双極性障害の長期安定のために~薬物療法+心理療法という選択~
2025/09/17
みなさん、こんにちは。
神戸や芦屋、西宮などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。
さて…
「薬を飲んでいるのに、また気分が不安定になってしまう」
「治療を続けてして良くなったのに、しばらくすると再び症状が戻ってしまう」
双極性障害を抱える方やそのご家族から、こうした声を聞くことは少なくありません。
実際に研究でも、双極性障害は薬物療法だけでは再発率が高いことが報告されています。
しかし近年の臨床研究は、薬物療法に心理療法を組み合わせることで、再発を防ぎ、より安定した生活を取り戻せる可能性を示しています。
今回はその最新のメタ分析を踏まえながら、「薬+心理療法」の持つ意味を考えてみたいと思います。
1.研究の概要
今回参考にした論文での研究は以下の方法で行われました。
対象研究:ランダム化比較試験(RCT)のレビューとメタ分析
比較:標準的な精神科治療(薬物療法 vs薬物療法+心理療法
含まれる心理療法:認知行動療法(CBT)、家族焦点療法(FFT)、対人・社会リズム療法(IPSRT)、心理教育など
主要アウトカム:再発率の低減
2.研究で得られた双極性障害に対する心理療法の役割とは

双極性障害に対するケアとして、心理療法の役割や効果は以下の通りとなります。
2-1. 心理療法を併用すると、薬だけに比べて再発率が約40%低下
双極性障害の治療では、薬物療法が基本ですが、それだけでは再発のリスクが高いとされています。
この研究では、薬に加えて心理療法を取り入れることで、再発のリスクが大幅に下がることが示されました。
単なる症状の抑制ではなく、生活習慣やストレス対処法の改善が加わることで「安定が長続きする」効果が生まれるのです。
2-2. 「症状が落ち着いた状態」で治療に入った人に効果が高い
心理療法は、気分の波が激しい急性期よりも、症状がある程度落ち着いている時期に始めた方が効果を発揮しやすいとされます。
ある程度症状が落ち着いているタイミングを見計らって心理療法を行うことが、自分のストレスパターンを理解したり、再発のサインを早めに見つける練習をしたりできるからです。
つまり「安定しているときこそ、将来の再発を防ぐ準備ができる」と考えるとわかりやすいでしょう。
そのため、「安定している=心理療法は必要ない」ということではなく、むしろ安定している時期にこそ心理療法を行うことで、悪化防止や改善の道筋ができるということです。
2-3. 再発を繰り返している人(12回以上)は効果がやや弱まる傾向
一方で、過去に何度も再発を経験している方では、心理療法の効果が相対的に弱まることも示されました。
これは、長年の再発によって生活リズムや社会的な支えが崩れてしまい、治療の定着が難しくなっているためと考えられます。
とはいえ、「効果がない」という意味ではなく、時間をかけて丁寧に支援を積み重ねる必要があるという示唆です。
2-4. 再発予防だけでなく、治療からの脱落率(ドロップアウト)も減少
心理療法を組み合わせた人は、治療を途中でやめてしまう割合が少なかったことも報告されています。
双極性障害の治療は長期戦になるため、継続がとても重要です。
心理療法では「薬を飲む理由の理解」「生活上の工夫」「困りごとの共有」が進むため、本人が治療を「続けていこう」という意欲が高まります。
2-5.臨床的な意味合い
上記の研究結果をまとめると、次のようになります。
✔単に症状を抑えるのではなく、再発を予防する力を養える
✔寛解期の心理療法は「将来の備え」として有効
✔再発を繰り返している方にも希望を持てるが、より長期的な視点が必要
✔治療継続を後押しする効果があり、安定した支援につながる
まとめると、心理療法の併用は「再発を防ぐ」「治療を続けられる」という二つの大きな柱を支える役割があります。
これは、双極性障害と向き合う方にとって、安心して長期的に生活を整えるための大きな助けになります。
3.日常でできる双極性障害のケア

では、この研究結果を踏まえながら、双極性障害に対する日常のケアについてお伝えしたいと思います。
3-1. 睡眠リズムを整える
双極性障害において、睡眠の乱れは再発の大きなリスク要因になります。
そのため、就寝時間と起床時間をできるだけ一定に保つことは、「心の安定」を守るうえでの基本です。
以下、セルフケアの具体的な方法です。
✔ポイント
→休日だからといって昼まで寝る、夜更かしをする、といった変化は気分の波を誘発することがあります。
✔工夫:
→朝は同じ時間にカーテンを開けて光を浴びる、夜は寝る前にスマホやパソコンを控えてリラックスできる環境を整えるなどが効果的です。
「体内時計を整える=心のリズムを守る」と考えるとわかりやすいでしょう。
3-2. ストレスの早期サインに気づく
双極性障害では、気分の変化が突然ではなく、必ず小さな「前触れ」として現れます。
具体的には…
「眠れない」
「妙に活動的」
「気分が落ち込んで人に会いたくない」
…などが典型例です。
これらを見逃さないために、日々の気分を記録することが大切です。
✔方法:
→紙の日記や気分記録アプリを使って、1日の気分を「快調」「少し不安」「落ち込み」と簡単にチェックしておくだけでも効果的です。
数日分を振り返ることで、気分の波を客観的にとらえられるようになります。
3-3. 家族との共有
「今日は少し気分が下がり気味」など、今の状態を周囲と共有する習慣を持つことは、早めの対応につながります。
✔メリット:
→本人が気づけないサインを、家族や身近な人が気づいてくれることがあります。
✔工夫:
→「気分の通信簿」を作り、1日を★の数で評価するなど、シンプルな方法だと続けやすくなります。
そして家族と一緒に病気と向き合う感覚を持つことで、孤立感が和らぎ、安心感が増します。
3-4. セルフケアの習慣を取り入れる
セルフケアは「治療を助けるもう一つの薬」と考えてください。
例えば…
✔深呼吸:
→緊張や不安が強まったときに、数回のゆっくりした呼吸で自律神経を落ち着けられます。
✔軽い運動:
→散歩やストレッチは、気分の安定や睡眠の質の向上に役立ちます。
✔趣味の時間:
→読書、音楽、手仕事など「自分が心地よく集中できること」を習慣的に行うことで、気持ちが安定しやすくなります。
セルフケアは「症状が出てからやる」のではなく、「予防のための処方」として日常に取り入れるのが効果的です。
というのは、そもそもセルフケアとは「症状がつらくなった時に行う」という役割もあるため、症状が落ち着いているときこそ、予防の効果も含めて行っていくことが大切です。
まとめ
このメタ分析は、双極性障害において薬物療法に心理療法を加えることが再発予防に有効であることを示しました。
特に「安定している時期」に取り組むことで効果が高く、再発率の低減だけでなく、治療継続や生活の質の向上に役立つことが明らかになっています。
心理カウンセラーとして、私は「薬と心理療法の両輪」で支えていくことが、双極性障害の方にとってより安心できる生活を実現する方法であることを、実際の臨床でも実感しています。
ぜひ、セルフケアも交えて双極性障害を乗り越えていきましょう!
参考論文
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こころのケア心理カウンセリングRoom
兵庫県芦屋市浜芦屋町1-27 サニーコート浜芦屋302号
電話番号 : 090-5978-1871
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この記事の執筆者
駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)
心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。
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