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自傷行為やリストカットの予防~神戸、芦屋、西宮のカウンセリングより~

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自傷行為(セルフハーム)を止める手がかりとは?研究が示す有効な支援とその意味

自傷行為(セルフハーム)を止める手がかりとは?研究が示す有効な支援とその意味

2025/10/12

みなさん、こんにちは。

神戸や芦屋、西宮などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。

 

今日は自傷行為について考えてみたいと思います。

 

自傷行為は、言葉にならない痛みを伝える手段といえます。


そこには「最悪の事態」を想定する方も確かにおられますが、多くの場合は「生きたい」という切実な願いが隠されています。

 

そこで、このブログでは傷をめぐる支援の観点から、最新の研究をもとに「どういう介入が効果を示しているか」を整理し、それをカウンセラー視点で受け止めながら、お伝えしたいと思います。

 

1. 自傷行為をめぐる理解~痛みと言葉にならない叫び~

 

 

自傷行為(self-harm:セルフハーム)とは、自分の身体を意図的に傷つける行為を指します。

 

例えば、手首を切る、皮膚を削る、火傷を負う、頭や身体を叩く、爪を剥がす、あるいは薬を過量に摂取するなど、その形はさまざまです。

 

これらの行為は、外から見ると「自分を傷つける」「危険な行為」として理解されがちです。

 

しかし心理臨床の現場で見えてくるのは、単なる「破壊行為」ではなく、「どうしようもない苦しみを解消するための、唯一の手段」であることが多いという現実です。

 

自傷行為という言葉には、「最悪の結果」という明確なものを含まない場合が少なくありません。

 

むしろ…

 

「生きるために、どうにかして心の痛みを減らしたい」

「感じすぎる苦しみを、何とか止めたい」

 

…という、「生きようとする試み」が含まれていることが非常に多くあります。


身体に痛みを与えることで、感情の高ぶりを一時的に抑えたり、強すぎる緊張や不安を落ち着かせようとする…。

 

それが多くの当事者が語る「理由なき理由」です。

 

1-1.自傷行為の背景にある心理的要因

 

心理カウンセリングの現場で、自傷行為に至る背景をたどると、いくつかの共通するテーマが見えてきます。

 

まず第一に挙げられるのが、「感情調整の困難さ」です。


怒り、悲しみ、恐怖、罪悪感、孤独感などの感情が、波のように押し寄せてコントロールできなくなったとき、自傷行為の当事者は「痛みを伴う行為」を通じて感情をリセットしようとします。

 

これは神経生理学的にも裏付けがあり、痛み刺激がストレスホルモンを抑え、一時的に鎮静効果をもたらすことが知られています。

 

次に、自己否定感が深く関係しています。


「自分には価値がない」「罰を受けるべきだ」という思考が心の底に根づいていると、その信念に従うように身体を傷つけてしまうことがあります。

 

これは「自己罰的な自傷行為」と呼ばれ、自責感の強い方や、過去に虐待や否定的なメッセージを受け続けてきた方に多く見られます。

 

さらに、「孤独や愛着の問題」も重要な要素です。


子どものころ、安心して気持ちを受け止めてもらえなかった経験、例えば…

 

「泣いても無視された」

「感情を出すと怒られた」

 

…といった体験は、「私は誰にも理解されない」「助けを求めても無駄だ」という感覚を残します。


その結果、大人になっても「助けて」と言えず、代わりに自傷行為という形で「助けてのサイン」として出してしまうことがあります。

 

つまり自傷行為は、他者との断絶のなかで生まれた、孤独なコミュニケーションの一形態とも言えるのです。

 

1-2.自傷行為の「機能」を理解する

 

多くの方にとって、自傷行為という「痛みを自分自身に与える」という行為は理解しがたい行為かもしれません。

 

しかし、心理学的に見れば、それには「一定の機能」があります。


実際に当事者が語る自傷行為の理由を丁寧に聞き取ると、以下のような心理的意味が見えてきます。

 

先にお伝えしたものと重なる部分もありますが、改めて整理の意味も含めてお伝えしたします。

 

✔感情の放出

→あふれそうな怒りや悲しみを外に出すための手段

✔感覚の回復

→麻痺したような心を「痛み」で実感させる行為

✔自己罰

→罪悪感や恥の感情を「罰によって清算」しようとする心理

✔コントロールの回復

→自分の身体を操作できることで、「唯一自分で制御できる感覚」を取り戻す

✔助けを求めるサイン

→誰にも言えない痛みを、「傷」という形で伝えようとする

 

このように、自傷行為には「生きようとする衝動」と「自分を守る仕組み」が同時に存在しています。


そのため、単純に「やめなさい」と言っても止められるものではありませんし、実際に効果も見込めません。

 

上記の内容でお伝えした通り、自傷行為は「行動」というより、「心の自己防衛反応」として理解する必要があります。

 

2. 研究が示す「自傷行為を予防する介入法」 

 

 

Saunders ら(2016)の研究は、「自傷行為を減らす、または防ぐためにどのような支援が効果的か」を多くの研究から整理したものです。


そこから見えてきたのは、心理的支援や教育的介入が、自傷行為の再発を防ぐ手がかりになり得るということでした。

 

