「人の目が気になる」ことはダメなこと?~「ありのままの自分」だけだと苦しくなる理由~
2025/11/28
みなさん、こんにちは。
神戸や芦屋、西宮などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。
「ありのままの自分で生きることが大切」
こうした言葉はネット上やSNSで大量に拡散されているため、一度は目にした、あるいは聞いたことがあるのではないでしょうか。
確かに、自分を偽らず、正直に生きることは大切です。
ただ、これが本当に「正しいのかどうか」というのは、心理カウンセラーとして疑問を感じます。
というのは、「自分らしいふるまい」が逆に「生きづらさ」につながっているケースをたくさん目にするからです。
そのため、重要になってくるのは「自分らしいか否か」という軸で考えるというよりも「柔軟であることができるか」という軸で考えるということです。
1. 「自分らしさ」よりも大切な「心理的柔軟性」というチカラ

心理学では、人が生きづらさから回復し、安定した人生を送るために必要なのは「一貫した自分でいること」よりも、「状況に応じて自分のあり方を変えられる心理的柔軟性」だと考えられています。
ここで言う心理的柔軟性とは、自分の感情や思考に振り回されることなく、状況に応じて行動の選択肢を変えつつ、自分にとって大切なものに向かって進んでいくことができるというものです。
ここで誤解しやすいのが…
「柔軟でいる=自分を偽ること」「我慢すること」
…という思い込みです。
しかし、実際にはその正反対です。
心理臨床的に見て心理的に柔軟な方ほど…
自分の内面を大切にしながらも、同時に現実との関係性を調整する
…という選択ができるようになります。
そのため、無理にぶつかったり、逆に我慢し続けたりすることが少ないんですね。
逆に言うと、「自分らしさ」にこだわりすぎることが、かえって生きづらさを強めてしまうケースはカウンセリングでも少なくありません。
では、心理的柔軟性が高い方というのは、どのような特徴を持つのでしょうか?
概ね、以下の要素が当てはまると思います。
✔自分の感情を認めながら、行動は選び直せる
✔場面によって「表現する自分」を変えられる
✔他人の立場を理解したうえで語れる
✔「~であるべき」が少ない
✔人間関係に余白としなやかさがある
つまり、心理的柔軟性が高い方は「自分を変える」のではなく「上手く使い分ける」ことができるのです。
そして、この心理的柔軟性が乏しいと、人間関係や仕事や社会生活での「生きづらさ」が増してしまうということになります。
2. なぜ「セルフモニタリング」が低いと生きづらくなるのか~心理的柔軟性の欠如が生む「対人摩耗」の構造~

先ほどお話しした心理的柔軟性を違う表現で表すと…
自分の内面を大切にしながら、状況に応じて行動の幅を選び直せるスキル
ということができるでしょう。
この柔軟性は、私が専門にしている心理療法であるACT(アクセプタント&コミットメント・セラピー)の中心的なテーマであり、セルフモニタリングは、その柔軟性を支えるものの1つです。
2-1.セルフモニタリングとは何か
心理的柔軟性において欠かせないのが「セルフモニタリング」というものです。
これは自分自身の客観化だったり、あるいは俯瞰してみるという方法とイメージすると分かりやすいかと思います。
ACTの文脈でセルフモニタリングを考えると、次の3つになります。
✔自分の内側で起きていることに気づくスキル
✔その場の文脈を把握するスキル
✔価値に沿った行動へ選び直すスキル
よくセルフモニタリングは「空気を読む」ということと混合されがちですが、実は全く異なり…
✔私は今、何を感じているのか?
✔ここではどんな関係性が求められているのか?
✔自分が大切にしたい在り方は何か?
という3つの視点を瞬時に行き来できる「心理の可動域」だと言えるでしょう。
3. 心理的柔軟性が低いと起きること~自分らしさが「生きづらさ」に変わる瞬間~

