大人の愛着障害と感情コントロール~不安・抑うつの背景にある「関係性のパターン」とは
2025/11/14
みなさん、こんにちは。
神戸や芦屋、西宮などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。
日々クライエント様のお話を伺っていると、感情の調節が難しい、人間関係が安定しないという声に出会うことが多々あります。
これらは単なる「性格の問題」ではなく、「愛着スタイル」と「情動調整」が深く関係している場合が珍しくありません(もちろん、上記のようなお悩みを抱えているからと言って、必ずしも愛着障害があるとは言えないことに注意が必要です)
そこで、今回は「大人の愛着と、感情の扱いにくさは、不安や抑うつにどう影響しているのか?」を科学的に検証した論文を元に、愛着障害と不安や抑うつについてシェアしたいと思います。
1. 大人の愛着スタイルとは何か

「愛着」と聞くと、幼少期の親子関係を思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし、愛着は「子どもの頃だけのもの」ではありません。
心理学では、「成人愛着(Adult Attachment)」という概念があり、これは大人になってからの人間関係、特に「親密な関係」や「信頼関係」に深く影響することが知られています。
1-1.成人愛着とは?
成人愛着とは…
✔「人との距離感をどう感じるか」
✔「どの程度、相手を信頼し、安心して関わることができるか」
という、対人関係における「心のクセや特性」のようなものです。
この「クセや特性」は、幼少期の養育環境だけでなく…
✔過去の恋愛
✔夫婦関係
✔友人関係
✔職場の人間関係
など、人生の中で経験してきたさまざまな人とのつながりの関係性によって変化していきます。
「診断としての愛着障害」は幼少期に限定されますが、しかし成人後に他者との関係によって愛着スタイルが変わり、それによって愛着障害が生じることもあるのです。
つまり成人愛着は「これまでどんな人間関係を生きてきたか」という歴史(経緯)そのものが表れる領域なんですね。
1-2.成人愛着は大きく3つに分類される
愛着障害の種類については色々と提唱されていますが、臨床心理学・発達心理学では、成人愛着は主に以下の3タイプとして説明されています。
(1)安全型
● 特徴
✔人との関係で自然な信頼関係を形成できる
✔自分の考え・感情を正直に伝えられる
✔必要なときにサポートを求められる
✔親密さに対して過度に恐れない
このように、安全型の方は親密な関係において「安心感」を感じやすく、相手に頼ることも、相手を頼りにすることも自然にできるのが特徴です。
これは、「他者は信頼できる」という内部モデル(心の地図)が安定していることによって生じます。
(2)不安型
● 特徴
✔見捨てられる不安が強い
✔相手の反応に敏感(メールの返信速度、表情の変化など)
✔感情の揺れが大きく、落ち込みやすい
✔「嫌われたかも…」が頭から離れない
こうした不安型の特徴の背景には、「相手が離れていってしまうかもしれない」という強い恐れがあります。
そのため…
✔LINEの返信が遅いだけで不安になる
✔相手の機嫌の変化に敏感
✔安心させてほしいという気持ちが強い
といった心理が生じやすくなります。
そのっ結果、自身の情動調整が苦手になりやすく、感情の高ぶりが「戻りにくい・なかなか戻せない」という特徴があります。
(3) 回避型
● 特徴
✔人と一定の距離を保とうとする
✔自分の弱さを見せることに抵抗がある
✔感情表現が苦手、あるいは切り離しがち
✔親密さを「負担」と感じやすい
このように回避型の方は、自己防衛のために「感情を感じにくくする」「自立を過度に強める」
という対処を取らざるを得ない場合が珍しくありません。
そのため、表面上は落ち着いて見えたり「冷静」「合理的」と評価されることも多いのですが、内面では深い孤独感を抱えてしまう、ということにつながります。
1-3.研究が示した重要なポイント
今回参考にした研究論文(Marganska, Gallagher & Miranda)では、成人愛着がもつ「情動調整」と「不安・抑うつ」との関係性を調べられました。
そして、その結果、特に以下が明らかになりました。
まず、不安型と回避型は「感情の扱い方」が難しくなりやすい(情動調整の困難)という問題が生じやすい傾向がみられました。
そして、その情動調整の困難が、「不安症状や抑うつ症状を強める」という構造が確認されました。
1-4.なぜ不安型・回避型では感情調整が難しくなるのか?
では、なぜ成人の愛着障害が不安症状や抑うつを誘発するのでしょうか?
