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パニック症(パニック障害)に与える思考のクセとは?~神戸、芦屋、西宮のカウンセリングより~

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パニック障害に影響を与える「思考のクセ」とは?

パニック障害に影響を与える「思考のクセ」とは?

2025/11/12

みなさん、こんにちは。

神戸や芦屋、西宮などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。

 

さて、パニック症(パニック障害)を抱えておられる方にとって、パニック発作は本当に大変なものです。

 

パニック発作は突然現れてくるように感じられるかもしれませんが、実はパニック発作はパニック症(パニック障害)を抱えている方の認知(考えのクセ)が影響している場合も珍しくありません。

 

そこで、このブログでは米国ヴァージニア大学のTeachman博士らによる研究(Behavior Research and Therapy, 2007)を踏まえつつ、パニック症に見られる「情報処理バイアス(考え方、解釈のクセ)」とセルフケアについてシェアしたいと思います。

 

1. パニック障害の「認知(考えの)モデル」とは

 

 

パニック障害の理解において最も重要な理論の一つが、David M. Clark(1986)による「認知モデル」です。


このモデルでは、パニック発作は「身体感覚の誤った意味づけ」が重要な意味を持つとされています。

 

たとえば、心臓の鼓動が速くなると「心臓発作かもしれない」、息苦しさを感じると「窒息するかもしれない」といった「破局的誤解釈」が生じます。

 

この瞬間、脳は「危険が迫っている」と判断し、交感神経を活発化させて、それがさらに心拍数を上げてしまいます。

 

それが結果として身体感覚の強まりを生じさせ、「これは危険だ!」という確信が深まり、恐怖反応がループしていきます。


これが…

 

身体反応

↓ ↓

誤解釈

↓ ↓

恐怖

↓ ↓

身体反応の増幅

↓ ↓

発作の発生

 

…というものがパニック発作の典型的なサイクルなんですね。

 

Clarkの理論は、Beckらの不安の情報処理モデル(Beck & Clark, 1997)を発展させたものです。

 

つまり、「脅威関連のスキーマ(認知的枠組み・考え方の枠組み)」が活性化されると、注意・解釈・記憶などの情報処理が偏り、「危険」や「失敗」を見つけやすくなってしまうというものです。


この「心や認知(思考・考え)の偏り」が、パニック発作を維持・再発させる鍵とされています

 

1-1. 研究が示した「3つの情報処理バイアス」

 

「バイアス」という言葉は、多くの方にとっては聞きなれないものではないでしょうか?

 

「バイアス」とは個人的な経験や固定観念、先入観などによって、物事を適切ではない方向に解釈してしまう心の偏りを指します。

 

ヴァージニア大学のBethany Teachmanらは、この理論を実証的に検証するため、パニック障害方の情報処理の特徴を3つの観点から測定しました。

 

その結果、パニック群に共通してみられたのが、以下の3つの「認知的バイアス(思考の偏り)」です。

 

(1)自動的連想バイアス

 

これは、「自分=パニック」「身体の変化=危険」といった記憶の結びつきが強い傾向を意味します。


Teachmanらは、Implicit Association Test(IAT)という心理テストを用いて、自分と「パニック」あるいは「落ち着き」との連想の速さを比較しました。


結果、パニックの方々は「自分=パニック」という反応が有意に速く、一般の方々は「自分=落ち着き」が速いという対照的な結果を示しました

 

この結果は、パニック障害の方が自分を「私は不安になりやすい」として自己認識していることを示唆しています。


つまり、表面的には「平気」と感じていても、認知(考え)の部分では「私は緊急の状態(あるいは特定の状況にに弱い)人間だ」という自己イメージが強化されてしまっているのです。

 

(2)注意バイアス

 

これは、脅威的な刺激に対して過剰に注意を向けてしまう傾向を意味します。

 

