の変化があることが示されました。
● 失敗のみに頼る学びの限界を示した
失敗は気づきを与えてくれますが、脳にとっては「次の行動の改善」に直結しにくいことが分かりました。
むしろ小さな成功を積み重ねる方が、効率的に学習が進む可能性があります。
● 教育・臨床・自己成長への応用
教育現場では「小さな成功体験」を意図的に取り入れることが、子どもたちの学習意欲や習得効率を高める手がかりになることが示唆されています。
また心理臨床の場でも、うつ病や不安障害を抱える方にとって「できた」という感覚を積み重ねることが、行動の持続や回復力を支える根拠になるとなります。
実際にうつ病等の精神疾患や発達障害等の精神障害の場合、成功体験が症状や問題の克服においては非常に重要です。
1-4.ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)とのつながり
私の専門である認知行動療法とACT(認知行動療法の第三世代)では「感情や思考を否定せず、価値に沿った小さな行動を積み重ねる」ことを大切にします。
MITの研究はまさにそれを脳科学の側面から裏づけていると言えます。
つまり、どんなに不安や失敗があっても、価値に基づいた小さな成功行動を積むことが脳の学習を促進し、次の一歩につながるのです。
2.日々の学びにどう活かすか?

2-1. 失敗を「役立つ経験」としてとらえる
私たちは失敗を「避けるべきもの」として感じやすいですが、実際には「何がうまくいかなかったのか」を知る重要な手がかりでもあります。
例えば、試験勉強で覚えたはずの部分が答えられなかったとき、それは「覚え方が定着していない」というサインになりますよね。
また会議でうまく発言できなかったときは「準備不足だった」や「緊張が強かった」というヒントにもなります。
つまり、失敗があったときに自分を責めるのではなく、「次にどの部分を調整すればいいかを教えてくれるシグナル」として受けとめることが大切です。
2-2. 小さな成功体験を積み重ねる
一方で、神経心理学(脳科学)の研究が示すように「成功の経験」が次の行動をより正確に導くことが分かっています。
そのため、大きな目標を一気に達成しようとするよりも、小さな成功のステップを意識的に作ることが重要です。
例えば…
✔「今日はレポートの結論部分だけ書き終える」
✔「1日10分だけストレッチをする」
✔「苦手な人に1回だけ挨拶してみる」
…といった、小さく具体的な行動です。
こうした成功体験は脳にポジティブな刺激を与え、モチベーションを自然に高めてくれます。
2-3. 成功のタイミングに注目する
実は、これが一番大切なのではないかと個人的には思っています。
成功の直後に脳が活性化し、学びが定着しやすくなることが研究で示されているのはお伝えした通りです。
そのため、「成功した瞬間に何が起きていたのか」に注目する習慣が役立ちます。
例えば…
✔「集中できていた時間帯」
✔「作業する環境(静かな部屋やカフェなど)」
✔「声をかけてくれた仲間の存在」
という「成功を支えた条件」を意識することで、自分に合った条件を再現しやすくなります。
これは行動療法における「機能分析」とも似ており、成功を生みやすいパターンを自覚することにつながります。
2-4. 成功を味わい、お祝いする時間を持つ
時間に追われる私たちは、何かが成功しても、すぐに次のタスクや業務等に移りがちになります。
しかし、成功は「すぐ次の課題」に追われてしまうと、記憶にも残りにくくなります。
そのため、達成できたことをしっかり味わい、自分をねぎらうことが重要です。
例えば…
✔小さな達成をノートに書き留める
✔成功した瞬間の気持ちを日記に残す
✔自分に「よくやった」と声をかける
といったシンプルな方法でも十分です。
これによって脳に「成功の痕跡」が刻まれ、次の挑戦を後押ししてくれます。
まとめ:失敗も成功も「次につなげる素材」
今までの内容を端的にまとめると、失敗は「改善のヒント」、成功は「行動を後押しするエネルギー」ということになろうかと思います。
このどちらも日々の学びだけでなく、心のケアや精神疾患・障害の改善に不可欠な要素です。
大切なのは、失敗を恐れすぎずに調整の材料にし、成功を見逃さずに味わって次につなげるということを意識することだと思います。
この積み重ねが、安定した自己成長や精神疾患、障害の改善、そしてウェルビーイングの土台になります。
失敗したとき、自分を責めてしまうのは当然のことです。
また、成功体験は意外と忘れられがちです。
そのため、失敗体験、成功体験を上手く使ってくださいね。
参考文献
----------------------------------------------------------------------
こころのケア心理カウンセリングRoom
兵庫県芦屋市浜芦屋町1-27 サニーコート浜芦屋302号
電話番号 : 090-5978-1871
----------------------------------------------------------------------
この記事の執筆者
駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)
心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。
プロフィールはこちら