それには、心理学的にみると以下のメカニズムが関係しています
● 不安型
✔相手の反応を危険信号として受け取りやすい
✔小さな変化にも過剰に注意が向く
✔感情の高まりが引き金となり、不安が増幅
✔安心の根拠を常に外側に求めてしまう
こうした傾向があるため、感情が乱れると先述しましたように「戻るまでに時間がかかる・なかなか自分で戻せない」という特徴が生じるようになります。
● 回避型
✔感情を抑え込む癖が強い
✔他人に頼れず、ストレスが内側に蓄積
✔「感じないようにする」ため、情動調整が育ちにくい
✔心理的負担が静かに溜まり、抑うつへとつながりやすい
回避型の方の場合は、一見すると平気そうに見えることが多々あります。
しかし内側では孤独感や「何かが足りない・もやもやする」という状態が生じやすくなります。
2.臨床的な示唆

論文から得られる実践的な示唆を、カウンセラー視点で整理すると以下の通りになります。
示唆1:感情の扱いにくさは「性格」ではなく「メカニズム」
愛着障害を抱えている方は、次のような悩みを抱えているケースが多々あります。
✔「私はメンタルが弱い」
✔「気持ちの切り替えが下手」
✔「人より敏感すぎる」
しかし、論文が示しているのは、「感情調整スキル」が育ちにくかった、あるいは損なわれただけで「性格上に問題があるわけではない」ということです。
この視点を持つだけでも、自分自身に対する非難や否定はぐっと減り、安心感が高まります。
示唆2:愛着と情動調整を両方扱うと、心の回復が高まる
愛着障害を持っておられる場合、愛着には触れず、感情調整スキルだけを鍛えても改善が限定的になってしまうことがあります。
しかし逆に、愛着だけ丁寧に扱っても、日常の感情の暴走には効果が生じません。
つまり…
✔「愛着(対人不安)」
✔「感情調整(感情の扱い方)」
…という、この両面を扱う必要があるんですね。
この2つ軸を持つことで、感情のコントロールケアを行った後の再発を防ぎやすくなります。
示唆3:不安型・回避型それぞれに合ったケアが必要
愛着障害で問題となりやすい不安型・回避型については、それぞれ個別のケアを行う必要があります。
というのは…
✔不安型 → 感情が強く溢れやすい
✔回避型 → 感情を切り離しやすい
…という、全く異なるお悩みが生じるため、ケアの方向性を変える必要があります。
具体的には以下の通りです。
● 不安型へのケア
✔身体の落ち着きをつくる練習(呼吸・グラウンディング)
✔感情の名前をつけて距離を取る
✔「安心できる他者」を生活に持つ
● 回避型へのケア
✔安全な場で感情を「微量から」表出する練習
✔「弱みを見せる=危険」というスキーマ(信念・思い込み)を緩める
✔コミュニケーションの透明化(気持ちを伝える練習)
示唆4:親しい関係やカウンセリングは「新しい安心基地」になり得る
愛着障害に対するケアや、今回の研究論文を読み解くと、愛着障害のケアで重要なのが、親しい方との関係やカウンセラーが「安全基地」として機能するということです。
愛着障害の方が親しい関係やカウンセリング等を通してが安全に感情を扱える場ができると、情動調整スキルが育つ、あるいは回復していくようになります。
まとめ~愛着は「問題」ではなく「心を理解するための手がかり」~
愛着スタイルとは、その方がこれまでの人生の中で、さまざまな出来事に適応しながら身につけてきた 心の守り方(サバイバル戦略) です。
不安型も回避型も、もともとは自分を守るために必要だった大切な仕組みであり、ある段階までは機能していました。
しかし、それは自分自身を守らざるを得ない状況においてのみ機能するものであって、そうした状況が過ぎ去ると、サバイバル戦略はかえって人間関係や自分自身の心を蝕んでしまいます。
今回の研究論文が示しているのは、「感情が扱いにくくなるのには、ちゃんと理由がある」そして「そのパターンは変えていくことができる」という希望です。
もしも…
✔「気持ちの波に振り回されてしまう」
✔「人間関係になると不安が強くなる」
と感じているとしても、それは決して「性格的な問題」ではありません。
むしろ、それだけこれまでの困難な状況を一生懸命生き抜いてきた証なんですね。
ただ、困難な状況が過ぎ去った今では、サバイバル戦略は必要ありません。
また、これからはその荷物をひとりで抱え込む必要はありません。
少しずつ、安心できる誰かと一緒に、その重さを降ろしていくようにしていきましょう。
その歩みが、より穏やかで心の自由を感じられる未来につながっていきます。
参考論文
Adult Attachment, Emotion Dysregulation,and Symptoms of Depression and Generalized Anxiety Disorder
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こころのケア心理カウンセリングRoom
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この記事の執筆者
駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)
心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。
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