社交不安症とは?なぜ症状は維持され続けるのか?
2025/11/20
みなさん、こんにちは。
神戸や芦屋、西宮などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。
社交不安症(社交不安障害)は、なかなか人から理解されにくいという面があります。
しかし、それよりも重要なのが、社交不安症による自己否定が強くなること、つまり「他の人はできて、なぜ自分はできないの?」というものです。
実際に臨床を行っていると社交不安症によって自己評価が下がったり、あるいは自分を責めてしまう方も珍しくありません。
ただ、「社交不安症」ということは、その症状が維持されるメカニズムというものがあります。
そして、その維持を理解することで見えてくるものがあります。
そこで、「社交不安はなぜ起こるのか、維持されるのか、そしてどうすれば楽になるのか」という内容を研究結果を踏まえつつシャアしたいと思います。
1. 継続するメカニズム:認知‐行動モデルの視点

今回参照にするHofmann(2007)の研究論文は、社交不安症(社交不安障害)が一度生じるとなぜ慢性的に続いてしまうのか、その心理メカニズムを「認知行動」という枠組みで捉えています。
これは社交不安症は「認知(考え方)」と「行動」の悪循環によって生じるというものです。
このモデルは実に臨床的であり、社交不安症を抱える方を理解するうえで非常に役立つものです。
研究では、社交不安症が持続しやすいのは次の4つの認知的・行動的プロセスが互いを強め合ってしまうということを示しています。
1-1.不合理な社会的基準(高すぎる自分への期待)
社交不安症の方は、人との関わりにおいて「極端に高い基準」を自分に課してしまう傾向がよくみられます。
例えば、「プレゼンの時に噛んだらアウト」「人から誤解されると自分は本当にダメだと感じてしまう」というものです。
ざっくりと言うと「人間関係に対する完璧主義」と言えるでしょう。
これらは一見「人間関係をより良くするための努力」のように見えますが、実際には「絶対に達成不可能なハードル」です。
そして、その基準に満たない自分を強く責め、恐怖心が増すことで社交不安症が維持されてしまうというものなんですね。
そして、対人関係で完璧主義を自分に対して求めてしまうというのは、自分自身が対人関係で困った立場に追い込まれないようにするための「防御策」であるため、なかなか完璧主義が手放せないという背景もあります。
1-2.自己焦点化(自分への過剰な着目)
社交不安症では、人前に立つと注意の方向が「外側(相手)ではなく、過剰に「内側(自分の身体・感情)に向いてしまうという特徴があります。
具体的には自分自身の生理反応(動悸や手の震え等)に過剰に意識が向いてしまい、「緊張している自分をさらに意識して緊張する」という悪循環が生じてしまっています。
そして、その生理反応をネガティブに解釈してしまいます(例えば『これは失敗の予兆だ』というように)
その結果、相手の実際の反応が見えなくなるため、場の雰囲気や相手の好意的な態度に気づけず、仮にうまくいっていたとしても「うまくいかなかった」という誤解が残りやすくなります。
1-3.回避行動・安全行動
社交不安症の方は、不安や失敗を避けるための 「安全装置」のような行動を身につけていることが珍しくありません。
具体的には回避行動、つまり人との接触を避けるという事、そして安全行動とは表面上のやりとりで、うまくその場を切り抜けるというものです。
こうした回避行動や安全行動は全否定されるべきものではなく、役に立つ場合もあります。
ただ、対人交流の全てが回避行動や安全行動になってしまうと、「その瞬間の不安」を減らすのに役立ちますが、長期的には 「私は人間関係をうまくやっていける」という成功体験を持てないままになってしまいます。
その結果、対人不安が常に存在し続けることになり、それが結果として自己否定の感情へと繋がってしまいます。
「避ければ避けるほど、人前への恐怖が増える」
これは、社交不安症の方が陥りやすい悪循環です。
1-4.否定的な自己解釈・誤った意味づけ
社交不安症では、「そもそも『人が怖い』」という思いを持っている方が大半です。
そのため、その観点から人間関係を見ることになるため、身体症状や相手の反応を過度にネガティブに解釈しやすいという傾向があります。
例えば
✔話しをするときに手が震えた
→「馬鹿にされるかもしれない」
✔相手が少し目を逸らした
→「嫌われた」
✔会話の中で相手が考え込んだ
→「自分の話がつまらなかった」
というものですよね。
こうしたネガティブな意味付けは、自分自身が他者から評価される存在であるという前提的な考えがあります。
そして社交不安症があるため、「不安」という観点で相手の反応を見るため、極端にネガティブな解釈が行われてしまうのです。
そうなると、社交場面がますます「脅威そのもの」に見えてしまいますよね。
こうした考えは事実に基づいた解釈ではなく、不安が作り出した「認知(考え)のレンズ」 なのですが、しかし社交不安症を抱える方にとっては、その解釈が非常にありありとしてリアリティを持つことになるのです。
その「リアリティ」によって、社交不安症は維持されることになります。
1-5.これら4つの要素は「相互に強め合う」
社交不安症が厄介なのは、この4つが「単独で存在する」のではなく、「互いに絡み合い、悪循環を作り出す」という点です。
ざっと挙げてみると…
①不合理な基準がある
→緊張が生まれる
②緊張が高まる
→自己焦点化が強まる
③自己焦点化が強まる
→恐怖や不安、身体症状が増える
④恐怖や不安、身体症状が増える
→否定的な解釈が強まる
