急にパニックに襲われたときに試したい呼吸法と安心の整え方
2025/11/03
みなさん、こんにちは。
神戸や芦屋、西宮などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。
今日はパニック症(パニック障害)についてお伝えしたいと思います。
パニック症は、息苦しさや動悸、発汗、吐き気といった身体反応とともに、強い不安や恐怖に襲われる「パニック発作」が突然起こることが特徴です。
そして心理カウンセラーとして心理り症を行っている際に、よく質問されるのが…
「息苦しさにどう対処すればいいのか」
「発作のとき、どう落ち着けばいいのか」
というものです。
そこで、この記事ではパニック症(パニック障害)に伴う息苦しさを和らげる具体的な対処法を、心理学的な根拠とともにシェアしたいと思います。
1.パニック症(パニック障害)と息苦しさの心理学的メカニズム~パニック発作は「危険」ではなく「身体の誤作動」~

パニック障害とは、明確な外的危険がないにもかかわらず、突然強烈な恐怖や身体的な苦しさに襲われる状態を指します。
代表的な症状には…
✔息苦しさ(呼吸困難感)
✔動悸や胸の圧迫感
✔発汗や手足の震え
✔めまい、ふらつき
✔「このまま死ぬのではないか」という強い恐怖感
…などがあります。
こうした症状の中心となるのが、「パニック発作(panic attack)」です。
これは数分以内に急激に始まり、10〜20分ほどでピークを迎えることが多いといわれています。
1-1.脳の「危険察知システム」が過敏に反応している状態
私たちの脳には、危険を察知して身を守るための防衛システムが備わっています。
この働きを担っているのが、扁桃体(へんとうたい)と呼ばれる情動を処理する脳の部位です。
通常であれば、扁桃体は実際に危険が迫ったときに交感神経を刺激し、心拍数を上げ、呼吸を早め、筋肉を緊張させることで「戦うか逃げるか(Fight or Flight)」の準備を整えます。
しかし、パニック症ではこのシステムが「誤作動」や「過剰反応」を起こします。
例えば、満員電車やエレベーターといった閉ざされた空間で軽い不安を感じただけで、脳が「危険だ!」と判断して交感神経をフル稼働させてしまうのです。
そして、この反応が起こると、アドレナリンなどのストレスホルモンが一気に分泌され、心臓がドキドキし、呼吸が浅くなり、手足が震えるといった「身体の緊急モード」が発動してしまいます。
1-2.呼吸の変化と息苦しさの悪循環
パニック発作中、最も多くの方が訴えるのが「息ができない」という感覚です。
しかし実際には、呼吸ができていないわけではなく、呼吸が速く浅くなっている(過呼吸状態ことがほとんどです。
呼吸が浅くなると体内の二酸化炭素が急速に減少し、血液のpHがアルカリ性に傾きます。
これを「呼吸性アルカローシス」と呼び、次のような症状を引き起こします。
✔手足や顔のしびれ
✔めまい
✔息苦しさや喉の圧迫感
✔非現実感(現実から離れたような感覚)
そして私たちは、こうしたこの身体の変化を「何か重大な異変が起きている」という解釈してしまいがちになります。
そうなると…
「やはり自分は危ない」「死ぬかもしれない」という恐怖が強まる
↓ ↓ ↓
さらに呼吸が乱れる
↓ ↓ ↓
さらに恐怖が強まる
…という悪循環(不安 → 過呼吸 → 身体症状 → 恐怖の強化)に陥ります。
1-3.「このままでは最悪の結果に至るのでは?」という恐怖の正体
パニック発作の最中に感じる「死の恐怖」や「気が狂うかもしれない」という思いは、実際の生命の危機ではなく、自律神経の暴走に対する脳の誤解です。
脳は身体の変化をモニタリングしており、異常な心拍や息苦しさを感知すると、「これは危険な状態だ」と解釈し、恐怖反応をさらに強化します。
つまり、ここに皮肉な結果あるのですが、脳が勝手にパニック状態を作りながら、一方でその状態に対して誤った解釈を下すのです。
しかし、この恐怖は「命を守るための防衛反応」が過剰に働いているだけで、実際には危険ではないというのが正しい理解です。
1-4.「予期不安」という二次的な不安反応
発作が一度でも起こると、多くの方が次のような不安を抱くようになります。
✔「また発作が起きるのではないか」
✔「電車や会議中に発作が起きたらどうしよう」
✔「人に迷惑をかけたら恥ずかしい」
このように「発作が起きるかもしれない」という不安自体が、新たなストレスとなり、再び発作を誘発してしまうことがあります。
これを予期不安(anticipatory anxiety)と呼び、この予期不安がパニック発作に対する脆弱性を生んでしまいます。
さらに予期不安は発作の頻度や外出への恐怖を強めるため、次第に「外出を避ける」「一人では出かけられない」といった回避行動へと発展していくこともあります。
そうなると、パニック症に日常生活が支配されてしまう、という状態に至ってしまいます。
2.息苦しさを感じたときの5つのセルフケア~パニック発作を悪化させないための心理的対処~

パニック発作が起きたとき、最もつらいと感じるのが「息苦しさ」や「呼吸ができない感覚」です。
多くの方が「このまま呼吸が止まるのでは」「死んでしまうのでは」と強い不安に襲われますが、実際には呼吸が完全に止まることはありません。
大切なのは、身体が起こしている反応を理解し、穏やかに鎮める方法を身につけることです。
そこで、ここでは心理カウンセリングや臨床現場でも用いられる5つのセルフケアを紹介します。
2-1.「吸う」よりも「吐く」ことを意識する
