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うつ病と過食~神戸、芦屋、西宮のカウンセリングより~

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うつ状態と過食~なぜ起きる?どう向き合う?~

うつ状態と過食~なぜ起きる?どう向き合う?~

2025/11/09

みなさん、こんにちは。

神戸や芦屋、西宮などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。

 

さて、ストレスや気分の落ち込みから「つい食べ過ぎてしまった…」という経験は、決して珍しくありません。

 

特に、気分の低下・無気力・だるさなどが続いていると…

 

「食べることで少しラクになりたい」

「満たされたい」

 

…と感じてしまうこともあります。

 

実際に心理カウンセラーとして私は多くの方が過食で悩んでいる方を大勢接していました。

 

そして、うつ病と過食は非常に身近なものであるということも痛感しています。


そこでこのブログでは、うつ状態とうつに関連する「過食」のつながりを整理し、まずは自分自身に優しく寄り添いながら、少しずつ食と心の関係を見直せるような道筋をシェアしたいと思います。

 

1.「単なる食べ過ぎ」と「過食(制御不能な食行動)」の違いとは?

 

 

まずは最初に、「食べ過ぎ」と「過食」の違いから始めていきたいと思います。

 

「食べ過ぎ」と「過食」は一見似ていますが、その背景・感情・行動の意味づけには大きな違いがあります。


どちらも「通常より多く食べる」という点では共通しています。

 

しかし心理カウンセリングの現場では次の3つの観点(①動機、②感情、③結果)で区別して整理しケアを行っています。

 

1-1.「単なる食べ過ぎ」とは ~一時的な生理的・社会的行動~

 

まずは生理的・社会的な行動という側面から食べすぎと過食の違い見ていきましょう。


● 食べ過ぎの典型的な場面

 

「ビュッフェでおいしい料理を見てつい食べすぎた」「旅行先で食事が豪華でつい箸が進んだ」など、特定の状況や外的きっかけによって一時的に食べすぎてしまうのが「食べ過ぎ」です。

 

● 背景にある心理・生理

 

食欲は本来、生理的なエネルギー要求と「快の情動」が組み合わさった自然な反応です。


食べ過ぎる場面では、空腹や楽しさ、味覚的満足などによって「ドーパミン系(快楽系ホルモン)」が活性化し、「美味しかった」「満足した」というポジティブな感情が残ります。


つまり、「食べすぎたけど幸せ」「ちょっとお腹が苦しいけど満足」と感じることが多く、「行動の自己統制感(自分でコントロールできている感覚)」も保たれています。

 

● 「食べ過ぎ」の特徴

 

✔動機

→おいしさ・楽しさ・イベント性

✔感情

→満足感・幸福感・充実感

✔結果

→食べ過ぎが一時的なため後悔は少なく、次の日に調整できる

✔身体反応

→胃の不快感や満腹感が自然なストップサインとして働く

 

1-2.「過食(制御不能な食行動)」とは ~感情調整のための「衝動的行動」~

 

では、過食はどうなのでしょう?


● 過食の典型的な状況

 

「気づいたら食べていた」

「止めたいのに止められなかった」

「誰にも見られたくない」

 

…といった、衝動的で制御不能な食行動を指します。

 

短時間で大量に食べてしまうケースが多く、食べる最中には「無意識に近い集中状態」になることもあります。

 

● 背景にある心理

 

過食は、空腹ではなく「感情の飢え」から生じることが大半だと言われています。


例えば、孤独・不安・怒り・悲しみ・無力感などを感じたとき、食べることで一時的に感情を「麻痺させる」ようにして自分を守ろうとします。


心理学的にはこれは「感情調整」のひとつの形であると考えます。

 

つまり、過食とは脳の「報酬系(特にドーパミン経路)」が一時的に快感をもたらすことで、ストレスを和らげようとする生理的反応なのです。

 

● 感情の推移

 

過食の直後には「少し落ち着いた」「安心した」と感じるものの、時間が経つと…

 

「どうしてあんなに食べたんだろう」

「自分はダメだ」

 

…といった罪悪感・自己嫌悪・恥の感情が強くなります。


満腹になっても満足感が得られないのは、「心の空腹」が満たされていないためなんですね。

 

● 特徴まとめ

 

✔動機

→ネガティブ感情(不安・孤独・退屈など)を和らげたい

✔感情

→摂食後の安心の後に、罪悪感・自己嫌悪が強く残る

✔結果

→コントロール不能・繰り返す・自己否定感が増す

✔身体反応

→満腹でも止められず、嘔吐感・倦怠感を伴うこともある

 

1-3.カウンセリングで重要になる「線引き」のポイント

 

「過食かどうか」を判断するときに、心理カウンセラーとして注目するのは「行動のコントロール感」と「感情の残り方」です。

 

