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双極性障害に対する認知行動療法の効果~神戸、芦屋、西宮のカウンセリングより~

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双極性障害の急速交代型に対する認知行動療法の効果

双極性障害の急速交代型に対する認知行動療法の効果

2025/11/04

みなさん、こんにちは。

神戸や芦屋、西宮などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。

 

双極症(双極性障害)の症状の中でも、そのご病気を抱えている方や周囲の方が対応に困るのが「休息交代型」、いわゆる「ラビットサイクリング」です(ちなみに、中にはもっと早い周期で交代する『超短期サイクル』も存在します)。

 

一般的な双極性障害では、うつ期と躁(または軽躁)期が数ヶ月〜年単位で入れ替わりますが、ラピッドサイクリングでは、1年に4回以上のエピソードが起こるのが特徴です。


当然、鬱と躁との切り替わりの期間が短いので、気分の変化が非常に速く、生活や仕事、人間関係への影響はかなり大きなものとなります。

 

このタイプは薬への反応が不安定で、薬物療法が効きにくいケースも珍しくなく、専門医に要る細かい治療調整が必要になってきます。

 

この状態で有効なのが認知行動療法の導入です。


そのため、薬物療法と並行して心理療法を取り入れることが、症状の安定や再発防止に役立つと考えられています。

 

そこで今回は双極症(双極性障害)、特にラピットサイクリングに対する認知行動療法の有効性等についてお伝えしたいと思います。

 

1.そもそも、ラピットサイクリング(急速交代型)とは?

 

 

ラピッドサイクリングとは、双極性障害の一つのサブタイプ(下位分類)で、「1年間に4回以上、躁・軽躁・うつのエピソードが繰り返される状態」を指します。


これはDSM-5(精神疾患の診断マニュアル)でも定義されている特徴的な経過パターンです。

 

1-1. ラピッドサイクリングの基本的な定義

 

一般的な双極性障害では、躁(または軽躁)と抑うつのエピソードが数か月から年単位で入れ替わります。


しかしラピッドサイクリングでは、その周期が極めて短くなり、気分の波が頻繁に切り替わるのが特徴です。

 

1-2.診断上の基準(DSM-5より)

 

では、ラピットサイクリングがどのようなものか、DMS-5(精神疾患の診断マニュアル)から見ていきましょう

 

※これはあくまでもDMS-5でのラピットサイクリングの位置づけの紹介であり、自己判断は避けてください。

 

✔1年間に少なくとも4回以上の気分エピソード(躁・軽躁・うつ)が発生

✔各エピソードの間には、2か月以上の寛解があるか、もしくは反対のエピソードに直接切り替わる(例:うつ→躁)

 

1-2. 症状の特徴


● うつエピソード

✔強い無気力・疲労感・自己否定感

✔睡眠障害や食欲低下

✔「消えてしまいたい」といった最悪の選択を考える

 

● 躁または軽躁エピソード

✔気分が高揚し、活動的・多弁になる

✔睡眠が少なくても疲れを感じない

✔判断力が低下し、衝動的な行動(浪費・対人トラブルなど)を起こすことも

 

ラピッドサイクリングでは、これらの状態が短期間で入れ替わるため、本人も周囲も変化に振り回されやすいため、「安定した生活リズムを保つこと」が大きな課題となります。

 

1-3. なぜラピッドサイクリングが起こるのか?

 

明確な原因はまだ解明されていませんが、研究では以下の要因が関与していると考えられています。

 

✔生物学的要因

→脳内のセロトニンやドーパミンのバランス異常

✔神経伝達物質や代謝の影響

→甲状腺機能の低下が関与するケースも検討する必要があります

✔心理的・環境的要因

→慢性的なストレス、睡眠リズムの乱れ、人間関係の不安定さ

 

2.研究の概要 ~ラピッドサイクリングに認知行動療法を導入すると?

 

 

では、ラピットサイクリングに対して認知行動療法の導入効果についての研究結果を簡潔にお伝えいたします。

 

2-1.研究の目的

 

薬物治療で十分な安定が得られにくいラピッドサイクリング型の双極性障害に、認知行動療法(CBT)を補助的に加えた場合、気分の変動がどう変化するかを検証すること。

 

2-2.モジュール構成

 

✔症状モニタリングと自己認識の強化

✔薬物治療へのアドヒアランス(服薬遵守)支援

✔気分エピソードの早期警告サインへの対応

✔認知の修正・ストレス対処スキルの強化

 

2-3.結果

 

10名中6名が治療を完了し、うつ症状が有意に減少したという結果となり、加えて改善は2ヶ月後も維持されていました。


また躁症状への直接的影響は小さかったものの、気分変動の「幅」が減り、感情の安定性が高まる傾向が確認されました。

 

3.認知行動療法がもたらした3つの変化

 

 

では、ラピットサイクリングにに対して認知行動療法はどのように役立ったのでしょうか?

