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自閉症スペクトラムやアスペルガーの感覚:神戸、芦屋、西宮のカウンセリングより~

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大人の自閉症が暮らす「感覚の世界」~鈍感?それとも敏感?~

大人の自閉症が暮らす「感覚の世界」~鈍感?それとも敏感?~

2025/09/10

みなさん、こんにちは。

神戸や芦屋、西宮などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。

 

さて、自閉症スペクトラム(アスペルガー障害)の方の場合、過集中やコミュニケーションの問題が検討されがちですが、自閉症スペクトラムのご本人は刺激等に対して特徴的な性質を持っておられるケースが珍しくありません。

 

例えば…

 

「周囲の雑音が鋭く耳に突き刺さるように感じる」

「香りや光が強すぎて心身が疲れてしまう」

「逆に、周りの人が気づいている音に全く気づけない」

 

…自閉症スペクトラムの方には、このように感覚の受け取り方が人とは大きく異なる特性が見られることがあります。

 

そのため、静かな場所では安心できても、刺激の多い環境では「どうして自分だけがつらいのだろう」「私だけがおかしいのかもしれない」と孤独感を覚えることも珍しくありません。

 

今回参照にした研究結果からは、大人になってからもこのような感覚の特徴は続き、しかもその表れ方は人によってとても多様であることが明らかになっています。

 

つまり、「感覚に敏感」「逆に鈍感」「刺激を避ける」など、ひとりひとりの体験は違っているのです。

 

前置きが長くありました。

 

そこでこのブログでは自閉症スペクトラム(アスペルガー障害)の方が持つ感覚について検討してきたいと思います。

 

自閉症スペクトラムの方が「どのような世界で毎日を過ごしているか」がイメージできるようになれば幸いです。

 

1.自閉症の成人の「感覚の感じ方」とは?

 

 

研究のねらい

 

Goldsmiths大学の研究チームは、「自閉症スペクトラム(ASD)の大人は日常の感覚をどう受け取っているのか」を調べました。

 

対象は、ASDの診断を受けた成人18名と、年齢や知能指数を合わせた一般の成人18名です。

 

使ったのは「成人・青年用感覚プロファイル(AASP)」という質問紙です。

 

これは、生活の中で音・光・触覚・におい・動きなどにどう反応するかを整理するツールです。

 

感覚反応の4つのタイプ


1. 鈍さ(低感度)

 

これは刺激に気づきにくいタイプです。

 

具体例

→部屋の中で誰かが入ってきても気づかない、服のタグが当たっても不快に感じにくい。


これは「鈍い」というより、脳が刺激を拾いにくい特徴がある、と考えるとイメージしやすいでしょう。

 

2. 感覚を求める

 

これはむしろ、積極的に刺激を探し求めるタイプです。

 

具体例

→同じ音楽を大音量で何度も聴きたがる、手で物を触り続ける、強い味や食感を好む。

 

これは「自分にとってちょうどよい感覚のレベル」に達するための自然な行動といえます。

 

3. 感覚に敏感

 

この特性は、小さな刺激でも過剰に反応してしまうタイプです。

 

具体例

→蛍光灯の光がまぶしくて頭痛がする、人混みのざわざわが耐えられない、衣服の素材がチクチクして落ち着かない。


この場合は周囲には気づかれにくい刺激でも、本人にとっては大きな負担となります。

 

4. 刺激を避ける

 

これは不快な刺激を避けるために行動を工夫するタイプです。

 

具体例

→混雑したスーパーを避ける、イヤホンやサングラスを常に持ち歩く、においが強い場所には行かない。


これは「逃げ」ではなく、自分を守るためのセルフケアの工夫ととらえることができます。

 

感覚の個性を理解するということ

 

研究からわかるのは、ASDの成人は「感覚の受け取り方が一般の人と大きく違うことが多い」という点です。

 

そしてそれは「過敏か、鈍感か」と単純に分けられるものではなく、人によって組み合わせや強さがまったく異なるのです。

 

このことは、「感覚の違いは性格や努力不足の問題ではなく、生まれつきの特性」であることを示しています。

 

周囲がそれを理解できれば、「なんでそんなことも我慢できないの?」ではなく「その感覚はしんどいんだね」と受け止めることができ、支援や工夫につなげられます。

 

2.自閉症スペクトラムの方の「生きづらさ」~研究結果より~

 

 

ここでは、自閉症スペクトラム(アスペルガー障害)の方の生きづらさを理解するために、研究結果を深堀していきたいと思います。

 

「取りこぼし」と「過負荷」が同時に起きやすい~二重の脆弱性~

 

成人の自閉スペクトラム(ASD)では、小さな変化や合図に気づきにくい一方で、音・光・匂いなどの刺激を強く感じすぎることが同じ人の中で起きやすい、という特徴が報告されています。

 

小さな合図に気づきにくいことは、感覚の世界でいうと「低登録(low registration)」に当たります。

 

たとえば、微かな声かけを聞き落としたり、周囲の雰囲気の変化に反応しにくかったりします。

 

一方、「感覚に敏感(sensory sensitivity)」だと、蛍光灯のチラつきや人混みのざわめきが「痛いほど強く」感じられます。

 

