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トラウマ、PTSDと愛着スタイルの関係~神戸、芦屋、西宮のカウンセリングより~

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大人の愛着スタイルがトラウマ後に及ぼす影響~トラウマ、PTSDとの関係とは?~

大人の愛着スタイルがトラウマ後に及ぼす影響~トラウマ、PTSDとの関係とは?~

2025/11/01

みなさん、こんにちは。

神戸や芦屋、西宮などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。

 

今日はトラウマやPTSDと愛着スタイル(愛着障害)の関係についてお伝えしたいと思います。

 

幼少期のころ、「安心できる場所や空間、時間がなかった」という経験は、成人後も暗い影を落とすことになります。

 

そしてその経験、つまり「愛着」にまつわる経験はトラウマやPTSDの回復に影響を与えます。

 

つまり、トラウマやPTSDの回復において「愛着」というものが大きな影響を持っているのです。


臨床的に見ても、たとえ同じようなトラウマ的な体験をしても、安心できるつながりや支えがあった方と、孤独の中でその出来事を受け止めざるを得なかった方とでは、心に残る傷の深さや回復のスピードが異なります。

 

この「心の土台」を説明する重要なキーワードが、愛着スタイルです。


愛着スタイルとは、「他者をどのくらい信頼できるか」「自分は支えられても大丈夫と思えるか」という、私たちの人との結びつき方の基本パターンを指します。

 

そして近年の研究でも、この愛着スタイルが「トラウマ後ストレス障害(PTSD)」の発症や回復に深く関係していることが明らかになっています。


そこで、今回のブログは「大人の愛着スタイル」と「トラウマ経験後のPTSD症状」の関係を明らかにしたものを踏まえつつ、トラウマやPTSDからの回復について考えてみたいと思います。

 

1. 研究の概要と主な問い

 

 

この研究では、デンマークの中等教育機関に通う328名(平均29.2歳)を対象に、「トラウマ体験の有無・PTSD症状」「成人愛着スタイル」「対処・支援・社会的サポート」などの要素を調査しました。
 

この研究の主なテーマは以下の通りです

 

✔成人の愛着スタイル(安全型・不安型・回避型など)は、PTSD症状の出現や重さとどう関連するか。

✔トラウマ体験の数・種類と愛着スタイルはどのような関係にあるか。

✔愛着スタイルを通じて、トラウマ後の回復・支援・社会的支えがどう作用しているか。

 

この研究の結果として、「愛着スタイルがPTSD症状の数や感情・身体反応・対処スタイル・社会的支えと有意に関連していた」ことが報告されています。
 

2. 愛着スタイルとトラウマやPTSD症状の関連

 

 

では、早速研究結果を踏まえて、愛着スタイルとトラウマやPTSDの関連についてみていきたいと思います。


2-1 愛着スタイルと症状の関連性

 

このの研究では、成人の愛着スタイルがトラウマ後ストレス障害(PTSD)の症状の数と重さの両方に有意な関連を持つことが確認されました。


つまり…

 

「どれだけ多くの症状が出ているか(症状数)」

「それがどの程度日常生活に影響しているか(重症度)」

 

…の双方に、愛着スタイルが関係していたのです。

 

具体的には…

 

✔安全型愛着スタイルの方

→トラウマ後のPTSD症状が比較的少なく、感情の波を調整する力(情動調整力)が高く、社会的なサポートを積極的に受け入れる傾向がありました。

 

✔不安型愛着スタイルの方

→「見捨てられ不安」や「過剰な自己批判」によってトラウマの影響を強く感じやすく、再体験・過覚醒・回避といった症状がより強く現れる傾向がありました。

 

✔回避型愛着スタイルの方

→「自分で何とかしなければ」「他人に頼るのは危険だ」といった信念を持ちやすく、感情を抑圧したり身体化症状(頭痛・胃痛・不眠など)として表現したりする傾向が見られました。

 

つまり、愛着スタイルの違いが、トラウマを受けた後にどのように感情を処理し、誰かに助けを求められるかを左右しているのです。


安全な愛着を持つ方ほど「支援を受けて立ち直る力」が高く、不安や回避の傾向が強い方ほど「自分の中で苦しみを抱え込みやすい」ことが示されています。

 

2-2 トラウマ体験・対処・社会的支援とのかかわり

 

研究では、愛着スタイルそのものがトラウマやPTSD症状に直接的に影響するだけではないことを示しました。

 

