ネガティブ思考が私たちを守る~悲観を味方につける方法~
2025/11/18
みなさん、こんにちは。
神戸や芦屋、西宮などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。
カウンセリングに来られる方のほとんどの方は、ネガティブな感情や思考で苦しみ、悩んでおられます。
確かに、ネガティブな感情や思考は決して心地よいものではありません。
しかし、全ての感情は本来的に私たちを守るために存在しています。
それはネガティブな思考や感情であっても同じことです。
そして実は意外かもしれませんが、「ネガティブに考える(悲観的に考える)チカラ」が心の負担を軽減するというケースも珍しくありません。
そこでこのブログでは、ネガティブに考える(悲観的に考える)メリットと「上手な使い方」について解説したいと思います。
1.楽観だけだと危険な場面もある~ポジティブ・イリュージョン(ポジティブ幻想)の視点から~

楽観的な姿勢には、ストレスに飲み込まれにくくなる、前向きになれる、不安に支配されにくいという大きなメリットがあります。
これは紫雲理学の研究でも確認されており、適度な楽観は「心理的レジリエンス(回復力)」に役立ちます。
ただ、心理学研究では、「過剰な楽観」はときに心の働きを歪め、適切な対応を阻害することがわかっています。
ここで関わってくるのが「ポジティブ・イリュージョン(ポジティブ幻想)」です。
1-1.ポジティブ・イリュージョンとは何か
ポジティブイリュージョン(ポジティブ幻想)とは、現実の物事や自分自身について、実際以上に肯定的に解釈したり、楽観的に受け止めたりする認知バイアスや精神的傾向を指します。
● ポジティブイリュージョンの三つの領域
Taylor & Brown(1988)によると、ポジティブイリュージョンには次の三つの側面があります。
✔自分自身を実際以上にポジティブに評価する
→具体例:自分は有能だ、自分は好かれている等)
✔将来を非現実的なほど楽観的に捉える
→具体例:自分だけは病気にならない、自分の人生はうまくいく等)
✔周囲の出来事や環境へ対する自己のコントロール力を過大に評価する
→具体例:自分の努力で何でも解決できる等
ポジティブイリュージョンによって発生する問題は以下の通りです。
● 危険の兆候を軽視してしまう
ポジティブ・イリュージョンが強く働くと、「自分は他の人より危険に遭いにくい・あわない」という「楽観バイアス」が作動します。
その結果、危険なサインを見落としたり、リスク管理が十分でなくなる、上手くいかなかった場合の対処を考えられなくなる、という問題が生じます。
その結果、本来なら避けられるトラブルに巻き込まれる可能性が大きくなってしまいます。
● 課題を軽く見積もり、準備不足になる
ポジティブ・イリュージョンが強すぎると、「前向きに考えれば、なんとかなる」という考えが働きやすくなります。
その結果、本来行うべきことがおろそかになってしまい、その準備不足がネガティブな結果を招いてしまいます。
1-2.ストレスが高い場面では「過度な楽観」が特に危険になる
心理学の研究では急性ストレスや長期的ストレスが強い状況では、過度な楽観が不適応につながりやすいことが示されています。
理由はとてもシンプルです。
ストレス状況では、正確な現実把握が必要になるのですが、そこにポジティブ・イリュージョンが加わると、高ストレスの元で適切な対処ができなくなるんですね。
2.「楽観」と「悲観」の違いを考えると…

ポジティブな考えや感情が「ポジティブイリュージョン(ポジティブ幻想)」を招いてしまうことをご説明しましたが、ここから言えることはネガティブな思考(悲観的思考)にも重要な役割がある、というです。
そこで、「楽観(ポジティブ)」と「悲観(ネガティブ)」の違いを見ていきたいと思います。
心理学的には楽観や悲観は以下の4つに整理されています。
● 説明的楽観
物事がうまくいかないとき、「これは外的要因のせい」「今は運が悪かっただけ」と考える傾向です。
つまり、物事がうまくい叶った場合に外的要因に原因を求めて楽観性を保とうとする思考ですね。
【このスタイルの特徴】
✔自分を過度に責めない
✔次の挑戦に移りやすい
✔気分の落ち込みが短くてすむ
これらの特徴は、失敗に「個人的な意味」を持たせずに済むため、心理的エネルギーを温存しやすいというメリットがあります。
● 説明的悲観
逆に、物事がうまくいかないとき、「自分の力不足」「きっと改善できない問題だ」と感じやすい傾向を「説明的悲観」と言います。
これは説明的楽観とは異なり、上手くいかなかった原因を自分自身に求めてしまう、あるいは外的な要因に原因を求める際も、その阻害的な要因はけっしてなくならないという思考を意味します。
【このスタイルの特徴】
✔自己評価が下がりやすい
✔行動を避けやすくなる
✔変化を望んでいても踏み出しにくい
こうしてみると説明的悲観にはデメリットしかないと思われがちですが、この思考が必ずしもデメリットしかないというわけではないという点には注意が必要です。
というのは、丁寧に反省し改善ポイントを探す場面では、この思考はなくてはならないものだからです。
● 戦略的楽観
戦略的楽観とは、ストレスの大きい場面でも「なんとかなるはずだ」「大丈夫」と前向きな予測を行い、不安の暴走を抑える思考スタイルです。
【このスタイルの特徴】
✔緊張しすぎず力を発揮できる
✔行動へのためらいが減る
✔必要以上の不安を抱えない
特にプレゼン・試験・人間関係などで有効な思考法です。
● 戦略的悲観
この思考法、あえて「最悪の展開」を想定し、「もしこうなったらどうするか?」を細かくシミュレーションする思考スタイルのことを指します。
【このスタイルの特徴】
✔リスクを見落としにくい
✔事前準備が整う
✔想定外の事態に冷静でいられる
この思考スタイルは、リスクが高い場面では非常に役立つものです。
もっと言えば、この思考法がないと私たちは自分自身を守ることは困難です。
3.悲観には「心を守る防御力」がある