息苦しさを感じた瞬間、人は本能的に「もっと空気を吸わなきゃ」と思い、吸うことに集中してしまいます。
しかし、過剰に吸い込むと過呼吸(過換気症候群)の状態になり、体内の二酸化炭素が急激に減少してしまいます。
その結果、血中のpHバランスが崩れ、「めまい」「手足のしびれ」「さらに息苦しく感じる」などの症状が現れ、恐怖感が一層強くなります。
この悪循環を止めるには、「吸う」よりも「吐く」ことを優先することが重要です。
呼吸を整える際の基本は、「ゆっくり」「規則的に」「吐くことに意識を向ける」ことが大切となります。
● 呼吸法のステップ(腹式呼吸の練習)
① 背中を軽く丸め、両手をお腹の上に置きます。
② 「ふーっ」とゆっくり口から息を吐き、お腹がへこむのを感じます。
③ 鼻から4秒かけて息を吸い、お腹が自然にふくらむのを感じましょう。
④ 口から8秒かけてゆっくり息を吐きます。
この「4秒吸って8秒吐く」リズムを続けることで、交感神経(緊張を高める神経)の働きが弱まり、副交感神経(リラックスを促す神経)が優位になります。
その結果、心拍数や血圧も安定し、身体が落ち着きを取り戻していきます。
2-2.意識を別の感覚に向ける
パニック発作中は、「息ができない」「苦しい」という感覚に意識が集中します。
人はどうしても身体感覚で異変が生じた際には、そこに意識を集中させるので、これは当然の反応です。
しかし、この「苦しさに対する意識の集中」こそが症状を強める最大の要因なんですね。
そこで、意識の方向を変えることが有効です。
心理療法ではこれを「注意訓練法(注意の分散)」と呼びます。
これを用いて五感を使って別の刺激に意識を向けることで、身体の緊張が緩み、不安反応のループを中断できます。
● 具体的な方法
✔嗅覚
→ミントやレモンなどの香りを嗅ぐ。清涼感や安心感が呼吸を整える助けになります。
✔味覚
→キャンディを口に含み、舌の上でゆっくり味わう。味覚の刺激に集中します。
✔触覚
→手のひらをこすり合わせたり、布の感触を感じたりして、「いまここ」に戻る意識を持ちましょう。
✔思考
→「1分間だけ」別のことに集中して取り組んだり、簡単な計算を頭の中で行ったりします。
このような「息苦しさに意識を向けない」ことが、結果的に呼吸を楽にする一歩になってくれます。
2-3.前かがみの姿勢で腹式呼吸を行う
パニック発作時は、胸の筋肉や横隔膜が緊張し、呼吸が浅くなる傾向があります。
このとき、前かがみの姿勢を取ることで、横隔膜の動きが助けられ、腹式呼吸がしやすくなります。
そして、このような腹式呼吸は、パニック発作の症状を緩和してくれる効果が期待できます。
● 姿勢のとり方
① 椅子に腰かけ、両肘を膝に乗せて軽く前かがみになります。
② お腹に手を当て、呼吸の動きを感じながら、「吸う」「吐く」のリズムを整えます。
この方法は、「お腹で呼吸している」ことを意識するのがポイントです。
腹式呼吸によって副交感神経が優位になると、心拍数の低下・筋肉の弛緩・安心感の回復が得られます。
これは、心理療法でも「自律神経の安定化スキル」としてよく用いられる方法です。
2-4.パニック発作に対する「開き直り」
パニック障害における「開き直り」は、発作を「どうにか抑えなければ」と過剰に抵抗するのではなく…
「発作は一時的なもので、命に関わらない」
…と受け止め、乗り越えられるという考え方です。
これは、発作への恐怖による悪循環を断ち切り、回避行動を減らしていくことで、回復のきっかけになります。
● 「開き直り」の効果
✔不安の悪循環を断ち切る
→発作を恐れるあまり不安が強まる悪循環を、「発作が起きても大丈夫」と受け入れることで断ち切りることができる
✔自己効力感が高まる
→「発作を乗り越えられる」という感覚が高まり、行動範囲を広げる自信につながる。
✔予期不安の軽減
→発作を「避けるべき対象」から「やり過ごせる対象」に変えることで、予期不安が和らげることができる。
2-5.医師の指導の下で頓服薬を活用する
パニック障害の治療では、医師の指示に従って頓服薬(発作時に使用する抗不安薬など)を利用することがあります。
薬物療法に抵抗をかじる方も少なくありませんが、しかし薬物療法は適切に行えばサポート資源となります。
頓服薬を適切に使用することのメリットとしては…
✔「発作が起きても大丈夫」という安心感が生まれる
✔不安が軽減され、発作の頻度が減少する
✔カウンセリングや心理療法への集中がしやすくなる
というものがあります。
また薬物療法と心理療法を組み合わせることは、パニック障害の再発防止に非常に効果的です。
まとめ~息苦しさの奥にある「心理的な安全を求める声」を受け取る~
息苦しさや動悸は、「脳が安心を求めているサイン」です。
そのため、焦らず、「いまここで落ち着くためにできること」を一つずつ実践してみてください。
セルフケアを適時行いつつ、必要なときは、医師や心理カウンセラーと一緒に「安心を取り戻す方法」を見つけていきましょう。
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こころのケア心理カウンセリングRoom
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この記事の執筆者
駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)
心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。
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