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自閉症スペクトラム・アスペルガーの理解~神戸、芦屋、西宮のカウンセリングより~

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自閉スペクトラム症(アスペルガー)の「スペクトラム」の理解

自閉スペクトラム症(アスペルガー)の「スペクトラム」の理解

2025/11/10

みなさん、こんにちは。

神戸や芦屋、西宮などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。

 

私は日々、心理臨床を通して自閉症スペクトラム症(アスペルガー障害)の方へ心理療法を行っていますが、同じ自閉スペクトラム症であってもそれぞれ症状の現われ方は人によって違うんですね。

 

そのため…

 

「私は自閉スペクトラム症と言われたけれど、ネットの情報とはずいぶん違っている」

「私自身、自閉スペクトラム症と言われたけど、『一般的な』なイメージとずいぶん違っている」

 

…というように感じている方も少なくありません。

 

「自閉症スペクトラム症」というラベルは一つでも、そこには「スペクトラム(連続体)」という言葉が付くのには理由があります。

 

その「スペクトラム」というのは症状の現われ方が同じではないということを表しています。

 

そこで、このブログでは自閉症スペクトラム症の「スペクトラム」に焦点を当ててシャアしたいと思います。

 

1. 自閉症スペクトラム症の「スペクトラム」とは?

 


「自閉症スペクトラム症」という名称の中に含まれる「スペクトラム(連続体)」という言葉には、非常に重要な意味を持っています。


今の自閉症スペクトラム症に対して、以前は…

 

「自閉症(Autistic Disorder)」

「アスペルガー症候群(Asperger’s Disorder)」

「広汎性発達障害(PDD-NOS:Pervasive Developmental Disorder Not Otherwise Specified)」

 

…といった複数の診断名が用いられていました。

 

しかし、これらの診断はしばしば明確に線を引くことが難しく、「どのカテゴリーに入るのか」「どの特徴を重視すべきか」という混乱を生むことが多々ありました。


そのため、DSM-5(アメリカ精神医学会の診断基準第5版)では、これらを統合し「自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder:ASD」という統合的な診断名が採用されました。

 

この変化の背景には、「自閉症的な特徴は『あるか・ないか』で分けられるものではなく、連続的に広がるものである」という科学的理解の進展があります。

 

1-1.スペクトラムという言葉が示すもの


「スペクトラム」という言葉は、もともと光の連続的な波長(赤から紫までのグラデーション)を意味します。

 

これを自閉症スペクトラム症に当てはめると、「一人ひとりの特性がグラデーションのように連なっている」ことを意味します。


つまり、自閉症スペクトラム症とは画一的な症状ではなく…

 

特性の組み合わせや程度の違いによって構成される多様な現れ(manifestation)

 

…だということです。


例えば、次のような違いが見られます。


✔社会的コミュニケーションの困難さが強い人もいれば、限定された場面ではうまく交流できる人もいます。


✔感覚の過敏さが顕著で、音や光に強い不快を感じる人もいれば、逆に刺激に鈍感な人もいます。


✔特定の興味に強く集中し、驚くほど深い知識を持つ人もいれば、日常生活のルーティンに強いこだわりを持つ人もいます。


このように、自閉症スペクトラム症は「この人は自閉症、あの人はそうではない」と二分できるものではなく、「ひとりひとりが異なる場所に位置するスペクトラム(連続体)」として理解することが重要なのです。

 

1-2.研究が示す「多様性」と「個別性」


自閉症スペクトラム症の現われ方の「多様性」は、近年の神経科学・遺伝学・心理学の研究でも繰り返し指摘されています。


たとえば、Ousley & Cermak(2014)による総説論文では、自閉症スペクトラム症を単一の疾患ではなく…

 

「複数の病因・神経発達経路を背景にもつ『症候群』である」

 

…として捉えるべきだと論じています。

 

この研究では、自閉症スペクトラム症の臨床像が「社会的コミュニケーションの障害」や「反復的行動」という表面的な共通点を持つものの、その根底にある脳機能・遺伝的基盤・発達経路には大きな違いがあることを明らかにしました。


また、神経発達研究では、以下のような要素が自閉症スペクトラム症の個人差を生む要因として注目されています。


✔遺伝的多様性

→数百種類以上の遺伝子変異や多型が自閉症スペクトラム症リスクに関与している。
✔脳機能的多様性

→社会的認知に関わる脳ネットワーク(前頭前野・側頭葉など)の連結性に個人差がある。

✔発達経路の多様性

→乳幼児期からの社会的関心の発達や言語獲得の過程にばらつきが見られる。

✔環境・養育要因

→家族の理解や支援体制、教育環境などが特性の表れ方に影響する。


このような複雑な相互作用の結果、自閉症スペクトラム症という診断は「共通の名前」であっても、実際の姿は人によってまったく異なることが明確になりました。

 