研究では、「感情ストループ課題」が用いられ、「呼吸」「死」「窒息」などの脅威語を読む際の反応時間が測定されました。


そしてパニックを抱えてられる方々は、これらの語を読むのに時間がかかり、無意識的に脅威情報に注意を奪われていることが明らかになりました。

 

この「ネガティブなサインに対する注意の過集中」は、常に危険の兆候を警戒し、そして探すような心の状態を生みています。

 

つまり、脳は「能動的に・自ら」危険の予兆を察知しようとしているのです。

 

結果として、身体の小さな変化や環境の刺激にも敏感に反応し、「また起きるかもしれない」という再発不安を維持・誘発してしまいます。

 

(3)解釈バイアス

 

これは、あいまいな身体感覚を「危険」と判断しやすい傾向です。


例えば、胸の圧迫感を「運動不足のせい」と捉える人もいれば、「パニック発作の前兆だ」と考える人もいますよね。


パニック症の方々では後者のような破局的解釈が顕著にみられました。

 

Teachmanらは、Brief Body Sensations Interpretation Questionnaire(BBSIQ)という心理テストを使用し、身体感覚に対する意味づけの違いを測定しました。

 

結果、パニック症の方々は一貫し身体感覚に対してて悲観的解釈を選びやすいことが示されました。

 

このように、身体感覚への「意味づけ」がパニックの恐怖を再生させ、その結果回避行動(外出しない、人に会わない)を強め、それがさらに悲観的解釈を強化するという悪循環を生みだすこととなります。

 

1-2.3つの偏りは「別々に」作用している

 

Teachmanらの構造方程式モデリングによれば、これら3つの認知バイアスは、いずれも独立してパニック症状の強さを予測する一方、互いには関連しませんでした


これは、「注意」「解釈」「無意識の連想」が、それぞれ異なる認知経路を通じてパニックを維持していることを意味します。

 

つまり…

 

✔注意の偏り

→「危険を見逃す不安」から生じる

✔解釈の偏り

→「適切でない意味づけ」につながる

✔連想の偏り

→「悲観的な自己イメージの自動化」が形成される

 

…といったように、心理的メカニズムが異なります。

 

この知見は、臨床的、特に心理カウンセラーが心理療法でパニック症をケアする上でとてもに重要になるからです。

 

なぜなら、この研究から示されていることは、一つの介入法で全ての症状を変えるのは難しいということです。


そのため、カウンセリングや心理療法では、パニック症を抱えている方の、どの偏りが強く働いているかを見極め、それに応じてアプローチを変える必要があるといことになります。

 

そのため、これらの「偏り」を理解する事によって、効果的な心理的支援やケアができるようになっていきます。

 

2.認知(考え)を踏まえたパニック症のセルフケア

 

 

では、以上の内容を踏まえてパニック症(パニック障害)に対して認知面(考え方)を踏まえたセルフケアの方法をご紹介します。

 

2-1. 「気づく」ことから始めるセルフケア

 

パニック発作は、突然の身体反応そのものよりも、それを「どう受け取るか(解釈するか)」によって生じ、そして強まることが多い症状です。


そこで最初のステップは、「いま、どんな反応が起きているか」に評価を加えず気づくことにあります。

 

そこで、次のような練習を行ってみましょう。

 

✔呼吸や心臓の鼓動を観察

→「速い/遅い」「良い/悪い」と判断せず、ただ「速くなっているな」と実況する。

✔「怖い」という感情が湧いたとき

→「怖さが出ている」と気づくだけに留める(それ以上「考え」や『身体反応』を深追いしない)。

 

この「気づき」はマインドフルネスの基本であり、注意バイアス(危険へ過度に注意が向く傾向)を和らげる第一歩になります。

 

2-2. 「考えを事実と切り離す」練習

 

パニック症の方は、「自分=不安」「身体反応=危険」といった自動的な連想が強まりやすい傾向があります。


この自動的な結びつきを緩めるためには、「考と現実を分けて観察する」という練習が有効です。

 

たとえば次のように内的対話を変えてみます。

 