✔食べた後に「またやってしまった」「もう二度としたくない」と強い自己否定が続く

✔繰り返し同じ状況で食べ過ぎが起こる

✔食べることが主なストレス解消法になっている


このような場合は、過食(制御不能な食行動)の傾向だと私たち心理カウンセラーは考えます。

 

過食とは、いわば「心の痛みを和らげるための行動」でもあります。


そのため食べることを敵視するべきではありません。

 

それよりも「自分がどんな感情を食で癒そうとしているのか?」に気づくことが、改善の第一歩となります。

 

2. うつ状態と過食が結び付きやすい心理・生理メカニズム

 

 

では、うつ病と結びついている過食について、もう少し掘り下げてみましょう。

 

うつ状態と過食が同時に起こりやすいのは、単なる「食欲の問題」ではないことが大半でs。


その背後には、心理的なストレス反応・神経系の働きの乱れ・報酬系の機能変化といった複数のメカニズムが関わっています。


以下では、その流れを段階的に整理します。

 

① うつ状態がもたらす「心理的・生理的ストレス反応」

 

うつ状態では、「無力感」「興味の喪失」「意欲低下」といった心理症状に加え、身体面でも「倦怠感」「過眠または不眠」「食欲の変化」などが現れます。


これは、ストレス反応系(視床下部‐下垂体‐副腎系:HPA軸)が過剰に働くことで、コルチゾールなどのストレスホルモンが慢性的に分泌されるためです。

 

この状態が続くと、体内の恒常性(ホメオスタシス)が崩れ、自律神経のバランス、つまり交感神経と副交感神経の切り替えがうまくいかなくなります。

 

少し交感神経・副交感神経を簡単に整理しますと…

 

✔交感神経

→緊張・不安・焦りなどで活性化し、「戦う・逃げる」モードを維持

✔副交感神経

→休息・安心・消化を促すモード

 

うつ状態の多くは気分の落ち込みや活動の不活発が生じますが、しかし以外にもうつ病は、この交感神経優位が慢性化し、身体は常に「緊張モード」を強いるのです。


この結果、心身は「何とかリラックスしたい」「緊張をゆるめたい」と本能的に求めるのです。

 

② 「食べること」による自律神経の一時的な回復

 

副交感神経を活性化させる行動の、そして手っ取り早い対処のひとつが、「食べる」という行為です。


食事をすると、唾液や胃酸の分泌が促進され、消化活動が始まります。


このとき自律神経のスイッチが交感神経から副交感神経へと切り替わり、身体は「休息モード」に入りやすくなります。

 

そのため、ストレスが強くても「食べた後だけ少し安心する」「心が落ち着く」と感じるのは自然な反応です。


実際、研究でも「摂食行動は一時的なストレス緩和作用を持つ」と報告されています(Dallman, 2010, Psychoneuroendocrinology)。

 

しかしこの作用はあくまで“一時的”なものであり、心の根本的な緊張やストレス源が解消されるわけではありません。


その結果、「また食べて安心したい」という行動が繰り返されやすくなってしまうのです。

 

③ 報酬系の変化 ~「快感の鈍化」と「過食による補償」~

 

うつ状態では、脳内の「報酬系(ドーパミン神経系)」の働きが低下してしまいます。


つまり、食事をしても「楽しい」「おいしい」「満足」といった快感を得にくくなる状態です。


この「快感の鈍化(アネドニア)」が続くと、人はより強い刺激を求めて行動する傾向が生まれます。

 

過食はその代表的な行動のひとつであり、食べ物~特に甘味や脂質の多い食品~が脳内報酬系を一時的に刺激し、ドーパミンの放出を促すことで快感を補う役割を果たします。

 

しかしこの快感は短命であり、直後に「虚しさ」「罪悪感」が押し寄せ、再び快感を求めて食べるという強化ループが形成されます。


この構造は行動心理学的に「負の強化」と呼ばれます。

 

④ 感情調整のための「食行動化」

 

心理学的には、過食は「感情のコントロール手段」としての役割を持っていると考えられています。


特に、以下のような感情がトリガーとなるケースが多く報告されています。

 

✔怒りや不安など、表現しにくい強い情動

✔孤独感や見捨てられ不安

✔自己否定感や無力感

✔不眠、質の悪い睡眠による焦燥感

 

これらの感情を直接表出できないとき、うつ病の方は「食べる」という行為を通じて間接的に発散しようとします。


この過食によって一時的に気分が落ち着いたように感じても、根底の感情は解消されていないため、再び不快な感情が生じ、また食べてしまうという「情動的過食」の悪循環に入ります。

 

この現象は、うつ傾向の強い人ほど感情的摂食を行いやすいことを示す研究でも確認されています(Konttinen et al., 2019, International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity)。

 

⑤ 「過食 → 罪悪感 → 自己否定」という悪循環

 