2. 自閉症スペクトラム症の「サブタイプ化(亜形化)」とは何か

 

 

「サブタイプ(亜型化)による分類」とは、自閉症スペクトラム症(ASD)の内部に存在する「類似点と差異」をより明確にするために、いくつかの下位グループ(サブタイプ)として整理・理解しようとする試みを指すものなんですね。


自閉症スペクトラム症という診断の中には、非常に幅広い症状や特性が含まれています。

 

ある方は言葉の発達が遅く社会的なやり取りに強い困難を抱える一方、別の方は言語表出が豊かで知的能力も平均以上でありながら、相手の気持ちを読むことや集団内での調整に苦手さを示しているという状態が典型例でしょう。


このような多様性を1つの診断カテゴリーで説明することには限界があるため、研究者たちは「自閉症スペクトラム症の中にどんなサブグループ(亜型)が存在するのか」を明らかにしようとしました。

 

2-1.臨床・研究で想定されている主なサブタイプ(亜型例)

 

これまでの研究では、自閉症スペクトラム症の中で以下のような特徴をもつサブタイプが報告されています。

 

● 知的発達の遅れを伴うタイプ


知的機能が平均より低い場合、言語理解や社会的推論の発達にも影響が及び、日常生活全般で支援が必要となるケースが多く見られます。

 

このケースに当てはまる場合は、学習や作業のペース、指示の理解、ルーチン行動の構築などに配慮が求められます。

 

● 知的発達が保たれたタイプ(いわゆる高機能自閉症/アスペルガー型)


知的水準が平均以上でも、対人関係や柔軟な思考・感情理解に困難を抱えることがあります。


このタイプでは「周囲から理解されにくい孤立」「職場適応の困難」「二次的なうつ・不安症状」が見られることがあるので注意が必要です。

 

● 感覚処理特性を主体とするタイプ


光や音、触覚、味覚などの刺激に対する感受性の強さ・弱さが顕著で、生活上のストレスや行動のしにくさに直結します。


SpringerLink掲載の研究でも、感覚処理の特性に焦点を当てたサブグループの存在が報告されており、環境調整や感覚統合療法など、特化した支援が有効とされています。

 

● 社会的コミュニケーション困難が中心のタイプ


反復行動やこだわりよりも、相手の表情・文脈を読む力の弱さ、視線共有や相互会話の困難などが際立つ群です。


このケースの場合はソーシャルスキル・トレーニングや認知行動的支援が効果的な場合があります。

 

● 制限・反復行動優勢タイプ


このタイプの方は、同じ行動・話題・ルールへのこだわり、物の配置や順序への強い関心が見られます。


これらの行動は本人にとって安心や予測可能性を保つための役割を果たすこともあり、支援では無理に抑えるのではなく、安心の枠組みを拡張する視点が求められます。

 

このような分類は、単に特徴を「分ける」ことが目的ではありません。

 

この分類の意義は、支援や理解の焦点をより具体的にするためのものなんですね。

 

2-2.サブタイプ(亜型化)の意義と実践的な価値

 

● 個別支援設計の精度向上


サブタイプ(亜型化)の最大の利点は、自閉症スペクトラム症を抱えている方の特徴を踏まえた支援計画を「よりその人らしく」設計できる点にあります。


たとえば、感覚過敏タイプなら環境調整(照明・音・衣服など)を優先し、言語遅滞を伴う場合はAAC(補助・代替コミュニケーション)やビジュアルサポートを取り入れる、というように、具体的な方針を立てやすくなります。

 

● ご本人・家族への説明の明確化

 

診断名だけでは伝わりにくい個別性を、「〇〇タイプに近い傾向があります」という形で具体的に共有できると、ご本人や家族が「理解しやすく、受け入れやすい」形で自分を把握できます。

 

それは自己否定を和らげ、支援への協働意欲を高めることにもつながります。

 

● 研究・臨床モデルの発展


サブタイプ化(亜型化)は将来的に「このタイプにはこの介入が効果的」というエビデンスを蓄積する土台にもなります。


具体例を挙げれば…

 

「感覚処理優勢タイプには環境調整+マインドフルネス介入が有効」

「社会的コミュニケーション優勢タイプには認知行動療法的アプローチが奏功」

 