⑤否定的な解釈が強まる
→回避行動が増える
⑥回避行動が増える
→成功体験が減る
⑦成功体験が減る
→ 自己否定が強まり、不合理な基準がそのまま残る
そしてまた①に戻る…
このようにループし続けることで、社交不安症は単なる一過性の悩みではなく、「持続する苦しみの構造」になってしまうんですね。
2.社交不安症の支援を考える
今まで見てきましたように、社交不安症の方は特有の「維持要因」を持っており、それによって症状の改善が長引いてしまうという傾向があります。
しかしHofmann(2007)の研究論文が示すように、社交不安症には「認知(考え)と行動のクセ」があり、そこを丁寧に整えていくことで、ポジティブな変化を起こしていくことが可能です。
そこで、今回参照にした研究論文と私の臨床経験をもとに、改善のための「視点」をお伝えしていきたいと思います。
視点1:まずは「基準」を見直しましょう
社交不安症の方が最も強く抱きやすいのが、「人前では失敗してはいけない」「完璧にこなさなければならない」という、自分自身に課している過度に厳しい「対人基準」です。
この基準は社交不安症を維持悪化させる要因であり、またこの基準から感がると、どんな人間関係も「危険」になってしまいます。
例えば、ですが…
✔緊張=失敗
✔沈黙=評価の低下
✔言い間違い=自身の人格の否定
…という認知のクセをそのままにしておくと、苦しいだけではなく、人間関係を回避する必要性が生じるため、改善につながる体験につながることができません。
そこで、次のように考えてみてください。
✔「なぜ完璧である必要があるのか?」
✔「他の人も本当に失敗していないのか?」
✔「緊張=マイナス」という考えは誰のルールか?
✔「70%の出来で十分」ということはできないか?
こうした問いかけを通して、「完璧主義のハードル」を少しずつ下げることができるようになっていきます。
その結果、「緊張しても人は離れていかなかった」「話が詰まっても、むしろ共感してもらえた」
といった体験を得ることができ、それによって負のループが変化していきます。
視点2:自己焦点化をゆるめる訓練
社交不安症の方が最も苦しむポイントの一つが、気が付いたら緊張や震えのような、自分の身体反応に過度に注目してしまうこと(自己焦点化)です。
しかし、こうした自己焦点化は、身体反応をさらに大きくすることになり、それによってさらに緊張感が高まる…という負のループに陥ってしまいます。
そのため、これをゆるめていくためには、以下のようなワークが有効です。
● マインドフルネス(身体と感情をそのまま観察する)
「単に胸がドキドキしているな」「単に手が少し震えている」と、「評価」ではなく「観察」として身体反応を捉える習慣作りをしていきます。
これによって、「身体反応=危険」のイメージが薄れていきます。
視点3:回避を減らし、「小さなチャレンジ」を積む
社交不安症が維持されるということは、社交不安症の症状に対して、何かしらの働きかけがないから、ということができます。
そうした意味で、社交不安症の維持の要因として見逃せないのが「回避」です。
確かに社交不安症の方にとって対人交流は苦痛を伴うものです。
しかし、その対人交流を避け続けるほど、逆に恐怖は大きくなっていきます。
そのため、意識的に対人交流を行っていき、「対人交流=安全」という認識を形成していく必要があります。
とはいえ、いきなり大舞台に立つ必要ははく、むしろ小さなステップを積み上げることが最も効果的です。
● 小さなチャレンジの例
✔信頼できる1〜2人の前で話してみる
✔会議で「はい」と返事だけしてみる
✔食事会で、自分から1回だけ質問してみる
✔短時間だけ雑談に参加してみる
こうした行動で重要なのは、成功体験だけでなく「問題が生じなかった」、あるいは「問題が生じても解決できた」という経験が「積み重なる」ことにあります。
こうした体験のストックが増えるほど、「人前も少しなら大丈夫かも」という感覚が育っていきます。
視点4:自分自身の「強みと資源」を見つける
社交不安を抱える方は、自分のできている部分や長所に気づきにくい傾向があります。
そのため、意識的に次のようなものを探してみてください
✔どんな場面なら安心できたか
✔誰となら話しやすかったか
✔趣味や仕事で「集中できた瞬間」はいつか
✔小さな成功体験は何だったか
✔過去の辛い経験をどう乗り越えてきたか
これは、単なるポジティブ探しでは決してなく、「自分にはできる力がある」「苦手だけれど、完全には無力ではない」という「現実ベースの自己肯定感」を取り戻すための探索です。
まとめ:社交不安症は「維持要因」だけではない
Hofmannの研究が示すように、社交不安症は「心のクセ」「認知の偏り」「行動パターン」が複雑に絡んで維持される状態です。
これらが維持要因となってしまうのですが、その維持要因を意識的に緩めていくことで、社交不安症は改善へと向かっていきます。
まずは小さな取り組みから無理のない範囲で行ってくださいね。
参考論文
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こころのケア心理カウンセリングRoom
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この記事の執筆者
駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)
心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。
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