 

具体的には以下の3つが研究によって示されました。


3-1 「気分を観察できる自分」が育つ

 

認知行動療法の中心的な考え方は、「感情に巻き込まれず、客観的に自分を見つめる」スキルを育てることです。


たとえば、気分が急に落ち込んだとき、多くの人は「またダメになった」「自分は人よりも劣っている」というように自分を責めがちになります。


しかし、認知行動療法ではそれを「出来事・考え・感情・行動」という4つの要素に分け、「いま自分の中で何が起きているのか?」を客観的に観察するというアプローチをとります。

 

このような「感情をそのまま事実として受け止めず、距離を取って眺める」スキルを「メタ認知」と呼びます。

 

この距離が生まれると、気分の波に完全に飲み込まれることが減り、「どう対処するか」を冷静かつ柔軟に選べるようになります。

 

例えば…

 

✔「今の落ち込みは『夜更かし+疲労』の影響かもしれない」

「焦っている気持ちが『完璧にやらなきゃ』という考えを強めている」


…といった洞察と発見が生まれます。

 

これは「自分を分析する」という意味合いもありますが、それ以上に重要なのが、「自分に優しく寄り添う観察者」になることです。


この姿勢が、セルフケアや医師・カウンセラーへの早期相談につながる大切なステップになります。

 

3-2 早期サインへの気づきと対処

 

ラピッドサイクリング型の双極性障害では、気分の切り替わりが非常に速いため…

 

「気づいたらもうう抑うつが始まっていた」

「また眠れなくなっていた」

 

…といったことが多々あります。

 

認知行動療法では、この「気づきの遅れ」を防ぐために、症状のきっかけに注目します。


具体的には…

 

✔睡眠時間や体調の変化

✔食欲・集中力の変動

✔思考のスピード(速くなる・遅くなる)

✔言葉づかいやテンションの変化


…などを日々モニタリングし、波の始まりを「数字」や「言葉」で可視化します。

 

この過程で重要なのは、「評価」ではなく「観察」です。


例えば、「また寝不足だ、ダメだ」ではなく、「寝不足が3日続いている、休息を取る時期かも」と「あくまでも観察」として記録するだけが大切です。


この「見守る(観察)ような記録」が、症状悪化を防ぎ、回復を早める鍵となります。

 

さらに、心理カウンセラーや主治医と共有することで、セルフモニタリングが協働・共有のツールになります。

 

これによって、主治医や心理カウンセラーは、きめ細かい対応ができるようになります。


そして自分だけで抱えず、データとして支援者と一緒に検討できるため、再発予防の質も高まります。

 

3-3 感情の波を受け止めるスキル

 

認知行動療法を続けるなかで、多くの方が気づくのは、「気分の波そのものが『悪や敵』ではなかった」ということです。

 

なぜなら、気分の波は心が「今のペースは少し速すぎる」「休んでほしい」と教えてくれているということが理解できるからです。


つまり、症状は「身体や感情が生きようとしている反応」でもあるのです。

 

認知行動療法では、この「気分の波=悪や敵」という捉え方を手放し…

 

「この波は心が何が必要だと言っているのだろう」

「私に何を伝えようとしているのだろう」


…というように心の声を受け止める姿勢を育てます。

 

そうすることで…

 

✔感情を抑え込まずに受け止められる

✔落ち込みの最中でも「自分を見失わない」感覚が保てる

✔一度崩れても、再び立ち直るスピードが速くなる


…といった変化が生まれます。

 

ラピッドサイクリングでは、確かに完全な安定をすぐに求めることは難しいかもしれません。


しかし、波が来たときに「もう終わりだ」と思わず、「これは一時的な揺らぎ」と受け止められるようになることが大切です。


まとめ ~「波をなくす」ではなく「波に乗る」治療やケアへ~

 

ラピッドサイクリング型の双極性障害は、治療が難しく再発率も高いと言われます。


しかし、今回の研究が示すように、認知行動療法を取り入れることで、感情の波に振り回されず、安定した日常を取り戻す可能性が見えてきました。

 

もしも…


「気分のアップダウンが激しくてつらい」
「薬だけでは不安定さが残る」


…と感じているなら、認知行動療法的な視点は生活をより良くすることに役立つでしょう。

 

最初は小さな記録からでも問題ありません。


「波をなくす」よりも、「波の意味を理解し、うまく乗りこなす」こと、それが、心を守る大きな一歩になるでしょう。

 

参考論文

Cognitive Behavioral Therapy for Rapid-Cycling Bipolar Disorder: A Pilot Study

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この記事の執筆者

駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)

心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。

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