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自閉症スペクトラム症(アスペルガー)と不安の関係~神戸、芦屋、西宮のカウンセリングより~

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自閉症スペクトラム症(アスペルガー)と「不安」の関係

自閉症スペクトラム症(アスペルガー)と「不安」の関係

2025/09/25

みなさん、こんにちは。

神戸や芦屋、西宮などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。

 

さて、普段臨床を行っていると、自閉症スペクトラム症の方からの不安の訴えをよく耳にします。

 

不安は誰にでもありますが、自閉症スペクトラム症を持つ方にとってはその強さや形がとても独特で、日常生活に大きな影響を及ぼすことが少なくありません。

 

今回参照にするのは、自閉症スペクトラム症の方々を対象に、不安のトリガー(きっかけ)、その体験、そして日常での対処法を丁寧に聞き取った研究です。

 

この研究から、不安がどのように生まれ、どんな風に生活を左右するのか、そしてどう支えていけるのかが示されています。

 

そこで、心理カウンセラーの立場から、そのポイントを解説したいと思います。

 

1.自閉症スペクトラム症(アスペルガー)と不安の関係

 

 

自閉症スペクトラム症(ASD)の方にとって、不安はとても身近な問題です。

 

研究でも、自閉症スペクトラム症の成人の多くが「日常的に強い不安を感じる」と報告されています。

 

では、なぜASDと不安が結び付きやすいのかというと、次のような背景があるからです。

 

✔感覚の敏感さ(感覚過敏)

→小さな音や光も強い刺激として感じやすく、常に緊張感を抱きやすい。

✔社会的なやり取りの難しさ

→相手の気持ちを読むことや、自分の気持ちをどう伝えればよいか迷うため、人間関係が不安を呼び起こしてしまう。

✔予測不可能な変化への苦手さ

→予定変更や突発的な出来事に弱く、未来に対する「予期不安」が強くなりやすい。

 

つまり自閉症スペクトラム症の方にとって、不安は偶発的なものではなく、日常そのものに織り込まれている体験なのです。

 

1-1.不安のトリガー(きっかけ)とその特徴

 

研究では、大人の自閉症スペクトラム症の方が不安を感じる場面として、大きく5つのトリガーが報告されています。

 

1. 環境要因

 

騒音や強い光、人混み、電車の混雑といった感覚刺激は、不安を強める要因となります。

 

具体例:

✔「蛍光灯のちらつきがつらい」

✔「バスの混雑で心拍が上がる」


自閉症スペクトラム症の方は感覚が敏感であるため、一般的には耐えられる刺激でも強い不安に直結しやすくなります。

 

2. 他者とのやり取り

 

会話の「間」や視線、相手の感情表現の理解など、対人場面の難しさは常に不安を呼び込みます。

 

具体例

✔「正直に話すと嫌われるのでは」

✔「自分の行動が監視されているように感じる」


自閉症スペクトラム症の方の社会とのかかわり方によって、対人関係そのものが負担になりがちになる傾向があります。

 

3. 他者や社会への思いやりから生じる不安

 

自閉症スペクトラム症の方は、自分に関することだけでなく、社会的不正や環境問題にも強く反応する傾向があります。

 

具体例

✔「世の中が間違った方向に進んでいるのでは」と感じて不安が高まる。

 

4. 未来や出来事への予期不安

 

予定が変わるかもしれない、うまく発表できるだろうかなど、先が見えないことに大きな不安を感じやすい傾向があります。

 

具体例

✔公共交通の遅れ、大学での発表など、他者には小さく見える出来事でも強いストレス要因になってしまう。

 

5. 失望やがっかり感

 

望んだことが裏切られる経験も、不安や苛立ちを強めます。

 

具体例

✔好きなチームが負ける、電車が遅れる。


自閉症スペクトラム症の方にとって「予想と現実のズレ」は特に耐えがたいストレスとなる可能性があります。

 

2.不安の体験(どう感じられるのか)

 

 

自閉症スペクトラム症の方が不安に対して敏感であることはご説明した通りですが、では具体的にどのような不安を抱えるのでしょうか?

 

具体的には以下のようになります。


2-1. 身体反応としての不安

 

不安は「心の中の感覚」だけでなく、体に直接的に影響を及ぼします。

 

自閉症スペクトラム症の方からは、以下のような訴えがよく聞かれます。

 

✔心拍の上昇

→些細な変化や予測外の出来事に直面すると、鼓動が早くなり動悸を感じる。

✔発汗

→人混みや緊張する場面で手のひらに汗をかく。

✔胸の圧迫感

→胸が詰まるように感じ、呼吸が浅くなる。

✔吐き気やめまい

→環境刺激(光や音)が強いと、体調不良として現れる。

 

これは自律神経が過敏に反応している状態であり、本人にとっては「いつ体がコントロールを失うか分からない怖さ」そのもの、ということが言えます。

 

2-2. 思考の反芻(繰り返される考え)

 

自閉症スペクトラム症の方は、一度浮かんだ不安な思考を頭の中で繰り返しやすい傾向があります。

 

例えば…

 

「また失敗するかもしれない」

「次も同じことが起きるに違いない」

 

