双極症の混合状態とは?特徴と日常でできるセルフケアの工夫
2025/10/06
みなさん、こんにちは。
神戸や芦屋、西宮などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。
今回は双極症(双極性障害)の混合状態について解説しますね。
双極症(旧・双極性障害)は、躁状態と抑うつ状態を繰り返す病気です。
その中でも「混合状態」とは、気分は落ち込んでいるのに、行動力や焦りが高まっている状態を指します。
例えば…
「気分は憂うつなのに、イライラが止まらない」
「不安なのに衝動的に動いてしまう」
…といった「気持ちと行動のチグハグさ」が特徴です。
これは躁状態から抑うつ状態へ、またはその逆へ移行する際に現れやすい症状です。
1.混合状態で見られる代表的な症状

混合状態とは、躁的なエネルギーと抑うつ的な感情が同時に存在する状態です。
つまり、「心のアクセルとブレーキが同時に踏まれているような感覚」とも言えるでしょう。
この状態は気分の波が複雑に入り組み、感情や行動がアンバランスになりやすいのが特徴です。
ここでは、臨床的にしばしば見られる代表的な症状を詳しく見ていきます。
1-1.不機嫌な興奮や怒りが出やすい
混合状態では、感情の振れ幅が大きく、怒りや苛立ちが強く表れやすい傾向があります。
外から見ると「怒っているように見える」ものの、その内側には「焦り」「自己否定」「苦しさ」といった感情が混在していることが多いです。
特に、自分の思考がまとまらない、何をしてもうまくいかないと感じるとき、怒りが自分や周囲に向かいやすくなります。
この心理的には、「この苦しさを何とかしたい」というSOSのサインでもあります。
1-2.焦りや落ち着きのなさ
混合状態では、心が常に急かされているような感覚が生じやすくなります。
「何かしなければ」「止まってはいけない」と感じ、行動を急ぐものの、実際には集中できず空回りするケースもあります。
この「落ち着けない感じ」は、交感神経の高ぶりとも関係しており、睡眠リズムの乱れや体調不良にもつながることがあります。
1-3.気分は沈んでいるのに行動が活発
典型的なのが、気分は落ち込んでいるのに、頭や体が動きすぎてしまう状態です。
これは…
「眠れないのに何かをせずにいられない」
「頭の中で思考が止まらない」
「無理に頑張ろうとしてしまう」
…といった形で現れます。
これは、躁的な「行動エネルギー」と抑うつ的な「感情の落ち込み」が同時に働いているためであるといえます
そして結果として、疲労が蓄積し、心身のバランスをさらに崩すことがあります。
1-4.不安感・イライラ感が強い
混合状態では、不安や緊張が高まりやすく…
「何をしても安心できない」
「このままではいけない」
…と感じることがあります。
また不安はしばしば身体症状としても現れます。
胸の圧迫感、動悸、胃の不快感、手足の震えなどは、その典型例です。
心理的には、「コントロールを失う恐れ」や「自分を責める思考」が背景にあることが多いため、安心できる環境づくりやサポート体制が欠かせません。
1-5.一般的な躁状態との違い
一般的な躁状態では厳密にはⅠ型、Ⅱ型で異なりますが、「ハイテンション」「多弁」「睡眠欲求の低下」「過活動」などが目立ちます。
しかし混合状態ではそれに抑うつ的な感情が重なります。
たとえば、「体は動くのに気分は落ち込んでいる」「笑顔で話しているのに心の中では焦りや虚しさを感じている」といった状態です。
2.注意すべきポイント(最悪の選択肢・自己断薬)
2-1.混合状態の危うさ
混合状態は、「気分は落ち込んでいるのに、行動力がある」という非常に不安定な状態です。
通常のうつ状態では気持ちも行動も低下していることが多いのに対し、混合状態では心のブレーキ(抑うつ)とアクセル(躁的なエネルギー)が同時に働いているため、感情や思考がコントロールしづらくなります。
このアンバランスさは、焦り・怒り・不安といった強い感情と衝動性を高める要因となり、危険な行動に結びつくリスクが知られています。
2-2.「最悪の選択肢を考えてしまう」ことへの注意
混合状態の方は、気分の落ち込みの中で「こんな自分はいなくなったほうがいい」「全部終わらせてしまいたい」といった「最悪の選択肢」を頭に浮かべてしまうことがあります。
これは脳や心が極度のストレス状態にあり、感情や行動の調整機能が揺らいでいるサインです。
もしこうした考えが浮かんだときは、一人で抱え込まず、すぐに主治医や専門のサポートを受けてください。
早めに周囲に伝えることで、適切な治療や支援につながり、危険な行動を防ぐことができます。
2-3.自己断薬の危険性
混合状態では「薬を飲まなくても大丈夫な気がする」「最近調子がいいからもうやめてもいいかも」と思いがちです。
その結果、「もう薬はいらない」という判断をされる方も珍しくありません。
しかし、自己判断で薬をやめることは非常に危険です。