…といったモデルが徐々に明確になりつつあります。

 

3. 「次元化」とは何か

 

 

「次元化」とは、自閉症スペクトラム症の特性を「ある・ない」という2値的なカテゴリーではなく…

 

「どの程度、どの方向に、どんな強さで持っているか」

 

…という連続的な(グラデーション的な)観点から理解するアプローチです。

 

3-1.カテゴリモデルから次元モデルへ

 

従来の診断システム(DSMやICD)は、「基準を満たすかどうか」という「カテゴリ的」な発想に基づいていました。


しかし実際の臨床では…

 

「診断基準をわずかに下回るが、明らかにASD特性がある」

「ASD診断を受けているが、社会性の得意不得意は幅がある」

 

…といったケースが数多くみられます。

 

こうした状況にに対応するため、研究では自閉症スペクトラム症を「連続変数」として扱う「次元モデル」が注目されるようになりました。


Lefort-Besnardら(2020)の研究では、ADOS(自閉症診断観察スケジュール)の大規模データを分析し、ASDの症状構造は「カテゴリモデル(二値)」よりも「次元モデル(連続)」あるいは「ハイブリッドモデル(カテゴリ+次元)」の方が説明力が高いことを示しました。


また、Wittkopfら(2022)はこの視点をさらに検証し、「ハイブリッドモデルが最も臨床的にも現実的」だと結論づけています。

 

つまり、ASDの基本構造にはタイプ(カテゴリ)の違いもありつつ、各タイプ内で「程度の差(次元)」が存在する、という見方です。

 

3-2.次元化で見えてくる自閉症スペクトラム症の姿

 

次元的な視点では、自閉症スペクトラム症の主要な特性(社会コミュニケーションの困難・制限的行動・感覚特性など)を、下記のような「度合い」で評価します。

 

✔社会コミュニケーション

→軽度・中等度・重度

✔制限・反復行動

→ほとんどない・少しある・かなりある

✔感覚過敏・鈍麻

→刺激の種類によって強弱がある

✔言語発達

→遅れが大きい・年齢相応・語彙、表現が突出している

✔認知柔軟性

→非常に高い〜固執的まで連続的

 

このように「強さ・方向・組み合わせ」を捉えることで、支援者は「この領域が特に強い」「この次元は安定している」「この領域は成長余地がある」といった多面的理解を持つことができます。

 

3-3.次元化の臨床的メリット

 

では、このような次元化にはどのような利点があるのでしょうか?

 

● 早期支援がしやすくなる


診断基準を満たさなくても、「次元的に特性が高い領域」が見つかれば、早期介入や環境調整が可能です。

 

具体的な例を言えば、まだ就学前の段階で社会的注視の少なさや感覚過敏が観察される場合、家庭や保育現場での支援を早めに開始できる、というった対応が可能になります。

 

● 支援の進捗が可視化できる


次元化によって、「特性が軽くなった」「社会的やり取りが増えた」という変化を、次元的スケールで追跡できます。


これは、ご本人の成長を実感できるツールとしても役立ちます。

 

● 自己理解の促進


当事者であるご本人が「自分は自閉症スペクトラム症かどうか」ではなく、「どの特性をどの程度持っているか」と理解できると、ラベルによる自責感が減り、自己受容が進むことが期待されます。

 

まとめ:個別理解から共感と支援設計へ

 

自閉症スペクトラム症(ASD:旧アスペルガー障害)を理解する際「サブタイプ」「次元化」という2つの視点を持つことは、自閉症スペクトラム症の改善において非常に役立ちます。

 

サブタイプ化によって「この方はこういうタイプだ」という整理ができ、支援の焦点を定めやすくなります。

 

また次元化によって「どの領域・どれくらい」の程度を丁寧に把握し、「今ここ」から「なりたい未来」へ向けた成長ストーリーが描きやすくなります。

 

自閉スペクトラム症の方が、自分の症状・特性と向き合うというのは、「ASDを消す」ことでも、「誰かと同じようになる」ことでもなく…

 

自分の特性を知り、困りごとを具体化し、環境や周囲との関わり方を少しずつ調整しながら、自分なりの生きやすさ」と「なりたい自分」を探していくプロセス

 

…ということが言えるでしょう。

 

「私は『自閉症スペクトラム症だ』」で終わりにするのではなく、より特性や現れ方を観察し、自分に合ったケアを見つけてくださいね

 

参考論文

DSM-5 and autism spectrum disorders (ASDs): an opportunity for identifying ASD subtypes

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この記事の執筆者

駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)

心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。

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