すると「避ける(sensation avoiding)」行動が増え、にぎやかなスーパーを避けたり、イヤホンやサングラスが手放せなくなったりします。

 

この「取りこぼし(低登録)×過負荷(敏感→回避)」の組み合わせが、毎日の暮らしで「困りごと」を生みやすくするということを研究結果は示しています。

 

大事なのは、これは性格の問題ではなく、感覚の受け取り方の特徴だということです。

 

また成人ASDを対象に感覚について行った研究では…

 

・情報を拾いにくい

・敏感・回避が目立つ

・感覚を積極的に求める傾向は弱め

 

…という、上記のパターンが示されました。
 

「非言語IQ」と感覚の困りやすさの関係~対処の学びやすさという仮説~

 

ここで言う非言語IQとは、「言葉を使わずに考える力」を示す知能の側面です。

 

具体的には…

 

✔図形やパズルを組み立てる

✔模様やパターンを見つける

✔絵や図を見て規則性を理解する

✔空間的な配置を頭の中でイメージする

 

といった「目で見た情報を使って考える力」が中心です。

 

つまり、非言語IQは「言葉で説明するのが苦手でも、絵や形で考えるのが得意」という能力を測るもの、とイメージすると分かりやすいと思います

 

そして研究では、非言語IQ(パズルや形の把握など、言語に依らない力)が高いほど…

 

✔低登録(情報の拾いにくさ)

✔感覚過敏

✔回避


のスコアが低く出る(=困りごとが相対的に小さい)という関連が示唆されました。


この解釈として、視覚的・実行機能的な力が高い方は…

 

環境調整や回避・代替策などの「対処スキル」を学びやすい

 

一方、視覚的・実行機能的な力が苦手な方は…

 

感覚負荷の影響をより受けやすい

 

という仮説が提示されています。

 

生活へのヒントに落とすと…

 

では、上記の研究結果を自閉症スペクトラム(アスペルガー障害)の方の生活の質を高めるためにできることとしたら…

 

✔「自分の感覚地図」をつくる

→どの刺激に過敏/鈍感か、時間帯や場所との組み合わせで「しんどさ曲線」をメモ。

✔避けるは「逃げ」ではなく戦略

→にぎやかな場所の前後に休憩をはさむ、照明を変える、素材やタグを工夫するなど、「自分を守る選択」を当たり前に。

✔対処スキルは学べる

→ノイズキャンセル、スケジュールの組み立て、合図の見える化(文字/色分け)など、実行機能の“補助輪を積み上げる。

✔周囲への説明カード

→短い定型文で「苦手な刺激」と「助かる配慮」を書いたカードを持つと、人に頼みやすくなります。

 

心理カウンセラーの視点での解釈と意味合い

 


感覚の「しんどさ」は自分のせいではない

 

自閉スペクトラム症(ASD)の方は、音や光、匂いなどに対して過敏すぎたり、逆にほとんど気づかなかったりすることがあります。

 

これは「努力不足」や「わがまま」ではなく、脳の感覚処理の特性によるものです。

 

つまり、「障害」や「欠点」というより「感覚の個性」です。

 

このことを理解できると、「どうして私は普通にできないんだろう」という自己否定が和らぎます。

 

自分の感覚の特性を「おかしい」ではなく「特徴」としてとらえることは、安心感や自己受容を育む大切な一歩になります。

 

対応は「避ける」だけじゃなく、「選ぶ」こと

 

感覚に過敏だと、「うるさい場所は全部行かない」「強い光は避ける」といった「回避」の行動が多くなります。

 

避けることは自分を守る大事な方法ですが、「避ける」だけではなく「選ぶ」視点を持つと生活がぐっと楽になります。

 

例えば…

 

✔大型スーパーがつらいなら、小さな商店を選ぶ

✔明るすぎる照明が苦手なら、落ち着けるカフェや図書館を利用する

✔強い匂いがする場所では、マスクやアロマオイルで快適さを調整する

 

このように、「自分が安心できる環境を選び取る力」を育てることが、生活の質を高めるカギとなります。

 

個別対応が不可欠

 

感覚の感じ方は人それぞれ大きく異なります。

 

同じ自閉症スペクトラム障害(アスペルガー障害)の診断を受けている人でも、「音に敏感」「触覚に敏感」「においに鈍感」といった組み合わせは人によって様々です。

 

そのため、画一的な支援は合わず、一人ひとりに合わせた工夫が必要です。

 

具体的には…

 

✔音に敏感

→ ノイズキャンセリングイヤホンや静かな作業スペース

✔光に敏感な人

→サングラスや間接照明

✔低感度(気づきにくい)

→大きな文字やカラフルなラベルで視覚的に補助

 

支援やセルフケアの本質は「本人の感覚の特徴を理解し、それに合わせた調整をすること」です。

 

繰り返しになりますが、自閉症スペクトラム障害(アスペルガー障害)の場合は感覚刺激についても特徴的な性質を持っている方が珍しくありません。

 

そのため、ご本人も周囲の方も、特性を理解した上で上手く対処してくださいね。

 

参考論文

Sensory processing in adults with autism spectrum disorders

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この記事の執筆者

駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)

心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。

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