実際に薬を中断・減量すると症状が急激に悪化し、再び混合状態に入ったり、衝動性が強まるリスクが高まります。
薬の調整や変更は、必ず主治医と相談しながら行っていきましょう。
2-4.早めの専門家相談が安心への第一歩
「最悪の選択肢を考えてしまう」「薬をやめたくなっている」といったサインは、早急に対応が必要なSOSです。
精神科・心療内科の医師や、公認心理師・臨床心理士などの心理専門職は、こうした状態に対応するための専門的な知識と経験を持っています。
早めに相談することで、あなたに必要な治療・心理的サポート・生活面での調整が整いやすくなり、安心して回復に向かうことができます。
3.混合状態でイライラや焦り等を感じるときの過ごし方(4つのポイント)

双極症の「混合状態」におけるセルフケアは、躁と抑うつが入り混じるという非常に不安定な状態を前提にした精密な自己管理が求められます。
そのため以下では、専門的な観点からセルフケアを解説します。
3-1.混合状態の理解:セルフケアの出発点
混合状態は「気分は沈んでいるのに行動が高ぶる」「落ち着かないのに疲弊している」といった「心理的な乖離」が特徴です。
このため、感情のコントロールよりも、「環境と行動の安定化」が最優先課題となります。
具体的には…
✔感情の浮き沈みを自己否定的に捉えない(あくまでも症状の現われと理解しましょう)
✔気分よりも「行動のリズム」を優先して整える
✔無理にポジティブになろうとしない
この「理解→受容→安定化」の流れが、セルフケアの土台になります。
3-2生理リズムを整える:行動活性化の基本
混合状態では、どうしても生活リズムの乱れが症状悪化を助長します。
そのため、「睡眠」「食事」「活動時間」の3つは、行動活性化療法のターゲット領域になります。
具体的には…
● 睡眠の安定化
✔就寝・起床時間を一定にする(±30分以内を目標)
✔昼寝は30分以内、夕方以降は避ける
✔ベッドでは「休息と睡眠」以外の行動をしない(スマホや仕事を避ける)
躁的な高揚感が強いときは寝つきが悪くなり、抑うつ優位では過眠傾向になるため、「規則性」そのものを守ることが重要です。
● 栄養と代謝の維持
✔血糖変動が激しいと気分の波が強まるため、朝食を抜かない
✔炭水化物・たんぱく質・脂質のバランスを意識
✔カフェインやアルコールは気分を乱すため控える
3-3.情動調整スキル:イライラ・焦燥への具体的対処
混合状態の場合は、どうしてもイライラや焦燥感が生じがちになります。
そのため、以下のセルフケアが有効です。
● 呼吸による神経調整(自律神経介入)
呼吸法はもっとも即効性のある介入の一つです。
ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)という心理療法でも「呼吸への注意」は、今この瞬間に戻る手段とされています。
方法は以下の通りです
(1)4秒吸って、6秒吐く(「吐く」時間を長めに)
(2)呼吸を整える間、「いま、息をしている」と心でつぶやく
この呼吸法はシンプルですが、交感神経の過剰反応(イライラや衝動)を鎮め、副交感神経を優位に戻す効果があります。
3-4.活動の質を保つ:エネルギーを「分散」させる
混合状態では、躁的なエネルギーが抑うつ的思考と結びつき、「激しい焦燥」や「怒り」として噴出します。
そのため、このエネルギーを外に安全に逃がす工夫が必要です。
✔軽いウォーキングやストレッチを1日10〜15分
✔日記やアートなど、内面を“表現”する活動を取り入れる
✔「SNSでの感情発散」は避ける(刺激が再燃しやすいため)
このように、「溜めない・ぶつけない・流す」の3原則がポイントです。
まとめ:安定とは「完璧」ではなく「揺れを戻せる力」
混合状態のセルフケアで目指すのは、「躁にも抑うつにも引きずられすぎない」ことです。
つまり完璧に安定するのではなく、「揺れても戻れる範囲を広げる」ことが本質的な回復です。
そのため…
✔気分の波を「自分の責任」としない
✔日常を「安全なリズム」で構成する
✔必要なときに主治医や心理カウンセラーに支援を求める
混合状態は決して一人で抱えるべき状態ではありません。
適切な支援とセルフケアを併用することで、安定した生活を取り戻すことが可能です。
もしも混合状態が生じたら、ぜひ悪化する前に適切なケアを行ってくださいね
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こころのケア心理カウンセリングRoom
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この記事の執筆者
駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)
心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。
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