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愛着障害と境界性パーソナリティー障害との関係~神戸、芦屋、西宮のカウンセリングより~

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愛着の傷が生む心の痛み:境界性パーソナリティ障害と「つながり」の再構築

愛着の傷が生む心の痛み:境界性パーソナリティ障害と「つながり」の再構築

2025/10/20

みなさん、こんにちは。

神戸や芦屋、西宮などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。

 

今日は愛着障害と境界性パーソナリティー障害との関係についてお伝えしたいと思います。

 

子どものころ…

 

「大人が自分の気持ちを読んでくれなかった」

「安心して話せなかった」

 

…という体験は、私たちが成長してからの「人とのつながり方や「自分をどう感じるか」というものについて、大きな影響を与えます。

 

心理カウンセラーとして心理臨床に携わっていると、こうした幼少期の逆境体験が愛着障害に結びつているケースは珍しくないとと感じています。

特に、境界性パーソナリティ障害という性質を持つ方にとって、その痛みが人生全体を揺るがすほど深いものになっていることもあります。

 

そこでこのブログでは、愛着理論と境界性パーソナリティー障害とのの関係を、研究をもとに丁寧に紐解きながら…

 

「なぜ私はこう感じるのか」

「どうしたら少しでも楽になれるのか」

 

を探るヒントを考えていきたいと思います

 

1.愛着障害と境界性パーソナリティー障害の関係~「愛着」から「メンタライゼーション」へ~

 

 

境界性パーソナリティ障害(BPD)を理解するためには、「愛着(Attachment)」「メンタライゼーション(Mentalization)」という2つの概念を避けて通ることはできません。


この2つは、私たちが自分をどう感じ、他者をどう信頼するかという「心の基盤」に深く関わっているんですね。


ここでは、Fonagy博士らの理論をもとに、その意味と臨床的な示唆をわかりやすく整理していきます。

 

1-1. 愛着(Attachment)とは~「安心できるつながり」の記憶~

 

愛着とは、幼い子どもが養育者(親や教師と言った周囲の大人)や交友関係との関係の中で学ぶ「安心の感覚」です。


幼少期の子供にとって、親や周囲の大人、交友関係などの存在は、「安心して探索できる基地」であり、困ったときには戻れる「安全な避難所」であることは必要不可欠です。


これらの感覚があることによって、子どもの情緒調整力・社会性・自己肯定感の発達を支える柱となります。

 

反対に、養育者や周囲の大人、友人等とのが不安定であったり、過剰に支配的であったり、感情的に拒絶的であった場合、子どもは「自分の気持ちは理解されない」「助けを求めても応えてもらえない」という感覚を学んでしまします。


その結果…

 

「どうせ誰も助けてくれない」

「私は愛されない」

 

という否定的な「対人モデル」が心に刻まれます。

 

これが「不安型・回避型・未整理型(混乱型)」と呼ばれる不安定な愛着スタイルです。

 

Fonagyらの研究によると、境界性パーソナリティ障害の方の多くに、この「未整理型愛着」が見られるとされています。


未整理型の特徴は、愛情を求めながらも、同時にその関係を恐れるという二重の感情構造です。


「愛してほしい」「でも裏切られるのが怖い」といった、矛盾した思いに引き裂かれるような苦しみが、人間関係の中で繰り返されるのです。

 

こうした愛着の混乱は、単なる「性格の問題」ではなく、幼少期の環境で生き延びるために身につけた「生存戦略」といえます。

 

1-2. メンタライゼーション(Mentalization)とは?

 

メンタライゼーションとは、「自分や他者の行動の背後に『心の動き』があることを理解するとチカラ」です。


例えば、「相手が怒っているのは自分を嫌っているからではなく、不安だったからかもしれない」と考えるチカラを指します。


また、「自分が涙を流したのは、怒りよりも悲しみが大きかったから」と気づくも、大切な心の機能です。

 

これをFonagy博士はこれを、次のように表現しています。

 

My caregiver thinks of me as thinking, and therefore I exist as a thinker.
(私の養育者が、私を『考える存在』として見てくれることで、私は『考える存在』として存在できるようになる)

 

つまり、幼少期に養育者等がが「あなたはどう感じているの?」と心を理解してくれるとき、子どもは…

 

「自分の気持ちは存在しても良い」

「心には意味がある」

 

…と感じるのです。


これが健全なメンタライゼーションの発達につながります。

 

逆に、子どもの感情に共感せず、「泣くな」「怒るな」「そんなのくだらない」と否定され続けると、どうなるのでしょうか?