×「心臓がドキドキしている。やばい、また発作だ」

「心臓がドキドキしている。でも、それは「発作かもしれないという考え』が浮かんでいるだけと意味づける」

 

このように、「考え」を「事実」と同一視しないことが、心の余白を生み出します。


ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)ではこのスキルを脱フュージョンと呼び、症状のコントロールではなく自分と距離を取れるように促します。

 

2-3. 「安全な身体体験」を少しずつ取り戻す

 

パニック症の特徴である「身体感覚=危険」という誤った解釈を修正できると、かなり楽になれます。

 

そのためには、実際に身体を使って安全な経験を積み重ねることが効果的です。

 

例えば、次のような方法があります。

 

✔軽いストレッチや深呼吸を行い、「身体の変化は安全で一時的」と感じる体験を重ねる。

✔少しずつ外出や人との接触を増やし、「不安があっても行動できる」ことを実感する。

 

最初から大きな挑戦をしなくても構いません。


「心臓が速くなっても平気だった」

「息が上がっても落ち着けた」

 

…そうした小さな成功体験が、破局的な解釈を自然と和らげてくれます。

 

2-4. 「安全リマインダー」を持つ

 

発作や不安のサインを感じたとき、即座に安心感を取り戻せる「安全リマインダー」を持つのも有効です。


この「安全リマインダー」とは、文字・香り・写真・言葉など、安心を呼び戻す小さな手がかりのことです。

 

具体例

 

✔「これは一時的な体の反応。必ず落ち着く」

✔「私は今ここにいて、ただ単に身体反応を感じているだけ」

✔「呼吸を1回ずつ、ゆっくりと感じよう」

 

この「内的リマインダー」を使うことで、注意の焦点を「危険」から「現実」へ移す練習になります。

 

2-5. 「安心のルーティン」を持つ

 

不安が強くなるときほど、どうしても日常リズムの乱れが所持がちになります。

 

そうなると、パニック障害がどうしても発生しやすくなってしまいます。


そのため、心身のバランスを回復させるために、次のような安心ルーティンを整えてください。

 

✔朝は同じ時間に起き、カーテンを開けて自然光を浴びる。

✔カフェインやアルコールを控え、白湯や温かい飲み物を意識的に摂る。

✔スマートフォンを見る前に、深呼吸を1回行う。

✔夜は入浴・ストレッチ・呼吸法のいずれかを10分行う。

 

このような安定した行動パターンは、神経系の過敏さを抑え、「自分=落ち着ける存在」という、今までとは異なる新しい連想を形成してくれます。

 

2-6. 「完璧に克服しようとしない」ことが回復の近道

 

パニック症の方は、「また発作が起きたらどうしよう」という再発不安に苦しむケースが珍しくありません。


しかし、症状を「完全になくす」ことを目標にすると、プレッシャーにもなりますし、加えてさらに不安を強化してしまいます。

 

そのため、大切なのは、「不安を感じても大丈夫な自分」を育てることです。


「不安があっても、私は私として過ごせる」という実感が、再発への恐怖を自然に弱めます。

 

そして、それがパニック発作を誘引する要因を減らしてくれることになります。

 

3. まとめ~思考の偏りに気づくことが回復の第一歩~

 

パニック障害は、単純に脳が「誤警報」を発している精神疾患ではなく、むしろ「身体」「思考」「注意」が一時的に過敏になっている状態として捉えるのが妥当です。


そして、その背後には、研究で明らかになった「情報処理バイアス」があります。


ただ、そのバイアスはそれは修正可能であり、また時間とともに変化していくものでもあります。

 

ゆっくりとセルフケアを行っていきましょう。

 

そして、もしも必要であれば、専門医や心理カウンセラーを活用してください。

 

まずは緩和を目指して取り組んでいってくださいね。

 

参考論文

Information processing biases and panic disorder: Relationships among cognitive and symptom measures

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この記事の執筆者

駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)

心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。

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