つまり、トラウマ体験後の「感情傾向」「身体反応」「対処スタイル」「社会的支援」を介して症状に間接的な影響を与えることも示されています。

 

具体的に調査された要因は以下の通りです

 

✔ネガティブ感情傾向
→気分が沈みやすい、罪悪感を感じやすいなどの性格的傾向を指します。

これは愛着不安と結びつきやすく、トラウマ後に「自分が悪い」「私は守られる価値がない」と感じる自己否定的な思考を強化します。

 

✔身体反応・身体症状
→これは頭痛や胃痛、倦怠感、不眠などの身体的ストレス反応のことです。

愛着回避の傾向が強い方ほど、感情を言語化せず身体で表す(ソマティゼーション)傾向が見られました。

 

✔情緒的・回避的対処スタイル
→「考えないようにする」「気をそらす」「人と関わらない」といった回避的対処を取りやすく、これが症状の慢性化につながります。

安全型の方は「支援を求める」「話す」「感情を表現する」といった適応的対処を取りやすい傾向があります。

 

✔社会的支援の受容度・利用可能度
→不安型愛着の方は「拒絶されたらどうしよう」という恐れから支援を求めにくく、回避型の方は「支援を受けると弱くなる」と感じて距離を取ります。

 

その結果、支援の恩恵を受けにくくなり、症状の軽減が遅れることがわかっています。

 

これらの要因は互いに影響し合い…

 

「愛着スタイル → 感情処理の仕方 → 支援の受け入れやすさ → PTSD症状」

 

…という経路を形成しています。


この点は、単に「トラウマが重いからPTSDになる」という単純な理解では説明できない、人間の複雑な心理的を示しています。

 

2-3 愛着スタイルの分布と単一次元的構造

 

この研究では、愛着スタイルとPTSD症状の関係を単一の連続的な次元として捉えられる可能性を指摘しています。


つまり、「安全型」「不安型」「回避型」といった分類は便宜的なものであり、むしろ実際には「どれだけ安心感を持てているか(安全性の度合い)」という連続的スペクトラム上の位置づけとして理解する方が現実的だという考えです。

 

この観点から見ると、トラウマ後の反応やPTSD症状の出方は、「愛着スタイルがどのタイプか」よりも「どれだけ安心感を感じられているか」が決定的な要因になります。


つまり、心理的安全性が高いほど柔軟に感情を処理でき、支援を受けやすく、回復も早くなります。

 

逆に、安全性が低いほど防衛的反応(感情抑制・回避・自己批判など)が強くなり、PTSD症状が長引く傾向があるのです。

 

この発見は、カウンセリングや心理療法の現場でも非常に重要な視点を提供します。


つまり、トラウマの「出来事」だけでなく、「支えられる感覚」「つながりの安全性」を回復していくことが、PTSDの改善につながる上で重要なのです。

 

そして、その「支えられている感覚」「つながりの安全性」に愛着は大きな影響を与えます。

 

このように、研究はトラウマやPTSDを単なるストレス反応としてではなく、人とのつながり(愛着)を軸にした心の構造的反応として捉える重要な視点を提供しています。


カウンセリングにおいても、そして周囲の方からの支援においても、愛着の安全性を高める関係性を築くことが、症状軽減の第一歩になるといえるでしょう。

 

3.愛着スタイルを理解して、自分をケアする~トラウマ・PTSDからの回復のための4つのステップ~

 

 

愛着スタイルは、他人との関係だけでなく、自分との関係にも深く影響します。


「人を信じるのが怖い」

「誰にも頼れない」

「いつも不安で仕方ない」


このような感覚は、過去のトラウマや人間関係での傷つきが「心の安全基地」を揺るがせている証拠と言えるでしょう。

 

そこでここでは、カウンセリング現場で培われた支援の考え方を、セルフケアとして応用できる形で紹介します。

 

3-1.安全な関係性を再び築く~信頼できるつながりを取り戻す~

 

愛着スタイルの課題を感じるとき、まず大切なのは「誰かと安心してつながる」ことです。


それは、カウンセラーや友人など、小さな信頼関係を積み重ねることから始まります。

 

● セルフケアのポイント

✔「この人の前なら安心できる」と思える人を一人思い浮かべる。

✔一度にすべてを話そうとせず、「今日はこの気持ちだけ伝えてみよう」と小さな範囲で共有する。

✔「助けてもらう」「受け取る」体験を、自分に少しずつ許していく。

 