 

その場合、子どもは「自分の心を感じることが危険だ」と学び、感情や思考を切り離してしまいます。


この結果…

 

「自分が何を感じているのかわからない」

「相手の気持ちを想像できない」

 

…という状態に陥るのです。

 

こうして、感情の爆発・衝動的な行動・自己否定・対人関係の混乱などが生じてしまっている…

 

これが境界性パーソナリティー障害に見られる典型的な心理構造です。

 

1-3. トラウマとメンタライゼーション抑制 ~「心を読むこと」が怖くなる理由~

 

幼少期に虐待や暴力、感情的な否認(例:『そんな風に考えたり感じてはダメ!』)を経験した子どもにとって、「他人の心を考えること」は恐怖を伴います。


なぜなら、心を読む=相手の怒りや拒絶、暴力を想起させるからです。

 

そのため、トラウマを持つ方は無意識のうちに、「考えない」ことを防衛的に選ぶようになります。


これは、「メンタライゼーションの抑制」と呼ばれる現象です。

 

この抑制が強く働くと、他者との関係で次のようなことが起こりやすくなります。

 

例えば…

 

✔相手の意図を悪意として受け取りやすい

✔「信頼する」よりも「見捨てられないようにコントロールする」行動をとる

✔感情が一気に爆発し、あとで強い自己嫌悪に襲われる

✔他者を「完全に良い人/悪い人」と極端に分けてしまう

 

つまり、心の中の「真」と「偽」の境界が曖昧になり、自分も他人も信じられない世界に閉じ込められてしまうのです。

 

2. 境界性パーソナリティー障害と愛着との関係

 

 

では、次のパートでは境界性パーソナリティー障害と愛着との関係をより深堀していきましょう。

 

境界性パーソナリティー障害という言葉を耳にすると、「感情の波が激しい」「人間関係が長続きしない」「自分が誰なのかわからない」といったイメージを持つ方が多いかもしれません。

 

実際、境界性パーソナリティー障害の特徴には…


✔感情が急激に高ぶりやすく、落ち着くまでに時間がかかる
✔「好き」と「嫌い」が極端に入れ替わるほど、対人関係が不安定
✔「見捨てられるのではないか」という強い不安
✔自己像(自分が何者なのか)に揺らぎがあり、生きづらさを感じる


…といった傾向が挙げられています。

 

しかし、、この状態を「歪んだ性格の問題」として片づけてしまうのは、あまりにも表面的です。


近年の心理学・精神分析の研究では、こうした苦しみの背景には「愛着(アタッチメント)」の問題が深く関わっていることが分かってきました。

 

2-1.愛着の揺らぎが心に与える影響

 

愛着とは、幼いころに養育者(主に親)との間で築かれる「心の絆」です。


その絆は、「私は守られている」「私は愛される価値がある」という感覚を育て、安心して世界を探索するための土台になります。

 

ところが、Fonagyらの研究(Fonagy, Target, & Bateman, 2000)によると、境界性パーソナリティー障害の方の多くは、養育者や周囲の大人、友人との関係が不安定・混乱的であったり、トラウマ的であったりする傾向があると報告されています。


つまり、子ども時代に「安心して気持ちを委ねる経験」や「自分の感情を理解してもらう経験」が十分に得られなかったのです。

 

このような愛着の不安定さは、子どもの心に「他人は信頼できるのか」「自分は愛されていい存在なのか」という深い不安を残します。


そして、その不安を抱えたまま成長すると、大人になっても人との関わりの中で「安心」を感じにくくなります。

 

2-2.養育者の「心を感じる力」~メンタライゼーションの欠如~

 

Fonagyらが特に強調しているのが、「メンタライゼーション(mentalization)」という概念です。


これは繰り返しになりますが自分や他者の心の中で何が起きているのかを想像し、理解する能力を意味します。

 

例えば、子どもが泣いているとき、親が「悲しいんだね」「怖かったんだね」と共感しながら言葉を返すと、子どもは「自分の気持ちは理解される」「表現していい」と学びます。


こうした体験の積み重ねが、メンタライゼーションを育てるのです。

 