多くの人は「悲観=悪い」「ネガティブはだめ」と思いがちです。
確かに悲観的に考える、ネガティブに考えるということは心地よいものではありませんし、悲観的あるいはネガティブな状態というのは、パフォーマンスや幸福度を下げるという結果も生じます。
しかし心理学的には、悲観思考は決して有害であるとはみなしていません。
むしろ視点は逆で、適度な悲観は心と生活を守る強力なスキルだと位置づけられていません。
3-1.戦略的悲観は「心理的な防災訓練」
とはいえ、悲観的であったりネガティブであったリスことが、全て良いことではありません。
「用いるべき悲観視」は「戦略的悲観」です。
戦略的悲観の特徴は、「失敗の可能性をあらかじめ想定し、対策をする」というものです。
これはまさに、防災訓練と同じ仕組みを果たしてくれており、戦略的悲観が自然に行っていることで失敗の可能性の分析や、実際に問題が生じた場合の対処法を考えることができます
また戦略的悲観は、心構えができているので問題が生じても精神的な余裕を持つことができるというメリットを持っています。
その結果として、不安が減り、行動の質が上がり、結果も改善しやすくなるという心理的効果があるんですね。
3-2.研究が示す「悲観的な人ほど準備が整う」
複数の心理学研究は、「悲観的予測を持つ方は、その分だけ準備に真剣になる」という傾向を示しています(例えばCanedo el al.2017)
戦略的悲観は悲観的結果を避けるためにリスクに敏感であり、また早めの対策を取ることになるので、悲観が予防行動を促すことに繋がっていきます。
つまり、悲観とは「未来の自分を守るための知性」だといえるのです。
4.心理カウンセラーが勧める「悲観を味方にする思考法」

正直に言いますと、私も相当に悲観的であり、マイナス思考が強いという傾向をもっています。
しかし多くの心理学の研究によって悲観は使い方次第では非常に役立つものであることが示されています。
確かに悲観は「心を守るための大切な知性」ですが、使い方を誤るとネガティブ連鎖に陥りやすくなります。
そこで大切なのが、悲観をコントロールしながら有効活用するための思考プロセスです。
そこで、私が実践しているものも含めて、「上手に悲観的になる(ネガティブになる)」方法を解説したいと思います。
4-1.「最悪のシナリオ」を「ひとつだけ」描く
悲観が暴走してしまう方の多くは、最悪の状況をあまりにたくさん持ってしまうことに原因があります。
つまり、無数の「悲観的な結果」を考えてしまうんですね。
そこで意識したいのは、、いま取り組んでいることによって生じるかもしれない「最悪のシナリオを『1つだけ』選び、そこに対する備えを明確にする」ことです。
具体的に言うと、生じるかもしれない最悪の事態を想定し、次のことを検討します。
✔実際に何が起こりうるのか
✔その場合、自分は何をすべきか
✔どこまで準備すれば安心できるか
この整理をするだけで、悲観は不安の材料ではなく防御と安全のための行動の指針」になります。
4-2. 「最良のシナリオ」も同時に描き、心のバランスを整える
悲観は準備を整えてくれるのですが、もちろん過度に悲観的に偏ると心が消耗します。
そのため、もう一つの視点として 「最良のシナリオ」 を同時に考えるということをなさってください。
これによって、バランスの良い思考や精神状態を得ることができるようになり、現実的な視野を保つことができます。
つまり、悲観と楽観を「両手に置く」ことで、感情の揺れをコントロールしやすくなるんですね、。
4-3.「予測と現実のギャップ」を観察し、思考の癖を調整する
悲観を上手に使うポイントは、予測(思考)と現実(結果)の間にどれくらいズレがあるかを「記録すること」です。
この習慣があると、予測と結果のずれが、悲観的な思考を過剰なものにせず、適切なレベルに抑えてくれるようになります。
まとめ:悲観は「未来を守るためのツール」
悲観は悪い予測を作り出しますが、そうした悲観が生じてしまうだけで「ネガティブな性格」だと判断するのは妥当ではありません。
むしろ悲観やネガティブなものは、正しく使えば、未来のリスクを減らし、心の安定を支える力になります。
そのため、「ネガティブさも大切にする」ということが大切です。
そして大切なことは「どうせ悲観的になるなら『戦略的悲観』を取る」ということです。
つまり、悲観というものを上手く原動力にして、可能な限りの対策を行うというものです。
どうか「悲観やネガティブ」を上手に使ってくださいね。
----------------------------------------------------------------------
こころのケア心理カウンセリングRoom
兵庫県芦屋市浜芦屋町1-27 サニーコート浜芦屋302号
電話番号 : 090-5978-1871
----------------------------------------------------------------------
この記事の執筆者
駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)
心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。
プロフィールはこちら