人とのつながりは「依存」ではなく、「共に生きる」ことを意味します。

 

そうした安心できる関係を通して、「安全基地」が出来上がり、心の中に「大丈夫な私」が少しずつ育っていくようになっていきます。

 

3-2.対処スタイルを見直す~「頼り方」を練習してみる~

 

愛着スタイルによって、支援の受け取り方にも違いがしょうじます。


そのため、その違いを理解し、自分に合ったセルフケアの方法を見つけることが大切です。

 

● 不安型の傾向がある方へ

 

「拒絶されたらどうしよう」「相手に嫌われたくない」と感じることが多いなら、自分の感情を正直に伝える練習をしてみてください。

 

例えば、「今はちょっと不安なんだ」と小さく言葉にするだけでも、心が整いやすくなります。

 

●  回避型の傾向がある方へ

 

「自分でなんとかしよう」「迷惑をかけたくない」と感じやすい方は、「頼ること=ダメなことではない」と自分に言い聞かせてみてください。


初めは小さなこと、例えば「ちょっと相談してもいい?」と口に出すことから始めてみるとよいでしょう。

 

このアプローチを繰り返すことで、「人とつながっても大丈夫」という感覚が育っていきます。

 

3-3.身体とつながる~「いま、ここ」に心を戻すセルフケア~

 

トラウマやPTSDによって、私たちはしばしば身体の緊張や慢性的な疲労を抱えます。

 

つまり、トラウマやPTSDは「身体に出る」という特徴があるのです。


そのため、「いつも体がこわばっている」「眠れない」「集中できない」といった状態は、トラウマやPTSDが「身体に出てしまっている」状態と言えるでしょう。

 

こうした場合は身体感覚hに働きかけるケアが有効です。

 

● セルフケアの方法

 

✔呼吸に気づく

→1日に3回、深く息を吸ってゆっくり吐き出す時間をつくる。

✔身体の感覚を感じる

→「肩が緊張している」「胸が重い」など、感覚を言葉にしてみる。

✔安全を感じる時間を持つ

→好きな香り、音、光など「安心できる刺激」を意識的に取り入れる。

 

感情と身体は密接に結びついています。


身体をケアすることは、心の回復を支えるもうひとつの入り口であり、トラウマやPTSDのケアにおいては有効です。

 

3-4.自分の過去をやさしく見つめる ~「私はどう感じてきたか」を大切にする~

 

愛着スタイルは、幼少期の人間関係や育ちの中で形成されます。


しかし、それを「自分や他者を否定する材料」にするのではなく、「私はどう感じてきたか」を丁寧に理解することが、心を癒す大切なプロセスとなっていきます。

 

※ただし、ここで想起するのは幼少期から現在までの生育のプロセスであり、トラウマやPTSDの出来事ではない、ということ注意してください。

 

● セルフケアのヒント

 

✔「あのとき、私は寂しかった」「怖かった」と感情に言葉を与える。

✔「助けてもらえなかったのは、私が悪かったからではない」と自分に優しく言い聞かせる。

✔思い出すことが辛い日は、「いま、ここ」の安全を感じられる行動(散歩・お茶・音楽など)を優先する。

 

過去を無理に掘り起こす必要はありません。


むしろ、「いまの自分が安全を感じられる環境」少しずつ増やしていくことが、自然な形で心の再統合を進めることにつながっていきます。

 

まとめ ~「トラウマやPTSDを癒す」とは、自分との関係を優しく修復すること~

 

トラウマやPTSDを癒すとは、やり直せない過去を変えようとするものではありません。

 

残念ながら過去は変えることができません。

 

ただ、「愛着」という側面からのアプローチによって、トラウマやPTSDを癒すことはできます。


その意味は、いまの自分を「安心できる存在」として迎え入れることです。

 

信頼できる人に頼ること、身体をケアすること、感情を感じること…


そのすべてが「心の安全基地」を再び築くプロセスです。

 

そして、その「心の安全基地」がトラウマやPTSDの癒しにおいては決定的な意味を持ちます。

 

焦らず、一歩ずつ、心が「安心してつながる力」を取り戻せるように、今日できる小さなセルフケアから始めていきましょう

 

参考論文

The relationship between adult attachment style and post-traumatic stress symptoms: A meta-analysis

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この記事の執筆者

駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)

心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。

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