しかし、養育者自身に心の余裕がなく、子どもの気持ちを読み取ってもらえない環境で育つと、子どもは「自分の気持ちは危険だ」「理解してもらえない」と感じるようになります。


すると…

 

✔「自分が何を感じているのか」

✔「相手は何を思っているのか」

 

…ということが分からなくなり、感情と他者理解のバランスを取る力が発達しにくくなるのです。

 

Fonagyらは、まさにこの「メンタライゼーションの未発達」こそが、境界性パーソナリティ障害の中核にあると指摘しています。


つまり、境界性パーソナリティー障害の方が抱える「感情の激しさ」や「対人関係の不安定さ」は、単なる気質や性格ではなく…

 

「心の内側を理解されずに育ったことの自然な結果」

 

…でもあるのです。

 

2-3.「愛されたい」のに「怖い」~愛着のジレンマ~

 

境界性パーソナリティー障害の方が最も苦しむのは、「人との距離をどう取ればいいのか分からない」というジレンマです。


「本当は誰かに近づきたい」

「分かってほしい」

 

…という気持ちが強いのに、いざ関係が深まると、「また傷つくかもしれない」「裏切られるのでは」という恐れがよみがえってしまいます。

 

その結果…


✔相手に強く依存したかと思えば、急に突き放してしまう
✔好意を感じても、「どうせ離れていく」と信じきれない
✔関係の中で「安全」より、自分を守るために「危険」を先に探してしまう


…といった行動が生まれやすくなります。

 

この「愛されたいのに怖い」という葛藤は、まさに愛着の混乱が引き起こすものです。


Fonagyの理論では、これを「再現される愛着不安」と呼び、幼少期の未完了な感情体験が、成人の人間関係の中で繰り返し再生されると説明しています。

 

2-4.自己の輪郭が揺らぐ~「私は誰なの?」という感覚~

 

愛着が不安定なまま育つと、「自分はこう感じる」「私はこういう人だ」という「自己感覚(アイデンティティ)」の形成にも影響が出ます。


つまり、「相手が私をどう見ているか」に過度に依存し、自分の価値を他者の反応で測るようになるのです。

 

例えば、相手が優しいときは「私は愛される人間」と感じ、冷たくされたときには「私は嫌われている、存在価値がない」と極端に揺れるといった不安定がそれを指します。


この「自己の不安定さ」こそが、境界性パーソナリティー障害の中心的な痛みのひとつです。

 

ここでも重要なのは、境界性パーソナリティー障害の方が「その方自身がが悪い」わけではないということです。


むしろ、他者との関係の中で自分を見失うのは、「関係の中でしか自分を感じられなかった過去」の名残なのです。

 

2-5.症状の奥にあるものを理解する

 

このように、境界性パーソナリティー障害を「愛着の発達過程における歪み」として理解すると、見える世界が変わります。


例えば、衝動的な行動や感情の爆発も「他者に見捨てられないための必死のサイン」となるでしょう

 

また、自己否定の言葉も、「本当の自分を見つけたい」という心の叫びかもしれません。


「なぜこの瞬間、強く怒りを感じたのか」「その奥に、どんな恐れや願いがあったのか」


そのプロセスを丁寧にたどることで、当事者の方はは少しずつ「自分の心を安心して理解するチカラ」を取り戻していくことができるようになっていきます

 

境界性パーソナリティー障害は「人間関係の障害」ではなく「愛着と自己の回復をめぐる物語」です。

 

まとめ:つながりの傷から癒しの歩みへ

 

幼少期の愛着体験が後の人間関係や自己感覚に深く影響を与えてしまう…。

 

これは決して誰かを責めるための理論ではありません。

 

むしろ、「なぜ私はこう感じてしまうのか」「どうしてこの関係がいつも壊れてしまうのか」という問いに対し、寄り添いながら理解を深められる手がかりを与えてくれます。

 

境界性パーソナリティ障害を抱える方が、自分を「自分は何をやってもダメだ」と感じることなく、「私が幼かったあのとき、どうだったか」「今の私はどう関係を選んでいるか」を振り返る機会を持つこと。そこに、回復の可能性があります。

 

「私は私でいいんだ」と感じられるような関係の中へ、一歩ずつ進んでいけますようになることを、心から願っています

 

参考論文

Attachment and Borderline Personality Disorder

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この記事の執筆者

駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)

心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。

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