2-1.効果が示唆された介入法

 

論文では、いくつかの方法が一定の効果を示したと報告されています。

 

まず、もっとも注目されたのが「認知行動的アプローチ(認知行動療法や弁証法的行動療法)です。


これらは、感情の波に飲まれやすい方が「自分の考え方のクセ」や「感情が高まるサイン」に気づき、少しずつコントロールを取り戻すことを助ける手法です。

 

感情を落ち着けるアプローチを身につけることで、自傷行為に頼らずに苦しみを乗り越える力が育つことが期待できます。

 

次に、マインドフルネスや瞑想などの方法も効果があるとされています。


これらは「今この瞬間」に注意を向け、強い衝動や思考の渦から少し距離を取るというものです。

 

この実践は感情があふれそうなときでも、呼吸や身体感覚に意識を戻すことで、行動を少し保留する余裕を取り戻せるようになります。

 

また、支援的・教育的なプログラムも重要です。


ストレスの対処法を学ぶ講座や、仲間同士で気持ちを共有するグループワークなどがこれにあたります。

 

自分の状態を理解し、助けを求めるスキルを身につけることが、自傷行為を減らすことにつながります。


特に学校や地域で行われる予防教育やサポート体制も、一部で良い成果を上げています。

 

このように「感情を言葉にする力」を育てることは、長期的な予防の土台となります。

 

2-2.支援への示唆

 

この研究が私たちカウンセラーに示しているのは、「共に考える姿勢こそが最大の支援」であるということです。


自傷行為をする方の多くは、理解されない孤独の中で苦しんでいます。


そのため、「なぜそんなことをしたの?」ではなく、「それほど苦しかったんだね」と受けとめることが出発点になります。

 

つまり、感情の波を一人で抱え込まないよう、安心して話せる環境を整えること。


そして、苦しみを「行為」ではなく「言葉」で表現できるように少しずつ支援すること。

 

これこそが、Saunders らの研究が示す「エビデンスの向こう側」にある、受容的な支援の在り方だと言えるでしょう。

 

3. 臨床的視点からの解釈・支援への落とし込み

 

 

研究で示唆された介入法を、心理カウンセラーや当事者の周囲の支援者として当事者に対応する際には、「ただ手法を模倣する」だけでなく、以下の視点を意識することが大切です。

 

3-1. 安全関係性を先に築くこと

 

自傷行為を抱える方は、過去に「助けられなかった・理解されなかった」体験を持つことが多くおられます

 

そのため、まずは「あなたの感情を否定しない」「ここは安全な場所だ」という基盤関係の構築が不可欠となってきます。

 

逆に信頼関係が整っていないまま介入を進めると、逆に傷つきを深めるリスクがあります。

 

3.2 段階的アプローチを取る

 

感情が非常に揺れる状態では、いきなり思考修正や過去体験への介入を行うことは負荷が大きすぎますし、かえって増悪の危険性が増してしまいます。

 

そのため、まずは感情調整スキル、自己ケア法、危機対処法など、日常扱えるレベルから支えることが大切となってきます。

 

その後、思考や認知、深い感情レベルに進むアプローチが有効です。

 

3-3.個別化と柔軟性

 

人によって自傷行為の背景、意味、動機は当然異なります。

 

ある方には認知的技法が有効でしょうし、別の方にはマインドフルネス、身体感覚へのアプローチ、または対話ワークが合うかもしれません。

 

そのため、当事者の反応、抵抗性、ペースを丁寧に見ることが大切になってきます。

 

3-4.長期支援とフォローアップ重視

 

自傷傾向を持つ方は、改善が一朝一夕に進むわけではなく、浮き沈みを伴うことが一般的です。

 

そのため、一時的な介入だけで終えるのではなく、継続的に支え、変化の小さな歩みを見守るフォロー体制が重要になります。

 

3-5.当事者自身の主体性支援

 

支援の過程で、当事者が自分自身の痛みや選択に向き合い、自分で対処法を見つけられるようなサポートを促すことは理想であり目的です。

 

心理カウンセラーをはじめとする支援者が「解決を与える」だけでなく、「ともに問い、伴走する」姿勢を持つことが変化を持続させ得ます。

 

4. まとめ:痛みに手を差し伸べる支援の道

 

Saundersら(2016)の論文は、自傷予防介入に関する幅広い研究を整理したものであり、認知行動アプローチ、マインドフルネス、支援・教育的プログラムなどが、一定の有効性を持つ可能性を示唆しています。

 

カウンセラーや支援者、そして当事者の家族として私たちにできることは、まずは「痛みの声」に耳を澄ませ、安全な関係性を丁寧につくることとなります。

 

そして、あせらず段階を追いながら、当事者の方が自らの歩みを進められるような支援を続けることです。

 

どうか、自傷行為の当事者に対して受容的・理解的であってくださいね。

 

参考論文

Interventions to prevent self-harm: what does the evidence say?

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この記事の執筆者

駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)

心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。

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