双極性障害の躁状態で困るときの対処法とは?
2025/10/25
みなさん、こんにちは。
神戸や芦屋、西宮などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。
さて、双極性障害(双極症・躁うつ病)でご本人や周囲の方が対処に苦慮するのは、躁状態への対応です。
というのは、躁状態のとき…
「自分でも気持ちのブレーキがかけられない」
「行動が止まらない」
…という状態が発生し、ご本人や周囲の方が戸惑ったり対処に困ることが少なくないからです。
また、躁状態が…
「元気な状態」
「症状が改善された」
…と判断されがちなのが、さらに問題を大きくしてしまいます。
双極性障害に伴う躁状態や軽躁状態は、気分の高まりが一時的に強く表れるため、ご本人の意思だけでコントロールするのが難しい状態です。
そのため、ご本人のセルフケアと周囲の理解・サポートの両方が欠かせません。
そこで、この記事では心理カウンセラー目線で、躁状態を落ち着かせるための3つの具体的な方法と、家族・パートナーができるサポートの工夫をシェアしたいと思います。
1.躁状態とは?~「元気そう」に見えても隠れているサインに気づく~

双極性障害にみられる躁状態や軽躁状態は、外から見ると「前向きでエネルギッシュ」「最近、調子がいいね」と好印象に受け取られることがあります。
そのため、ご本人自身も「自分は調子が良い」と感じ、気分の高まりを双極性障害の躁状態ののサインだと気づかないことも少なくありません。
しかし、この「元気さ」が長く続くと、やがて疲労の蓄積や集中力の低下、対人関係のトラブルを招くことがあります。
つまり、躁状態は気分の高まりが自分の限界を超えてしまっている状態ともいえるのです。
躁状態でよくみられるケースは以下の通りです。
✔夜中でも友人や知人に衝動的に連絡してしまう
✔眠らなくても平気で活動を続けてしまう
✔衝動的に買い物をしてしまう
✔話が止まらず、相手の反応を待てなくなる
こうした行動は、ご本人にとっては「活発になっているだけ」と感じられても、周囲から見ると少し違和感を覚えたり、どう接すればよいのか分からなくなる場合も多々あります。
また、ご本人も家族も「まさか躁状態だとは思わなかった」というケースは珍しくありません。
だからこそ、「いつもより少しハイかもしれない」と気づくことが、安定への第一歩です。
気分の変化に早めに気づけるようになると、再発を防ぎ、生活のバランスを整えるきっかけにつながりますし、また双極性障害のケアにおいても非常に大切です。
2.双極性障害における躁状態の臨床的理解

ここでは、少しマニアックですが双極性障害の躁状態について臨床的なお話をしたいと思います。
双極性障害は、気分の波が大きく変動する気分障害であり、うつ状態と躁(または軽躁)状態を周期的に繰り返す特徴があります。
このうち「躁状態」とは、気分が異常に高揚または易怒的(怒りっぽさ)になり、活動性や思考、行動が過剰に亢進した状態を指します。
2-1.躁状態の中核的特徴
躁状態の中心には、「高揚した気分」と「活動性の過剰」があります。
気分の高揚とは、単に「楽しい」「嬉しい」という感情の強まりではなく、現実的な制御を失った万能感や自信の過剰を伴うのが特徴です。
一方、活動性の過剰とは、睡眠をほとんど取らずに活動を続けられるほどのエネルギー状態を指し、その結果、社会的・職業的機能が著しく障害されることがあります。
臨床的には、以下のような心理・行動的特徴が観察されます。
もしも、この中に当てはまるものがあれば注意が必要です。
✔自尊心の誇大化(自分には何でもできるという過信)
✔睡眠欲求の減少(数時間の睡眠でも疲れを感じない)
✔多弁や話題の飛躍(思考の奔逸)
✔注意の散漫、集中困難
✔目的を持たない過剰な活動(買い物、投資、性的逸脱、浪費など)
✔他者への干渉的・攻撃的行動
✔判断力の低下に伴う社会的トラブル
これらの症状は、通常、少なくとも1週間以上持続し、仕事・学業・人間関係などの生活機能に支障をきたすか、または症状が重たい場合は入院が必要なレベルに達します。
2-2.躁状態の心理的背景
躁状態は単なる「元気すぎる状態」ではなく、しばしば心の防衛的メカニズムが関与していると考えられます。
臨床的には、抑うつ期に蓄積した「無力感」や「喪失感」に対し、心理が反動的に「万能感」「高揚感」でバランスを取ろうとする現象が見られます。
つまり、躁状態は「心の過補償」として現れることがあるのです。
そのため、躁状態の裏には深い不安、孤独、自己価値の揺らぎが潜んでいることも少なくありません。
そのため、治療的関わりでは、この「高揚の裏側にある脆さ」への理解が欠かせません。
2-3.軽躁状態との違い
軽躁状態(hypomania)は、躁状態に比べると症状が軽く、社会的機能を大きく損なわないのが特徴です。
実はこの状態が少々厄介で、ご本人や周囲は「調子が良い」「活発になった」と前向きに評価しやすいため、見逃されることも多くあります。
しかし、軽躁状態が続くと疲弊してうつ状態に転じたり、より重度の躁状態へ進行する危険もあります。
臨床的には、軽躁状態の段階で早期に気づき、生活リズムや環境調整を行うことが再発予防に有効です。
2-4.臨床的対応の基本方針
躁状態に対しては、薬物療法と心理社会的支援の両立が基本です。
同時に、環境的刺激(過度な対人接触、睡眠不足、ストレス)を最小限にするよう調整することになります。
また心理的支援としては、次のような点が重要です。
✔ご本人にとって安全な関係の中で、現実検討力を取り戻す支援
✔家族への心理教育(症状の理解・再発兆候の観察)
✔睡眠・食事・活動リズムの安定化
✔症状が落ち着いた後の再発予防プラン(早期警告サインの特定)
特に躁状態の最中に「気分が高い」ことをご本人が自覚するのは難しいため、家族や主治医、心理カウンセラー等の支援者の早期気づきと声かけが極めて重要となってきます。
3.躁状態に生じやすい症状と、そのときにできる3つのセルフケア