このような考えが頭から離れず、注意や集中力を大きく奪ってしまいます。

 

結果として勉強や仕事に支障をきたし、「できない自分」という自己否定を強めてしまう悪循環につながりやすくなります。

 

2-3. 行動への影響

 

不安は行動を制限する力を持っています。

 

具体的には…

 

✔人との交流を避ける

→友人との食事や交流を断る。

✔学びや活動を控える

→大学の講義や社会的なイベントを避ける。

 

この結果、「生活参加の機会」が失われ、自分らしい成長や喜びを体験できる場面が減っていきます。

 

これは社会的孤立にもつながりやすいという意味で大きな問題です。

 

2-4. 周囲からの誤解

 

自閉症スペクトラム症の方は、不安によって涙が出たり、感情的になったりする場合があります。

 

しかし、周囲からはそれが「問題行動」「わがまま」と誤解されることが少なくありません。


本人は「どうしてこんなに不安なのか」を説明しにくいため、誤解はさらなる孤独感を生み、二次的なつらさにつながります。

 

2-5.心理カウンセラーの視点:不安は「生きづらさの増幅装置」

 

心理カウンセリングの現場では、不安が自閉症スペクトラム症の方にとって「その人らしさを制限する大きな壁」として現れます。

 

例えば…

 

✔本人は「やりたいこと」があっても、不安によってその一歩を踏み出せなくなる。

✔周囲は「なぜできないのか」を理解しにくいため、サポートが届かず孤立が深まる。

 

つまり、不安は「自閉症スペクトラム症の特性そのもの」ではなく、特性と環境のミスマッチが引き起こす二次的な負担なのです。

 

そのため、不安への支援は「生きづらさを和らげ、その人の可能性を広げるための鍵」になります。

 

3.不安への予防と事後対処

 

 

自閉症スペクトラム症(ASD)の方にとって、不安は「突然やってくるもの」ではなく、日常の環境や人との関わりの中で常に影響を受ける体験です。

 

そのため、不安を少しでも和らげるためには 「予防」と「事後の対処」 の両輪が大切になります。

 

研究で報告された実際の工夫は、決して特別なものではなく、日常生活に根ざしたセルフケアに近いものでした。

 

3-1. 不安を予防する工夫


● 生活の予測可能性を高める

 

自閉症スペクトラム症の方は、予測できない出来事に強い不安を抱きやすい傾向があります。

 

そのため、予定や行動を紙やアプリで「見える化」することで、安心感を得やすくなります。

 

具体例

✔「出かける前に電車の運行情報を確認する」

✔「1日のスケジュールをアプリに入力して通知を受け取る」

 

● ルーティンの活用

 

決まった時間に運動や趣味を取り入れることは、不安定になりやすい気持ちに「安定感」をもたらします。

 

ルーティンは自閉症スペクトラム症の方にとって心の拠り所になります。

 

具体例

✔「朝の散歩を毎日同じ時間にする」

「お気に入りの音楽を寝る前に聴く」

 

3-2. 不安が起きたときの事後対処

 

では、不安が実際に生じた時には、どのような対処があるのでしょうか?


● 一時的に環境を離れる

 

強い不安が押し寄せたときは、刺激の多い場から距離をとることが有効です。

 

散歩に出る、静かな部屋に移るなどの行動が気持ちを落ち着かせます。

 

● 感覚的な安心を得る

 

不安は五感を通じてやわらぐことがあります。

 

音楽やゲーム、編み物など、自分に合った「安心感をもたらす感覚」を知っておくと役立ちます。

 

● 信頼できる人と話す

 

信頼できる友人や家族に話すことで、安心を得やすいことが研究からも示されています。

 

共感的に受け止めてもらうだけで「一人ではない」と感じられます。

 

● リラクゼーション

 

深呼吸や、体の感覚に意識を戻す「グラウンディング」は、不安の波にのまれそうなときに自分を支える方法として有効です。

 

3-3. 心理カウンセリングでできること

 

心理カウンセリングでは、これらの工夫をただ知識として伝えるだけでなく、「自分に合った不安対処の引き出し」を一緒に整理して増やしていく作業を行います。

 

具体的には…

 

✔「どんな場面でどの工夫が役立つか」を具体的に話し合う

✔「無理なく続けられるセルフケア」を選び出す

✔不安に振り回されず、自分らしく過ごすための視点を持てるように支援する

 

これは単なる「症状の緩和」ではなく、ASDの方が 安心できる生活の土台を築くプロセス として大きな意味を持ちます。

 

まとめ

 

自閉症スペクトラム症は欠点ではなく、単なる特性です。

 

そして不安が生じるのは、自閉症スペクトラム症が持つ特性と環境が組み合わさった自然な体験です。

 

だからこそ、予防と事後対処を工夫し、「安心のための工夫」を見つけていくことが、不安に押しつぶされずに日常を送るための大切な一歩になります。

 

ぜひ、自分になったケアを行い、快適な毎日を過ごしてくださいね。

 

参考論文

The Experience of Anxiety in Young Adults with Autism Spectrum Disorder

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この記事の執筆者

駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)

心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。

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