セルフモニタリングが極端に低い場合、どうしても思考や感情、行動の柔軟性が失われるため、次のような状態に陥ります。
● ACTでいう「フュージョン状態」
これは、思考・感情・衝動に「飲み込まれた(あるいは『支配された』)状態のことです。
例えば…
✔「ムカつく」→ そのままぶつける
✔「嫌だ」→ すぐに拒否する
✔「自分はこういう人間だ」→ 行動が固定化する
いくら「自分らしさが大切」と言っても、こうした行動をとりたいと思う方はいませんよね。
ただ、ネガティブな思考や感情、そして衝動に巻き込まれる(支配される)と、人はどうしてもこのような行動をとりがちになってしまいます。
この状態では、選択肢は現在生じている感情と同じ数しか存在しません。
例えば、「ムカついている」なら、その「ムカついている」に基づく行動しかとれないということですね。
その結果、対人関係では誤解が生じたり対立が増える、あるいは人間関係につかれてしまうという状態が生じてしまいます。
一方、セルフモニタリングが高い方は、ネガティブな感情があることを認めつつも、それに従うかどうかは別に選ぶことができます。
具体的には、時には沈黙や距離を取ることを選ぶでしょし、あるいは場面によっては適切な自己主張を行う事も出来ます。
つまり「感情=行動」という図式ではなくなるということですね。
ACTではこれを、思考や感情と「距離を取れる状態(脱フュージョン)」と呼びます。
4.「周囲の目」から自由になるために大切なこと

周囲の人に本音を出せない、人の目が気になって仕方がない、周囲の方に無理に合わせてしまう…
こうした悩みを抱えている方はとても多く、カウンセリングの場でも頻繁に語られます。
このとき多くの方が次のジレンマを抱えることになります。
「ありのままの自分でありたい」
しかし…
「周囲に合わせないわけにはいかない」
しかし、心理学の視点から見ると、この二者択一自体が生きづらさをつくり出しているんですね。
では、その点を踏まえてどのようなアプローチがあるのかをご紹介しますね
4-1.実践:周囲の目とうまく付き合うための3つのポイント
(Ⅰ)「どう見られるか」より「どう在りたいか」を問い直す
まずは、人から評価されるかどうかはいったんおいておいて、「私は、この場でどんな自分でいたいか?」という問いかけを自分自身になさってみてください。
この問いを自分に投げかけることで、相手にどう思われるかではなく自分がどんな人でありたいかという基準を作ることができるようになります。
(Ⅱ)感情と役割を切り分ける
例えば人間関係の中で「嫌だ」「疲れた」「不安だ」と感じること自体は、私たちの心の正常な反応です。
しかし一方で私たちには社会的な役割というものがあります。
そのため、「評価」ではなく「役割」という観点から自分自身の立ち位置を考えるということが役に立ちます。
つまり、自分自身の感情は感情として大切にしながらも、例えば社会的な役割を「淡々と」こなしていくということだといえるでしょう。
自分自身の内側の感情は最大限に尊重しつつ、外側は「役割」という観点から立ち位置を調整する
この切り分けができると、自分を守りながら場に関われるようになります。
(Ⅲ)合わせるかどうかを「選べているか」を確認する
もしも…
✔「NOと言えない」
✔「お願いを断れない」
✔「つい顔色をうかがう」
という状態が多いなら、それは「人間関係をうまくこなしている」というのではなく、「支配されている」という状態と言えるでしょう。
そもそも、本来の自分らしさとは…
合わせる自由も、合わせない自由もある状態
…なんですよね。
そのため、「私は今、選んでいる?それとも支配されている?」という観点でチェックしてみてください。
まとめ:自分らしさは「守るもの」ではなく「育てるもの」
自分らしさとは、固定された性格ではなく、状況に応じて自分自身の感情を尊重しながら、行動を選び直せることができるというものです。
他人に合わせること、それそのものが悪いのではありません。
ただ、そこから柔軟に「自分自身に戻ることができる」ということが大切となります。
言い換えると、自分を消さずに柔軟に対応を選ぶことができるスキル
それが、本当の「生きやすさ」です。
周囲の目を敵にせず、かといって支配もされず、「周囲と共に生きる」というスタンスを身につけることで、心は少しずつ軽くなっていくことでしょう。
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こころのケア心理カウンセリングRoom
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兵庫で人間関係の不安を緩和
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この記事の執筆者
駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)
心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。
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