躁状態では、ご本人が「自分は元気で調子が良い」と感じている一方で、脳や身体の疲労・社会的トラブル・衝動行動などが少しずつ進行しているという困った状態に至っている場合が珍しくありません。
そこで、ここでは臨床現場でもよく見られる3つの症状と、それぞれに効果的なセルフケアを紹介します。
3-1.眠れない夜にあらわれる「過活動」と「休息喪失」
躁状態では、睡眠時間が極端に減っても「平気」「眠らなくても大丈夫」と感じることがあります。
しかし、これは脳は休息をとれていない状態です。
そのためこの過活動が続くと、やがて集中力の低下・イライラ・判断ミスなどが生じ、再び気分が不安定になるリスクが高まります。
よって、睡眠リズムを整えることは、躁状態を落ち着かせるうえで最も重要な要素のひとつです。
● 対処法:生活リズムの再構築
✔朝起きたらすぐにカーテンを開け、太陽の光を浴びる
→体内時計をリセットし、日中の覚醒と夜の眠気を整えます。
✔朝食を摂る
→食事による代謝のスイッチが入り、昼夜のリズムが回復します。
✔午後には軽い運動を取り入れる(散歩など)
→過剰なエネルギーを自然に消費し、夜の入眠を促します。
✔夜22時を目安に布団に入る
→「眠くない」と感じても、就床のリズムを優先します。
✔寝る1時間前にはスマホやPCをオフにし、照明を落とす
→ブルーライト刺激を避け、脳の覚醒を防ぎます。
加えて、「心身を緩める夜の儀式(アロマ、白湯、ストレッチ)」を習慣化することで、「夜は静かに過ごす時間」というリズムを身体に覚えさせることができます。
3-2.人間関係のトラブルにあらわれる「社交的過活動」や「多弁」について
躁状態では、気分の高まりとともに、人との交流欲求が急激に増すことがあります。
普段よりも話し好きになったり、突然飲み会等のイベントを思いつく、ということが典型例です。
しかし、これは相手との温度差に気づけず、人間関係の摩擦や誤解を生むことも少なくありません。
具体的には、夜中に友人へ長文のLINEを送る、職場で思いついた企画を勢いで進めるなどは、躁状態でよく見られる行動です。
こうした行動は一見すると「積極的で明るい性格」と思われがちですが、ご本人も後で「どうしてあんなことを…」と後悔することがあります。
そのため、過活動が生じていると判断される場合は適切な対処が必要となります。
● 対処法:行動を「ひと呼吸」で整える
✔衝動的に発言や誘いをする前に、3秒だけ深呼吸をしてみる
✔「今は少し気分が高ぶっているかもしれない」と自分に声をかける
✔注意点を短いメモに書き、見える場所(デスク・スマホ)に貼る
また、双極性障害に理解のあるご家族や信頼できる人に「いつもより話が早くなっていたら教えて」と伝えておくのも効果的です。
これは他者の指摘があることによって、自分が躁状態に気づくきっかけ作りとしての意味を持ちます。
つまり、「今の自分は少し活動的すぎるかもしれない」と気づけるだけで、行動を整える余地が生まれます。
これは治療的にも非常に重要なステップです。
3-3.衝動買いにみられる「判断力の低下」と「即時快感の追求」
躁状態では、報酬感覚が高まり、「欲しい」と思った瞬間に行動する衝動性が強くなってしまいます。
その結果、買い物や出費、ギャンブル、投資などにおいて「今買わなければ損をする」という思考が優先され、冷静な判断が難しくなってしまいます。
この状態は、脳の「報酬系」が過活動を起こしているため、ご本人としても止めたくても止められない…という悩ましい状態を作ってしまいます。
そのため、衝動行動を「人間的・性格的な問題」と捉えず、症状の一部として扱うことが回復において非常に重要となります。
● 対処法:行動の「間」をつくる
✔買い物は「必要なものリスト」を作ってから出かける
✔買う前に「明日になっても欲しいと思うか?」と自問する
✔クレジットカードや電子決済を一時的に控え、現金払いにする
✔玄関や財布に「必要なものだけ買う」と書いたメモを貼っておく
✔外出前に深呼吸を3回してから出かける
もし仮に衝動的に買い物をしてしまっても、自分を責める必要はありません。
なぜなら、それは症状によってもたらされるものであるからなのです。
そのため、その経験を「次の波を予測するサイン」として次に活かすことが、再発予防につながります。
まとめ:気づくことが「落ち着く」ための第一歩
躁状態にともなう「睡眠の乱れ」「社交的過活動」「衝動行動」は、いずれも「元気すぎる」という形で現れるため、ご本人も周囲も気づきにくいものです。
しかし、こうした行動の裏には、脳や心のバランスの乱れが潜んでいます。
「最近、少し活動的かも」
「夜の落ち着きが減ってきたかも」
…そんな小さな気づきが、症状の悪化を防ぎ、安定した毎日を取り戻すための最初の一歩となります。
躁状態を発見することや気づくことは少し難しい面もあります。
それは症状の改善と考えられる可能性があるからです。
しかし、双極性障害の診断がある場合での「元気さ」には注意をするようになさってください。
そうすることで、躁状態に「操られた」状態から脱することが出来るようになっていくでしょう。
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この記事の執筆者
駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)
心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。
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