過食を行った後、多くの人が感じるのが「またやってしまった」「自分はコントロールができない」という強い自己否定感です。


これは、食べる行為が「感情を抑える」ために使われたことに本人が無意識に気づき「“制御できなかった自分」への怒りや無力感によるものです。

 

心理的には、この罪悪感がさらにストレスを高め、再び「食べて落ち着こう」とする負のループを強化します。


その結果、「過食 → 自己嫌悪 → うつ症状の悪化 → 再び過食」という負のスパイラルが固定化し、食行動と気分変調の両方を慢性化させるリスクが高まってしまいます。

 

3.過食傾向があるときにできる3つのセルフケア

 

 

今まで見てきましたように、うつ状態やストレスが続くと、「食べることで気持ちを落ち着かせよう」とする心の動きが自然に起こります。


しかし、その後に「また食べすぎた」「止められなかった」と自己嫌悪が生じることになります。

 

そのため、うつ病に伴う過食についてはセルフケアが欠かせません。

 

ここでは、専門的な治療と並行して、自分のペースで実践できる3つのセルフケアを紹介します。


ここで重要なのは、どれも「自分を責めずに整える」ことを目的にしているということです。

 

3-1.「自分を責めない」セルフコンパッションを育てる

 

過食を繰り返すと、多くの方が無力感や罪悪感、後悔といったネガティブな感情を感じがちになります。

 

しかしうつ病に伴う過食(あるいは摂食障害そのもの)でも、心と身体がストレスから守ろうとする自然な反応なんですね。

 

そのため、まずは「食べてしまった自分を責める」代わりに、「それだけ今、疲れていたんだな」「よく頑張ってきたね」と声をかけてみましょう。

 

そして、少しずつ「できそうなルール」を作ることが、セルフケアの第一歩になります。

 

3-2.野菜や汁物など、体にやさしい一品を最初に選ぶ

 

過食を避けることが難しくても、食べる内容を工夫することはできます。

 

例えば…

 

✔おやつは「お皿に盛った分だけ」と決めて楽しむ

✔甘いものを食べたいときは、ドライフルーツやヨーグルトに置きかえる

 

…という方法があり得ますよね。

 

大切なのは「過食をしない」という完璧を目指すことではないということです(もちろん、心理臨床では最終的に過食が生じないようににケアをおこなうことにはなります)。


「今日はこれができた」という小さな成功を積み重ねることが、自己肯定感の回復につながります。

 

3-3.ひとりで抱え込まない環境をつくる

 

過食は「意志で抑える」よりも、環境を整えることで軽減しやすいという性質を持っています。


そのため、家の中や日常の習慣を少し工夫するだけでも、心の負担を減らせ、過食のリスクを軽減できます。

 

たとえば次のような工夫をしてみてください。

 

✔食べ物を大量に買い置きしないようにする

✔テーブルやデスクの上に食べ物を置かない

✔食べる前に一呼吸置く(お茶をいれる、深呼吸するなど)

 

また、信頼できる方に「過食がつらいときがある」と伝えておくのも大切なステップです。


ここで大切なのは「過食をしないように見張ってもらう」のではなく、「味方でいてもらう」という姿勢で環境を整えることです。

 

もし身近に相談できる人がいない場合は、主治医や心理カウンセラーも支えになります。


サポートを求めることも、立派なセルフケアのひとつです。

 

3-4.気持ちを書き出して「食べたくなる瞬間」を見つめる

 

「食べたい」と感じた瞬間に、少しだけ、まずは10分だけ立ち止まってみましょう。


そして食べる前に、ノートやスマホのメモに次のようなことを書いてみます。

 

✔今、お腹が空いている?

✔何か嫌なことや疲れる出来事があった?

✔どんな感情を落ち着かせたくて食べたいと思ってる?

 

書いていくうちに、「怒りを感じると食べたくなる」「夜になると孤独で食べる」など、自分の中の「食べたくなるパターン」が少しずつ見えてきます。

 

この「気づき」こそがセルフケアの核心です。


気づくことで、感情と行動との間に距離が少し生まれ、「今回は深呼吸してからにしよう」といった新しい選択ができるようになります。

 

まとめ

 

過食傾向があるときのセルフケアで大切なのは、「やめること」ではなく「自分をいたわること」から始めることです。

 

✔自分を責めず、できたことを見つける

✔環境を整えて、ひとりで抱え込まない

✔気持ちを可視化して、行動の背景に気づく

 

これらの積み重ねが、少しずつ心を落ち着かせ、「食べることでバランスを取ろうとする自分」を理解し、やさしく受け入れる力へと変わっていきます。

 

まずは、「過食をせざるを得ない自分」を優しく抱きしめることから始めてくださいね。

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この記事の執筆者

駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)

心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。

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